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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

エレベーターで殺人鬼と2人きり

作者: ama

俺達の日常は少しのきっかけでいとも容易く崩れ去る

交通事故

誘拐

地震

台風

清く正しく美しく生きてきた者でも

突然の不幸に巻き込まれて

俺達の日常は崩れ去る


そして俺は突然の不幸に巻き込まれることになった

マンションの自室から出て仕事に出かけようとエレベーターに乗る

エレベーターが閉まる瞬間に血塗れのナイフを持った男が乗ってきた

「殺されたくなければ大人しくしろ!!!」

男がそう叫びエレベーターは閉まる

俺はあまりの恐怖にその場にへたり込む

エレベーターが動き出したその時


ガタッ


エレベーターは動きを止めた


血塗れの男がボタンを押しても開かず

故障か停電か…俺達は2人閉じ込められてしまった


殺人鬼とエレベーターで2人きり

平和な日常に終わりを告げて

非日常の幕が上がる




俺の名前は櫻井真琴

オリンピックの体操個人総合金メダル2連覇をしたスーパースターだ

…正確には元スーパースターだ

俺は体操競技を引退してから

世間から忘れられて

今はただの子供の体操の教師だ

引退をしてからもう4年が経ち、今年は後輩達がオリンピックに挑戦した

俺の記録はあっさりと抜かれて

新世代の幕開けをしている

俺は過去の人であり

スーパースターでもなく

ただの一般人だ

栄光を手にした後の無力感は虚しく

ただ目標の為にひたすら努力していた毎日が恋しくなる

仲間と励まし合いながら日々努力する日常は大変だったけれど

もう一度戻れるなら戻りたいとそう願う

今は生活は家族もいて友人がいて恋人がいて

普通に暮らしている

なんだか腑抜けになってしまったようで

少し物足りなさを感じる日々だ


今日も体操教室の出勤だ

体操教室は午後からなので、毎朝ゆっくり出勤出来るのはこの仕事のいいところだ

俺はいつも通り自室から出てエレベーターを乗る


すると突然走って乗り込んで来た男は血塗れでナイフを持っており


“明らかに誰かを殺した後だった”



「殺されたくなければ大人しくしろ!!!」


血塗れの男が叫ぶ


俺は恐怖のあまり腰を抜かして立たなくなってしまった

何故こんなことに…

俺の人生こんな所で終わるのか…?


「ひぃっ」


俺は情けない声を出して蹲る


「し、死にたくない!殺さないでくれ…」


消え入るような声で俺は懇願する


すると突然


ガタッ


エレベーターが止まる


カチカチカチカチ


血塗れの男がエレベーターボタンを押すがエレベーターは開かない


故障か停電か…俺達は閉じ込められてしまった


殺人鬼と2人きりなんて冗談じゃない…恐怖で体が震えていると


「アハ…アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」


殺人鬼は急に奇声を上げて笑い出した

失禁して気を失うぐらい恐ろしい

頭がイカれてる


「アハハハ…ハァ…俺はもうダメでしょうね。絶対逃げられない。この扉が開けば警察に捕まって俺の人生が終わる。なんでこんなことなっちゃったんだろうな。ごめん。お父さん。お母さん。」


「…俺を殺さないのか?」


「やだなぁ。俺は猟奇殺人犯じゃないよ?突発的に殺してしまっただけ。何も罪のない貴方を殺すなんてしませんよ。」


「じゃあ…そのナイフを俺にください。信じられないので…」


「どうぞ。」


あっさりと殺人鬼は俺にナイフを渡した

推理モノで殺人犯が捕まって犯人が観念するようなものだろうか


「俺はもうすぐ牢屋に入れられる。せっかくだから俺の話を聞いてくれないか?これも何かの運命だからさ。」


「お好きにどうぞ…」


「俺の名前は犬飼努。君は?」


「櫻井真琴です。」


「櫻井君。変なことに巻き込んでごめんね。」


「いえ…お気になさらず…」


「俺さ。所謂ブラック企業に就職しちゃって。もう朝から夜まで働きづめさ。休みなんてありゃしない。2ヶ月後にやっと1日休みが来たと思えば会社の携帯が鳴り止まなくて結局1日中仕事しか出来ないのさ。」


「それは大変ですね…。」


「ウエディングプランナーの仕事なんだけどさ。人生1度きり結婚式だから華やかで夢がある職に就けたと思ったのにさ。実際は新郎新婦の奴隷さ。休みなんてない。あっちは人生に1度きりの晴れ舞台なんだ。俺達は休み返上で毎日働かないといけないのさ。」


「立派じゃなないですか。」


「そんなことないよ。休みがない上に俺は上司のパワハラも受けていてね。上司の仕事も俺が殆どやらなくちゃいけないし、俺の仕事は何かといちゃもんをつけられてやり直しさせられるし。本当に地獄の日々だったんだ。」


「そうだったんですね…」


「それで今日はお前の部屋をチェックしてやるとか言い出してさ。無理矢理部屋に押しかけて入ってきたんだ!!あいつ!!プライベートの生活が業務に支障を与えるから俺はお前の部屋をチェックする義務があるとか言い出してさ!!それで…俺の部屋に入られて見つかってしまったんだ…」


