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23話:起きたらゴブリン殴っちまった

ライゼンは、倒れたゴブリンを見つめながら考えた。「待てよ……こいつをただのゴブリンとして倒すだけじゃもったいない。視界共有の魔法を使えば、ゴブリンの視界を借りてねぐらまで潜入できるかもしれない。場所さえわかれば、後は一網打尽にできる。」


ライゼンはすぐに行動に移すことにした。倒れたゴブリンに手をかざし、静かに呪文を唱え始める。「視界共有……そなたの目となり、我に見せよ。」魔力がゴブリンに流れ込み、ライゼンの視界が少しずつ変わり始めた。ぼんやりとした闇が晴れ、ゴブリンの視界が彼に重なっていく。


ゴブリンは、まだ気絶したままだったが、ライゼンはその意識を無理やり揺り動かし、無理なく起き上がらせた。ゴブリンが周囲を見渡す視界がライゼンに共有され、森の景色が彼の脳内に映し出された。


「よし、これで準備は整った。このゴブリンに後を追わせれば、ねぐらの場所がわかるはずだ。」


ライゼンは、ゴブリンをそのまま解放し、森の奥へと自然な動きをさせるように操り始めた。視界を共有しているので、ライゼンはその目を通して、ゴブリンが歩く道や、森の風景をすべて把握できる。時間が経つにつれ、森の奥深くへ進んでいくゴブリンの姿が、ライゼンに次第に確信を与えた。


「もう少しだ……ゴブリンのねぐらを突き止めてやる。」


ライゼンはゴブリンの視界を通して、30分ほど森の中を歩き続けた。ゴブリンの小さな足で進む道は、所々で急な斜面や根が張り巡らされた道が続いていたが、ゴブリンにとっては慣れた道のように、問題なく進んでいった。


やがて、鬱蒼とした木々の間から、岩肌が見えてきた。岩の裂け目がぽっかりと口を開けており、ゴブリンが自然とそこに向かって歩みを進める。ライゼンはその光景に目を凝らしながら、胸に緊張感が走った。


「ここが……ゴブリンのねぐらか?」


ゴブリンは岩の裂け目に入り、暗い洞窟の中へと進んでいく。内部は予想以上に広く、湿気を帯びた空気が漂っていた。ゴブリンが足を進めるたび、遠くから聞こえるかすかな物音が耳に入る。それは、動物の唸り声や、石がこすれる音……そして、微かに人間の声らしきものも混じっていた。


ライゼンはゴブリンを進ませ、洞窟の奥深くにある広い空間へとたどり着いた。そこに広がる光景に、ライゼンは思わず息を呑んだ。


壁際には鉄製の柵が設けられており、その中に人間がとらわれているのが見えた。数人の男女が疲れ果てた表情で、座り込んでいる。ボロボロの服をまとい、食事も満足に取れていない様子で、痩せ細っていた。恐怖と絶望が彼らの顔に張り付いている。


「これは……捕虜か?」ライゼンはゴブリンの視界を通して、その場の全貌を把握しながら、状況を冷静に見極めた。


とらわれている人間たちは、おそらく村や近隣の町から連れてこられたのだろう。ゴブリンたちは食料や労働力として彼らを使うつもりなのかもしれない。


「これはまずい……早く救出しなければ。」ライゼンは視界共有を解除し、現実に戻った。ゴブリンのねぐらの位置は完全に把握できた。今後の行動計画を練るため、まずは仲間にこの情報を伝える必要があった。


「すぐに動かないと……だが、慎重に進めなければ、捕虜たちの命が危ない。」


ライゼンは視界共有を解除し、意識を現実に戻す。洞窟内に強力な個体は見当たらなかったが、人間の捕虜4人が確認できた。彼はすぐに自宅へ戻り、杖、ローブ、そして指輪を入れた袋を手に取ると、すぐに食堂へ向かった。


食堂に入ると、エリオン――ダークエルフの女性戦士――がテーブルに座っていた。鋭い銀髪が肩に流れ、瞳は冷静さと鋭さを宿している。ライゼンは、急を要する状況を短く説明する。


