表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こころのきずあと  作者: はらくろ
第1部 異世界に転生した妻編 第0章 プロローグ
3/163

序章3

この回でやっと書き溜めた序章が終わります。

前よりちょっと長いですが、勘弁してください。


6/1 誤字脱字、加筆修正しました。


6/9 表現方法を修正しました。


6/9 表現方法を修正しました。


 俺は腕時計で約束の時間を確認すると顔が真っ青になった。


 百貨店を出て、待ち合わせのレストランに急いだ。


 エレベーターなんて待ってられない、階段を段とばしで走って上る。


 「はぁはぁ…す、すみません、予約していた吉田ですが」


 「はい、お連れ様はもうお席でお待ちになっています。こちらです、どうぞ」


 落ち着いた感じのギャルソン、高い店予約したんだ、さすがだね。


 案内された席に近づくと、我が愛しの君が待っていた。


 瑠奈(るな)は座って、足を揃えてぶらぶらさせている。


 俺に気付いたようだ、うわ、こっち睨んでる。


 絶対怒ってるわ、これ…どうしよう。


 この両足をぶらぶらと前後させる仕草は、瑠奈が怒っていたり、拗ねていたりするとき、無意識にやってしまう癖のようなもので、可愛いから俺はすごく気に入っていたりする。


 俺はさっき課長にやった以上に、90度腰を折った。


 「すまん…」


 彼女はつーんとそっぽを向き。


 「席をお間違えではありませんか?」


 足の振りが強くなった、うわ、やべ、どうしようか、これ…


 「そんなこと言わないで、本当に、すまん」


 彼女は上目使いでこっちを見た、やはり目は笑ってない。


 「陣さん!すみませんでしょっ」


 瑠奈の機嫌を早く治したい、俺はとにかく平謝りした。


 「すみません、遅れました。ごめんなさい、今後気を付けます。許してください──」


 「今日、何の日だと思ってるの?」


 怒っている瑠奈さん、可愛いわー。


 「ごめんなさい、百貨店寄って──いや、なんでもない」


 「もう、仕方ないわね、今回は許しましょう、さ、座って」


 上から目線のお許しがやっともらえた。


 「でも、今回だけなんだからねっ」


 真っ赤になってぷんっと明後日の方向を見る瑠奈。


 俺は(やっぱ可愛いなー)と思いつつ、座って飲み物をメニューから注文する。


 「おまえさんももう、20歳超えたからワインでいいよね?」


 「え、まぁ、飲めないことはないけど…」


 コース料理が来るまで、まずは乾杯。


 「それでは、1回目の結婚記念日に、乾杯!」


 チンッ…


 「ぷは──っ、うまっ、この一杯に生きてるな─」


 「ちょっと、陣さん、ビールじゃないんだから一気飲みしない、それと、おじさんくさい」


 「ふーんだ、しかたないっしょ、おじさんだし」


 「もう…」


 そして、鞄からプレゼントを出す。


 「これ、記念のプレゼント」


 「えっ、うん、開けていい?」


 ダチ○ウ倶楽部のような手つきで。


 「どうぞどうぞ」


 「こ、こんな高そうなものを、無理無理無理」


 「20歳超えて、会社で○ショックじゃだめでしょ?」


 彼女はいまだに学生の頃の時計を使っていた。


 このへん頓着(とんちゃく)しないから、制服の袖から見える違和感があるんだよね。


 お義祖父さん辺りに貰って、ずっと大切に使っていたのだろう。


 でも、可愛いんだからもっともうちょっと服装にもこだわって、自信もってもらいたいしね。


 「──わかりました、大切にします、ありがとう」


 「こちらこそ、この1年ありがとうね。

  今日からもまたよろしくね」


 メインの料理はうまかった。


 任務完了、あ─…充実した1年だったな。


 RIRIRIRIRIRIRI!!


