18話:夜盗団 夜狼
夜の静寂を破る音が町に響き渡り、ライゼンは緊張感に満ちた状態でスケルトンたちを配置していた。初めての警備の夜、彼は周囲の物音に敏感になっていた。突如として、遠くから低い声が聞こえてくる。「奴らが来た!」
スケルトンたちは、夜盗の動きを察知し、周囲に立ちふさがる。夜盗たちが近づくにつれ、スケルトンたちは静かに戦いを迎え撃つ。夜盗にとって、スケルトンは強敵ではなかった。しかし、彼らにとっては時間を稼ぐ障害物となる。
「なんだ、こいつらは!」と一人の夜盗が叫び、スケルトンの一体を剣で叩き切る。崩れ落ちる音が夜に響き渡る。しかし、周囲に張り付いていた他のスケルトンたちが集まり、合計20体ほどが夜盗の前に立ちはだかる。
ライゼンは、寝ている最中にスケルトンが倒される感触を感じ、眠い目をこすりながら起き上がった。急いでローブを羽織り、革靴に足を入れると、彼は決意を固めて窓から飛び降りた。
彼は北の方へ走り出す。
ライゼンが町の外れへと走るにつれ、周囲の風景が徐々に暗闇に飲み込まれていく。しかし、彼の心には焦りがなかった。夜の静寂を打ち破る音が近づいてくる。かすかに聞こえる争いの声と、金属がぶつかり合う音が混じり合っている。
「まだ間に合うかもしれない!」とライゼンは心に決め、さらにスピードを上げた。
15分ほど走った後、彼はついに町の外れにたどり着いた。目の前には、もみ合っている集団があった。夜盗たちが一つの家に押し入ろうとしているが、スケルトンが夜盗たちに群がって必死に抵抗している。ライゼンはその光景を見て、作戦が成功していることを感じた。
「急がないと!」彼はさらに詠唱を続けた。「ボーンハンター、我が命令に従え!」
その瞬間、彼の後ろからボーンハンターが姿を現し、矢を構えて敵に狙いを定める。ライゼンは遠くの夜盗たちに向かって、矢を放つよう指示した。
「射て!」ボーンハンターの弓が弦を鳴らし、矢が夜盗たちに向かって飛んでいく。狙いを定めた矢は、敵の一人に命中し、彼はうめき声を上げながら地面に倒れ込んだ。
その様子を見て、ライゼンは続けて次の呪文を唱えた。「ボーンナイト、我が命令に従え!」
地面から立ち上がったボーンナイトは、強靭な肉体を持ち、鋭い剣を手にしていた。彼は指示を受けると、すぐに夜盗たちへ突撃していった。
「行け!夜盗どもを蹴散らせ!」ライゼンは叫ぶ。
ボーンナイトはその言葉に従い、敵の中へと突進する。重い鎧が音を立てながら進み、夜盗たちはその迫力に驚き、一瞬の隙を突かれた。ボーンナイトが突撃し、近くにいる夜盗を剣で斬りつけると、彼らは後ろに吹き飛ばされて、袈裟切りにされた傷から血が流れ出た。
ライゼンはボーンハンターに目をやり、「追加の矢を射て!奴らを囲い込むんだ!」と指示した。ボーンハンターは再び矢を引き、残りの夜盗たちに向けて次々に矢を放つ。
ライゼンがボーンナイトと共に夜盗たちへ突進すると、彼の心には一瞬の恐怖と興奮が交錯した。自らの召喚した使い魔たちが、まるで彼の意思を反映するかのように行動するのを見て、彼は自信を深めていく。
ボーンナイトは鋭い剣を振るい、夜盗の一人を一撃で斬り捨てた。倒れた仲間を見た他の夜盗たちは、恐怖の表情を浮かべた。ライゼンはその隙を逃さず、夜盗の中に入り込んでいく。
「もう逃げられないぞ!」ライゼンは叫びながら、近くの夜盗に向けて詠唱をはじめる。
「これ以上戦うのは無駄だ!撤退しろ!」夜盗の一人は仲間たちに命じる。焦りが広がる中で、夜盗たちは彼の指示に従い、次々と後退していった。
ライゼンはその様子を見て、さらに追い打ちをかけようとするが、冷静に判断を下す。
「無理に追うのは良くない。町を守ることが優先だ。」彼はボーンナイトに指示を出す。
「お前は周囲を警戒し、敵が再度現れないか見張ってくれ!」うなずいたボーンナイトが町の外に走っていく。(周囲警戒って、そっちじゃないんだけど、、、)
ボーンハンターは、残った矢を使い果たし、周囲を見回る。その間にライゼンは、倒れた住民たちの安否を確認しに行く。
「大丈夫ですか?」ライゼンは不安そうに問いかける。開いた扉の隙間でうずくまる住民たちは恐怖で震えているが、ライゼンの姿を見ると少し安心したようだ。