「ゴブリンの巣だ。捕虜が4人、確認した。」


エリオンは無言で頷き、すぐに2階へと駆け上がった。彼女の動きは素早く、無駄がない。ライゼンがエリオンの準備を待つ間、彼も内心の緊張を感じていた。


10分後。


エリオンは武器と防具を完全に装備して戻ってきた。薄紫色の革鎧が彼女のしなやかな体にフィットし、背中に背負った双剣が戦いに備えて輝いていた。その静かな眼差しは、彼女が完全に戦闘モードに入っていることを示している。


「北だ。徒歩30分の距離。捕虜は必ず救出する。」


ライゼンは簡潔に状況を伝える。エリオンは無言で頷き、二人はすぐに食堂を飛び出して北の方向へ走り出した。


朝の冷たい風が顔を打ち、森の道を駆け抜ける二人の足音が静かな中に響く。エリオンの長い脚は軽やかで、ライゼンは彼女の後を追いながらも、緊張が身体中を駆け巡るのを感じていた。


ライゼンとエリオンが岩の裂け目を発見し、周囲の気配に敏感になっていたその時、茂みから突然2匹のゴブリンが飛び出してきた。


「来たか…」ライゼンが呟いた瞬間、エリオンは迷わず反応した。


「私に任せて。」


エリオンはすでに武器を構えており、鋭い目つきでゴブリンたちに狙いを定める。次の瞬間、彼女は軽やかに前に飛び出した。ダークエルフの敏捷さと戦士としての訓練が生きて、動きはまるで風のように速い。


まず1匹目。ゴブリンが武器を振り上げる暇もなく、エリオンの剣が鮮やかな弧を描いてその喉元に突き刺さった。血しぶきが舞うが、彼女はすぐに剣を引き抜き、次のゴブリンに向かって旋回するように動いた。


「もう一匹!」


2体目のゴブリンが驚き、後退しようとする。しかしエリオンは容赦しない。素早い横薙ぎの一撃がその胸を斬り裂き、ゴブリンは苦しむ間もなく地面に崩れ落ちた。


鮮やか、そして一瞬だった。エリオンは呼吸を整えながら剣を軽く振って血を払うと、冷静にライゼンの方を振り返った。


「2匹とも片付けたわ。次に進もう。」


ライゼンはその華麗な戦いぶりを見届け、軽く頷いた。「さすがだな…ありがとう。」


二人は岩の裂け目をじっと見つめた。


ライゼンとエリオンは、狭い洞窟の入口に立っていた。暗闇が奥深く続いており、湿気と共に不気味な静けさが漂っている。


「狭いな…」エリオンが呟く。「スケルトンを召喚しても、動きが制限されそうだ。」


ライゼンは頷き、短く伝えた。「デバフと毒系、移動阻害を中心に使う。影のオオカミを召喚する。」


言葉が終わると、ライゼンは呪文を唱えた。暗い影から現れたのは、影の力を宿した10匹のオオカミたちだ。彼らはまるで闇から生まれたかのように、静かに並び、ライゼンの指示を待っている。


「行け、斥候と強襲の役目だ!」ライゼンが命じると、影のオオカミたちはすばやく洞窟の奥へと突撃していった。彼らは敵に気づかれにくい特性を持ち、静かに獲物を狙っている。


エリオンはその様子を見て、すぐに動き出した。「私たちも行こう。」


二人は影のオオカミたちの後を追って、慎重に洞窟の中に進む。壁は湿っていて、狭い通路に圧迫感がある。ライゼンは周囲の気配を感じながら、エリオンと共に進んでいく。


しばらく進むと、影のオオカミたちが静かに身をひそめ、洞窟の奥で動きがあった。ゴブリンの集団が、何かを話し合っているのが見えた。


「敵がいる…」エリオンが小声で言った。「準備を整えて、私が先に攻撃する。」


ライゼンは頷き、影のオオカミたちに指示を出す。「移動しろ、敵を襲え!」

オオカミたちは、まるで影から抜け出るように、一斉にゴブリンたちへ向かって突撃した。彼らは素早く動き、ゴブリンたちに襲い掛かる。


影のオオカミたちは、洞窟の奥深くで待ち構えていたゴブリンたちに一斉に襲いかかった。闇から現れた彼らの姿は、まるで悪夢のようで、恐怖を引き起こす。


最初のオオカミがゴブリンの一匹に飛びかかると、瞬時にその首筋に噛み付き、鈍い音を立てて倒した。オオカミの鋭い牙が肉を裂き、血が岩に滴り落ちる。その瞬間、他のオオカミたちも次々と攻撃を開始した。


