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エピローグ

崩れた大地に、ようやく静寂が降りた。


だがそれは、穏やかな沈黙ではなく、激突し合った力の余波が、まだ空気の奥に残響しているような、重く鈍い静けさだった。


砕け散った城壁の残骸が、あちこちに突き刺さっている。

大地は抉れ、溶け、ひび割れ、まるで大災害の後のように無残だった。

焦げた土の匂い。焼けた石の熱。霧散しきれぬ闇の粒子が、ゆらゆらと空中を漂っている。


転がる武器。折れた槍。砕けた盾。翼を休める飛竜たちの荒い息遣い。膝をついたまま動けずにいる戦士。互いの無事を確かめ合い、肩を支え合う者たち。


誰もが、まだ戦いの中にいるかのように動けなかった。

耳鳴りのように、遠くで爆音の残響が蘇る。

目を閉じれば、光と闇がぶつかり合ったあの瞬間が、まぶたの裏に焼き付いている。


やがて――

瓦礫の隙間から、ゆっくりと朝の光が差し込み始めた。

淡い金色の光が戦場を静かに照らす。

焦土の上にも、砕けた石にも、疲れ果てた騎士の肩にも、等しく降り注ぐ。


アーマードワイバーンの背より起き上がったロークスが沈黙を打ち破り声をあげた。

「……ウロボロジアは……倒したんだよな?」


誰もが感じている不確かなものに、誰が「そうだ」と言えようか。

しかし、そこに落ち着いた声が響き、その不安を拭い去った。


「安心するがよい」


その声に皆が宙を見上げると、白い衣をまとった老人が、ほのかな白い輝きを放ちながら舞い降りてきた。

穏やかな眼差し。その存在感は、ただ者ではないと直感させる。


「ウロボロジアの気配は完全に消えておる。同化しておったワシが言うのじゃ、間違いない。」


「あなたは……?いや、その声は」

「シヴァーク!」


「シヴァーク……」


宝玉の中に封じられ、身体を奪われていた天空島の神シヴァーク。それが本来の姿を取り戻していたのだった。


「魔力核が砕けたあの瞬間、蓄えられていたエネルギーの一部がワシの中へと還り、肉体を再構築できたのじゃ」

シヴァークは小さく笑い、そして戦士たちを見渡す。


「ドラゴンナイツ、そして戦士たちよ。よくぞウロボロジアを打ち倒してくれた。心より礼を言う。奇跡のように集った力。誰一人として欠けておれば、この勝利はなかったであろう。」


その言葉に、誰もが静かに息を吐いた。ウロボロジアとの長き戦いが本当に終わったのだと。


「これより、ワシは天空島ガーデを本来の空へと戻し、再びこのような悪夢を繰り返さぬよう最善を尽くすつもりじゃ。おぬしたちのことは決して忘れぬ。」


飛竜たちが低く鳴き声を上げる。颯太はその気持ちを竜魂で感じ取り颯太が一歩前へ出る。


「シヴァーク、お願いがある。このアーマードワイバーンたち……こいつら、天空島で隠れて暮らしていた時に、この島のことが気に入ったみたいなんだ。どうか一緒に連れて行ってやってくれないか?」


シヴァークは頷いた。

「頼もしい申し出じゃ。天空島には、まだ残存する悪魔もおろう。その脅威にどう当たろうか考えていたところじゃ。歓迎しよう飛竜たちよ。」


「いいってよ……ベリルレッダ。少し寂しいけど、向こうでも元気でやれよ。」

颯太は名を呼び、かつてファングの相棒だった。飛竜の鎧を解き鼻先を撫でた。


「クルルル……」

ベリルレッダが頭を擦り寄せてくる。


「おいおい、これが最後の別れじゃないんだから。いつか俺たちは会いに行く、また会えるさ。……でも、お前、美味そうな色してるし人懐こいから、変な奴に捕まって食われないように気をつけろよ」


