第四十章:影の祭壇の試練!時を喰らうもの
地下へと続く階段を降りるたびに、周囲の温度がゆっくりと下がっていった。
石壁には無数の“蛇”の紋様――それはまるで、ウロボロジアの意識が染み込んだような瘴気を漂わせている。
「空気が……重いな」
ウイングが口元を押さえ、不快げに眉をひそめる。
「ここは“理”の外側だ。空間そのものが歪んでる……!」
ブレインが剣の柄を強く握りしめる。
やがて、一行は広間へと辿り着いた。その中央には、鏡面のように黒く光る湖が広がっており、湖の中心には“宙に浮かぶ鍵”のような紋章が、ゆっくりと回転していた。
「……あれが、“パラドクスキー”なのかな?」
クローが目を細めたその時、突如として世界が“揺れた”。
「……ん!? なんだ、これ……」
クローが目を凝らすと、広間の壁がゆっくりと歪み、複数の“時間”が同時に流れ始める。
時間が逆流し、加速し、同じ景色が幾重にも重なり合っていた。
まるで現実が狂ったかのような、空間の異常。
「……時間が、バグってやがる……」
ウイングが低く吐き捨てた。
「ここは“理”の外……本来、存在してはならない場所だ」
ブレインが周囲を警戒する。
その瞬間――
地面が崩れ、そこから現れたのは人型をした“黒の怪物”。
だがその姿は、固定されていなかった。腕は未来へ、脚は過去へ、胸は現在に引き裂かれ、それは“複数の時間軸に同時に存在する生き物”だった。
「な……何だあれ……!?」
「“今”のあれが本体か!? それとも“これから”の姿か!?」
「どれが当たる!? どれに反応すりゃいい!?」
混乱する仲間たちの前で、怪物が口を開いた。音というよりも、脳に直接響くような重低音が響く。
『貴様らは、“世界の理”を壊そうとしている。ならば、その覚悟を証明してみせよ。』
クローはカイと共に真っ先に突撃した――が、放たれた斬撃は虚空を切り裂いただけだった。
「くそっ、届かねえ……!」
敵の身体は、“今”には存在していなかった。
ウイングが槍を投げるが、それさえも“過去”へすり抜けていく。
「なんだこれ……!? 攻撃のタイミングがわかんねぇ!」
「これは――“時間軸の複層干渉”か!」
鋭く叫んだのは、ラッシュだった。
「“時喰い”――時間を喰らう幻獣の一種。自分の存在時間をずらして動く。今の攻撃じゃ届かない!」
「どうすればいい!?何か策はあるのか!」
ブレインが即座に問いかける。
「一時的に“現在”に縫い止めるしかない。時間固定魔法を使う!」
ラッシュはレイピアを逆手に構え、柄の魔結晶を起動させる。
「時間よ――ここに縫い止まれ!!」
銀の閃光が走り、怪物の動きが一瞬だけ“今”に固定される。
「今だ!カイ、突っ込むぞッ!!」
クローが炎の魔力をこめた爪で、一気に中心軸を一直線に切り裂く。
灼熱の軌跡が時喰いの身体を灼き、“現在”に固定された時軸に揺らぎが生じる。
「ゼルフィード、風を裂け、突貫だ!」
ウイングが風をまとった槍を振りかざし、加速に次ぐ加速で突撃する。
風が断層のように空間を裂き、その槍が貫くように放たれた。
そして――
「……この一撃で、終わらせる!」
ブレインが天に剣を掲げ、渾身の魔力を込める。
剣が純白の光に包まれ、軌道上に聖なる文字が刻まれていく。
その力は、天の裁きを具現化したかのように、鋭く荘厳に輝いていた。
「光剣『ラディアント・ジャッジメント』!!」
放たれた光の斬撃が、時喰いの“核”を狙い一直線に落ちていく――
……だが、時喰いの身体が微かにぶれた。封じられていた“時間”が再びずれ、斬撃の軌道から逃れようと“未来”へと跳ぼうとした。
その時。
「逃がすわけないだろッ!!」
鋭い声とともに、ラッシュのレイピアが稲妻のように閃いた。
空を裂くほどの速度で放たれた一閃は、時喰いの膝関節を正確に切り裂く。
膝が砕け、バランスを失った怪物の身体がよろめく。その一瞬の“ブレ”が、運命を決した。
ブレインの光剣が“現在”の核へと直撃し、時喰いの身体はまばゆい光に包まれた。
時間軸ごと断ち割られたその存在は、悲鳴も上げることなく崩れ去り、黒い瘴気をまとっていた空間は、爆発のような閃光とともに一気に浄化されていく。
やがて、歪みに満ちていた時空が静けさを取り戻し、騒がしかった広間は嘘のように沈黙へと変わった。
その中心に、ひとすじの光がそっと舞い上がる。
浮かび上がったのは、三角錐を成す美しい結晶体。
その透き通った内部には、古代の魔紋が淡く脈動し、まるで時の流れそのものを封じ込めるかのように、静かに揺らめいていた。
「……これが、“パラドクスキー”……だな!」
クローが光を見上げ、静かに息をのむ。
「ウロボロジアの“不死”を打ち破る、唯一の鍵……」
ブレインが剣を納め、深く頷いた。
「これで、ようやく戦えるな」
ウイングが肩を回し、白い歯を見せて笑う。
ラッシュはレイピアを収め、得意げに言った。
「いい連携だったぞ。それに、ちゃんと私の出番まで作ってくれるしな」
「ああ、あんたのおかげだよ!助かったラッシュ」
「ふっ」
結晶が静かに宙を舞い、四人の前で脈動を止めた刹那。空間全体が低く軋むような音を立てて震えはじめた。
「……これは?」
クローがパラドクスキーを手に取った瞬間、足元の床石にひびが走る。
「まずい、封印が――!」
ブレインが叫ぶと同時に、広間全体がゆっくりと崩壊を始めた。
壁に刻まれていた蛇の紋様がひとつずつ砕け、湖の黒い水が蒸発するように消えていく。
「ここは、“理の外”……祭壇の核を奪ったことで、空間そのものが維持できなくなってる!」
「出るぞここから、急げ!この空間、長くは持たない!」
ウイングが叫び、ゼルフィードを呼び寄せる。
クローもカイを背に呼び戻しラッシュに手を伸ばす。
「乗れ、ラッシュ!」
「……わかった!」
飛竜たちは咆哮を上げながら、一斉に空へと舞い上がった。
その背後では、影の祭壇がゆっくりと崩れ落ち、歪んでいた時の残滓が灰のように空間を蝕んでいく。
祭壇の中心――そこには、かすかに三角錐の残光が漂い、最後の輝きを放って消えた。
こうして彼らは、空へと還る。
その手には、世界の理を覆す《逆理の鍵》――
希望と破滅の分岐を握る、たったひとつの答えがあった。
そして背後には、もはや語られることのない“影の祭壇”が、静かにその存在を終えていた。
アルゼ「やれやれですね!一難去ってまた一難。ドラゴンナイツは本当に多忙です」
ブレイン「貴女、まだいたんですね」
アルゼ「いましたよ!キャラの強い人たちが私のコーナーに来たから、隅っこに追いやられてましたが」
ブレイン「『後書き』はあなたのコーナーではないですよ。言っておきますが、貴女、今出てきても出番ないですからね。わかりますか?正直、この小説内で特殊系は貴女だけと思いましたが、大体全部の女性、特殊系でしたからね」
アルゼ「そうですね、個性の強い方達ばかりで驚いています。、、、、でも私、負けない!!」
ーーーーーーーーーー負けてくれぃ!!!




