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未来探偵クスメギ  作者: よねたに
京都旅行編
3/65

第03話 探偵は旅行先で事件に遭遇してしまうものと言っても過言ではないのだ(part3)

 8月5日。

京都旅行2日目。

朝。


「あー寝不足じゃーいぼけーぃ」


 僕の朝はこんな言葉から始まった。

 頭が回らない寝足りない瞼が重い!

今何時だよ……7時か。

これは起きないとまずいな。

確か朝食が7時からこの部屋に運ばれてきて、で――


「久寿米木くん、今起きたのかしら。随分とお寝坊さんね」


 と、僕の頭上でそんな声が聞こえた。

 見ると暦は僕の頭の上で腕を組みながらくつくつと笑っていた。

忌々しいな、このっ。


「あと3分待って。朝食はちょっと待ってもらってさ」


 あまりにも眠いので暦に反抗してみた。

僕はそう言って再び布団の中へ。


「……なるほど。わかったわ、久寿米木くん。私、その辺も理解しているつもりだから」


 布団の中にいる僕にそんな声が聞こえてきた。


「……なんのこと?」


 布団の中から暦に聞く。

布団最高。

そんな事を思いながら。

 暦が言う。


「3分もあれば朝勃ちも治まるわねってことよ」


 !!

僕は布団を跳ねのけて、大きくさわやかに伸びをしながら言う。


「うーん眠気が吹っ飛んだね、今の発言でさー!」


 嘘だ。

 気分最悪は最悪、眠気はまだ残っている。

朝から下ネタかよ……。

 僕のそんな心の内を知らずに暦は言う。


「あらそう。お役に立てて良かったわ。あ、別に今の「立てて」の部分に変な意味はないから安心して」


「僕はそんな所まで意識していなかったよ……」


 暦の下発言のお陰で目が覚めた僕は、とりあえず布団を部屋の隅へと片付ける。

そしてふと疑問を持った。


「そういえば暦さ」


「なにかしら」


 受付に電話して食事を持って来てもらうよう頼み終わった暦が振り向く。


「一体何泊するのかな」


 今までこの質問をしてこなかった僕も相当抜けてるとは思うが。


「2泊3日よ」


 普通だった……。

疑問が解消したところで僕は顔を洗いに洗面所へ行く。


 (きゅっきゅっ。じゃー。さばっ。ばしゃばしゃばしゃ。すぱすぱすぱすぱ。きゅっきゅっ。ごしごし)


と、


  (コンコン)


 どうやら食事が来たようだ。

対応早いな。

僕がそんな事を思っていると、扉を開けて暦が応対する。


「食事をお持ちしました」


 ちらっと入口を確認する。

中井さんだ!

どっちかはわからないけど。


「わかりました。では、中へ運んでください」


「かしこまりました」


 僕の横を中井さん(どっちかはわからない)が通る。

この匂いは……。


「理佳さん、おはようございます」


「おはようございます、久寿米木さん」


 (にこっ)


 かわいい……。

 理佳さんが作業をしながら聞いてくる。


「それにしても、よく分かりましたね。両親もたまに間違えるというのに」


「分かりますよ。人を――しかもこんなにもかわいらしい人を間違えて呼んでしまうのは失礼ですからね」


 僕はそう、頬笑みを浮かべながら言った。

本当は匂いで、だけれど。


「あ、ありがとうございます……」


 照れている理佳さんは暴力的なまでにかわいらしかった。

 

「あ、そういえば……」


 と、理佳さん。


「どうかしましたか?」


「いえ、その……」


 僕と話をしながらも手を休めることなく働く。

ちゃんとした人だなー。

僕と同じ大学生なのに。

 そんな理佳さんが意を決したような表情で聞いてきた。


「失礼を承知でお聞きしますが、昨日お会いした時も眼帯を付けていらっしゃいましたよね?ですから、その――」


 ああ、なるほど。

旅館に入った時は眼帯をつけていなくて、昨日の夜から眼帯をつけていて。

何かあったのか気になったのだろう。

 確かに、旅行中に突然眼帯が必要になる事態なんて想像がつきづらい。

 僕は能力について言えないため、なんとなくぼやかして言う。


「いえいえ、別に病気とかじゃないので大丈夫ですよ。ただのアイマスクの代わりみたいなものですので」


 そういうと、理佳さんは安心したように、


「あ、そうなんですか?よかった……!昨日玲ちゃ――姉が久寿米木さんの眼帯を妙に気にしていたので私も気になってしまって……」


 玲さんが僕の事を気にしていた?