「うわぁ!」と叫び声を上げるゴブリンたち。彼らは次々と仲間が襲われる様子に恐れおののき、混乱の中で反撃しようとする。しかし、影のオオカミたちは素早く動き、次の獲物を狙う。彼らはゴブリンの周囲を駆け回り、影の中から姿を現し、またすぐに闇の中に消える。


一匹のオオカミが、何かを見つけると、前足で地面を叩きながら、別のゴブリンに飛びかかる。オオカミはその体を捉え、鋭い牙を突き立てて食い散らかす。周囲は血の匂いに包まれ、ゴブリンたちの悲鳴が響き渡る。


エリオンが冷静に状況を見守る中、ライゼンはその光景に心を奪われた。影のオオカミたちが繰り広げる残虐な舞踏は、まさに命の力を持つものとしての姿を見せていた。


「すごい…」エリオンが呟く。「彼らは驚くほどの力だ。」


影のオオカミたちは、次々とゴブリンたちを襲い、その身を食い散らかしていく。洞窟内には、彼らが生み出した混沌とした状況が広がっていた。混乱の中で、恐怖に怯えるゴブリンたちは仲間を助けることもできず、一方的な攻撃を受け続ける。


影のオオカミたちの巧妙な動きと、鋭い攻撃は止まることなく、闇の中で再び姿を消す。やがて、洞窟内には倒れたゴブリンたちの姿と、血で染まった地面が広がっていた。


エリオンは冷静な目で洞窟の奥を見つめ、唇を薄く引き結んだ。「この先には上位個体がいるはずだ。私がそれを任せろ。」


彼女の声には決意が満ちていた。エリオンは素早く武器を構え、目の前の影のオオカミたちを見回す。彼女はその動きから、何か特別な力を感じ取っていた。


「私の動きに合わせてくれ、ライゼン。影のオオカミたちはそのまま斥候を続けて、敵の動きを見極めてくれ。」


ライゼンは頷き、影のオオカミたちに意識を集中させる。彼らは引き続き奥に潜入し、敵の様子を探る。エリオンはライゼンの目を見つめ、静かに合図を送った。


「行くぞ!」エリオンが叫ぶと、彼女は一気に洞窟の奥へ突進した。彼女の動きは流れるように滑らかで、まるで影の中から生まれたかのようだった。ライゼンも続き、エリオンの背後で守りを固める。


洞窟の奥に進むにつれ、空気は徐々に重くなり、異様な気配が漂ってきた。エリオンは一瞬足を止め、静かに周囲を見回す。「この先だ、気をつけろ。」


影のオオカミたちが洞窟の奥へ進み、上位個体の気配を感じ取った瞬間、彼らは一斉に唸り声を上げた。しかし、予想以上の強敵が待ち受けていた。


影のオオカミの一体が、暗闇の中から伸びてきた爪に捕まった。冷たい闇の中で、オオカミは必死にもがいたが、その力強い爪が狼の影の体を引き裂く。エリオンの心に冷たい恐怖が走った。


洞窟の奥から、オオカミとはまったく異なる存在が姿を現した。茶色のたてがみが光を受けてきらめき、その下には大きな口が広がり、赤い舌がゆらゆらと揺れている。オオカミのような体躯を持ちながらも、さらに大きく、力強い印象を与える。


赤い目が二つ、周囲をじっと見つめている。その視線は冷たく、獲物を狙う獣のそれだ。左右に突き出た牙は鋭く、まるで獲物を引き裂くために特化したような形状をしている。しっぽの先に向かって赤く染まった毛並みが、獣の恐ろしさを一層引き立てている。


「何だあれは…」エリオンが目を丸くする。これまでのゴブリンたちとは異なる、圧倒的な存在感。彼女の心には一瞬、恐怖が芽生えたが、すぐに決意に変わる。「ライゼン、あの獣がこの洞窟の主だ。私が引きつけるから、その隙に攻撃を!」


