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未来探偵クスメギ  作者: よねたに
監禁編
42/65

第42話 『ピンチをチャンスに』と言うけれどそれが出来たらピンチじゃないと僕は思う(part1)

 唐突ではあるが。

今、僕は、一体、どこにいるのだろうか。

 ところどころ、しっかりと文章を区切って、よく考えてみる。

そしてその結果。

ある一つの結論に至る。

 僕はどこかに監禁され、寝かせられている……ようだ。

 なぜならば。

手は冷たい手錠に繋がれ動かすたびにガチャガチャと音が響いて、手首に鈍い痛みが走る。

足はかなりきつく固定されているようで、動かすことも出来ない。

口は喋れないよう、猿ぐつわをかまされている。

そして頭にはなにかを取り付けられているようで、むずがゆい。

 辺りを確認しようにも、気がついたときから目隠しをされて確認出来ない。

 全く、爆笑の状況だぜ……なんて、海外ドラマの吹き替えのようなことを思って見ても、全く気が晴れないやばい状況。

 監禁以外考えられないだろう。

まあ、そう言うことをされるような心当たりもないわけではないし。

 ところで、少し肌寒いような気がする。

辺りが目隠しで、どうなっているのか分からないが、ひょっとしたら広い空間?と言う事しか分からない。

 と、小さい声だが話し声が聞こえる。

僕の頭の近く。

――いや、少し遠いか。

多分――男。

それも複数。


「――で――だから――」


「ああ――が――」


 言葉の端々しか分からず、一体何について話しているのか見当もつかない。

ただ、小さい声ながら思いのほか近くから声が聞こえる。

これから僕は何かをされるのかもしれないな。

まあ、抵抗しようにも、どうにも出来ない状況だが。

 ……それにしても背中が痛い。

ベッド――にしては下が固い。

布団でも無い。

台とでも言ったら良いのだろうか。

そんな感触だ。

ずっとこの体勢で寝返りも打てないので、背中が痛くて仕方がない。

すいませーん、背中が痛いんですが――と言おうと思っても、猿ぐつわのせいで喋ることも出来ない。

 一体どうしてこうなった。

5W1Hを交えて簡潔に教えて欲しい。

最後に僕が覚えている記憶は――。

 僕は、記憶の糸を手繰り寄せて思い出してみる。

確か2月の20日、時間は12:00くらいから、だったか……?



