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未来探偵クスメギ  作者: よねたに
探偵編
37/65

第37話 探偵で過去を視ることが出来るなんて反則的だと僕は思う(part7)

 1月7日。

怪盗グリードの予告当日となった。

 昨日はグリードとの電話の後寝てしまい、起きたら15:00になっていた。

ちょっとびっくりした。

 そのあと琴音に電話をして、怪盗グリードとの電話について話しておいた。

琴音もまさかそんな裏話があるなんて思ってもいなかったようでかなり驚いていた。

で、ついでに僕は謝罪させられた。

それで何故か琴音としずかのデートのセッティングをさせられることになった。

どうやらまだ諦めていなかったらしい。

 このことを旅行中のしずかに伝えたら、


『帰ったらぶっ殺す。そして切り刻む。そしてドラム缶に入れて生コンで固めて東京湾に沈める』


 と、妙に具体的に殺害方法を言われたので、僕は入れ替わりに旅行に行こうかと考えている。

そんな未来が来ないことを祈るばかりだ。

今から未来を視ておくべきだろうか……。

 さて。

現在の時刻は17:00。

昨日怪盗グリードが予告した時間の1時間前だ。

 僕と琴音は今、吉井邸の応接室にいる。

ほんのついさっきやってきたばかりだ。

それでいつもと同じ感じで座っている。


「紅茶をいれたのでどうぞ……」


 吉井さんが紅茶を僕達の前に出した。

紅茶は澄んだ濃い紅色をしていた。

ソーサーにはミルクまで付いている。

 この色でミルクを入れて飲むのが妥当な紅茶と言えば――


「アッサムですか?」


 僕は思いついた名前を言う。

それに吉井さんが表情を明るくして、


「本当によく解りましたね。まだ飲んでも香りをかいですらいないのに」


 どうやら当たったようだ。


「ただの勘ですよ。この色でミルクを入れて飲むのが妥当な紅茶がアッサムしか思いつかなかっただけです」


「本当に紅茶は好きじゃないんですか?」


「ええ。そこまでは」


 僕はそう言いながら紅茶に口をつける。

外で冷えたからだが芯から温まる心地よい感じがとても良い。

すごく和む。

このまま眠ってしまいたいと思うくらいだ。

……おっと。

失念していたが今は吉井さんが怪盗グリードに狙われている最中だった。

これからどうするのか色々と対策をしなければならない。

 そもそも、だ。

僕は――僕達は吉井さんに昨日の電話で知った怪盗グリードの事実を話してもいないし、吉井さんが起こした事故についても触れてもいない。

これをどうするか決めてからでなければ話が進まない。

 僕は少し考える。

それから琴音にも聞いてみる。

吉井さんに聞こえないようにひそひそと。


「琴音はどうしたらいいと思う?」


「何の話だい?」


 おっと先を急ぎすぎた。

説明しなければならない。


「吉井さんに昨日僕が貰った怪盗グリードの電話の内容を話すかどうかとか、事故のことを触れるかとか」


「うーん……言わない方がいいんじゃないかい?もしもここで言って、吉井さんが口封じのためにボク達に襲いかかってきたら色々と面倒だし、そう言ったことが無くても、今この良好な関係を崩すのは得策ではないと僕は思うけどね」


「……了解」


 言うのは後にしよう。

全てが終わったその後に――。

 僕はもう1度紅茶に口をつけて一息つけてから言う。


「今から怪盗グリードが来た際の対応について話し合おうと思うのですが」


「そ、そうですね……」


「今、この家の警備体制はどういった状態ですか?」


「全ての出入り口に防犯カメラはついています。それから玄関のカギは通常の鍵と指紋認証の鍵の両方が付いています」


「普段からそう言ったセキュリティなんですか?」


「い、いえ。去年の暮れからつけたものです……」


 事故があってから、という事なのだろうか。

色々と不安になって――?


