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未来探偵クスメギ  作者: よねたに
怪盗編
17/65

第17話 探偵と怪盗はセットだと言っても過言ではないのだ(part2)

 僕は今、車に乗っている。

ロールスロイスだ。

ロールスロイスと言えばこんな都市伝説がある。

 ある男が砂漠をロールスロイス車で走っていた。

すると車が故障してしまった。

仕方がないので男はサービスセンターに電話して、車が故障した旨を伝えた。

伝えると、なぜか現在地について聞かれたので男は戸惑いながら答えた。

しばらくすると、ロールスロイスの新車が飛行機で運ばれてきた。

男は困惑した。

そして故障した方の車を飛行機に乗せて、去って行った。

男はなにがなんだか分からなかったがとりあえず、目的地へと向かった。

 それから1カ月が経った。

普通ならば新車の代金やあるいは故障車の修理代金を払うよう請求が来るはず。

にも拘らず、あれから一切連絡が来ない。

思いきって男は再び電話をした。

そして言う。

砂漠で故障した自分の車についてはどうなったか、と。

すると、ロールスロイスのサービスセンターの人はこう言った。

ロールスロイスは故障しません、と。

 そんなカッコいい都市伝説のあるロールスロイス社のリムジンに僕は乗っている。

ちなみに運転手はスキンヘッドでごつい人です。

何故そんな人がいるかって?

 これからヤクザの家に行くからだよ!


「顔色が悪いようですけど大丈夫ですか、久寿米木さん?」


 毒島さんが僕に聞いてくる。

やさしいなー。

暦はこんなに気を使ってくれたことがないのに。


「大丈夫ですよ。気にしないでください」


 僕は柔らかく微笑む。

と、


「っ――!そ、そうですか……」


 慌てて視線を逸らす毒島――いやもう、かおりさんと言おう。


「そういえば、普段は何をされているんですか?」


「私は大学院へ通っています。けど、家が家なだけになかなか友達が出来なくて……」


 確かに。

『毒島』と言えば、僕みたいな一般人でも聞いたことがあるようなヤクザだ。

怖がられて近寄らなくても仕方がないだろう。

 よし。

ここは――


「僕でよければ、アドレスとか交換してくれませんか?」


「え、いいんですか!?」


「ええ」


「では、お願いします!」


 僕とかおりさんは番号とアドレスを交換する。


「あのー……」


「はい?」


 アドレスを登録し終わったところで、かおりさんが言う。


「この件が終わった後も連絡とかしてもいいですか?」


 上目づかいで聞いてきた。

くらっと来るね。


「もちろん」


 僕はそう言って笑いかける。


「あ、ありがとうございます!」


「いえいえ。――それより、予告状について聞いてもいいですか?」


「あ、そうですよね。はい、なんでも聞いて下さい」


「怪盗グリードはいつ来るんですか?」


「明後日です。明後日の24:00に……」


「なるほど。後でその予告状を見せてもらうことは出来ますか?」


「あ、はい。今は家にあるので。いっその事探偵さんにお預かりしてもらえるとうれしいです」


「分かりました」


 そんなことを話していたら、毒島家に到着した。

リムジンを降りると目の前には、いかにもな日本家屋。

かなり大きい。


「うわー……」


 僕が呆気にとられていると、後ろ――僕の背中に硬い物が押し付けられる。

いやらしい意味じゃないよ?

そんなものが押し付けられたら、鳥肌立つくらい嫌だから。


「お嬢に手を出したら――」


 僕の後ろには運転手をしてくれたスキンヘッドのごついおじさん。

その人が硬い何かを押し付けて来る。

 あー、いやらしい意味の方がまだましだよ……。


「出しません出しません!」


 僕は即座に否定する。

ついでに手を上げてホールドアップの状態で。


「フン」


 背中から硬い物の感触が消える。

 後ろに立っていた男はリムジンに乗り込み、車を移動させて去って行った。


「はあ……って――っ!」


 今度は首筋に冷たくて薄い金属を押し付けられる。


「久寿米木くん」


 暦だった。

暦が僕の背後から首筋にナイフをあてがっている。


「私を無視して、美人なお嬢様と歓談した上、連絡先を交換するなんて……。どういうつもりかしら」


「や、やましい気持ちは一切ありません!ただ、依頼人とは仲良くなっておいて損は無いと思ったにすぎません!」


「……本当かしら」


 そう言って暦はさらにナイフを強く押し付ける。


「ほ、本当に!」


「……ならいいわ。以後気をつけなさい。――中へ入りましょう、久寿米木くん」


 そう言って暦は大きな門をくぐって中へ入っていく。

ヤクザの家に入る前に2度も殺されかけるってどういうことだよ!

