表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Practical・Night  作者: マディア
『ハジマリノトキ』
4/23

0章・ケース3『宴名咲夜』(えんな さくや)


 ―同日、おなじく登校時


 「咲夜ー、また惣雅先輩が追っかけられてるよ」

 「ほんとだ、あの格好であのスピードで走れる惣雅先輩って何気にすごくない?」

 

 いつもの光景。

 入学してまもなくからすでに繰り広げられていた追いかけっこ。

 バスケ部の朝練習を終えた宴名咲夜は、教室でスポーツドリンクを飲みながらその光景を眺めていた。


 「それにしても先輩ってかわいいよねぇ、セーラー服着てるとほんと女の子にしかみえないし」

 「ほんと、女の私達顔負けだよねぇ」


 いつもの光景、と言う物がこんなに安心するものだなんて。

 あの事件があるまでは思っても居なかった。


 今でも考える。

 もし、あの時…

 誰か1人でも欠ける様な事があったなら…


 わたしは、いまでもこうやって わらっていられただろうか?


 「咲夜?どしたの?」

 クラスメイトが虚空を見つめだした昨夜の顔を覗き込む。

 「あ、いや何でもないよ」


 忘れたくても、忘れられない。


 いや、忘れちゃいけない。


 いえない けど わすれてもいけない



 ―昼休み。


 『早川マドカさん、至急職員室へ…』

 「あ…」

 学生食堂へ向かっていた昨夜の耳に入ってくる校内放送。

 (…早川先輩の、呼び出しかぁ…)

 予感がした。

 素行が悪いと評判のマドカが呼び出しを受けるのは珍しい事ではない。

 だが、今日のこれは何か、別の物だと。

 咲夜の心に重い何かがくっつけられたような感覚。


 「真理、お昼なににしよーか?」

 「んー、今日はご飯物がいいなぁ」

 友人の石端真理とともにメニューをにらみつける二人。

 「今日の放課後の練習きつそーだからなー、食べすぎることなく、かつお腹が満足するもの~」

 「わたしはパンにしておこうかな」


 そんな会話をしていた咲夜の目に、1人の人物が映る。


 おなじクラスの『秋宮雅紀』だった。

 雅紀は昼食の入った袋を手にさげて、食堂を出てゆく。

 

 (…秋宮君、1人かな?)

 余計なお世話だとはおもいつつ、そんな事を考えてしまう。


 雅紀も、咲夜と同じくあの事件に巻き込まれた一人。

 それまでは、ただのクラスメイトの一人だった雅紀を、あの日からどうしても意識するようになってしまっていた。


 でも、それからも声をかける事はできなかった。

 (…秋宮君も、思い出したくないかもしれないし)

 そして自分もまた、あの感覚を思い出してしまうかもしれないから。


 触れられたくないのは…秋宮君?それとも自分?


 ―考え出してしまうと止まらなくなる―  


 空腹感がその考えを中断させてくれた。

 …いや、そう思い込むことにして無理矢理考えるのをやめた。



 ―いつまでも こんなのがつづくとは おもっていなかったし


 ―かならず どこかで こわれるひが くるって かんじていたから



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