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未来探偵クスメギ  作者: よねたに
嘘から始まる夢物語編
25/65

第25話 とっさの嘘は身を滅ぼすと言っても過言ではないのだ(part1)

 11月4日。

時刻は16:00。

 大学からの帰り道で日が傾き、道路が赤く染まった住宅街を歩いている。

詩的表現……?

と、僕が自己陶酔していると、


「ん?」


 僕は100m程先の往来に、見慣れた人物を見つける。

――しずかだった。


「おー……」


 僕は声をかけようと思ったが、途中でやめる。


「だーかーらー!そういうのに私は興味ないんだって!」


「いやいや、ハマるから!ね!?」


 しずかは住宅街の道のど真ん中で、僕が見たことのない女の子――恐らく同世代――と言い争っていた。

僕は辺りを見渡し、とっさに電柱の陰に隠れる。

別にやましいことはないけれど、なんとなく。

あくまで、なんとなく。

 ちなみに先の声はしずかのもので、後者は見知らぬ女の子――いや、女の子って歳でもないか……?

 まあ、その『女の子』の容姿はキレイ系よりは可愛い系で、しずかよりも一回り小さいように見える。

……うん、まあ、かわいらしい感じの女の子だ。

そんな事を思いつつも、僕は話に耳を傾ける。


「だってそれ、犯罪じゃない?」


 相手を非難するような表情でたしなめるしずか。

……しずかが人に言えた義理ではないだろうが。

改造エアガンとか持っているし。

まあ、言わないけれど。


「これは犯罪じゃない!だから心配いらないから!マジでヤバいから!ね!?」


 しずかの手を握り、ぐっと身を乗り出してしずかにせまる女の子。

 ……ひょっとしてこれは、かなりマズイ現場なのだろうか。

所謂『危ないクスリ』をしずかに押し売ろうとしている……とか?

……止めに入ったほうが良いのだろうか。

…………。

……うん、止めに入ろう。

あんなのでも僕の友達だ。

見捨てるのは忍びない……よね?

 そう思い僕は電柱の陰から意を決して出て行く。

と、同時に相手の女の子が咆哮するように叫んだ。


「本当に女の子同士の恋愛は良いから!私と付き合って!」


 ……わーお。

別の意味でやべえよ。

 女の子の言葉は、僕の足を地に固定するには十分な威力を兼ね備えていた。

――っていうかそんなことで揉めていたのか。


「レズは嫌!」


「『レズ』なんて下品な言い方をしないで!『百合』と言って!」


「変わんないわよ、そんなの!」


 同感だ。


「男なんて下劣な生き物じゃない!何が良いのよ!」


 そんなことは――無いと思いたい。

男として。

……でも、やっぱり、そういう系の『事件』を起こすのは決まって男だからな。

なかなか強く出られない。


「と、とにかく!私はノーマルだから!男の人が好きだし、その……つ、付き合っている人もいるから!」


 しずかが『ぎゅ』っと握られていた手を振りほどいて、絶叫する。

――と、僕と目が合った。


「…………」


「…………」


 数秒の間。

しずかの視線に気がついた女の子も僕に視線を移す。

 そして、しずかは宣言した。

僕を指さして――


「わ、私はあの人と付き合っているから!」


 えー!

それ『えー!』だよ!

 途端、女の子の顔が、醜く、この世のものと思えない形相に変貌する。


「……来い」


「……はい」


 逆らえるわけがなかった。

僕はしずかと女の子の傍へと移動する。

そしてしずかと並ぶように立つ。

 すると、女の子は僕の顔をまじまじと観察し始める。

……なんだろう。

もの凄く恥ずかしい。

 しかし女の子はじっと見つめる。

数秒後――


「こんなレイプ願望がありそうな男の何処が良いのよ」


「いきなり失礼か!」


 苦渋に満ちた表情でとんでもないことをいきなり言われた僕だった。

ないからね!?

レイプ願望なんてないからね!?

