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心の穴

 プラモがマイブームになって、半年ほど書き溜めていました。

 序盤からシリアスとストレスが入るので、ご注意ください。

 霧深い夜の路地裏を、幼い少女が一人走っていた。涙で顔をぐちゃぐちゃにして、体中を擦り剝いて痛々しいが、彼女は立ち止まらずに一心不乱に走っていた。

 後ろを振り返ると、まだ、怪物が彼女を追ってきていた。怪物の体の各部が開くとそこから閃光が閃き、いくつもの小さなミサイルが彼女に向けて放たれる。


「あうっ……」


 爆発にあおられて少女は勢いよく転び、ころころと転がって止まった。


「はぁ……はぁ……」


 体を起こそうと顔を上げた少女の目に、煙の向こうの怪物の影が映る。

 少女の顔の幅ほどの身長の影、首のないのっぺりした体、煙が晴れたことでその白いつるりとした肌が露わになる。

 少女の小さな手でも持てるような大きさだが、その力は先に見た通りだ。

 その怪物が、カツカツと軽い足音と共に、近づいて来る。


「いや……来ないで……」


 目の前まで来た怪物が、無情にその腕を振り上げる。その腕の先には、ギラリと光る刃。


「誰か、助けて!」


 襲い来る恐怖に少女がぎゅっと目を閉じた時、背後から重なる2つの声が聞こえた。


「くらえーーーッ!」


 その声に少女が目を開けると、目の前に迫った怪物を切り裂く、赤い戦士の姿があった。

 着地した赤い戦士は地面を滑り、火花を散らす。


「ギギギッ……」


 怪物は咄嗟に飛び退き直撃を避けた。


「まったく、心配かけやがって!」


 そう言いながら、手のひらサイズの赤い戦士は、少女の方を振り向き、緑のバイザーを通して少女を見た。


「ごめん……ありがとう……」

「へっ、そういうのは、あいつを倒した後だ!」


 そういって、赤い戦士は白い怪物に向かって飛び出した。

 遅れて駆けてきた少年が、少女を助け起こす。


「大丈夫か?」

「うん、ありがとう、お兄ちゃん。」


 その間にも、彼女らの目の前で戦いは続いていた。赤い戦士の双剣が、怪物を追い詰めていく。


「よし、いいぞ!このまま決まるんだ!」

「いくぜ必殺、ビートルラッシュ!」


 赤い戦士の緑のブレードが閃き、全身を回転させながらの高速ラッシュが怪物の体を削り取っていく。

 だが、何度目かの攻撃の時、左腕のブレードが受け止められた。


「何っ!?」


 怪物の体が前後に裂け、胴体全体が顎になったかのようにブレードを噛みこんでいた。そのままバキリとブレードがへし折られる。


「何だ……こいつ……!?」

「おい、大丈夫か!?」


 赤い戦士は足に括り付けられていたブラスターを左手に持つ。


「何とかな、でも、あのパワーはやべーぜ。」

「くっ、気を付けろよ。無理に決めずに、あいつらが来るまで、持ちこたえるんだ。」


 赤い戦士はブラスターで牽制しながら、残った右腕のブレードを撃ち込む機会を伺っている。

 怪物は散発的に体に仕込まれた銃器で射撃を繰り返すが、赤い戦士の構えるシールドに防がれる。


「耐えるのは俺の趣味じゃねーが……」

「でも、これならあいつらが来るまでもつはずだ!」


 しかし、そこで怪物の動きが変わる。このまま赤い戦士に攻撃を繰り返しても意味はないと判断したのか、その無機質な目が、少年の脇に控えていた少女を捉えた。


「こいつッ!?」

 怪物は、赤い戦士の横を抜けて少女に向けて体を前後に開き、ズラリと牙の並んだ顎のような姿になって飛び込んでいく。


「しまった!」

「きゃああっ!」


 その凶刃が少女に襲い掛かるかと思われたが、そうはならなかった。


「痛ッ……」


 怪物は少女にぶつかっただけだった。


「え……」


 その顎には、赤い戦士が捕らわれていた。胸の辺りをがっしりと挟み込み、顎に対して胴体を直角の角度で挟み込む形になっている。


「え……!?」


 目を見開いた少女と、赤い戦士のバイザーの奥のカメラの目線が、交差した。


「や……やだっ!」


 怪物が地面に着地した。駆動音が高まり、赤い戦士をギリギリと締め付ける。


「へへ……よかっ……た……」


 バスンという音が響くと、顎が開かれて戦士は地面に落ちた。

 その胸には、ぽっかりと、暗い穴が開いていた。


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