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未来探偵クスメギ  作者: よねたに
部室炎上編
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第09話 蝋燭のように身を削って人を照らすような人に僕はなりたい(part5)

「もしもし」


『もしもし。こんな時間に電話をしておいてなんなのだけれど、今大丈夫かしら』


「大丈夫。ちょっと考え事をしていただけだから」


『考え事?』


「……今日のこと」


『今日と言われてもいろいろありすぎて何のことか分からないのだけれど』


「あー……。最初、暦が僕の代わりに森と戦おうとしてくれたことについて」


『それがどうかしたのかしら』


「ちょっと自分が嫌になって」


『……』


「暦が僕の代わりに戦ってくれたとき……ちょっと……安心しちゃったんだよね。ほっとしたというべきなのかもしれない」


『……誰だってそうじゃないのかしら』


「でも……なんか罪悪感みたいなものがあってさ。女の子に代わりに戦ってもらおうなんて」


『なるほどね。男の子だものね、久寿米木くん』


「茶化すなよ……。暦はすごいよ。人の為に危険を顧みず、危険の中へ飛び込んでさ」


『……別に、そんな大したことではないと思うわ』


「いや、大したことだよ。普通はそんなこと出来ないよ。……僕はさ、暦みたいになりたいと思う訳でさ」


『……と言うと、どういうことかしら』


「人の為に何かをする――例えるなら……蝋燭みたいにさ」


『蝋燭?』


「蝋燭のように身を削って人を照らす」


『……』


「僕はそんな人間になりたい」


『……いないわよ』


「え?」


『そんな聖人君子みたいな人、いないわよ』


「……」


『私は、久寿米木くんが好きだから、そうしただけのこと。久寿米木くんに好かれたいからそうしたにすぎないの。何の見返りも無く人の為に何かをする……蝋燭の様な人はいないわ』


「いや、暦。それはちょっと勘違いしているかもしれない。見返りなしで何かをする人なんてほとんどいないだろうね。ただ、その見返りが問題なんだよ。さっき、蝋燭で例えたけれど、蝋燭は人を安心させるし笑顔に出来たりもする。その笑顔が見返りなんだよ。そういう……なんて言ったらいいのか分からないけれど、人から見たらちっぽけな見返りかもしれないけれど、そういうもので、動ける様な人に僕はなりたいっていう意味で言ったんだ」


『……』


「暦だって同じだよ。自分で言うのもなんだけれど、僕に好かれたいっていう他の人からしたら、なんだそれはっていう見返りの為に危険に身を投じようとした。投じようとしてくれた。そんなことが出来る人に僕はなりたいなって」


『なるほどね。そんな風に私が思われているなんて思いもしなかったわ。物ではなくて気持ち的な事と言うことかしらね』


「まあ、そういうこと。ちょっと臭いセリフだったかな」


『いえ、そんなことは無かったわ。格好良かったわ、久寿米木くん』


「あー……ははは」


『ところでなのだけれど。私が電話をした理由についてなのだけれど、そろそろ話してもいいかしら』


「あ、ごめん。なにかな」


『私の一世一代、格好付けたつもりの告白についてなのだけれど』


「あーうん」


『返事を聞こうとしたら雨倉さんが来てしまってどうにもそういう雰囲気ではなくなってしまって。で、今改まって聞こうと思ったのだけれど。それで、久寿米木くんの気持ちはいかがなものかしら』


「んー……こんな風に、女の子の方から告白させている時点でも相当ダメだなって思うんだけれど、1つ聞いてもいいかな」


『ええ、どうぞ』


「小学校のときと大学に入ってからの数カ月しか接点がないわけで、しかも大人になってからというと大学の数カ月しか接点がないわけで。それなのにどうして――どうして僕なんかを好きになってくれたのかなー……と」