中は行ったら死んじゃうんじゃないかな、僕。

 あ、しずかに連絡するの忘れてた。

僕はそんなことを思い出したので、しずかに、


 『今、ヤクザの毒島一家の自宅にいるから来て』


 というメールを打って、暦の後を追って中に入った。



*****



「えー!?なんでそんなことになってんの!?」


 しずかは僕から受け取ったメールを見てうろたえていた。

というのを僕は後日知った。

まさしく後日談。



*****



 僕と暦は、かおりさんのお父さんがもう少しで帰ってくる――帰って来てしまうということで、ひとまずかおりさんの部屋に通された。

 かおりさんの部屋は10畳程の洋室だった。

日本家屋の筈なのに。

親が子を溺愛しているのが手に取るように分かる。

わざわざ改装したんだろうな。

 内装は壁紙やカーテンが白で統一されていて、清潔感が溢れた部屋だ。

 僕と暦は、座る所がなかったのでベッドに座る。

別に自ら率先して座った訳ではない。

来客用の椅子とかがないから仕方なくということだ。

 かおりさんは僕達に向かい合う形で椅子に座る。


「これが怪盗グリードからの予告状です」


 そう言って、かおりさんは僕に予告状を渡す。

予告状に目を通す。

こう書かれていた。


 『来る10月25日午前零時。毒島家家宝を頂戴する。 怪盗グリード』


 その文章の後には、サインらしきものがクネクネした文字で書かれていた。


「なるほど。ちなみにその家宝と言うものはどういった物なんですか」


 僕が予告状から目線を上げて聞く。


「35カラットのピンクダイヤです」


「35!?」


 35カラットでしかも無色透明のダイヤモンドよりも高い値打ちがあるピンクダイヤ……。

かなりの価格になるだろう。


「普段はそれは何処に?」


「セキュリティのある部屋に置いてある金庫の中です」


「かなり厳重なんですね」


「お母さんのたった一つの形見ですから」


「失礼なことをお聞きしますが、お母様の形見は他にはないんですか?」


「はい。家がこういう家ですから、お母さんも自由に好きな物を買うこともできなかったみたいで……。お母さんの持ち物はほとんどありません」


 かおりさんはとても悲しそうに言った。


「そうですか……」


 その質問の後、部屋を沈黙が支配する。

しばらくして、沈黙が破られる。

破ったのは意外な事に――暦だった。


「久寿米木くん」


「なにさ」


 沈黙を破ったと言っても僕に小声で話しかけて来ただけだけどさ。

どうやらかおりさんには聞かれたくない話しのようだ。


「ちょっと失礼」


 僕はかおりさんに一言言って暦と、かおりさんに対して背を向ける格好で話を始める。


「この予告状なのだけれど」


 そう言って暦は僕に予告状を見せて来る。

僕はそれを覗き込むように見る。


「どうかしたの」


「このサイン、少し気になるのよ」


「どういうこと?」


「さっきテレビで見た予告状とサインの形が少し違うみたいなのだけれど」


 さっき?