その言葉にライゼンはうなずく。「わかった、エリオン。」影の力を集め、詠唱を始める。

「闇の深淵より、影の鎖よ、我が敵を捕らえよ!影の束縛、動きを縛れ!」

「漆黒の炎よ、我が敵を包み込め!時の流れと共に、灼熱の痛みを与えよ!」



茶色のたてがみを揺らし、赤い目が二人を捉えた。獣は低く唸り声を上げ、洞窟の空気が重くなった。「来い、私たちの力を試すのか?」ライゼンは自身の魔法の力を信じ、恐れずに前に出る。


「いくぞ!」エリオンが叫ぶと同時に、彼女は一気に突撃した。獣は一瞬ためらい、次の瞬間、驚異的な速さでエリオンに向かって跳びかかる。エリオンは素早く回避し、剣を振るった。


その刃は獣の皮膚に触れるが、思ったよりも効かない。エリオンは一瞬動揺しながらも、すぐに体勢を立て直し、再び攻撃を仕掛ける。

「ライゼン、攻撃のタイミングを合わせるぞ!」エリオンが叫ぶ。その言葉を受けて、ライゼンはチャージした魔法を開放した「シャドウバインド」「ダークフレイム」


魔法が狼のような獣を包むが、意に介さない様子だ。

ライゼンの詠唱が弾かれた瞬間、周囲が静まり返る。次の瞬間、オオカミのような獣の圧倒的な存在感が迫り、鋭い爪が空を切る。エリオンは反射的に盾を構えるが、その力強い攻撃により、盾はあっという間に飛ばされてしまった。


「くっ!」と、エリオンは唸り声を上げ、瞬時にバランスを崩しながらも、次の動きに備えた。彼女の目には決意が宿り、次の瞬間には攻撃をかわすために後退する。しかし、その動きの速さにも関わらず、獣の牙が彼女の側面をかすめた。


ライゼンは、目の前の獣に強い危機感を覚えた。急いで魔法のチャージをし直さなければならない。このままでは、エリオンが危険にさらされる。心を落ち着けて、次の呪文を口にする。


彼は手を広げ、黒いローブの下から冷たい空気を感じる。彼の目は輝く赤い光を放ち、呪文を唱える準備が整った。


「この大地の死者たちよ、我が声に応えよ。」


彼は大きく息を吸い込み、低く響く声で続けた。


「暗き深淵より、我が力を借りて、来たれ、魂のひとしずく。」



エリオンが後退しながらも攻撃をかわす瞬間、獣の爪が再び振るわれた。彼女の動きは一瞬の判断によって生まれたが、次の一撃は想像以上に速く、力強かった。剣で防御しようとしたが、その瞬間、獣の爪がエリオンの体を叩き、彼女はまるで葉っぱのように飛ばされてしまった。


「エリオン!」ライゼンの声が響くが、彼の心の中には恐れが広がる。エリオンが転がった場所で、彼女の体は硬直している。意識があるのか、ないのか、全くわからなかった。彼女の表情は無防備で、獣の強大さを感じさせる。


ライゼンは冷静さを取り戻すことを必死に試みる。彼女を守るためには、すぐに反撃しなければならない。周囲を見回し、影のオオカミたちが獣に立ち向かっているのを確認し、少しだけ時間があると踏んだライゼンは詠唱を続けた。


魔力の集中とともに死者たちの霊が集まり、ライゼンの背後に暗い影を形成する。


「死者の力、我が手に集え。死の呪詛を受ける者に、命の火を奪わせよ!」


彼は両手を前に突き出し、魔力を集める。手の中には黒いエネルギーが渦巻き、まるで生きているかのように浮遊している。


「彼の心臓を突き刺し、命の流れを断ち切れ。死の鎖よ、彼を包み込め!」


ライゼンは呪文を唱えながら、地面にひざまずく。彼の言葉はますます力強く、周囲の空気が重くなり、緊張感が漂う。


「死の影、我が敵を貫け!死者の呪詛、今ここに解き放たれよ!」


その瞬間、彼の手から放たれた黒い光が、狙った敵に向かって飛び去り、闇の中を駆け抜ける。周囲の死者たちの霊が一斉にうなり声を上げ、彼の魔法の力を増幅させていく。


「行け、我が呪いの矢よ!命を奪い、恐怖を与えよ!」


黒い光は目標に命中し、爆発的な力で周囲を包み込む。


異形の獣が、ライゼンの目の前で不気味に笑いながら言葉を発した。「その力、人の域を超えている。いずれこちら側に来ることになる…」その言葉は、まるで彼の心に直接響くような重みを持っていた。