良い事を聞いた。

朝から良い気分だ。

 下ネタなんか聞かされるよりずっと。


「まあ、そうですよね。旅行する人で眼帯を付けている人なんてそうそういませんよね」


「いえ、大事じゃなくて良かったです」


 理佳さんは心底ほっとしたような表情で僕に言った。

そんなこんなで食事が運び終わり……。


「では、失礼します」


 理佳さんは行ってしまった。

この部屋から笑顔が消えたのも同義である。


「久寿米木くん」


 僕の背中に声が掛けられた。

 おっと、すっかり存在感を失っていたがもう1人いたんだよね、この部屋。

振り返ると奴がいた。

目の前に。


「さて、食事も来たし、食べよ――」


「久寿米木くん」


 僕が席に着こうとしたら、暦に、『がしっ』と肩を掴まれた。

なんだ、これ。

ものすごい握力だ。

 まるで、アントニオ猪木に闘魂注入される直前に動かないよう掴まれているのかと錯覚する。


「……はい」


 昨日もこんな展開あったような気がするのは気のせいではない気がしないでもない。


「随分とこの旅館の仲居さんと仲が良くなったのね。全然気が付かなかったわ」


 暦は僕の肩を掴んだまま言った。

眉間にしわを寄せ、不愉快だわと言わんばかりの表情だ。

それを見た僕は、


「……立ち話もなんですからとりあえず座りませんか?」


「そうね。私もじっくりと聞きたいものね」


 ぬかった……。

墓穴を掘ったか。

というわけで、とりあえず席に着く。

構図は僕、テーブルの上には朝食、その正面に暦がいる。


「……」


「……」


 あー……沈黙と視線が痛い。

よっぽど自分の存在がないものとして扱われたのが腹立たしいようだ。

 その沈黙を暦が破る。


「さて、仕切り直しましょうか久寿米木くん。随分とこの旅館の仲居さんと仲が良くなったのね。知らなかったわ」


「い、いや、そんなことは別にないと思うけれどね。昨日の夜、僕が飲み物を買いに行った時に少し話をしただけだよ」


 僕は事実をそのまま言った。


「その話のお陰で私に飲み物を献上するまで時間がかかったのかしら」


「……まあ、そうだね」


 献上て。

そんな仰々しく言わなくても……。

まるで僕が暦の従者のようじゃないか。


「なるほどね。昨日――今日の説教は私がずっと喋りっぱなしだったからそのあたりの理由を聞きそびれてしまったわね」


「…………」


 そのまま聞かないでいてくれればありがたかった。

僕は無言で答えた。


「少し話が逸れたわね。それで、久寿米木くん。どんなお話をしたのかしら」


 暦が睨んだ蛇が逆に硬直するような視線で僕を撃つ。

暦の視線のポテンシャルが凄すぎる。

 僕はそんな状況下でも頑張って答える。

……本当に頑張って。


「いいいいいいいいいや、特には。普段何しているのかとかどんな性格なのかとか。それくらいだよ」


 自分でも声が震えているのが分かった。


「それだけ?」


 なおも暦は執拗に聞いてくる。


「う、う、うん。まあ……だいたいは」


「そう。……じゃあいいわ」


 そう言って暦は視線を通常モードに戻す。


「え、いいの?」


 視線の質が戻ったところで僕の硬直も解け、バカみたいな声で聞き返した。


「ええ。これからは私の事も頭の片隅程度には置いておいてもらえるとうれしいわね」


 暦はそう言った。

僕は、


「……まあ、じゃあ一応けじめとして謝っておくよ。存在をないものとして扱ってしまい申し訳ありませんでした」


「すこしカチンとくる言い方だけれどまあいいわ。ご飯が冷めてしまうわ。頂きましょう」


「そうだね」


 そして食事はつつがなく終了。

食べ終わった食器類を廊下に出して、外出の準備を始める。

 暦の立てた計画だと、30分ほどしたらもう外にでなければならないらしい。

