表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/57

第二十四話: ウロボロジア

 天空城から脱出したクローたちは、光の扉を抜けて天空の祭壇へと帰還した。


 そこには、未だ温かな戦場の余韻が残っていた。先ほどまで多くのドラゴンナイツたちが整列してガーデへと進軍した場所。今、その場に残されたのは、ブレイン、クロー、ヴァニット、そして意識を失ったままのハートと3体の飛竜だけだった。

 クローは意識を失ったハートを慎重に抱えながら、荒い息をつく。


「……戻ってきたか。」

 ブレインが低く呟き、荒い息をつきながら剣を鞘に戻した。


「……俺たちだけになっちまった。くそっ……!」

   クローは拳を壁に叩きつけた。その音が、静寂の遺跡に響き渡る。


 祭壇の中心に、静かに佇むゼルフィードが彼らを出迎えた。主の帰還を待っていたが、その瞳には不安が浮かんでいるように見える。


「ゼルフィード……。」

「ロークス。何カッコつけてんだよ……!」

 2人は、仲間の死を噛み締め、途方に暮れていた。


***


 その時――。


 突然、遺跡の空間が歪み始めた。

 まるで闇そのものが引き裂かれるかのように、黒い裂け目が生じ、そこから重い足音が響いた。


「……!?」

  クローが素早く構える。


「……何だ!!」

 ブレインが即座に剣を構え、ヴァニットも警戒を強める。


 裂け目の中から姿を現したのは、巨大な狼のような獣人ローランだった。そして、その腕に、傷だらけのウイングを抱えていた。


「……忘れ物だ。」

 ローランはボロボロの状態で膝をつき、慎重にウイングを降ろす。


「ロークス?!」

 クロー達が駆け寄ると、ウイングは薄く瞼を開き、かすれた声を漏らした。


「……へへっ、死にそびれちまったぜ……。良い感じのセリフで決めれたと思ってたんだけどな」


「………お前なぁ……。」


「……まあ、俺にもまだやらなきゃいけないことがあるしな。ほんとは仲間と共に果てたかったけど……神様ってヤツが、まだ生きてろって言ってくれたのかもな」


「ロークス、どこまでもキザな男だ。ありがとう、生きていてくれて……。」


 ブレインは涙を堪えながらそう言い、ナイツの3人はウイングの体を囲って強く抱きしめた。


 ヴァニットと目が合うウイング。


「ちょっ!おぅい!ヴァニットがいるんだけど?!あ、いてててて!!キズが!何で?何で俺はヴァニットに組み付かれてんだ!!」


 暴れるウイングを組み伏せながら、ヴァニットはきょとんとしてクローとブレインを見る。

「これが正解ではないのか?」


「あ、ああ。お前は抱きつかんでいい。」

 ブレインの冷静な返答と、ウイングの生存に安堵の空気が一瞬流れたが、すぐにローランが口を開いた。


「……今は、そんな悠長なことを話している場合じゃないだろう。無駄に戦力を減らしおって。貴様らのその力でガーデに行っても無駄だと言ったはずだ。」

 ローランはゆっくりと立ち上がり、血まみれの手で額の汗を拭った。


「しかし、戦況はこちらが優位のはずだった。あの蛇竜の大群が出てくるまでは……。あんなもの、今までの戦いでは一度も見たことがなかった。」


「あれか、あれは痛覚を持たない闇の幻影。ナグ・サハルの作り出した拠点防衛用の奥の手だ。」


「ナグ・サハルだって!?あいつがみんなを!」

 ナグ・サハルは、呪術を使うコブラの祈祷師、かつてクローの相棒フレイアの命を奪った敵だ。クローはその名前を聞き、怒りが込み上げてきた。


「落ち着けクロー、今、憤ってもどうしようもない。」

「くっ……。そうだな………。そうだ、ローラン。何故ウイングを救ってくれたんだ?そんなボロボロになってまで……」


 ローランはウイング以上に身体に傷を負っていた。武器による殺傷傷ではなく、爪や牙などの傷跡だ。すなわち、ローランはナイツではなく、ガーデからの攻撃を受けて、ここに来たのだろう。