周囲に小さな笑いが広がる。


ラッシュは、隣のローランを見る。

「あなたはどうする。やはり天空島に残るのか?」


「……そうしたいのだが、天空島がウロボロジアに乗っ取られてから、地上の人々との交流も多くあった。傷つけてしまった人々も大勢いる。復興の力になれるよう、一度、地上へ降りようと思っている」

彼の声には、その責任と決意があった。


シヴァークが穏やかに告げる。

「そうか。懐かしく語り合いたいと思っていたのじゃが、どうやら今は時を待つしかないようじゃの。なるべく早く戻ってくるのだぞ」


ローランは小さく笑った。

「ふっ。脅威は去ったのだ。天空島が落ちることなどもうないだろう。シヴァーク、我々も、しばしの別れだ」


***


そしてシヴァークは、かつて逆理の鍵(パラドクスキー)が天空島へと導いたように、地上へと続く光の橋を作り出した。淡い金色の道が、雲を裂きながら大地へと伸びていく。それは、天空と地上を結ぶ最後の導きの路だった。


シヴァークと多くの飛竜たちは、地上へと降りていく戦士たちの姿が見えなくなるまで見守っていた。そして最後の一人が地上へ降り立ったとき、橋は粒子となってほどけ、空へ溶けていく――。

やがて、天空島ガーデは、本来あるべき高みへと、ゆるやかに昇っていったのだった。


***


天空島を降りると、フィンストリオンの城門前には兵士たちが整然と並び、ドラゴンナイツたちの帰還を待っていた。

武器を胸に掲げ、誰もが静かに、しかし誇らしげに立っている。

その中央に立つのは、凛とした姿のレヴァ姫。


そして奥から歩み出たのは、ヴェルランディア王国のアルゼリーテ姫だった。

王家の礼装に身を包み、朝日の光を背に受けて立つその姿は、戦場の女神のようにも見えた。


「おかえりなさい、勇敢なる戦士たち。必ず帰ってきてくれると信じていました。」


その瞳には、深い安堵と誇りが宿っていた。


「アルゼ姫……」


レヴァ姫が前に出る。

「この地に再び光を取り戻してくれたこと、フィンストリオンを代表し心より感謝します。あなた方は、世界の夜明けを切り拓いた英雄たちです。」


戦士たちの間に、静かな歓声が広がる。


ラッシュが二人の方に目を配ると、自然と颯太と柚希が前へ押し出される。

「我らも全力を尽くしましたが……やはり決め手となったのは、異世界の騎士たちの力でした。」


アルゼリーテは二人をまっすぐに見つめた。


天城(あまぎ) 颯太(そうた)様。結城(ゆうき) 柚希(ゆずき)様。あなた方の勇気と覚悟が世界を救いました。本当に……ありがとうございます。」


颯太は少し照れくさそうに頭を掻く。

「俺たちだけじゃ無理でした。ロークス、ヴァニット、ラッシュ、ローラン、アルベール、テラ将軍、リザードマン隊……飛竜たちも。そして、俺たちの帰る場所を守り支えてくれたレヴァ姫や、フィンストリオンの騎士団の応援があったから……」