――ああ、あの情報番組か。

 僕は暦の言うことは無下には出来ないので、とりあえずスマホで怪盗グリードの予告状の画像を検索する。

すると、意外と簡単に見つかった。

僕は暦の持っている予告状と調べて出て来た予告状を比べてみる。


「……うん。確かに違うね。若干だけど」


 他の画像とも比べてみる。

他の予告状は全てサインの形が同じだ。

しかし、毒島家に来たサインだけは若干違う。

と、僕がそのことをかおりさんに言おうと思ったとき、


 (ドタドタドタドタ……)


「ん?」


「あら、なにかしら」


 僕と暦が外の異変に気がつく。


「さあ……どうしたんでしょうか。ちょっと私、聞いてきますね」


 そう言ってかおりさんは立ち上がり部屋を出て行った。

と、思ったらすぐに戻って来た。


「どうやら侵入者のようですね。危険ですからここにいましょう」


 ……。

僕と暦は顔を見合わせる。


「毒島さん、こういった事はよくあるんですか?」


 暦がかおりさんに聞く。

僕もこのこと聞きたかった。


「ええ、割と。いわゆる殴りこみですね」


 かおりさんは平然と言う。

本当によくあることらしい。


 (パンパン……パン……)


 なんだか銃声みたいな音が聞こえて来た。


「大丈夫なんですか?」


 僕がかおりさんに言う。


「気にしないでください。布団を干して叩いているだけですから」


 (グハッ!……おい、大丈夫か!くっそー!パンパン……ガハッ!)


 僕はかおりさんを見る。

 

「き、気にしないでください。布団にダニがいたようですね。アレルギーです」


「いや、苦しみすぎでしょ!?」


 (パンパンパ――ズドォン!!ぐわああああああ!……)


 再び僕はかおりさんを見る。


「ふ、布団を爆破しました?」


「いや、さすがに無理がありますよ!?」


 とうとう爆破音まで聞こえて来た。

どうやらただ事ではないらしい。

すると廊下の方から声が聞こえて来た。


「なに?たった1人にこれだけ苦戦しているのか!?しかも女だと!?」


「へい。実弾ではないものの銃を2丁とそれから――手榴弾を持っていやす」


 とかなんとか。

そして男達の声は遠ざかっていく。

このとき僕は、心当たりを思いつくと同時に嫌な汗をだらだらかき始めた。


「こ、暦」


 僕は暦に小声で話しかける。


「どうしたのかしら、久寿米木くん。物凄く顔色が悪いけれど」


「あのさ……しずかだよ」


「雨倉さんがどうかしたのかしら」


「だから、しずかなんだよ。外で銃撃戦やってるの」


「どういうことかしら」


 暦が険しい顔で聞いてくる。

ついでに声も怖い感じ。


「僕がメールで来るように言った……ら、こうなった?」


 無理やり笑みを作り、「てへっ」と言う感じで暦に言う。


 (ズドッ)


「かはっ!」


 暦に腹部を殴られた。

座ったままでこの威力って半端ないな。

 そして暦は立ち上がり部屋を出ようとする。

僕は立ち上がれない。

ついでに喋れない。


「つ、月村さん、何処へ!?」


 かおりさんが突然僕が殴られるという現状にあたふたしながら、暦を呼びとめる。


「戦争よ」


 そう言って暦は部屋を出て行く。

やばいやばいやばいやばい!

 僕はふらつきながらなんとか立ち上がる。


「く、久寿米木さん大丈夫ですか!?」


 ふらついている僕を慌ててかおりさんが支えてくれる。


「ええ、なんとか。とにかく行きましょう」


「どこへですか?」


 かおりさんが分かっているにも拘らず、恐る恐る聞いてくる。

行きたくないんだろうな。

まあ、僕も行きたくないんだけどさ。

 僕は自分に喝を入れるのも含めて言う。


「戦場、です!」



*****



 僕はかおりさんに支えられながら、戦争が行われている、この日本家屋の庭へと向かう。

急がなければ。

ただでさえ――しずかとヤクザさん達でさえプチ関ヶ原の戦いって感じなのに、そこに暦まで参戦したらスターウォーズになっちゃうよ。

 僕とかおりさんは庭に近づいていく。

近づくにつれて、銃声や手榴弾の爆音が大きくなる。

 うわー行きたくないなー。


「あ、あそこから庭に出られます!」


 かおりさんが少しにあるサッシを先を指さす。

僕は腹の痛みを押して走り出す。

 そこから外を見る僕。

目の前に広がる光景は――三つ巴で暴れ回り、恐らく美しかったであろう日本庭園を蹂躙していく光景だった。


「……」


「……」


 僕とかおりさんは無言になる。

外では、暦としずかがタッグを組んでヤクザ10人と戦っている。

構図は僕達の手前にヤクザさん達。

その向こうに暦としずかがいる。

 暦はしずかを止めに行ったんじゃないのか……。

加勢しに行ったのか……。

 ん?何で僕は殴られたんだ?

