0章・ケース6『式守有理』(しきもり ゆうり)
―マドカが、職員室での質問攻めから逃れ、小百合と歩いている頃。
式守有理は…早川マドカを探していた。
いや、マドカがいる場所はわかっているので、正確には…
告げようとしていた。
マドカにではなく、マドカが呼び出された原因になった者へ。
警告。
マドカが誰にあっていたのかは、わかっている。
だからこそ、警告する。
吾妻へと、警告する。
「式守、何してるんだこんなトコで」
目の前には、マドカと小百合が立っていた。
いつの間にか、職員室のある廊下まで来ていたようだ。
「早川…と星野先輩か」
「ああ、心配して来てくれたんだ、まさかお前もか?」
「馬鹿いえ、お前が心配されるようなタマかよ」
にやりとわらってマドカを見る。
彼女の方はぎろりとこちらを睨み付けて入るが、怒ってはいないことはわかる。
「…アイツは?」
「まだ職員室にいるんじゃないか?」
あれから職員室の出入りはまだない。
それならば当然まだ吾妻は中にいる筈だ。
「もう諦めたんだと思ったんだがな」
その言葉に、マドカは何も返さない。
「…やるのか?」
「もし、向こうに諦める気がないならな」
その言葉に、小百合も思わず口をだしてしまう。
「…暴力は、いけませんよ?そんな事をしたら式守君のほうが…」
「わかってますよ、俺だってそんな事できればしたくない」
―でも、万が一の場合は、やらなければならない。
―今の平穏を無意味に壊そうとする奴がいるのならば。
―どんな手をつかってでも、俺はそれを排除しなければならない。