その時だった。

人垣の奥から、ゆっくりと歩み出る影があった。


「……リューガ……!」


リューガは戦闘不能の傷を抱えながらも、仲間の帰還をその目で見届けるために現れた。


「よくやったな、お前たち。」


ドラゴンナイツは一斉に駆け寄り、熱い抱擁を交わす。リューガが目を覚まし、無事に自分たちの元へ帰ってきた。この瞬間だけは、世界の平和よりも嬉しかった。


ヴァニットは、まるで子どものようにリューガを強く抱きしめて離さない。


「痛い!痛いぞ!ヴァニット……。お前、こんなに人懐こいヤツではなかっただろ?」


柚希が微笑む。

「無理もないわ。だって、リューガさんと別れたのは、ずっと前のことのようだもの。あれから……ヴァニットも変わったのよ。」


「……そうか。そうだな。」


リューガを見つけたヴァルハイトが、そんなヴァニットを押しのけて鼻先を押し付ける。


「ヴァルハイトも!俺の代わりによく戦ってくれた。ありがとう。……さて、話は、あとでたくさん聞かせてもらうとして。」


リューガの視線が、ボロボロの鎧と傷を負ったアルベールを見据える。


「リューガ・デイン。」

「アルベール・ディルヴァルト。」


二人の視線が交わる。かつて刃を交え、リューガを瀕死に追い込んだ因縁の相手。だが今、アルベールの目に宿るのは、悔恨と覚悟。


リューガは静かに言った。

「闇が……晴れたようだな。」


アルベールはうなずく。

「ああ。俺の執念は、エルゼリアの姫の想いと、その元凶を断つことで解き放たれた。しかし、俺は俺の意思で人間の敵となった。ヴェルランディアとフィンストリオンを憎み、滅ぼそうとしたのも命令されたからだけではない。……処罰は受けよう。」


その場に緊張が走る。


そこにラッシュが入り込み、口を開いた。

「しかし、フィンストリオンは今、城壁まの修復と負傷兵の手当てで手一杯だ。これからさらに忙しくなる案件も控えているので、お前に構っている暇がない。それに同じ条件ならヴェルランディアにも罰を下す権利がある。裁きはヴェルランディアで受けろ。」