*****



「久寿米木くん」


 場所は事務所。

僕はソファーでテレビを見ていたところ、暦に声をかけられた。


「なにかな」


 僕はテレビから暦に視線を移すと、暦は自分のデスクでなにか作業をしていたようだが、その手を止めていた。


「チャンネルを変えてもらえないかしら」


「え……。ああ、いいよ」


 僕は時刻を確認する。

12:00。

 いつものあの番組を見たいと言う事らしい。

僕も特に今見ている番組に固執する理由もないので、チャンネルを変える。

番組は既に始まっていた。



*****



ミシマ(以下ミ)『こんにちは。司会のミシマです』


オオクラ(以下オ)『どうも、コメンテーターのオオクラです。……先ほど楽屋で昼食を取っている時に思ったんですが、ミシマさん、グルメですよね』


ミ『いえいえ、それ程でもないですよ』


オ『今の時代、もてる人っておいしいお店を知っていることだと、僕は思うんですよね』


ミ『格好いいですよね』


オ『お店だけではなくて、注文の仕方でも格好良さとかって出てきますよね』


ミ『分かります。――例えばオオクラさんは、どんなものを普段注文しますか?』


オ『どんなお店ですか?』


ミ『そうですね……。例えば居酒屋なんてどうですか?』


オ『居酒屋ですか……』


ミ『あ、じゃあ私が店員役をやりますから、なにか注文してみてください』


オ『分かりました。……なんか漫才みたいですね』


ミ『それは言わない約束ですよ』


――居酒屋――


ミ『いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?』


オ『えっと、そうですね……。まず、鶏の唐揚げ1つ」


ミ『鶏の唐揚げですか?』


オ『え、駄目ですか?』


ミ『え、良いですよ。鶏の唐揚げ。1つですか?』


オ『あ、はい。あとは……蛸の唐揚げ1つ』


ミ『蛸の……唐揚げですか?』


オ『駄目ですか?』


ミ『いえ、別に。蛸の唐揚げ1つ。後は?』


オ『あとは……ピザ1枚』


ミ『ピザですか?』


オ『駄目ですか?ピザ』


ミ『駄目じゃないですよ、ピザ。1枚ですね』


オ『他には……刺身盛り合わせ。とりあえず以上で』


ミ『刺身盛り合わせですね。では、少々お待ちください』


――終了――


ミ『食いしん坊ですか』


オ『え、駄目ですか?』


ミ『駄目じゃないですけど……。あと、オオクラさん、何回『え、駄目ですか?』って聞くんですか。ビビりすぎですよ』


オ『駄目ですか?』


ミ『駄目じゃないですけど……。それから、唐揚げ2種類にピザに刺身って……』


オ『じゃあ、ミシマさんはどんな注文をしますか?格好いい注文してみてくださいよ』


ミ『私ですか?私は――』


――再び居酒屋――


オ『いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?』


ミ『あ、裏メニューってありますか?』


――中断――


オ『いきなり裏メニューってなんですか!?』


ミ『え、駄目ですか?』


オ『ずるいですよ!今のはナシで!ちゃんとやってください!』


ミ『ちゃんとやってたんですけどね。……分かりました』


――再開――


オ『いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?』


ミ『じゃあ、刺身盛り合わせ1つ』


オ『あ、同じだ……。刺身盛り合わせ1つですね』


ミ『それから、子持ちシシャモ1つ』


オ『子持――シシャモ1つ』


ミ『あと、さつま揚げ』


オ『さつま揚げ!?……さつま揚げ1つですね』


ミ『んー……あと、焼きとり盛り合わせ』


オ『あ、普通だ……。焼きとり盛り合わせ1つ。後は?』


ミ『あとは……あ、この川海老の唐揚げ1つ』


オ『川海老!?……かしこまりました。以上でよろしいですか?』


ミ『はい』


――終了――


オ『なんですか、その注文の仕方!シシャモはまだ良いですよ、シシャモは。さつま揚げって!川海老って!どこの食通ですか!?』


ミ『え、普通だと思いますけど?』


オ『……このメニュー表がない状況で、そらでそんなメニューが出てくるなんて、どんな食生活を送っているんですかね』



*****



 珍しくオオクラさんがツッコミにまわっていた。

そんな感想を抱いていると、


「なるほどね」


 暦がいつの間にか僕の隣に来ていた。


「何が?」


 僕が聞く。


「テレビの事よ。確かに私から見ても、おいしいお店を知っていたり、メニューの注文の内容によっては、格好良く感じたりすると思ったのよ」


「ふーん。まあ、僕から見てもそうだけれどね」


 僕も、行きつけの店があったり、レストランに行って『ハンバーグ』よりは『まずはシーザーサラダ』とかの方が格好いいと思う。

まあ、格好いい人は何しても、何注文しても格好いいんだけれどね、結局。


「そう言えば、お昼、まだだったわね」


「そうだね」


「私、何か買ってくるけれど、何か食べたいものはあるかしら」


「どこに行くの?」


「下のパラダイスマートよ」


 さて。

すっかり忘れ去られた単語かと思うが、『パラダイスマート』とは、この探偵事務所が入っている3階建てビルの1階に位置するコンビニエンスストアの名前だ。

 最後に出てきたのは、夏休みだっただろうか……。


「それじゃあ、暦に――暦のセンスに任せるよ」


「何故言いなおしたのかしら。――まあ、いいわ。私に任せなさい」


「よろしく」


 僕は暦とそんな会話をして、暦が事務所の扉を出るのを確認して、そして――。



*****



 駄目だ。

これ以上思い出せない。

 この後一体何があったのだろうか。

僕は何をしたのだろうか。

 何があったのかは分からないが、とにかく今の状況に至る。


「――が――なの――」


「そう――でも――」


 未だに僕の頭付近で何か会話が続いている。

内容は全くもって分からないが。

 はあ……。

 僕はこの状況について考える。

一番マシな場合は、これが暦のドッキリだと言うオチ。

最悪の場合は、SH研究所の上層部の連中に捕まったと言うオチ。

 前者であることを祈るばかりだ――。



*****


 私、月村暦は状況を飲みこめずにいた。

私がパラダイスマートから戻ると、事務所内は荒らされていた。

ソファは倒れ、テレビには蜘蛛の巣状のヒビが入り、窓ガラスにも同様のヒビが入っている。

そしてなにより、久寿米木くんの姿が見えない。


「久寿米木くん、この状況を説明しなさい。ええ、決して怒らないから」


 私はいたずらをした小学生に言うように、部屋を見渡しながら呼びかける。

しかし返事がない。

ただの屍――すらいない状況。


「これは――少し大変なことになったかもしれないわね」


 私はそう呟いた。



*****



「さて、これくらいでいいかな」


 (プルルルルル……)