 そんなとき、携帯が鳴った。


 「ごめん、携帯切っっておくの忘れた」


 「もう、」


 「あ、○○商事担当の◆◆さんだ、君の会社の」


 また足を前後にぶらぶら始めた、やばい、怒ってる。


 「むー」


 でもこういう子供っぽいところも、好きなんだよねー。


 「ごめん、ちょっと外で話してくるね、ここ携帯禁止らしいから」


 「早く戻ってきてね」


 「すぐ戻るよ」


 店のすぐ外で話を始めた。


 ピッ


 『すみません、システムの仕様変更につい、zzてなn…』


 古いビルの中の店舗の為、電波の調子が悪いみたいだ。


 「ちょっと外出ますから、こちらからかけなおします」


 俺は携帯を切って、階段を下りて外に出た。


 金曜の夜だから人が沢山いるなーと思いながら携帯をかけようと…


 ドン!


 あれ、足元が浮いた──


 誰かに凄い勢いで、誰かに押されたような──


 止まれない、つんのめるように俺は道路へ押し出されてしまった。


 パパ─ン


 クラクションが鳴る。


 えっ、目の前の高い位置にライトが、ダンプとかバスとか、あれ?


 キキーーーーーーーーーーーッ!!


 ドンッ!!!


 ものすごい衝撃が俺の全身を襲った。


 「おい、人が轢かれたぞ!!!」


 「誰か救急車、警察呼べ!!」


 そう聞こえる方を見ると、スマホで動画を撮る人々もいた、こいつらひでぇなぁ──とまるで他人事のように思えた。


 「どいてください、お願いします、あ、いや、いやぁあああああ!」


 近くから聞き覚えのある女性の驚く声が。


 「いやぁああああ!陣さん、陣さぁあああん、いやぁああああ!!」


 薄れゆく意識の中、声の方を向いた。


 君か、心配するな、俺はだいじょ…うぶ…だ…


 全身の激痛が薄れていくような感覚の中、俺は意識を失った。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 ──どこだ、ここ?


 目の前真っ暗。


 なんだ──


 ベッドにでも寝ていたのか──


 左手に何か握らされてる。


 押してみようか?


 親指を押し込んでみる。


 ビーッ!


 『はい、ナースセンター、って、この番号、吉田さん目を覚ましたみたいよ!!先生ー!!』


 そうか、病院か、生きてたみたいだな。


 よかった──


 バタバタ…


 誰かの足音がする、すぐに担当医が入ってきたみたいだった。


 「吉田さん、よかった。なんとか峠は越えたみたいだね」


 「先生、目の前真っ暗なんですか、ろうなっているんでしょう?」


 あれ?呂律が回らない──


 「ご家族には話しましたが、どうしましょう」


 「しょうちき(正直)に話してくらさい。俺、とうなったんれすか?」


 「命に別状はありません、が…」


 「それろ、足の感覚かないんですけろ、これもどうしたんでしょうか?」


 「ご家族から、本当のことを聞かれたら、話すように言われてますので、はっきり言わせてもらってよろしいですか?」


 「はぁ…」


 「両目は完治しないでしょう、次第に視力が弱くなり、そして、失明する恐れもあります」


 「そして、脊髄にも損傷があって、下半身はもう…」


 「えっ」


 「…」


 「そんな、痛みもそんなに…」


 「点滴に強力な痛み止めが入ってますので…」


 「ご家族とお話しになりますか?少しであれば…」


 「はい…」


 先生、看護師さんと入れ替え?で入ってきたのは妻だった。


 「手短にお願いしますね、奥さん」


 「はい、わかりました、陣さん、陣さん…」


 「ほら、生きてた…らろう?こんな…らけど」


 いつも思っていた、何かあったら彼女を縛り付けてはいけない。


 一回りも下な若い彼女だ。


 俺はこんなことになってしまった、そしてとっさに思ってしまった。


 俺は瑠奈の負担になってしまうのではないかと。


 「済まないけれろ、俺はもうらめら、別れてくれないか、君を幸せに、もうれきない…」


 「そんな、何を言ってるの!!」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 『やぁ、おはよう』


 ──神様ですか。


 『君に謝罪しなければならないねぇ』


 神様が謝罪だなんて、どうしたんですか?


