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第一話(5)
駅前のロータリーに着くと、オカマの姿はなかった。
ビニール袋にぶち込んだ制服をぶら下げ、喫煙所の前で煙草に火を点ける。
今日は金曜日だった。
街には多くのサラリーマンやカップルがごった返している。
いつも以上に冷え込みの激しい夜だったが、僕にはみんな楽しそうに見えた。
「早かったわね」
ドキッとして顔を上げると、目の前にオカマの顔があった。
「煙草は健康に悪いわよ」
オカマはそう言って僕の口から煙草をむしり取ると、それを灰皿に放り投げた。
「さぁ、行きましょう」
オカマはまるでピクニックにでも行くように、目をギラギラさせて言った。