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込み上げるもの

うるさい。全てが雑音に聞こえる。私には何もない。ただ私には勉強と書道がれば……

あいつも………いたんだっけ?


ピピピピッッピピ…カチっ


6時30分。よし時間どうりだ。


「お母さん、おはよう。」


「あ、おはよー。あやちゃん箸並べといて。」

母は機嫌がいいと時々私のことをあやちゃんという。

「はーい。あれ?お父さんは?」


「えー?あやちゃん聞いてないの?お父さん今日から1週間香港に出張よ」


「ふーん」

私の父は大手の電気会社に勤めている。とはいうものの特にお偉いさんというわけでもなくごく一般的な平社員なのだ。

母はパートでバイトをしているから午後はほとんどいない。が、その時間は学校にいるから大した問題ではない。


「行ってきます。」

いつも通り7時20分。ほぼ正確な時間に私は家を出た。学校に着いたら7時50分。最初の授業まで20分ある。その時間があれば数学の問題集の問い3つ分は終わるはずだ。……

のはずだったのだが……


なんでまたいやがる…

あの日から私は勝手に友達にされた。書道以外では関わらないだろうと思っていたが、あれから毎日あいつは私の家の前まで迎えに来る。そもそもなぜ家を知っている。別に頼んでない。むしろ迷惑だ。だが私は常に最強の武器を持ってしてこの1週間あいつと戦っきた。無視。これぞ私の唯一の対人兵器である。


「おっはよー。あやな今日も時間ぴったり」


無視


「今日は何しよっかなー」


無視


「あやなとどっか行くかなー。あ!学校終わったら昇天行こうぜ」


……無視。昇天とはラーメン屋である。


「……あ、そいやこの前出してた書道の作品入賞してたよ。」


「え!ほんとnっっ……」


しまった。口が滑ってしまった。


「おう。俺のがな。」


カッチーン!こいつ。こいつめ。許さん。わざわざ自分の言わなくてもいいだろうが。ほんといちいちむかつく奴だ。


しばらく沈黙は続いたが私は無視を続けた。

いつものようにあいつは一人でベラベラと話しながら勝手についてきた。そして特に何もなく学校に着いた。


「じゃ、また後でな」


勝手に約束された。幸いにも私はあいつとはクラスが違う。


「起立。礼。」


やっと授業が始まりいつのように私は勉強に集中した。今日は月曜日。週に二回書道の時間があるがそのうち一回は月曜日である。

はぁーまたあいつに合わないといけないのか……

だが、その日あいつは来なかった。

どうしたんだろ。うんんん。いやいや。どうでもいい。むしろ来なくてよかった。めんどいのは嫌いだ。もう一人は初日から一回もきたことがない。なんせ、学校にも来ていないらしい。要するに不登校児である。結局今日の書道は私と先生のマンツーマンで行われた。

キーンコーーンカーンコーン……


「ありがとうございました」


「あ、宮原さん。この前出した作品入賞しましたよ。」


え、なんだ。私もしてたのか……


「はい。ありがとうございます」


そう言って私は教室に向かった。

あ、雨が降っている。最悪だ。天気予報では晴れのはずだった。傘なんて持ってきていない。しょうがない。雨が少し止むまで教室で待つことにした。無論その時間は勉強する。

………………………

もう6時だ。そろそろ帰らないと。まだ止まないのか。それどころか強くなっている気がする。仕方ない。走って帰るか……


昇降口の前で靴を履いた私は勢いよく駆け出した。っと、え?何かに制服を引っ張られた。


「あやな。おせーぞ。ったく」


「はあ?遅えぞって別に約束した覚えないし!そもそもなんでこんな時間までいんの!それってストーカーでしょ!?ねえストーカーでしょ!?」


「……なんかあやな今日はよく話すな。」


しまったーーーー。私としたことが。

じろじろみんな馬鹿野郎!


「べ、別に。あんたがいきなり出てくるからびっくりしただけよ。」


「そうかそうか。そんなに嬉しかったのか!」


「いやいや、そんなこと言ってない。むしろ不愉快だわ。ストーキングされてるみたいで。」


「まあそんなつれないこと言うなって。よーし昇天でも行くか!」


「なんでそうなるわけ?そもそも私は行くなんて言ってないし、早く帰って家で勉強しなきゃっっっ

……ちょ、ちょっと!」


「いいからいいから♪」


無理やり袖を引っ張られた。はぁー

またこいつに振り回されるのか……


「へーい。いらっしゃい!」


「よう!昇天の親父。」


「お、空今日は彼女連れか?」


「ん?あやなか?おうそうだこいつは俺の彼女だ!」


「はい?え、ちょなに勝手にk…」


「ははは。青春だなー彼女さん仲良くしてやれよ!」


「い、いや私は別にそんなんじゃっ」


「オヤジー俺味噌ラーメン頼むー」


「へいよー!彼女さんは?」


「わ、私は……」


なんでだろう。流れでここまで来てしまった。もう……私の時間かえせ!


「私も味噌ラーメン!!」


「へーい。お待ち」


「お。なんだ。やっぱ腹減ってたのか!」


「うるさい。どうせ来ちゃったんだから食べる以外ないでしょ!」


「そうだな。よーし。じゃあ今日は俺のおごりだ」


「いい。自分の分は自分で出す。」


「あいかわらず。冷たいなー。でもまあ、そんなあやなが俺は好きだけどな」


な、こいつそんな台詞をさらっと言いやがって。私はどう返せば?


「ぎょ、、餃子追加!あとチャーハンも!」


「あいよー」


「これ全部あんたのおごりだからね!」


「お?……しょ、しょうがねーな」


ムッッッッ


「おじさん。醤油ラーメンも追加で!」


「あいよー!」


「お、おいまだ食うのかよ!?」


「う、うるさい。あんたが連れてきたんだからあんたがおごりなさいよ!」


「ったく、しょうがねーなー」


何だろう。この感じ……

ムカつく。こいつといるとムカつく。上手くいかない。あああぁーーもぉーーーー

知るかーーー!


………………………


私はラーメン3杯と餃子四人前とチャーハン二杯を食べた。


「………あやなよく食うな」


「う、うるさい。」


やばい歩けない……


「どうしたあやな?」


「べ、べつになn……ん」


うは、でそう……

堪えるんだ。今吐くわけには、


「なんだよー。やっぱ食い過ぎか??」


なぜ嬉しそうに言う。そもそも誰のせいでこうなったと思っていやがる。責任とって家までおくっっっ!!

って何してんの!?


「俺がおぶって家まで送ってやる。」


まてまて。余計に吐く!早くおろせ!

と、言いたかったがこみ上げてくる吐瀉物を堪えるので精一杯な私であった……


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