「なるほど。それだけあればとりあえず大丈夫だと思います。入ってくる際に分かるでしょう」


 そう言って僕は琴音をみる。

琴音はうなずいた。

同意、という事だろう。

 と、ここで話が尽きてしまい部屋には沈黙が流れる。

ときどき紅茶をすする音がするくらいだ。

 どれくらい沈黙が続いたのか分からない。

吉井さんが口を開いた。


「ちょっと失礼しますね」


 そう言って応接室を出て行った。

僕としては好都合だ。

というのも、琴音と吉井さんに聞かれたいくない話をしたいと思っていたからだ。

 僕はすかさず琴音に言う。


「僕は未来を視た方がいいのかな」


 今の時間は17:20。

あと40分で予定時刻だ。

という事は、僕が4秒間能力を使えばどこから怪盗グリードがやってくるのか知ることが出来る。


「うーん……」


 琴音はすぐには返事をしなかった。

どうしてだろう、と考えはしたもののすぐに答えは出た。

恐らく琴音は気を使っているのかもしれない。

初めて会ったときに、この能力の代償を話したような気がする。

 代償――痛みと寿命だ。

痛みの方はまだしも、寿命が縮むと知っているため使えとは言えないのかもしれない。

 だから僕は言う。


「別にただ未来を視るだけならそれ程寿命も縮まないしさ。どうかな」


「……ちなみにどれくらいなものなんだろう」


「そうだね……。ただ視るだけだkら十数時間から数日で済むと思うよ」


「……久寿米木はそれを短いと思うかい?それとも長く感じるかい?」


「僕は人間死ぬ時は死ぬし、数日長く生きたところで僕にはすることもないから、特に何とも思わないけれどね」


「……いや、使わないで良いんじゃないかい」


「どうして?」


「今はそう思っていても、将来はどうなっているか分からないじゃないか。ひょっとしたら長年つき添った人がいるかもしれないし。何があるのか分からないから、未来は面白いんじゃないか」


 そうだ。

僕が安易に能力を使わないのは頭痛が嫌だからという理由だけじゃない。

予想外の出来事こそ未来を面白くするものだという考えと、例え1分1秒でも人の為に出来ることが山ほどあるという考えからだ。

 先が分かってしまえば面白くない。

それに未来を知ってから行動するというのは自分の行動に責任が持てないという事だ。

 寿命が縮んでしまえば、人の為に出来る時間も減る。

たった1人との偶然の出会いが人生を変えたという人だってたくさんいるのだ。

 僕はすっかりそのことを失念していた。


「……そうだね。正面から行ってみようか。――っと、それに怪盗グリード相手だと僕の能力もどの道使えないしね」


「そうなのかい?」


「ああ。前回、グリードと相対した時能力が使えなかったんだよ。多分未来に干渉出来る人間がその場に2人もいたのが原因かなとか思うんだけれど」


「ふーん。……え、じゃあどうするんだい?そうしたら怪盗グリードと素手での格闘になるってことかい?ボクには無理だよ?久寿米木は出来るのかい?」


「いや、出来ない」


 僕は即答した。


「なんでそんなにも余裕があるのか……なにか秘策でもあるのかい?」


「まあね。昨日の内に手は打っておいた」


「なら良いけどね」


「本当にどうなることやら」


「そうだね」


 僕達はそう言って紅茶をずるるとすすった。



*****



 しばらくすると吉井さんが応接室に戻ってきた。


「すみません、パソコンを持ってきたので、これで監視カメラを通して外の様子が見られますので」


「ありがとうございます。……へー、こんなことが出来るんですね」


 僕が現代科学に感心していると琴音が、


「吉井さん、久寿米木。もうすぐ時間だから気を引き締めよう」


 おっと、すこし浮かれていたようだ。

琴音に言われるなんて。


「そ、そうですね」


「ああ」


 僕は時計を確認する。

現在の時刻は17:57。

あと3分で予告された時刻になる。

さて。

一体どんなふうにやってくるのだろうか。

 そして3分という時間はあっという間で、すぐに時間はやってきた。


 (ボーン……ボーン……)


 応接室に掛けられている、僕達の事務所にある掛け時計とはクオリティが大分違うと思われる掛け時計が18:00を知らせてくれる。

と、


「え……?」


 吉井さんが画面上に何かを見つけたようだ。

僕と琴音も覗き込むように画面を見つめる。

そこには――


「お……?」


 と僕。


「へー」


 と琴音。

この反応の理由はと言えば、怪盗グリードは普通に門を通ってやってきたからだ。

堂々と歩いて――。


「歩いてきたね。琴音はどう思う?」


「いや、正直これは予想外だね。もっと颯爽と登場するかと思ったよ」


「僕もいきなり現れるとかそういう登場方法かと思っていた」


 こんな反応をしていた僕達。

その横では、


「な、なんでそんなに落ち着いていられるんですか!?は、早くどうにかしてくださいよ!」


 吉井さんがものすごいあわてようだった。

正直、僕――僕達は最初ほど吉井さんを全力で守ろう、という気はしていない。

というのも吉井さんが犯罪者であることを知ってしまったからだ。

それも子供を轢いてそのまま逃げたというひき逃げ犯。

 全力で守る気がしないのも当然だろう。

だから、


「は、はあ」


 と僕。


「あ、うん」


 と琴音。

こんな状態だ。

 まあ。

一応仕事だからやるけれどさ。

それに、やっぱり怪盗グリードも救いたい。

僕はそう思っているから。


「それにしても、まだ来ないな……」


 僕のそのつぶやきに琴音が言う。


「さっき言っていた秘策?誰か呼んだのかい?」


「ああ……」


 と、


 (……コンコン)