「ラッシュ、何を?」

颯太が驚く中、ラッシュが近づき耳打ちする。


「フィンストリオンは古き大国ゆえに法に厳しい。ウロボロジアの幹部であり裏切りの将軍となれば、死罪は免れん。だが――」


ラッシュはアルゼリーテと、ドラゴンナイツを見た。

「アルゼリーテ姫、そしてお前たちがそばにいるなら……別の道もあるのではないだろうか。……と、私の提案ではない。これは我が主君が出発前に申されたものだ。」


颯太は、はっとしてレヴァ姫を見る。レヴァ姫は何も言わず、ただ小さく微笑んだ。

そして、凛と声を張る。


「みな、兵の手当てを最優先に。城壁の修復班も動かしてーーー」


少し間を置き、続けた。


「そして生き残った者たちのために、今夜は火を灯しましょう!長い夜が終わったのです。宴を開きます!!」


兵士たちがざわめく。レヴァ姫はさらに声を高めた。


「悲しみも、傷も、失ったものもある。だけど今夜だけは――生き延びたことを、共に戦ったことを、そして災いが去り、平和が訪れたことを祝おうではありませんか!!」


武器が掲げられる。飛竜たちが空に舞い上がる。

誰の顔にも、もう恐れはなかった。

大歓声の中――最後の舞台は、静かに整えられていった。


***


その夜。フィンストリオンでは、勝利の宴が開かれていた。

崩れた城壁の修復が進む中、中庭や広場には無数の篝火と松明が灯され、まるで昼間のような明るさが街を包んでいる。

炎を囲み、騎士たちとリザードマンたちが酒を酌み交わしていた。


――ラッシュは城壁の修復の指揮に、ローランは地上でのケジメを果たすために、アルベールはヴェルランディアへの護送のため、それぞれこの場を離れていた。


盃がぶつかる音。豪快な笑い声。どこからともなく響く歌。

つい数日前まで命を奪い合っていたとは思えないほど、彼らは肩を組み、踊り、騒ぎ、笑い合っていた。


その光景を見て、颯太は思わず苦笑する。

「テラ将軍。みんな、ずいぶん楽しんでるな……?」


「おお、クロー殿ではないか!」

大皿の肉を片手に、テラが豪快に笑った。


「これほどの宴は久しぶりなのでな!もともと我々は、“ダンシングリザードマン”と呼ばれるほど、戦より祭ごとの方が好きなのだ!」


後ろでは、あの勇ましく屈強なリザードマンたちが肩を組み、足踏みをしながら陽気に踊っている。


「そう……だったのか。」

颯太は少し表情を曇らせた。


こんなに笑顔を浮かべて楽しんでいるリザードマンと命の奪い合いをしてきた。そして、テラ将軍の兄ジ・ザルギルの命を奪ったのは紛れもなく颯太自身。

ウロボロジアの手下であったことは彼らの本心ではないのに。


「……すまない。俺は、あんたの兄弟を――」


「許す」

テラは即答だった。その声に、一切の迷いはない。


「クロー殿、ガーデへと乗り込む時言ったはず。恨みはないと。憎しみ続けることでは先に進めぬ。因縁を捨て、手を取り、力を合わせることこそが真の平和への道。それはクロー殿……貴殿たちがこの戦いで我々に証明してくれた。さぁ、共にフィンストリオンの酒を飲み干そうではないか!」

テラは酒をグイッとあおり、美味い酒だぁと笑う。


颯太は心の闇が浄化されていく気がした。だが、豪快に笑うテラを見て思う。

(スパイン、お前がリザードマンたちと肩を組んで酒を飲むところも見たかったなぁ)と。


「これから、どうするんだ?」


「フム。この後は古き故郷へ帰る。山間にある小さな世界樹の立つ迷いの森の奥へ。戦には関わらぬよう、歌って踊って暮らすつもりだ。」


颯太は静かに頷いた。

「色々あったけど……達者でな。」


テラは拳を胸に当てる。

「機会があれば、是非とも訪れてほしいものだ。我が名を呼べば歓迎する。ドラゴンライダー!」


***


「颯太様。探しておりました。」

振り返ると、そこにはアルゼリーテ姫とリューガが立っていた。


「アルゼ姫。リューガ、まだ傷が……」


「心配するな。回復魔法のおかげで、だいぶ良くなっている。それより、お前たちナイツの4人を探していたのだが。」


「俺たち?」


アルゼリーテが微笑む。

「この後、壇上で皆へ言葉をいただきたいのです。今回の戦いを終わらせた“英雄”として。」


「スピーチってことですか!?そういうのは苦手で、というか、もうみんなだいぶ飲んでるし、誰も話なんて聞かないんじゃ……」


「なら、逆に緊張せず話せるのではありませんか?」

アルゼリーテは柔らかく笑った。


「まだドラゴンナイツを見たことのない兵士たちもおります。どうか皆にその姿を見せてあげてください。」


リューガも頷く。

「お前たちは、これからのドラゴンナイツを作っていく者たちだ。我々の誇りを、フィンストリオンの民にも見せてやってほしい。」


「……そこまで言われたら断れないな。」

颯太は頭を掻いた。


「他の3人はどちらに?」


「少し待っててください、探してきます。」


アルゼリーテの熱意に押され、颯太は仲間を探しに走り出す。

不思議と迷いはなかった。苦難を共に越えてきた仲間たちの場所を、竜の魂が自然と教えてくれるようだった。


***


中庭の噴水のほとり。そこには、寄り添うように座る柚希とロークスの姿があった。


「ここにいたのか、柚希、ロークス。」


突然の声に、二人は飛び上がる。


「颯太、お前なぁ……こういう時は普通、空気読むものだろ。」

ロークスが顔を赤くしながら睨む。


「あー、そうだな。悪い悪い。姫に“ナイツ4人集まれ”って言われてさ。伝えることしか頭になかった。」


「はぁ……。雰囲気ぶち壊しだぜ。ってか、そもそも、お前たちがイトコだって最初から言ってくれてたら、俺もこんなヤキモキしなかったんだがな……。」


「もう、ロークス。」


優しい笑顔を浮かべる柚希に向き直り、颯太は、リューガとの会話を思い出す。


「柚希。リューガに、俺たちはこれからのドラゴンナイツを作っていく者たちって言われたけど、お前はどうする?ナイツにいたら、また戦いに巻き込まれる、お前は、もう戦いたくなんてないだろう?」


