プロローグ
初投稿です。R15は保険です。
プロローグ
「ふー」
くたくたに疲れ果て我が家にたどり着いた俺は、寝間着がわりのスェットに着替えため息をついた。
大学の先輩の紹介で就職した会社はブラックだった。どおりで内定までが早かったわけだ。
名ばかりの研修の後で配属されたシステム開発部は、最初の半年くらいはお客様扱いで定時で帰宅もできたが、それ以降が地獄の日々であった。
用事があっても定時ではかえさせてもらえず、山のような仕事を押し付けられた。
同期は一人辞め二人辞めと連鎖的に辞職していきすでに俺一人になった。後輩もできたが定着率は悪く、
10年たって主任となっても配下の後輩は2名という情けなさだ。
頼みとなるのは外注と派遣のおっさん連中で、一癖も二癖もある強者ぞろいに翻弄される毎日であった。
主任手当など雀の涙ほどで定時昇給も大した金額ではない。残業手当の方が基本給よりも多いというありさまだ。課長は涙目で残業を控えるようにと言うが、仕事量を減らせるわけもなく暗にサービス残業をしろと言うことだ。
「じゃあ仕事を減らすか人手を増やしてください」
と言うと、
「ぜ、善処する・・・」
と課長が肩を落として言う。部長あたりからきつく言われているだろうことはわかっているが、妥協するわけにはいかない。これ以上忙しくなったら体を壊してしまうのは目に見えている。
風呂に入り遅い夜食を摂り寝る準備に入る。
「俺の人生これでいいのかな」
すっかり独り言が癖になり、誰もいない部屋に向かってぼやいてみる。
あまり深く考えても仕方がないので、せめていい夢を見たいものだと思いながら意識を手放した。俺の特技?で短い時間でも長い夢を見ることができる。数少ない楽しみでもあった。
白い霧の中のようなところで俺は漂っていた。
夢?それはない。俺はどんなありえない夢でも夢と感じたことはほとんどないし、繰り返し見るような夢でも(ああまたここに来たのか)くらいにしか思っていない。
夢の世界を満喫しているため途中でトイレのため起きても、夢の続きを楽しめるくらいだ。
ちょうど本を読んでいるとき、心が別世界にいるように夢うつつの状態で、半分現実世界を認識していても夢を楽しんでいる。
だから(これは夢なのか)と感じることは非常にまれであった。
地に足がついていない状態でしばらく漂っているとその人物に出会った。
人物と言ったが今までに見たこともないオーラを放つ白髪の老人に、
(もしかして・・・)
「そう神様じゃ」
思っていたこと横取りして、自称神様がおっしゃった。
「自称とは失礼な奴じゃ。本物だよわしは」
神様が怒ってらっしゃる。心を読めるようなので気をつけねばなるまい。
(てことはもしかしなくても死んだ?間違いなく過労死だなこりゃ・・・)
「そのとおりじゃ。しかし、死んだからと言って誰もがここへたどり着くわけではないぞ」
(どういう意味だ?善行を積んだ訳でもないし、誰かの身代わりで死んだわけでもなさそうだし、神様のうっかりミス)
ネット小説でこのようなシチュエーヨンはかなり読んでおり類推してみたのだが、
「何がうっかりミスじゃ。わしはお前の世界の神でないのだぞ。本当に失礼な奴だ」
「すみません」
お怒りの神様にとりあえず謝っておく。
「ごくまれに、そう数万年か数十万年に一度お前のように他の世界の魂が彷徨ってくるのじゃ。神として魂は輪廻転生の輪の中に押し込まねばならぬ。と言ってもわしは転生担当ではない。そういった仕事は本来下級の神がやるものだ。ちなみにわしは創生神じゃからな」
(うーん転生かあ。チートで俺tueeeeでなくてもいいから、記憶を持ったまま赤ん坊からは勘弁してほしいな。羞恥プレーはちょっとな・・・)
「ふーん。滅多にないことだから暇つぶしに希望は聞いてやるぞ。わしの世界はお前がいた世界と違って剣と魔法の世界で魔物もおる。記憶を持ったまま年齢はもう少し若い頃のお前のからだを作ってやろう」
「本当ですか。それでお願いします」
食い気味に叫んでいた。剣と魔法の世界とはゲームやネット小説が趣味の俺には大好物だ。
「お前の世界のゲームとは面白そうだな。それをシステムに組み込んでやろう。それとすぐに困らないようにいろいろ持たせてもいいな」
「ありがとうございます」
魂だけだが喜色満面で俺はそう答えていた。
「特にやってもらうことはないから自由にしていいぞ。悪人ならばそもそもここにたどり着かないから世界を壊すこともなかろう。新しいシステムのテスターとして見守ってやろう。それでは行け」
神様の言葉で俺の魂はまばゆい光に包まれ、心地よく俺は意識を手放した。
(今度の人生はゆったりとすごそう・・・)
そう願いながら・・・
ちなみに筆者もブラックで死にそうなSEですw