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第一話(8)
「それはないんじゃないか?」
奥の方にいた若い男が言った。
歳は同じくらいだが、僕よりずっと落ち着いて見える。
ジーンズにジャケット、顔まではよく見えないが、たぶん女にモテるってこういう奴だろう。
そんな雰囲気のする男性だった。
「そ、そうっすよね?強盗なんてまさか…」
彼が否定してくれたおかげで、僕は少し安心した。
「もしかして君、初めて?」
若い男が首を傾げた。
表情までは見えなかったが、少し罰の悪そうな様子が見えた。
「銀行ならこないだやったじゃんよ。金ならあんだろ」
若い男の近くにいたチンピラ風の男が言う。
え…?
僕の動きが止まった。
思考をフル回転させて、何かを必死に思い出す。
先日のテレビ…寝そべって漫画を読みながら、何となく点けていたニュースから流れる声…。
ええと、あれは何だっけ?
千代田区であった銀行強盗…逃走した犯人はまだ捕まっていません…
「………!?」