「そうね、颯太の言う通り。武器を振るい、みんなが傷つけあうのを見るのは怖い。それは本当よ。でも、怖いからって目を逸らしたままじゃ、誰も守れない。だから私は、武器じゃなく、隣にいることでみんなの心を守るナイツになりたいの。」


「そうか…それが柚希が目指す道なら、俺はその支えになってみせる」


「ふふっ、何言っているの。颯太の支えになるのが私なんだからね」


そう言って、柚希は颯太を抱きしめようと歩み寄るーーーーところをロークスが阻止する。


「だから、お前ら。それ禁止だって言ってるだろ!」


「あ、ごめん!つい」


柚希はテヘッと舌を出してはにかんだ。


「ったく、、、颯太。気づいたら、お前に色々と先を越されちまったところはある。リューガを超える騎士になる――それが俺の目標だったのに、今は、もう一つ目標が増えちまったようだ。」


ロークスはニヤリと笑い、拳を颯太の前に突き出した。


「今はまだ俺たちの関係は対等だ、だがな。リューガの後を継いで、ドラゴンナイツの次のリーダーになるのは俺だぜ!」


「ロークス……」

颯太は少し驚いた顔をして、それから笑って拳を合わせた。


「上等だ。俺だって負けねぇからな。」



「それで、中央広場に戻ればいいのね?ヴァニットには伝えたの?」


「これから探しにいく。」


「姫様が呼んでいるなら急ぎなんじゃない?……すぐに見つけられる?」


颯太は自信満々に答える。

「当たり前だろ。ヴァニットが好きそうな場所なんて、最初からわかってるんだ。」


「そう…先に広場で待っているわ。行ってらっしゃい。」


***


颯太は再び走り出した。城の階段を駆け上がり、見晴らしのいい高塔のバルコニーへ飛び出す。

そこに、広場を見下ろしながら静かに微笑むヴァニットがいた。


「ヴァニット。」


彼女が振り返り、悪戯っぽく笑った。

「なんだ颯太。そんなに息を切らして。言っておくが、この場所は私が先に見つけたんだから。」


「そうかもな。でも、一緒に眺めるくらいはいいだろ?」


「……いいぞ。」


ヴァニットは隣を空ける。二人は並んで、世界を見下ろした。

守り抜いた国。笑い合う仲間たち。灯りに包まれたフィンストリオン。


「私たちが守った世界……。」


「ああ。だけど、この平和の下に、多くの犠牲があったのを忘れちゃいけないんだ。」


「そう、そしてその犠牲の中に私が殺してきた人たちもいる。……私はあの笑い合う輪の中に入ることはできない」


颯太は首を振る。


「奪ったものがあるのは、俺だってそうだよ。俺の力不足で仲間を失わせた。リザードマンの兄弟たちだって手にかけた。……今となっては後悔でしかないけど、テラ将軍は許してくれた。因縁を捨てて手を取り合わなければ、真の平和はないって……。尊い犠牲だったなんてスカしたことは言えないけど。……平和を守り続けることが俺たちの贖罪なんじゃないかって」


