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第一話(3)
「ごめんください」
そう言って僕がドアを開けると、正面には蝶ネクタイに黄色い縞のスーツを着た小太りのオヤジが座っていた。
髪型はポマードを塗りたくったような七三分けで、毛先がピンとはねている。
分厚い唇はクチャクチャと音を立てながら、骨付きチキンをしゃぶっている所だった。
「あ、あらヤダっ、お客さん?」
おまけにうんざりするオカマ口調だ。
「あ、いえ昨日連絡した佐藤シンイチと申します」
僕は顔の前で手を振って言った。
「あ?あ~ん、サトちゃんね。聞いてるわ。でもごめんなさい、店長いま緊急のパーティで留守なのよ。帰りは夜になるかもだけど」
「あ、そうですか。では日を改めて…」
僕がそう言うと、オカマは席を立って僕を呼び止めた。
「いいのよ、いいの!どうせ面接はアタシの仕事なんだから!」
さぁさぁ座ってと、僕は促されるまま部屋の中央にある安そうなソファーに座った。
足元にはなぜか虎の敷物。