獣は、そのまま岩の天井を強烈な一撃で突き破り、音を立てて空へと飛び去った。振り返ることもなく、その姿は一瞬で消えていく。ライゼンはその後ろ姿を見つめ、息を呑んだ。恐怖が彼の心を覆い、身体が硬直した。


「くそ…」ライゼンは膝をつき、地面に手をついた。魔力を振り絞ったことで、全身に疲労が押し寄せてくる。彼の心の中には、エリオンの無事と、獣の言葉の意味がぐるぐると渦巻いていた。


暗闇の中、彼は再び立ち上がることを決意した。エリオンが無事であることを願いつつ、すぐに彼女の元へと駆け寄る。「エリオン!」彼は叫びながら、彼女の傍に膝をつく。意識を失った彼女を見つめ、心の底から彼女を守ることを誓った。


ライゼンはエリオンを肩に担ぎながら、洞窟の出口へと急いだ。暗闇の中で彼女の体重がずっしりと肩にかかり、時折その重さに足元がふらつく。しかし、決して彼女を下ろすわけにはいかない。ようやく外の明るい光が見えると、彼は安堵の息を漏らし、出口をくぐった。外に出ると、冷たい空気が彼の顔を叩いた。


ライゼンは、肩に担いだエリオンの体重に耐えながら、洞窟の外に出た。外の冷たい風が彼の疲れた身体に触れるが、エリオンの状態を考えると、休むわけにはいかなかった。


「ひとりじゃ無理だ…」


エリオンは彼よりも背が高く、彼一人で運ぶのは到底不可能だった。何か手を打たねばならない。ライゼンはふと、村のカイルの顔を思い浮かべた。カイルはエール醸造所を任せているため、必ず村にいる。彼の手でエリオンを治療院に連れて行けば、なんとか間に合うかもしれない。


「デスロード…頼むぞ。」


ライゼンは低く呪文を唱え、暗黒の力をその身に集中させた。地面が震え、黒い霧が渦巻き始める。やがて、その霧から白骨の巨体、デスロードがゆっくりと姿を現した。重厚な鎧を身にまとい、彼の命令を待っている。


「エリオンを抱えて、村のカイルの元へ連れて行ってくれ。カイルなら、彼女を治療院まで運んでくれるはずだ。」


デスロードは無言のまま頷き、エリオンをその巨大な腕で優しく抱きかかえた。その動作は、まるで壊れやすいものを扱うかのように慎重だった。デスロードがエリオンを運び出すと、ライゼンは少しだけ安堵の息をついた。


「急げ。カイルなら…」


デスロードはエリオンを抱いたまま、静かに森の中を走り出した。その背中を見送りながら、ライゼンは再び洞窟の中に視線を戻した。


「捕虜を助けないと…」


再び洞窟へと足を踏み入れたライゼンは、深部へと進んだ。


たしか、行き止まりの左の方だったはず、、、

囚われていた人々は男1人、女3人。彼らは痩せこけ、行き止まりの部屋でうずくまっていた。

「もう大丈夫だ。ここから出るぞ。」


解放された彼らは、衰弱しているものの、なんとかライゼンの言葉に従い外へ向かう意志を見せた。洞窟を出ると、ライゼンは今度はボーンナイトを4体召喚し、それぞれに捕虜をおんぶさせた。


「村まで送り届けてくれ。カイルの元へだ。」


ボーンナイトたちは無言で頷き、捕虜を背負って歩き出した。ライゼンもまた、最後にボーンウルフを召喚し、その背に跨がる。


「行こう、俺たちも村へ戻る。」


ボーンウルフは静かに動き出し、ライゼンを背に村へ向けて走り出した。エリオン、そして捕虜たちが無事に戻れることを願いつつ、彼は深い安堵の息を吐いた。

村の遠くにかすかな灯りが見え始めた。ボーンウルフの足音は静かで、夜の静寂の中で響くことはなかった。ライゼンは風を受けながら、前方に見える村の景色に目を凝らした。ようやく、村が近づいてきたのだ。


「あと少しだ…」


ライゼンは自分に言い聞かせながら、肩の重圧が少し軽くなるのを感じた。


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