って今はそんなことより――


「どうします?」


 僕は隣で呆然としているかおりさんに聞く。


「……止めた方が良いんでしょうけど」


 そりゃそうだよね。

さて、どうやってとめるか……。

①暦としずかを止める。

②ヤクザを止める。

③かおりさんを人質にして止める。

 今思いついたのはこれだけだ。

まあ、①が妥当か。

③でもいいけど、後でややこしいことになりそうだ。

 僕は――右眼に手をかける。


「じゃあ、ちょっと行ってきますね」


 僕はかおりさんにそう言って、コンタクトレンズを外す。

そして、履いていたスリッパを手につかむ。


「へ?」


 かおりさんが気の抜けた声を出す。

僕はその間――1秒間だけ右眼を開いて未来を見る。

 同時に頭に激痛が走り、数分間分の寿命が縮む。

 僕は右眼を閉じる。

よし、10分間の未来は全て見た!

 僕は庭――戦場へ飛び出す。


「え、ちょ、久寿米木さん!?」


 かおりさんがうろたえているが今は止める方に専念する。

 僕が庭に出ると、僕達側にヤクザ達がいるため、一斉に僕を見る。

そして、ヤクザ達は僕が暦の仲間であることを知っている。

と言う事で、ヤクザは僕に向けて銃を向ける。


 (ババババババババン!)


 数人のヤクザが僕に向けて発砲する。

が、僕はこの未来を見ている。

弾の弾道も知っている。

 僕は弾をすべて避ける。

 その異様な光景にヤクザ達は一瞬戸惑い、怯むがすぐに冷静になる。

僕はヤクザ達の壁を抜けて暦としずかを止めるために、ヤクザ達の方へ走る。

 僕が近づくとヤクザは銃を仕舞い、格闘へと切り替える。

僕がヤクザ達の間をすり抜けるために、接近する。

 と、近くにいたスキンヘッドのごつい男――僕達をここまで乗せてくれたリムジンの運転をしていた人が、僕に殴りかかる。

 僕はそれを知っているため、体制を低くして避ける。

そしてその体制から、右肘を鳩尾へとめり込ませる。


「ガハッ!」


 スキンヘッドの男が倒れる。


「あ、攻撃したから未来変わっちゃったよ……」


 僕が避け続ければ変わらなかったが、僕が手を加えてしまい未来が変わった。

僕は再び右眼を開く。

しかし、今度はほんの一瞬。

0.3秒にも満たない。

瞬き程の時間。

 一瞬の激痛が頭に走る。

僕はすぐに目を閉じる。

3分間の未来を見た。

 そして再び僕は走り出す。

残った9人のヤクザが僕に向かって走ってくる。

が、これは今さっき見た未来だ。

 僕はその突進を流水の如く避ける。

避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける避ける。

 呆気にとられたヤクザ達が動きを止めている。

僕はその間に、2人並んで立っている暦としずかの下に向かう。

 暦としずかも、ヤクザ同様呆気にとられて動けずにいたが、僕が向かっているのに気がつき、動き始める。

が、もう遅い。

 僕は全力で走り、2人の目の前に行き、


 (スパーン)

 (スカッ)


「いったーい!」


「なにをするのよ、久寿米木くん。殺されたいのかしら」


 (ズドッ)


「カハッ!」


 持って来ていたスリッパでしずかの頭を叩く。

次に暦の頭も叩こうとしたら躱されて、僕は再び腹を殴られた。

 あ、3分過ぎていたのか……。

僕はそう思いながら、ひざから崩れた。

どーも、よねたにです。


次の話に詰まってます。


まあ、いつもなんですけど……。


とにもかくにも!


感想や評価、気になること等お待ちしております。


では、また。

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