空色恋詩~Halloween ver.~
訪問有り難う御座います。 こちらは和斗目線となっております。
「Trick or treat!!」
言ってみた。ただそれだけだ。
毎年、自分には関係がない。女子のするパーティーだと思っていた。今年は、何となく水面なら準備しているのではないかと、思ったのだ。
そして予想通り、鞄から可愛らしいカボチャの形をした、ケーキが取り出された。
「はい、どうぞ。カボチャなんですけど……和斗さん食べられますか?」
「勿論!」
早速開けると、甘くていい匂いがした。すぐに口に運ぶ。
「美味っ!? 何これ、美味すぎだろ」
「そ、そうですか? ……有り難う御座います」
照れて顔を背けているところが、また可愛かった。
「そういえば、今日は何の本を借りたんだ?」
「今日はHalloweenということで、Halloween関係のものです」
「へぇ」
隣からのぞき込むと、可愛らしいイラストが描かれた、絵本だった。カボチャにコウモリ、魔女まで飛んでいる。
「歴史とかそういったものも興味があるんですけど、それはまた今度借りるつもりなので……」
不意に、水面が俯いた。もじもじと、本の上で指を動かしている。
「この本は、和斗さんと読みたいなって……」
可愛い!! 何だ、この生き物は。抱きしめたかった。引き寄せて、思い切り抱き締めて――しかし、そんなことをすれば水面が逃げてしまうことは分かり切っている。
仕方がないので、そのまま水面の後ろに座って後ろから腰を抱くだけにした。
「はぅあ!!」
「ん、読んでよ」
思い切り抱き締めるのは、この本を読んでからにしよう。何せ今日はHalloweenなのだから。少しの悪戯も、許されるだろう。
後ろから抱き締められるのも十分恥ずかしかったのだが、そのまま約30分、水面は和斗に離してもらえなかった。
有り難う御座いました。