まあ、ミルクレープは好きだけれど。

ミルク――レイプ。

なんちゃって。


「雨倉さん、こんな人と付き合ってるの?」


 僕を指さし言う女の子。

 こんな人とは失礼な。


「う、うん」


 うん、付き合ってないよね。


「ちょっと失礼――」


僕はしずかの腕を引っ張り女の子から離れた場所に移動する。

そして女の子を背にし、女の子に聞こえないよう小声で会話する。


「ねえ、しずか」


「な、なに?」


「なんで嘘つくねん」


「だ、だってー……そうでもしないと、山田さんがしつこくて……」


 あの女の子は山田さんと言うのか。

覚えて――おかなくていいだろうな。

 しずかが言うには、山田さんとは今日大学のキャンパス内で会ったばかりだそうだ。

で、会った瞬間に猛アプローチを受けたらしい。

なんでも『星によって導かれた運命の相手』だとか。

 どこの変態占い師の言葉だよ。

僕は口からそう出かかった言葉を寸でのところで飲み込んだ。

そしてまあ、ズルズルとここまで来た、と。


「まあ、理由は分かった」


「それじゃ――」


「でも理屈は分からない!」


 僕がそう言うとしずかは酷く狼狽する。


「え、ちょ!助けてよ!」


 だから僕は――


「理屈は分からない。だから――今日だけだよ?」


 嘆息しながら僕は言った。

我ながらなんて甘いのだろうか。

 するとしずかがそんな僕の好意に対して、


「あざといわー。何そのツンデレ」


 白い目を向けた。

手のひらを返す様に一瞬で恩をあだで返してきた。

こいつ、どうしてくれようか。

暦に行って粛清……?

っていうか『ツンデレ』とか言われるともの凄く恥ずかしい!


「う、うるさいうるさいうるさい!やめるぞ!?助けないぞ!?」


「あわわわっ!ごめんなさい!」


「――全く、もう。面倒をかけてくれるな……」


「すみません……」


 しずかはうなだれる。

ちょっと言いすぎたか?

 僕は『じゃあ山田さんのとこに戻ろう』と言いかけてやめる。

1つ釘をさしておかなければいけないことを思い出したからだ。


「それと――」


 僕は小声になって言う。


「これは暦には内緒の方向で」


 僕は深刻な口調で言った。


「わ、わかった」


 僕はしずかが約束してくれたことを復唱する。

……よし。

これは浮気じゃあ断じてない!

これは浮気じゃあ断じてない!

大事な事だから2回言った。

 僕達はにこやかに山田さんの元へ戻る。

多分、傍から見たら物凄く胡散臭いだろうね。


「話は終わった?」


 ぶっきらぼうに僕に言う山田さん。

本当に百合趣味なんだな……。

男を見る目と女を見る目の温かさが全く違う。

例えるならば男を見る目は北極南極で女を見る目は赤道直下。

温度差が激しく違う。

 僕はそんな事に辟易しながらも、とりあえず自己紹介から入って見る。

もうこれ以上高感度が下がることもないだろうし、何でもいいんだけれど。


「自己紹介が遅れたね。僕は政明大学1年の久寿米木春希。よろしく」


 僕はなるべくさわやかに自己紹介をする。

頬笑みも忘れずに。

スマイルは0円だから。

 そんな僕の態度をどう思ったのか、思いのほか簡単に山田さんも自己紹介をする。


「……政明大1年、山田」


 ただ、感じは悪いけれど。

それにしても、やっぱり同じ大学で同じ学年だったか。

 と、自己紹介も早々に山田さんはしずかに詰め寄る。


「雨倉さん、本当にこの人と付き合っているの?さっき私には偶然知り合いにあったからその場の勢いで彼氏だって言ったように見えたんだけど」


「そ、そうかな?気のせいじゃない?英語で言うとウッドスピリット」


 しずか、嘘つくの下手すぎないかい?

シナリオもののアダルトビデオの女優の方がまだ演技力あるよ――っていうツッコミを入れる僕って……。

 ま、まあ、山田さんの想像もあながち間違ったものではないんだけれどね。


「ふーん……」


 山田さんはそんな僕達をまるで骨董品の真偽を確かめる鑑定士のような目で見る。

うーん、やっぱり無理があったか?