 『まず、これを見てくれないかい?君にも見えるようにするからねぇ』


 テレビの画面みたい、いや、テレビの画面そのものが見えた。


 《昨夜未明、○○市で火事があり、焼け跡から2名と屋外から1名の…・》


 なんだこれ…


 《屋外にいた被害の女性は吉田瑠奈さん、着衣に…乱・・された形跡が…警察当局は殺人事件として…》


 ──っ!


 誰だ!!


 誰がやったんだ!!!


 『まぁ、落ち着いてくれないかねぇ』


 落ち着けるわけないでしょう!


 『いいから、落ち着くんだ』


 『騒いでもどうにもならない、済まないが、もう過去の話だよ』


 …珍しく語尾が普通だった、そして優しく諭すような口調だった。


 『犯人は君を車道へ突き飛ばしたのは、担当って言ってた◆◆隆って男だったようだねぇ』


 なんだと?


 『そして、◆◆はもう亡くなったよ、逃げ帰ったときに運転?を誤ったらしいねぇ』


 ──見ていたならなぜ?


 『本当に申し訳なかったねぇ、僕にはどうしようもなかったんだ。

  直接手を出すことが出来ない僕を恨んでくれていいよ…』


 …


 『君だけに付きっ切りっていうわけでもいかなかったんだねぇ』


 それで、どうなったんだ…


 『お詫びというわけではないけども、君の奥さんは僕の担当する世界に転生、生まれ変わってもらったよ』


 …妻は、何か言ってましたか?


 『かなり酷い目にあったから、魂の衰弱が激しくてねぇ【ごめんなさい、許されるならいつまでも待ってる】とは言っていたかねぇ』


 『それと、老夫婦の方は通常の輪廻の輪に戻るって言われてねぇ』


 …


 『そのとき【孫は陣君に任せたい】と言っていたねぇ』


 そう…ですか。


 『それと良くない話も、あるんだねぇ』


 なんです?


 『僕と同等や高い神格の神にも、善悪を考えない性質の悪いやつがいてねぇ』


 はい。


 『どうやら、◆◆を僕の担当する世界に紛れて転生させたかもしれないんだよねぇ』


 『そんな痕跡があったんだ。これには僕もかなり頭に来てる』


 なんだと!!!


 『僕が担当している世界だとしても、転生してしまったら、直接の干渉は難しいんだよねぇ…』


 今すぐなんとか…しないと!


 『大丈夫、転生は赤子からになるから、今すぐどうなるわけではないんだねぇ』


 どうやったら、妻に逢えますか?


 『そこはほら、ルールがあって教えられないんだよねぇ』


 ──使えない、この神様。


 『何か良からぬことを思っていないかい?』


 いやいや、そんなことないです。


 『でも、元の名前の由来に関係のある名前になることが多いんだよねぇ。

  いや、独り言だよ、別に教えてあげた訳じゃないんだからねっ』


 えっ、そんなツンデレっぽい…


 『転生したあと、記憶というか知識というか、生前のものが残るようにはしてあるんだよねぇ』


 『でも、本人が思い出そうとしないと無理なんだよねぇ』


 なんでもいい、この世界に未練はない。


 早く転生させてくれませんか?


 『いいけど、今すぐ君は死ぬよ。

  それと、【てんぷれ】だっけぇ?【ちーと】とかいう桁外れた加護はあげられないんだよ。

  それでもいいかねぇ』


 結構読んだみたいですね、異世界転生もののライトノベル。


 どんだけ暇なのよ、この神様。


 もらえるだけでありがたいので、その辺はお任せします。


 『わかったよ、もうこの世界にはもどれないよ?いいねぇ?』


 お願いします。


 『いってらっしゃい、君の活躍を期待してるよぉ』


 あ、神様、そういえ・・b


 『あ、加護の話してなかったかねぇ、ま、いいか、達者で暮らしてくれたまえよぉ』


 そんなぁああああ…


 神様が指をパチンと鳴らしたのか。


 そのまま白い景色が暗転して、俺は意識を失った。



読んでいただいてありがとうございました。


次回から、転生後が始まります。

それではよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お手数でなければ「ぽちっとな」とお願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