 と、その前に。

いつまでも眼帯をしている訳にはいかない。

コンタクトを付けなければ。

 僕はテーブルの上にコンタクトのケースを出して、眼帯を外す。


「ふう」


 1日の中で最も嫌な時間がやってくる。

コンタクトを付ける際、必ずどうしても裸眼の状態で眼を開けなければならない。

僕の右眼の未来を見る能力は、自分の意志ではどうにもならず、右眼を開けると無条件で発動してしまう。

そして、未来を見るという情報量の多さから脳に負担がかかり激しい頭痛に襲われる。

 ふと、周りが静かになったと思い視線を上げる。

外出の準備をしていたはずの暦がテーブルの向かいに座ってお茶を飲みながらこっちを見ていた。

どうやら準備は済んだらしい。

当然か。

いつから起きていたかは分からないけれど、僕より早く起きて、着がえとか大体終わっていたしね。


「どうぞ、続けて」


 両手の平を上に向けてどうぞのポーズをする暦。

 なんかやり難いな……。

まあ、仕方がない。

僕はコンタクトをはずす。


「っつ――!!」


 その瞬間、これからこの部屋で起こる未来の映像が脳へ流れ込む。

そして激しい頭痛が襲う。

 それに耐えながら、コンタクトレンズを入れる。

眼を開いてから入れるまで、その間約5秒。

と、


「(!!……これは――)」


 僕は心の中で呟く。

しかしその驚きが表情にも出ていたようで、暦が、


「どうかしたのかしら、久寿米木くん」


 と言った。

 僕はある未来を視た。

この場所で起こること。

それは――


「……っ。痛いね……やっぱり。毎日の事で5秒程度なら気絶しない程度には慣れたけれどね」


 10秒を超えるとその頭痛がひどくなって、さらには倦怠感も出てくるけれど、5秒とか数秒なら激しい頭痛だけで済む。


「そんなことより、なにか見えたのかしら、久寿米木くん」


 そんなことって……。

酷いな。

もう少し心配してくれてもいいのに……。

まあ、いいや。

今はそれよりも――。

 僕は暦に言う。


「40分後に、タイガーマスクがこの部屋にやってくる」


「は?」


 暦もこんな風に驚くんだ……。

僕はその事実に驚いた。


「ちょっと言い方が悪かったかもしれないね。正確にはタイガーマスクのマスクをかぶった奴がこの部屋に侵入して、いろいろと漁るんだよ」


 僕は出来るだけ正確にこれから40分後に起こる出来事を伝えた。


「タイガーマスクって、作品中の孤児院「ちびっこハウス」の主人公伊達直人が動物園の虎の檻の前でケンカをしたのをきっかけに、悪役レスラー養成機関である「虎の穴」にスカウトされ、その養成機関「 虎の穴」での殺人トレーニングをこなす日々の中で、伊達直人は「自分と似た生い立ちを持つ孤児達に、同じような苦しみを味わわせたくない」という想いを次第に抱くようになり、虎の穴を卒業後、「タイガーマスク」としてプロレスデビューをして、収入の一部を孤児院へ寄付するようになり、最初の内は「虎の穴」へファイトマネーを支払った、自分の手取りの範囲内での援助を考えていたが、自分の出身施設である孤児院「ちびっこハウス」の金銭的現状を知り、虎の穴へ支払っていたファイトマネーの半額分まで寄付せざるを得なくなり、そのことに腹を立てた「虎の穴」が育て上げたにも拘らずファイトマネーを支払わないタイガーを裏切り者とみなし、タイガーを倒すための刺客を次々と送り、伊達直人はタイガーマスクとして、孤児院の為に戦うという漫画作品の主人公で、現実世界では、アニメ作品「タイガーマスク2世」のタイアップとして誕生したプロレスラーの、あのタイガーマスクの事であっているのかしら?」


「僕は、『どうしてタイガーマスクについてそんなに知っているのかしら?』と聞きたい気分だけれど、まあ、そのタイガーマスクであっていると思うよ」


 長っ!