『まず、私の好きな人を「なんか」とは言って欲しくはないわね』


「あーごめん……?」


『いいわ。許してあげる。それで、理由についてなのだけれど、そんなものないわ』


「え?」


『少し混乱させてしまったかしらね。正確に言うと、理由は無いけれどあなたの全てが好きということね』


「全て――」


『なにか不満があるかしら』


「いや、ありません……」


『それで、返事を聞かせてくれるかしら』


「……僕「なんか」で良ければ、付き合ってもらえる?」


『久寿米木くん、私の好きな人のことを「なんか」と言わないでくれるかしらとさっき――。まあ、いいわ』


「そう?いいの?」


『ええ、いいわ』


「分かった」


『ところで、私のこと好きなのかしら。好きではないけれど、なし崩し的に、と言うことではないわよね』


「……実を言うとさ、京都旅行あったでしょ」


『ええ、あったわね』


「あの辺りから、こう……暦をさりげなーく意識はしていた」


『あら、嬉しいことを言ってくれるじゃないの。全く気が付かなかったわ』


「そりゃ、気が付かない程、さりげなーくだったからね」


『あらそう』


「もしかしてなんだけど、僕が風呂に入っているときに暦が入って来たのって――」


『わざとよ。混浴だというからわざわざあの宿にしたのよ』


「え、でもあの京都旅行、宿は着いてから決めたんじゃ――」


『そんなわけないじゃない。事前に私が調査済みよ。混浴のお風呂がある宿と言う事でね』


「な――!」


『それと、宿泊人数が少なくて規模の小さい宿というのも決め手だったわ』


「……」


『あら、久寿米木くんが黙ってしまったわね』


「まさかそんな裏話があるなんて思ってもいなかったよ」


『もっとポジティブに考えて欲しいものね。あの頃から私は久寿米木くんのことがそんなことをしてしまう程好きだったということよ』


「……ありがとう……ございます」


『どういたしまして』


「そういえば」


『なにかしら』


「全く気にもしていなかったけれどさ、部室どうするの?燃えちゃったし」


『そこは気にしなくても問題ないわ』


「どういうことさ」


『実は私の遠い親戚にかなりのお金持ちの人がいるのよ。それでその人が道楽で都内に探偵事務所を開いて持っていてね。でもその親戚も、老衰で死んでしまったのよ』


「それってこの間、沖縄にいる遠い親戚の葬式に行ったら、日にち間違えて葬式終わっちゃっててそのまま旅行して帰って来たってやつ?」


『そうよ。それで、その人の探偵事務所、私が使ってもいいということになったのよ。正確にはその事務所のあるところなのだけれど』


「つまり、そのまま事務所として使ってもいいし、それ以外に使ってもかまわないということ?」


『ええ。それで私はそのまま探偵事務所として使おうと思っているのよ。大学のC棟の修繕が済むまでね』


「どうしてさ。正直儲かる気はしないけれど」


『利益は考えなくていいわ。小さいけれどその親戚の持ちビルだから。家賃もいらないし光熱費なんかはその親戚の遺産や家賃収入を使っていいということになっているから』


「どんだけ金持ちなんだよ……。でも、どうして探偵事務所を?」


『だって、面白そうじゃない』


「えー」


『もう決まったことよ。決定事項。意外と大学からも近いから、その辺りも気にしなくていいわ』


「でもさ、いろいろ役所に出す書類とか――」


『提出済みよ』


「やること早いね、相変わらず……」


『だから、明日はそこへ来てちょうだい。一応、荷物整理とかあるから』


「荷物って言っても、燃えちゃったじゃん……」


『買ったのよ。大学がお金を出してくれたのよ。今回被害にあったサークルや部活にね』


「へー随分と太っ腹で」


『と言うことだから。場所はあとでメールで連絡するわ」


「分かったよ」


 こうして、舞台は大学から探偵事務所へと変わる――。

どーも、よねたにです。


この話までがプロローグ的なものになります。


なので、展開が早いなーとか思うかと思いますがどうかご容赦を。


次からは舞台を探偵事務所へと移して始まります。


感想、評価等お待ちしております。


では、また。

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