「お、電話だ」


 私は買い物かごを床に置いて電話に出る。

相手を見て私は少し嬉しくなった。


「はい、もしもし」


『雨倉さん、私よ』


「どうしたの、暦。電話なんて珍しい」


 電話は同じ大学の暦からだった。

多分これが初めての暦からの電話だ。

昔は暦と仲が悪かったが、今は和解して仲良くしている。

……仲良くしているはずだ。


『今すぐ事務所に来なさい』


「え?今すぐ?私買い物中で――」


『今すぐ来なさい。殺すわよ』


「わわわ分かった!すぐ行く!」


 私は電話を切ってすぐにかごを持ってレジへ向かった。

……仲良く出来ているのだろうか。



*****



「き、来たよ!」


 私が事務所を片づけていると、電話してから数分と言う早さで雨倉さんが来た。

さすがに殺害予告をしただけのことはあるわね。


「なかなかのタイムね。世界陸上にでも申し込みましょう」


 少し感心したわ。


「町内の運動会じゃないんだから、そんなんで出れるわけがないでしょうが!」


「冗談よ」


 私は心の中でほくそ笑む。

馬鹿な人間のこういう反応は相変わらず面白いわね。


「全く冗談に聞こえなかったんだけど……」


 雨倉さんが息を整えながら言った。

 私は雨倉さんが何か言っていたのを無視する。


「そんなことよりも、雨倉さん。重大事件よ」


「そんなこと……。重大事件って?」


「事務所に侵入者が入って久寿米木くんを連れ去って行ったわ」


「なにゅーー!!」


 なんてアホな反応なのかしら。

お似合いすぎて笑えないわ。

 私はそんな心の内を隠して雨倉さんと接する。


「まだ連れ去られたと決まった訳でもないのだけれど、状況から鑑みるに恐らくことだと思うわ」


「暦、落ち着き過ぎじゃない!?何でそんなに落ち着いていられるのよ!彼氏が連れ去られたのよ!?」


「最初は私も驚いたわよ。でも、驚いたからと言って何かが変わる訳でもないのよ。だったら冷静に考えていた方がずっと良いと思わない?」


 だからあなたのような馬鹿な子は嫌いなのよ。

まあ、口にしないでおいてあげるけれどね。


「……まあ、ね」


 雨倉さんは私のこの冷静さを冷たいと思ったのか、少し怪訝な表情をした。

まあ、私には関係ないわね。


「それで私なりに考えてみたのだけれど」


「何を?」


 なんて馬鹿な子なのかしら。

かわいそうになるわ。

そんな思考で一生生きていかないといけないのだから。

 この状況で考える事と言ったら久寿米木くんの事しかないでしょう。


「久寿米木くんが連れ去られたと仮定した場合、誰に連れ去られたのかと言うことよ」


「……誰?」


 そう言えば雨倉さんは知らなかったかしら。

まあ、いいわ。

本当にどうでも。

 私は話を続ける。 


「誰と言うか団体さんね。――SH研究所の人達かしら」


「SH研究所って?」


 さっきからこの人は面倒臭いわね。

表面上だけでも仲が良い振りをするのも、もうやめようかしら。

 私は本格的にそう思ったが口には出さなかった。


「詳しい説明は省くけれど、簡単に言うと久寿米木くんの能力について研究していたところね」


「なんで今?」


「そんなもの、知らないわよ」


 私は雨倉さんの言葉を切って捨てて焼却処理する。

馬鹿な発言を埋め立て処理したら地球に悪いものね。


「……でも、どうするの?これから」


 少しは自分で考えなさいよ。

私は表面上、雨倉さんを嫌っているのを隠して応える。

さっきから表情を作っているのがきつい。


「どうしましょうね」


 久寿米木くんが何処につれて行かれたかも分からない。

今、出来ることは何かしらね。

 しばらく無言で熟考した末、私は口を開く。


「とりあえず――長野に行きましょう」


「は?」


 雨倉さんは馬鹿な顔がよく似合うわ。

私は口に出さずにそう思った。

どーも、よねたにです。


お久しぶりです。


少し今までの文章を改稿していたので遅くなりました。


まあ、まだ気になる部分はあるのですが、とりあえず第1次大規模改稿みたいな感じです――でした。


さて。


感想や評価、お待ちしておりますので。


では、また。

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