本当になんでタイガーマスクについてそんなに詳しいんだよ。


「知りたい?仕方がないわね。教えてあげる。私には実は兄がいてね。その兄が漫画やアニメに詳しいのよ。あまりおおっぴらには言いたくないのだけれど」


 暦は肩をすくめてそう言った。

 あーなるほど。

というか兄妹いたんだね。

初めて知ったよ。

小学校時代も知らなかった。

 地獄絵図的な旅行になるかと思っていたけれど、意外とお互いを知れたりして、良い旅行になるかもしれない。

なんとなく、そう思う。


「それにしても」


 暦が言う。


「どういうことなのかしらね。私達の部屋にタイガーマスク(仮)がコソ泥の真似ごとをしに来るなんて」


 確かにそうだ。

暦はともかく、僕は礼儀正しく毎日を生活していて誰かに恨みを買われる覚えもない。

そもそも、京都に今まで来たことだってない。

暦はあるらしいけれど。


「暦、何かした?誰かに恨みを買うようなこと」


 僕は言った。

 僕にはそれしか考えられないね。


「まさか。私を誰だと思っているのよ」


 月村暦だよ。

口が無駄に頭がよくて物知りで、その知識で人をねじ伏せることに長けた口の悪い奴だよ。

 でも、「私を誰だと思っているのよ」と言われれば、まあそうだよな。

口が悪くて悪態をつくのは親しい人にだけだよね、多分。

この旅館でも女将さんのあの老婆にも敬語を使えていたし。

そう考えると、見知らぬ人から恨みを買うようなことはないか。

じゃあ一体――。


「久寿米くん」


 暦が少し自信なさ気に言った。


「なにかな」


「ひょっとしてという、可能性の問題なのだけれど――」


 そう前置きをして暦は言う。


「久寿米木くんの能力がらみ、と言うことは考えられないのかしら」


「…………」


 僕は沈黙で返し、考える。

 なるほど。

考えられない事でもないか。

確かに、僕の能力はどんなことにでも利用しようと思えば利用できる。

それが例え、人助けだろうと金儲けだろうと犯罪だろうと。

 僕は口を開く。


「つまり暦は、どこかの誰かが僕の能力の事を知り、利用しようと考えている、と?」


「簡単に言うとそうね」


「うーん……」


 僕の能力が覚醒してから今までこういった事はなかった。

だから今回、これから起きる事がどういう意図を持ったものなのか判断できないな。

ただの旅行者を狙ったコソ泥なのか。

それとも、暦の言う通り僕の能力を狙っているのか。

あるいは、それ以外の目的があるのか。


「久寿米木くん。本来ならば私達はこれから起きる事を知らないのだけれど、あなたの能力で知ってしまったわけね。と、ここで2つの選択肢が出来るわ。①このまま外出して観光、そして帰って来てから警察に通報して普通の被害者として被害届を出す。②出かけたと見せかけて、タイガーマスク(仮)を待ち伏せし、私達で犯人の目的を暴くなり捕まえるなりする。さて、どうしたらいいのかしらね」


 警察に任せるとすると、もしタイガーマスク(仮)が暦の読み通り僕を狙ってきたとすると色々と厄介だ。

しかし、普通のコソ泥という可能性も捨てきれない。

どうする――。

 熟考の末、僕は言う。


「とりあえず……念には念をと言う事で、ね。それでどうかな?」


「分かったわ」


 そういう訳で、僕達はタイガーマスク(仮)を待ち伏せることにした。



*****



 話し合いから35分後。

僕達は1回旅館をでて観光に出かけた風に装って、非常口を使って部屋に戻り、奥の8畳間の押し入れの中に2人で隠れている。

そして、襖に小さな穴を開けて、そこから部屋の様子を見ていた。

 あとで穴をふさがないと。


「そろそろね」


 暦が言う。


「ん……」


 僕が無言に近い返事をする。

と、


 (ザリッ)


