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第三十六章:風に託す、それぞれの決意

 翌朝。

 少し寝坊してしまったクローは、髪も整えぬまま、慌ててヴェルランディア城の城門へと駆け出した。

 すると、すでにドラゴンナイツのメンバーと、フィンストリオン騎士団のラッシュが整列していた。


「遅いぞクロー!どれだけ待たせるんだ?!」

 ラッシュがイライラした様子で怒声を上げる。


クローは目の下にうっすらとクマを作り、申し訳なさそうに頭を下げた。昨夜の一件が尾を引いて、ほとんど眠れなかったのだ。


「ごめんなさい、皆。颯太が朝なかなか起きてこないってこと忘れてたわ。私が起こしに行くべきだったわね」

 ハートが前に出て小さく頭を下げる。


「ハートのせいではないだろう? 全面的にクローが悪い!こういうだらしないところがあるから、あの時だって――」

「ラッシュさーんっ!」


 慌てたクローが、ラッシュの口を塞ぎに跳びかかる。ラッシュは「しまった」と目を伏せ、口をつぐんだ。……もっとも、その“あの時”を知らないのはブレインとウイングだけだったが。


「よし、みんな集まったな。ではこれより、フィンストリオン王国へ向かう組と、竜の墓所に向かう組に分かれて行動する。どちらも気を抜かずにいるように」

 ブレインが指揮を取る声に、場の空気が引き締まった。


「ラッシュ、俺のヴァルハイトに一緒に乗っていくか?」

「大丈夫だ。私には飛行魔法がある。問題ない」


「そうか、わかった。ティアー、アズールはどうだ?」

 ティアーは飛竜に騎乗していたが、アズールは落ち着かず、手を焼いている様子だった。


「う、うまく言うこと聞いてくれないぞ!」

「違う、言うことを聞かせるんじゃない。心を合わせるんだって言っただろ? ……ほら、一回降りろ。みんな、ちょっと待っててくれ」

 ブレインはティアーに近づき、飛竜との心の通わせ方をゆっくりと教え始めた。


 その間、ハートがちょこちょことクローに詰め寄っていく。

「颯太、聞いたわよ。ヴァニットから」


「……そうか。で、柚希さんの解釈はどうだ?」

 クローの声は、どこか不安げだった。


「何だ何だ?」

 ウイングがすかさず顔を突っ込んでくる。ラッシュも興味津々で耳を傾けていた。


「ヴァニット、颯太のこと、けっこう気になってるみたいね。……あれは、恋よ!」


「はっ?!」

 ウイングは目を丸くして叫ぶ。


「お前らいつの間にそんな関係に?」

「関係にはなってねぇよ!」

 クローは真っ赤になって否定するも、どこか戸惑いを隠せていない。


「でも……やっぱり、そうなのか……」

 ぽつりとこぼした言葉は、誰よりも自分の心に向けた問いだった。


「ヴァニットはね、純粋だから、思ったことは何でもそのまま言っちゃうし、ちょっと子供っぽいところもある。でも、それって悪いことじゃないわ。だからこそ、受け止めてあげるのが颯太の役目よ。ちゃんと向き合ってあげなさい。……私は、応援してるから」 

 ハートは優しく微笑んで、クローの背中をそっと叩く。


 クローは、その手のぬくもりに目を瞬かせた。

「柚希……」


 その様子を見ていたラッシュが、驚いたように声を漏らす。

「ん。なあ……ハート?『それ』で、良いのか?」


「え?何かおかしかったかしら?」

 きょとんとしたハートに、ラッシュは唖然とした顔を浮かべる。

 クローは、「な?何でもなかっただろ?」という顔をしている。


(……本気かこの子。……恋敵ではないのか?それとも正妻としての余裕ってやつか?……わからん)