 微かに玄関のドアをたたく音がした。


「来ましたよ、怪盗グリード!どうするんですか!?」


「出ましょう」


 僕は即答した。


「え、出ちゃうんですか?」


「ここで逃げてもしょうがないでしょう」


 僕はそう言って吉井さんと琴音を置いて1人で広い洋風な玄関へと向かう。

やっぱり廊下や玄関は寒い。

僕はそんな事を思う余裕を見せながらドアを開ける。


「どうも、昨日振りですね。と言っても電話越しですが」


 僕の目の前で慇懃無礼にお辞儀をした、漆黒のスーツとハットに身を包んだ怪盗グリードがそこにはいた。

 

「こちらこそ。直接お会いするのは2度目ですが……お元気でしたか?」


「ええ。まあ、いろいろとありはしましたが……」


 そんな挨拶を怪盗グリードとしていると、後ろが突然騒がしくなった。

どたどたと誰かが走ってくる音がする。


「ちょ、ちょっと久寿米木さん!そんな挨拶してないで早く捕まえてくださいよ!」


「まあまあ、吉井さん。少しは落ち着いて」


 どたどたと走ってやってきたのは吉井さんだった。

その後ろをやれやれと言った雰囲気でのんきに歩いてきたのは琴音だ。

監視カメラか何かの映像で見られていたようだ。

お恥ずかしい。


「おっとこれはこれは吉井さんじゃありませんか」


 怪盗グリードが大げさな身振りで言った。

まるで舞台俳優のようだ。


「け、警察を呼ぶぞ!早く出ていけ!」


 吉井さんはそう言って叫ぶ。

はっきりいってしまうと迫力は一切ないが。

 隣では琴音が面倒くさそうに吉井さんをなだめている。


「そんな事をして困ることになるのはどっちなんでしょうね。吉井さん」


「うっ……」


「それに探偵さん方も。どうしてこのような人を守っているのか理解しかねます。昨日言いましたよね?吉井さんは殺人犯だと――」


「――!」


 吉井さんが撥ねるようにして僕を見る。


「ええ、知っていましたよ」


「そ、それでも私を守ってくれるなんて……」


 そう言って吉井さんは頬を赤らめる。

乙女かよ。


「あ、別にあなたの為じゃありませんから」


「……今流行りのツンデレですか?」


「違います」


 僕は即答した。

気持ち悪いな、吉井さん。

 僕の中に吉井さんに対する出あった当初のような好印象は跡形も残っていなかった。


「僕はただ仕事だから吉井さんの傍についているだけです。僕はグリードの為にやっているだけですから」


「私の為?……ああ、昨日の」


 グリードは昨日の電話の内容を思い出したようだ。

グリードの子供に業を負わせたくはない。

助けられるなら助けたい。

そしてそれが今できるのは僕達だけだ。


「琴音、吉井さんを中に。死なれると困る」


「分かったよ」


 そう言って吉井さんを連れて琴音は家の中へ入っていく。

吉井さんもあれだけ迫力なくどなり散らしていた割にはあっさりと中へ消えていく。

 こうして広い洋風の玄関には僕と怪盗グリードだけが残った。


「静かになりましたね」


 怪盗グリードが言った。

相変わらずハットで目元が隠れて口元しか見えないが、ほっとしたような表情をしているように感じる。


「そうですね」


 僕が落ち着いた感じで答えた。

しかし内心はかなり焦っている。

なぜなら――暦が来ないからだ。

 そう、昨日怪盗グリードのから電話をもらった後に連絡した先は暦だ。

彼女に敵と戦ってくれとお願いする彼氏の図と言うのは傍から見ると情けなくて涙が出てきそうだが仕方がないものは仕方がない。

恐らくグリードと対等にやりあえるのは身近の中では暦しかいないからだ。


「あくまで邪魔をする気ならば、少々強引な手を使ってでも通らせていただきますが?」


「出来れば穏便にお願いしますよ」


 怪盗グリードが歩いて僕に近づいてくる。

さて。

どうしたものだろうか――。

どーも、よねたにです。


ちょっと忙しい中で書き上げたので読みにくいとは思いますが、そこは想像力で補って読んでいただければ幸いです。


次回からはまた出来るだけ気をつけて書くつもりです。


さて……特に書くことはありませんね。


感想や評価、お待ちしております。


では、また。

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