「贖罪か」


「ああ。今、あそこにいるみんなも思いは同じなんだと思う。戦いっていうのは、傷つけ、奪うものだってわかっている。ローランもアルベールだって」


「だから、生きて償う」


颯太は笑う。

「ああ、そうだ。だからもう死ぬなんて言わないでくれ。ーー安心しろ。お前が許される日が来るまで、お前がお前自身を許せる日が来るまで、ずっとついててやるから。」


ヴァニットが目を細めた。

「……そうか。」


少し沈黙が流れる。夜風が二人の間をすり抜けていった。眼下では、まだ宴の歌声と笑い声が絶えず響いている。



そして、彼女がぽつりと呟く。

「颯太。ヴェルランディアに帰ったら話すって言ってたこと……今、聞かせてくれない?」


「え?」


「まさか、ウロボロジアに取り込まれていた時のやつだけで、全部なのか?」


「あ、いや……違うけど……。」

颯太は露骨に目を逸らした。


「ヴェルランディアに戻ってからでよくない?」

「私は今聞きたいぞ。」


逃げ場はなかった。颯太は観念したように頭を掻き、ヴァニットへ向き直る。


「はぁ……。ヴァニット。俺はーーーー」


その瞬間(とき)


轟風が吹き抜けた。カイ。リンド。ゼルフィード。アズール。ヴァルハイト。

五体のアーマードワイバーンが夜空を駆け、円を描きながら城の上空を飛翔していく。

それはまるで、勝利を祝福する空の舞。英雄たちへ捧げる、竜たちの凱歌だった。


「カイのやつ……はしゃぎすぎだろ!」


下から仲間たちの声が飛ぶ。


「おーい!颯太ー!ヴァニットー!」


「そんなところにいたのねー!」


ヴァニットが笑い、颯太の手を掴み引っ張る。

「飛び降りるぞ、颯太!」


「は!?待て待て!普通に階段で降りるんだよ!」


「何を言っている!ディヴァイン・クローの勇ましさはどこへ行った?!」


「違う!高いのが怖いんじゃなくてーーーーー」



「俺は、飛べない、んだってぇのぉーーーーーー!!!」


その言葉が終わる前に。2人は仲間たちが待つ、輪の中へと飛び出していった。




***



朝日が差し込むバルコニーには、まだ二人分の温かさが残っていた。

眼下の広場はすでに静まり、消えかけた篝火の煙だけが、ゆっくりと朝の空に溶けていく。

燃え尽きた戦場にも、傷だらけの心にも、同じ光が静かに降り注いでいる。

誰かを失った痛みは消えない。犯した罪も、消えることはない。

だが彼らは歩き出す。それぞれの明日へ。



振り上げた爪は、誰かを守るために伸ばされていく。


傷ついた心は、一人でもう抱えなくていい。


流した涙はいずれ誇りに変わっていくだろう。


次なる夜明けへ、竜たちは再び翼を広げるーーーーーー。


ロークス「だから、お前ら。その抱き合うのやめろって」

柚希「いいじゃない、イトコなんだし」

颯太「結婚するわけでもないしな」

ロークス「イトコ同士って、結婚できるんじゃね?」

颯太・柚希「……………オエーッ」



颯太「ヴァニット。俺はーーーー」


ファング・フレイム・フロスト・ボルト・シールド・ナルル・クロエ・スパイン・ドラゴンナイツの皆さん・ジ・ザルギル・リザードマン達・ストームドラゴン・フレイムハイドラ・ミラージュドラゴン

「「「「「いや、言わんのかーーーーい!!!」」」」」



ヴァニット「飛び降りるぞ、颯太!」

颯太「俺は、飛べない、んだってぇーーーーーー!!!」


…‥……。


アルゼ「……嫌な事件でしたね」

ヴァニット「しゅん……」

リューガ「いや死んだんですかっ!!?」


アルゼ「そんなことよりリューガ、ついにドラゴンナイツ編が終わってしまいましたよ!」

颯太(そんなこと?!)

リューガ「ええ、これでようやく姫もまっとうな職務につけますね」

アルゼ「そんなことがあるはずがありません」

リューガ「ん?黙っててくれますか」

アルゼ「ナイツの伝説は終わりません、私たちの戦いはまだ始まったばかりです!!」


ダダダダダダッ(走る音)


リューガ「待てぇ!!玉座に戻れぇぇえ!!!っぐ!傷がぁ!!」


颯太、柚希、ロークス、ヴァニット(リューガも大変だなぁ)


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