 ドアに鍵が差しこまれる音がした。


「来たわね。信じていなかった訳ではないのだけれど、久寿米木くん、本当に未来が視られるのね」


「頭が痛くなるけどね」


「ところで久寿米木くん。『頭痛が痛い』って言っちゃう人って馬鹿よね」


「今その話をするタイミングか?」


 こんなときでも暦は余裕があるな。

呆れつつ僕は感心した。


 (ガチャ)


 とうとう、中に入って来たようだ。

この旅館では、外出している間に部屋の整理をしてくれたり、ということはない。

そして、暦も隣にいる。

不法侵入者であることに間違いはない。


「久寿米木くん。随分おもしろい状況になっているわね」


 暦は押し入れの薄暗い中でもわかるようないやらしい笑みを口元に浮かべていた。


「否定はしないよ」


 暦の言う『おもしろい』と僕が思う『おもしろい』では意味が違うとは思うが。

僕の意味は『ドラマ的展開』と言う意味での『おもしろい』。

暦が言うのは『不謹慎な意味』での『おもしろい』だろう。

 と、タイガーマスク(仮)がとうとう部屋の中に入って来た。

想像していたよりも恐怖心はない。

なぜなら――


「和室にタイガーマスクのマスクを被った人がいるというのは滑稽ね」


 と、暦が言うとおりだ。

違和感ありまくりだった。

ちなみに、タイガーマスク(仮)とか言っているが、服装は普通の男物の服で、ジーパンに長袖Tシャツだ。

 そんなことを小声で話していると、タイガーマスク(仮)に動きがあった。

……(仮)面倒臭いね。


「久寿米木くんの荷物を漁っているわね。……いえ、漁っているのではない様ね。なにか……付けているわね」

 

 暦が言うとおり、タイガーマスク(仮)は何か作業をしているように見えた。

 タイガーマスク(仮)が手に持っているのは何だろうか……。

よくわからないけど、とにかく手に収まるサイズのものだ。

それを僕のバックに取り付けている。


「そろそろ行きましょうか。私が注意を逸らしておくからその間にあなたが入口の方へ行って鍵をかけてきて。もし逃げられることになっても多少の時間稼ぎにはなるはずよ」


 と、暦が動き出した。


「わかったよ。気を付けてね、相手が何者か分からないから」


「それはお互いさまよ。久寿米木くんも気を付けて。相手はなんと言っても……タイガーマスクなのだから」


 そういって暦は笑った。

こういう、かわいい笑い方も出来るのか。

また1つ、暦を知った僕だった。


「では、1、2、3で私が襖を開けるから、久寿米木くんは一気に行って。すぐ後に私も出て、なんとかするから」


 そう言って襖に手をかける暦。

僕はふと思った疑問を口にする。


「策はあるの?」


 策もなしに突っ込むのでは、ただのバカだ。

暦は言う。


「ええ、もちろん。じゃあ、いくわよ。……1……2……3!」


 ガラッという音と共に僕は一気に駆け出す。

タイガーマスク(仮)は一瞬でこちらに視線を向けて来る。

しかし突然の事に反応は出来ていない。

そのすきに、僕はタイガーマスク(仮)の横を通り出入口へ。

数秒で辿りつき、すぐに鍵をかけた。

 暦は?

僕はすぐに振り向いて状況を確認する。

暦は――。


「エルボーバット!(←暦)」

 

 肘を曲げて、前へ高速で付きだす。

タイガーマスク(仮)は一瞬でギリギリ躱せる位置まで後ろへ下がって躱す。

そして、今度はタイガーマスクが――


「ローリングソバット!(←タイガーマスク)」


 横回転しながらジャンプし、高く上がった右足の裏で、顔を蹴りつけようとする。

暦はそれを上体を逸らすことで避ける。


「なっ――どうなっているんだ、これ……」


 暦はタイガーマスク(仮)と闘っていた。 

ここは後楽園ホールか、と僕は心の中でツッコんだ。


どーも、よねたにです。


第3話です。


結構無茶な展開かな?と自分でも思いますが、読んでくれたら幸いです。


次回の話は少し先になります、と先に言っておきます。


それでも1週間のうちに書けたらなとは思っていますが。


では、また。

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