第十七話: 獣人ローランとの一騎打ち
ドラゴンナイツの部隊が炎の渓谷に差し掛かった頃、空気が重く変わるのを全員が感じ取った。大地からは熱風が吹き上がり、マグマの川が激しく噴き出す音が響いている。それに混じって、不気味な咆哮と鋭い金属音が空から聞こえた。
「待って…あれは何?」
フレイムが険しい表情で前方を指差す。
その指先を追った瞬間、ドラゴンナイツ全員の目に焼き付いたのは、炎の渓谷の上空に浮かぶ一筋の影だった。
「獣人?!」
フロストが鋭い声で叫ぶと、その影が徐々に形を現した。それは、鋭い目を持つ狼の獣人だった。彼は灰色のマントを纏い、ブロンズ色の鎧をまとっていた。その身に飛竜の翼はない。それでも彼は宙に浮いており、その動きには重力の束縛を感じさせない圧倒的な威圧感があった。
右手には、まるで大地をも断ち切るかのような巨大な剣を握りしめ、静かにドラゴンナイツの部隊を見下ろしている。
「奴は…これまでの敵とは桁違いだ!」
ボルトが険しい声で言った。
クローは鋭い目でその獣人を睨み、手綱を強く握りしめる。
「何者だ…お前は。」
その問いに、獣人はゆっくりと剣を持つ手を肩に乗せ、低い声で答えた。
「ローラン…それが俺の名だ。」
「ローラン…天空城の幹部の一人だ。」
ブレインが剣を構えながら静かに言葉を紡ぐ。
ローランはその視線をブレインに向けることなく、ただクローを真っ直ぐに見据えた。
「全員、気をつけろ。奴はただの戦士じゃない!」
ブレインが指示を飛ばし、ナイツ全体が一斉に武器を構える。だが、ローランはそれを嘲笑うように、ふっと息をつき、静かに口を開いた。
「クロー、お前に一騎打ちを申し込む。飛竜などに頼らず、お前自身で来い。」
その低く響く声には威圧感があり、クローの胸にずしりと響いた。
「いいぜ。お望み通り、お前と直接決着をつけてやる。」
クローはカイを降りると、漆黒の鎧に包まれた自身の肉体に手をやりながら、両腕に装着された鋭い双爪を展開した。
ファングが後方で声をかける。
「クロー、気を抜くなよ!」
「大丈夫だ、ファング。これは俺がやるべき戦いだ。」
クローがゆっくりと地面に足を踏みしめ、間合いを測るように構える。一方、ローランも巨大な剣を手にゆっくりと歩み寄り、その金属靴が渓谷の岩肌を軋ませる。
「俺にどこまで食らいつけるか、試してやる!」
ローランが低く吠えた瞬間、彼は巨大な剣を振り上げ、一気にクローへと突進した。
「遅い!」
クローはすかさずその攻撃を鋭いステップでかわし、逆にローランの懐へと滑り込む。そして、両腕の爪を振りかざし、ローランの鎧の隙間を狙った。
「ぐっ…!」
クローの一撃はローランの左肩をかすめ、その鋭い爪がブロンズ色の鎧の表面に浅い傷を刻んだ。
「やるじゃないか…だが!」
ローランは剣を片手で振り回し、クローを強引に引き離す。渓谷の風が二人の間に吹き込み、両者は再び間合いを取った。
「思っていた以上に速い。だが、力の差は歴然だ!」
ローランは巨剣を両手で構え、強烈な突きを繰り出す。その一撃はまるで壁を砕くかのような破壊力を持ち、渓谷の岩肌を粉々に砕いた。
しかし、クローはその重い攻撃を読み切り、直前で身を翻して躱す。
「力だけだな、ローラン!」
クローは回避と同時にローランの側面に回り込み、鋭い爪を横一閃に振るった。その一撃はローランの鎧を深く傷つけたが、彼は全く動じない。
「口は達者だが、まだまだ甘い!」
ローランは反撃に転じ、剣を振り下ろすと同時にクローに強烈な蹴りを放った。その蹴りはクローの腹部に直撃し、彼の体を数メートル後方へと吹き飛ばした。
「ぐっ…!」
クローは岩壁に激突しながらも、すぐに膝をつき、再び立ち上がる。
「なぜ、すぐに追撃しない。一騎打ちなのに殺気をまるで感じないぞ、 お前の望みはなんなんだ!」
クローが荒い息をつきながら問いかける。
ローランは剣を下ろし、静かにクローを見つめたまま言葉を放つ。
「ふっ、最初に言ったはずだ、試すとな。一騎打ちなら全力で来るだろうと踏んでのことだったが。クロー…お前との戦いで、確信したことがある。今のその力では俺の主を倒すことはできん。このままガーデに侵攻しても死ぬだけだ。」
「何だとっ!?」
ローランはその言葉を残すと、戦いをやめ、宙に舞い上がり彼方へと飛び去った。クローは岩壁に背を預けたまま、深い息をついた。
「俺の主を倒すことはできん…か。」
その言葉には、単なる敵意ではない何かが込められていた。まるで試練を与えられたような感覚に、クローは胸を締め付けられるようだった。
「クロー、大丈夫か?」
ブレインが歩み寄り、肩に手を置いた。その目には、クローへの信頼と、戦士としての温かい励ましが宿っている。
「…ああ、ローランが何を考えているのか分からないが、確かに奴の言葉には真実味があった。俺たちは、まだ力が足りないのかもしれない。」
「力が足りない…だと? クロー、お前がそんな弱気なことを言うなんてな。」
ファングが不敵な笑みを浮かべて言うが、その声にはどこか気遣いの色があった。
「分かっている。だが、今は前に進むしかない。」
リューガの言葉にクローは小さく頷いた。ローランの言葉に一抹の不安を抱きつつ、ドラゴンナイツたちは次なる試練へと向かって進み始めた――。
ローラン「今の力では、俺の主を倒すことはできん。(キリッ)」
アルゼ「スッ(干し肉)」
ローラン「っへっへっへっへっへっへっへ」
アルゼ「お手っ!」
ローラン「(ピシッ)」
アルゼ「お座りっ!」
ローラン「(シタッ)」
アルゼ「取ってこぉい!」
ローラン「ワンワン!!」
ドラゴンナイツ「……………………」
ーーーーーーーーイヌなの?