「何をですか…?」


「俺のお宝の同人誌も!エロ本も全て!!性癖が女児に興奮することもバレて…お前は最低な人間だと罵られて…!!勝手に家に入ってきて人のプライベートを覗くやつの方が最低だと思わないか!?俺はロリが好きだ!!でもリアルでは絶対に手を出さない!!妄想の2次元で楽しむぐらい何がダメなんだ!!!」


「それで…?」


「こいつが明日会社出勤したら俺の性癖は全員に知られてしまう。だから…俺は…」


「殺したのか?」


「…そう。怒りに身を任せて台所からナイフを持ってきてそのまま心臓をグサリとね。1回で死ぬか不安だったから3回ぐらい刺したよ。全く動かなくなって死んだのを確認してこのエレベーターに乗り込んだわけさ。」


「…。」


「滑稽な話だろう?」


「いや…人が死んでるし。全然面白くないですけど…」


「それもそうか…」


暫く沈黙が続いた


「それでこれからどうするんですか?」


「大人しく警察に捕まって刑務所に入るよ。」


「その後は?」


「その後…?」


「刑務所から出てきたらどうするんです?家族は貴方を待っているでしょうか?恋人は貴方を待っているでしょうか?社会は貴方を許してくれるでしょうか?」


「…そうだね。何もかも失って生きる意味もない。刑務所から出てからの方が本当の地獄が始まるのかもしれないね。」


「生きていてもこれから先いいことなんて1つもないんじゃないですか?」


「…。」




「俺が殺してあげましょうか。」



「…は?」



「これから先、生きていても何もいいことがないならここで死んだ方がいいんじゃないか?」



「何を言っている…?ここで俺を殺す?そんなことすれば櫻井さんが殺人犯で刑務所生きるだぞ?」


「俺は殺人犯にならないよ。俺が犬飼さんを殺しても恐ろしい殺人鬼を倒した正義のヒーローさ。」


「…。」


「殺人鬼と密室で2人きり。襲いかかる殺人鬼から抵抗して殺してしまったなら正当防衛だろう?」



「そ、それは…」


「犬飼さん。貴方はこれからさき何もないんですよ?ここで死んだ方がいいですって。」


「…こわい。」



「え?」


「死ぬのはこわい!!この先地獄でもここで死ぬのは嫌だ!!!」


「ハハハ!殺人鬼だから恐ろしいモンスターかと思えば犬飼さんはただの臆病者だ。ブラック企業だかなんだか知らないけれどそんなに嫌なら仕事を転職すれば良かっただけじゃないか。」


「それは…上司が怖くて…言い出せなくて…」


「ほら。ただの臆病者さ。殺した理由だって性癖がバレるのを恐れてだろう?そんな理由で殺すなんて笑い話にもならない最低最悪の殺人鬼だよ。犬飼さんは自分のことしか考えていない。ただの臆病者の殺人鬼さ。」



「…俺を本気で殺すつもりか?」



「勿論。そのつもりさ。」



犬飼さんはナイフを奪おうと俺に近づくが俺は持ち前の身体能力でひらりと躱す


「おっと。ナイフを奪ってどうするつもり?」


「…殺してやる。」


「罪のない人は殺さないんじゃなかったのか?」


「お前が俺を殺すなら俺がお前を殺してやる!!」


「いいよ。」


俺はナイフを犬飼さんに渡す


「…は?」


「殺せるものなら殺してみろよ。」



「俺が臆病だから出来ないと思っているのか?俺はもう1人殺しているんだ。今更もう1人増えたって何も変わらない。俺は容易くお前を殺せるぞ。」


「俺も全力で犬飼さんを殺します。」


「…なんだと?」


「俺は素手で犬飼さんを殺すことが出来るんですよ。これでも力が強い方でね。」


「…。」


「そっちはナイフを持っているんだ。こっちの方が不利だろう?」


「ハハッ。櫻井さんはどうして俺を殺そうとするの?何もメリットないのにさ。」


「別に。ただの好奇心さ。人を殺せるチャンスなんて人生でないからね。」


「…俺より殺害理由ひどくないか?」


「犬飼さんよりマシだよ。」


俺は笑って答える


犬飼さんはそんな俺を静かに眺める


「さぁ。今度の殺し合いは突発的ではなく、明確に殺意を持ってお互いやるんだ。犬飼さんは悲劇の主人公きどりも出来なくなるね。俺達は立派な猟奇殺人鬼さ。」



「臆病者から猟奇殺人犯になるなら箔がついていいかもな。」



「そうこなくちゃね。」


犬飼さんはナイフを握りしめ、俺に向かって殺しに来る


俺はーーーーー













チン



エレベーターの扉が開く

エレベーター内は血みどろになっており

死体が1つ転がっている



犬飼努の死体だ



俺は犬飼さんのナイフの攻撃を避け、その後拘束をして首の骨を折って殺した



こんなことをして正義ヒーローになれるわけない

俺は殺人犯だ


気分が高揚する

家族も友達も恋人も全て過去のもの

俺は今日から猟奇殺人犯櫻井真琴


1人殺せば殺人鬼でも1000人殺せば英雄だ


つまらない日常は終わり

最高に刺激的な非日常が始まる



















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