 そんなことを僕が思っていると、山田さんが言う。


「まあ、いいや。とりあえずは信じてあげる」


 あれ、意外とあっさり?

と僕は感じたものの、山田さんがそう易々としずかを諦めるはずもなく。

 山田さんは言葉を続ける。


「ただ、今度あなた達のデートを見せて頂戴」


「え?」


「は?」


 僕としずかはアホの子みたいな声を上げてしまった。

そんなことお構いなしに山田さんはさらに話を続ける。


「私はね、変態とか百合趣味とか何と言われようとも女の子が好きなの。大好きなの。そして、雨倉さん、あなたは私のタイプそのものなの!だから、『彼氏がいるから付き合えません』『はい、そうですか』って簡単には諦められない!だからこれが私の中の妥協。ギリギリのね。もし、そのデートで私が諦める程のラブラブっぷりなら、私は諦める。でも、もしもただの友達みたいなデートだったら――私は雨倉さんが首を縦に振るまで諦めないから!」


 とんだけ舌に脂がのっているんだよ。

ペラペラペラペラ喋るなー。

……百合趣味について。

 でも、自分の好きなことに関しては誰にも譲ろうとしないその姿勢……嫌いじゃないよ?

 そして最後に山田さんは、


「6日の10時に駅前集合で!反論は認めません!じゃあ――!」


 そう言って僕達の前から走り去って行った。


「……もてるね、しずか」


 よかったじゃん、と僕は言った。


「撃つよ?」


「……ごめん」


 こんなときでもガスガンを持っていたしずかだった。


「とりあえず――」


 しずかは僕に言う。


「デートの計画でも立てる?」


「……そだね」


 僕達は僕の家に向かった。

暦のいるであろう探偵事務所は、今行くと地獄へと変化するから――。



*****



 時刻は17:00。

場所は僕の家のリビング。


「はい、お茶」


「ありがとー」


 僕は座っているしずかにお茶を差し出す。

そして、僕も席に着く。


「さーて、どんなデートにしよっか!?」


しずかは僕の正面にいる。

そして、しずかは身を乗り出しながら僕に聞いてくる。


「……なんか楽しそうだな」


「えっ!?そ、そう?」


「かなり」


「ま、まあ、いいじゃん!」


 ……そりゃ、楽しい方が良いか。

僕は少し考えてそう結論付けた。

 しずかは、『どうせするなら楽しいデートの方が良い』と考えている、と。


「そうだなー……。まず、絶対条件として山田さんに恋人らしく見せるデートってことだ」


「恋人らしく……」


 そう言ってしずかはそっとお茶を口に含む。

その顔はほんのりと上気しているような……赤みを帯びている。


「ん?しずか、顔赤くない?照れてんの?」


 (ブフッ!)


「て、照れてないわ!」


「……先に謝罪を下さい」


 いきなりしずかが飲みかけていたお茶を噴き出して正面にいた僕にぶっかけた。


「きゃー!ごめんごめん!」


「全く……」


 僕はそう言いながらティッシュを数枚とって顔を拭く。


「ふう。ところで――」


 僕は話題を変える。


「しずかは彼氏とかいた時、どんなデートした?」


 僕は以前の事とかを参考にして、デートのプランを作って行こうと考えた。

それでしずかに以前のことを聞く。

すると、急にしずかはにやにやといやらしい笑みを浮かべて、


「えぇー?久寿米木くん、気になっちゃう感じですかぁー?」


「うざっ!」


「ひどっ!」


 打てば響くタイミングで返しあった。

 そんなこんなで数時間後、ようやくデートの計画が完成した。

デートの本番は明後日。

果たして山田さんを騙しきることが出来るのだろうか……?

どーも、よねたにです。


パソコンの調子が悪くて投稿が出来ませんでした。


明日買い変えます……。


さて、この話も短編?です。


短い話です。


読んでいただければ幸いです。


感想や評価、お待ちしております。


では、また。

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