 ラッシュがあまりのハートの態度に頭を悩ませていると、遠くからティアーの声が響いた。

「やった!アズールが落ち着いたぞ!」

「おお、よくやったな!」



 朝の光が、ヴェルランディアの城を黄金色に染めていく。

 そして、旅立ちの時が迫る中 彼らの新たな一歩が、今、踏み出されようとしていた。


「気をつけてな柚希。ヴァニット、柚希を守ってやってくれよ!」

 クローが声をかけると、ティアーは少しだけ口元を緩める。


「頼まれたぞ。お前こそ、私がいないからって、勝手にやられるんじゃないぞ。」

「分かってる。あぁ……ヴァニット……。ヴェルランディアに戻ってきたら、話したいことがあるんだ。……言葉にするのは下手だけど、ちゃんと、はっきり伝えたい。」

「いいだろう、楽しみにしているわ」

 ヴァニットは微笑みながら、アズールの手綱を握った。


「じゃあ、行くわ。お願いねヴァニット」

「うん!」

 ハートとティアーは、飛竜を駆って空へと舞い上がっていった。



「……行っちまったな」

 クローは空を見上げて、小さく呟く。


「ハートとヴァニットと分かれて別行動……。お前、内心、寂しいんだろう?モテ男はつらいな?」

 横からひょいと現れたウイングが、にやにやと茶化してきた。


「何だよそれは……。それに、今、柚希のことはいいだろ」

「……そうかい?悠長なことやってると、そのうち俺がハートを奪っちまうぞ?」


 軽口のように笑って言うウイングに、クローは肩をすくめた。

「ああ、それもいいな。世話焼きな柚希の面倒を見てくれるヤツができたなら、俺も楽になる。」


 ウイングの笑顔がふっとかすかに揺れる。

「ふっ。クロー……。俺はさ、いつも真面目さなんてない男で、笑ってごまかしてる。でもな――」

 一瞬だけ、視線が鋭くなる。


「……ハートのことに関しては、ちょっとマジなんだぜ」

 その言葉を残し、ウイングは飛竜ゼルフィードに声をかけて先に空へ舞い上がっていった。


「……何だ?今のは。つまり、どういうことだ?」

 クローは目をしばたたかせて、その背中を見送る。


 それを見守るラッシュは、今の言葉が、きちんと頭に入ってこないのだろうと思っていた。 後ろから声が漏れる。


「おい、クロー。……危機感すらもってないのか?」

「何の危機感だよ?」

「人の気持ちに鈍感すぎるにもほどがあるぞ!」


「え?いや、ウイングがハートのことを好きなんだなってことは見ててわかってたけど!?」


「!……お前たち異世界人は、恋愛感情ぶっ壊れてるのか。」

(それとも今の若者たちはこんな他人事のように意見を述べ合うものなのだろうか?ええい、モヤモヤする!)

 理解の追いつかないラッシュは1人でモヤモヤしていた。


「それでは我々も行こう。フィンストリオンの王宮図書館へ!」

 ブレインが堂々と声を張り上げ、指揮を執る。


「ラッシュ、先導を頼むっ!」

「あ、ああ。私たちも出発しよう。そう、フィンストリオンでの調査が急務だからな。」

 ラッシュが腑に落ちない顔をしながらも淡々と告げると、レイピアの柄に手を添え、飛行魔法を展開した。


 その身体がふわりと浮き上がるのを見て、クローも「よし」と一声。カイの背へと軽やかに飛び乗り、鋭く手綱を引いた。

 飛竜の翼が大きく広がり、地を払うような風が舞う。

 スピードを上げて前に出るラッシュと、その後ろにヴァルハイトを駆るブレイン、ゼルフィードに跨るウイングも続く。


「行くぜ!カイ!」



 フィンストリオン――

 それは新たな手がかりと、さらなる戦いの予感が眠る地。

 ブレイン一行は、風を裂き、空を翔けて――

 ヴェルランディアの空に別れを告げ、王都フィンストリオンへと向かって飛び立った。


ラッシュ「恋愛下手か貴様らはっ!」

クロー「じゃあ、ラッシュは良い恋愛してきたんだな?エルフだしな長寿なんだろう?先輩として何かアドバイスはないんですか?」

アルゼ「是非、聞いてみたいものですね!」

ラッシュ「……私は……。騎士団長だから……。」

クロー「じゃあ、最近あった異性との交流とかでいいから、何かないんですか?」

ラッシュ「最近あった異性との交流???!!!」


・「ラッシュ、メシだぞ。たくさん食うが良い!何?もう食いきれんだと?こちらに寄越すんだ、勿体無いからその食べかけはオレが食べよう。その水もオレが飲もう、その口の中に入っているのもだ!」

・「すまんなラッシュ、旅の宿を一つしか取ることができなかった。君がベッドを使って休んでくれてかまわない、オレはしょうがない、しょうがないから……オレが、君の掛布団になろう!」

・「ラッシュ、ちょっと聞きたいことがあるんだが……今日はどんなパンツを履いてーーーーー!」


ラッシュ「おおおおおおおっ!!!!あの変態、ぶっころしてーーーー!!!!!」

クロー「ラ、ラッシュさーん!!」


ーーーーラッシュが来てから、この小説、お笑い要素増えてない?

ーーーーーーーーーこれだから、お笑い小説界の住人は!

ーーーーーーーーーーー誰がお笑い界の住人だっ!(怒

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