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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

バッドエンド・デッドガール

作者: 潤聞子

Bad End , Dead Girl

 今日も暗い部屋に引きこもり、キーボードをカタカタ、モニターとにらめっこをしている。

 この女の名は佐藤カルテ。二十五歳独身、ただ小説を書いているだけの人。

 昔は人気だったがバッドエンドの作品しか執筆しないせいで、ファンはほとんど消えた。

 もの好きな人だけがファンでいてくれる。そんな感じだ。


 ふと、エゴサーチをしてみた。


「設定はいいんだけどねー」

「またバッドエンドかよ」

「普通にハッピーエンド書けよ」など。


 案の定、批判ばかりだった。

 慣れたことだ。でも、心に残る。傷つきもする。


 お腹が空いたので近くのコンビニに向かった。

 歩く様子はふらつき、疲れが見える。

 前から来る自転車を避けようとしたとき、道を踏み外した。


(人生の道も踏み外した。なんてねー)


 車に轢かれ死亡。

 目を覚ますと木にもたれかかって座っていた。

 木漏れ日がさしていて自然豊かな場所だった。


(どこ? 生きてるの? 転生?)


 疑問に思い、しばらく歩き、川を発見した。

 水面を覗いた。


「誰?」


 映った顔は自分のものではなかった。

 この人は誰なのだろうか?


「おい、アンナ」


(アンナ? 私のことだろうか?)


 振り向くと一人の青年が立っていた。

 ヤバいと思い咄嗟に記憶喪失のフリをした。


「ここはどこ?」

「何を言っているんだアンナ、冗談のつもりか?」


 もう一度聞いた。


「ここは?」


 青年がため息をついて答えた。


「はぁ、ここはフェアリーの森だ。いい加減からかうのをやめろ」

「ごめんなさい。私、アンナは記憶喪失なの。あなたの名前もわからないの」


 青年は察した。これは冗談ではないことに。


 青年から話を聞いた。

 青年の名はギル、近くのガルタ村で暮らしていて、アンナとは幼馴染で仲がいいらしい。


 村に戻った――。

 ギルは何か思い出せないかと、村を案内、人を紹介、アンナとの思い出などを語った。


(すまん、青年、アンナさん)


 夜ご飯を食べているとき、外が騒がしかった。

 外を見てみると、村が魔物の群れに襲われていた。

 次々に家は燃え、人が殺される。

 最悪な光景だった。恐怖を覚えた。


 魔物を討伐し終わった。

 だが、村は壊滅状態。生き残ったのは一人だけ。


(どうして……?)


 ギルはアンナを守って死んだ。

 私はアンナではない。

 この気持ちは何だろう。


 悲しいのだろうか?

 辛いのだろう?

 苦しいのだろうか?


 全く知らない人なのにどうしてだろう。

 思わず涙が込み上げてきた。

 それと同時に前世の自分を思い返した。


 前世の自分は家族がいなかった。

 正確には、いたけど死んだ。

 父は事故死、母は病死、兄は自殺。


 唯一の救いは飼い猫だけだった。

 でも、フラッといなくなって行方不明。


 こんなことがあったから暗くなった。


 遺産があり働かなくても暮らしていける。

 暇だったから小説を書いていた。

 気づいたらバッドエンドの作品ばかり書くようになっていた。

 まるで自分の気持ちを表したかのように。


 自分の気持ちに気づいていなかった。

 ただただ寂しかった。もっと泣きたかった。


 この転生は意味のある転生だ。

 自分と向き合い成長するチャンスなんだ。

 そう思えた。


(私は間違いなく、この物語の主人公だ)


 バンッ!!


 何者かに撃たれた。

 痛い。

 血が流れている。


(また死んじゃうんだ……)


 気がつくと、元の世界に戻っていた。

 スマホを見て確認すると、事故に遭った日だった。

 目の前にはモニター、執筆中の小説が映っている。


『勇者が死んだ。そして世界は終わりを迎えた。』


 消した。


『』


 書き直した。


『勇者が魔王を倒した。そして世界は平和を迎えた。』


 変われたのかな?

 なんか嬉しかった。


「よし、がんばろ」


 新しい作品のタイトルを書き記した。


『ギルとアンナのワンダーランド』


 佐藤カルテのハッピーエンドが、ここから始まる――。

Happy End , Not Dead Girl

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