「こいつは強い。悪魔達の大群を前にたった1人でよく戦っていた。亡くすには惜しいと思ったからだ。」

「だけど、あんたはガーデの幹部のはずだ!なのに、どうして……。」

 ローランは静かに口を開いた。



「……俺は我が主、いや、『ウロボロジア』が天空島を乗っ取る前に、天空島で生まれた者だ。」



 その言葉に、クロー達の表情が険しくなる。

「ウロボロジア……それが敵の……ガーデのボスの名前か?」


 クローが低く呟く。ローランは静かに頷き、続けた。

「奴は、この世界に生まれた “最も純粋な闇の存在” だ。」


「最も純粋な闇……?」

 ブレインが僅かに眉をひそめる。


「かつて、この世界の賢者たちが禁断の魔法を研究していた。それは、光と闇の均衡を操るものだった。だが、彼らはその均衡を制御できなかった。封印されていた闇のエネルギーを誤って解き放ってしまった結果、誕生したのがウロボロジアだ。」

 ローランは拳を握りしめながら言う。


「つまり……実験の失敗で生まれた“化け物”ってわけか。」

 クローが唇を噛みしめる。


「いや、違う。」

 ローランの目が鋭く光る。



「ウロボロジアは“化け物”ではない。奴は、意思を持ち、冷酷な知性を持った “災厄” だ。」



「……奴の目的は?」

 ローランは空を見上げ、低く呟く。



「奴の目的はただ一つ。永遠に続く混沌と戦乱を作り出すこと。 」



「世界を支配するつもりはないのか?」

 ウイングが苦しげに問いかける。


「ああ……奴は“支配”すらも興味がない。秩序も平和も、すべて破壊し尽くし、世界をただ終わりなき戦場にしようとしているんだ。」

「……なんてやつだ……。」


「待て、ヤツと私がした約束はどうなるんだ?!」

 ヴァニットが喰い気味にローランに詰め寄る。


「安らぎを与え、仲間のところに帰すという話だったか?ヴァニット、ウロボロジアはハナからそんな約束を守る気はない。俺の故郷を奪ったように、お前の故郷はすでに破壊されているだろう」


「くそっ!やはりハートが正しかったのか!」

 ヴァニットは拳を握りしめ、怒りに震えた。


「俺は天空島を取り返すため、あえてウロボロジアにつき、勇敢な戦士たちが現れるのを待っていた。だが……残念だ。今のお前たちの力では、もはやウロボロジアに近づくこともできん。」

 ローランは断言した。


「じゃあ、どうすればいいっていうんだ?」

 クローが強く問いかける。


「どうするかは……俺には分からん。」

 ローランは薄く笑いながら肩をすくめる。


「言うなら……神に近いほど強くなる、とかか……。」

 その場に沈黙が訪れた。


 あまりにも曖昧で、あまりにも遠い言葉。だが、それは紛れもなく真実だった。

 ローランは立ち上がり、ゆっくりと背を向ける。


「ガーデに戻るのか?」

 クローが問いかけると、ローランは足を止めた。


「俺とヴァニットはすでに裏切り者だ。もう戻れん。ウロボロジアを倒すために、俺は俺のやれることをするだけだ。」


 その言葉に、ヴァニットがじっと彼を見つめる。

「ローラン、私と一緒に、こいつらの所に行かないか?」


 彼女の提案に、ローランは静かに振り返った。

「ナイツにか?」


 一瞬、思案するように瞳を細める。

 そのまま彼は小さく笑い、空を見上げながら呟いた。

「そうだな……今はまだ、な。」

 ローランの姿が闇に溶けていく。


 風が吹き抜け、彼が立っていた場所には、ただ夜の静寂が残された。

 クローはその場に立ち尽くしながら、拳を握りしめる。


「神に……近いほど強くなる、か。」

 その言葉が、脳裏に焼きついて離れなかった。



ヴァニット「ローラン、私と一緒にナイツのとこ行こう」

アルゼ「お待ちなさいヴァニット。あなた、ちゃんとローランの面倒みれるんですか?」

ローラン「!!?」

ヴァニット「え?うん……。」


アルゼ「本当に最後まで責任持てますか?連れてきてもいいけど、大丈夫ですか?世話ができないと困りますよ。ローランを飼うって簡単なことじゃないですし、毎日の世話や健康管理も必要ですよ。途中で投げ出したりしませんか?もし何かあった時にちゃんと対処できますか?ただ飼いたいだけじゃなくて、ちゃんと世話する覚悟があるのか確認したいのですけれど、本当に大丈夫ですか?」


ヴァニット「えぇえ……………。じゃあ…………返してくる。」

 


ーーーーーーーーーーーーーーワォン?!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