「私たちの家が……」一人の女性が涙ながらに言った。「助けてくれて、本当にありがとうございます。」
彼は安心させるために微笑みながら、「もう大丈夫です。私がここにいますから。」と告げる。
ライゼンが周囲を見渡すと、ボーンナイトとボーンハンターが敵の撤退を見守っていた。夜盗たちは、混乱と恐怖の中で町を離れ、薄明かりの中へと消えていく。
「さあ、これで一旦は安心だ。」ライゼンは息を整え、周囲の人々に向けて言った。
「私たちは町を守るためにここにいます。誰もが安心して過ごせるように、引き続き警備を続けます。」
周囲の人々からは小さな拍手が起こり、彼の勇気を称える声が聞こえてきた。
ライゼンは住人たちをなだめ、彼らが安心できるように優しい言葉をかけ続けた。恐怖に震えていた人々は、彼の姿を見て少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「もう大丈夫です。私がスケルトンたちを配置して、再度警備を強化しますから。」ライゼンは、住民たちに向けて微笑みながら言った。彼は町の安全を確保するために、さらに努力するつもりだった。
周囲を見回すと、彼が配置していたスケルトンたちが、夜盗の撤退後も警戒を続けているのを見つけた。ライゼンはその姿に安心し、改めて彼らに指示を出すことにした。
「よし、スケルトンたち、各家の周囲を見張ってください。特に人の少ないところには、しっかりと配置を続けて。今は警戒が必要です。」
スケルトンたちは彼の指示に従い、各々の場所に向かって動き出した。ライゼンはその様子を見ながら、再度自宅に戻ることにした。家の中には父デービットとエリオンが待っているだろう。彼らに心配をかけたくなかった。
家に入ると、薄暗い室内が目に入った。デービットとエリオンは、まだ緊張した面持ちで彼を迎えた。ライゼンはホッとした気持ちを胸に、二人に笑顔を向ける。
「心配かけてごめん、もう大丈夫だよ。」彼は安堵の息を吐きながら言った。「警備は強化したし、スケルトンたちも配置しておいたから、今夜は安心できると思う。」
「本当に良かった。」エリオンはライゼンを見つめ、少し緊張を解いて微笑んだ。「あなたがいるから、みんな安心しているわ。」
デービットも頷きながら、「そうだな。お前がしっかり町を守ってくれるから、俺たちも心強い。」と続けた。
ライゼンは彼らの言葉に感謝し、胸が温かくなるのを感じた。「みんなを守るのが俺の仕事だ。だから心配しないで、ゆっくり休んでくれ。」
翌朝、薄明るい光が窓から差し込み、ライゼンは重たいまぶたをこじ開けた。昨夜の警備の疲れが残っているが、何とか起き上がり、家の中を見回す。デービットとエリオンはまだ寝ているようだ。彼はゆっくりと身支度を整え、朝食を済ませると、警備のために家を出た。
外に出ると、町は静かな朝を迎えていた。道を歩く人々の姿や、遠くで見えるスケルトンたちが巡回している様子が見えた。ライゼンは町の安全を確保するために、まずはスケルトンの配置を確認しようと決めた。
町の中心に向かう途中、ダリックとアリスに出会った。彼らは既に警備の準備を整えており、二人の表情には昨夜の騒動の影響が色濃く残っていた。
「おはよう、ライゼン。」ダリックが声をかけた。
「ライゼン昨日の夜警備、お疲れ様。今日は俺たちが担当するから、安心してくれ。」
アリスも頷きながら、「私たちがしっかり見張るから、ゆっくり休んでていいよ。」と言った。
「それに、今日は特に人が少ないから、しっかり見ておく必要がある。」アリスが付け加えた。
ライゼンは二人に向けて微笑み、指示を続けた。「もし何かあれば、口笛でも吹いてくれ。俺も必要があればすぐに駆けつけるから。」
町の平和な雰囲気を感じながら、ライゼンは家に戻り、デービットとエリオンと共に朝食を取ることにした。
夜の帳が降りると、森の奥にある伐採小屋の中で、荒れくれ者たちが集まり、緊張感が漂っていた。薄暗い小屋の中には、木のテーブルを囲むようにして男たちが腰を下ろし、彼らの話し声が響き渡る。
「おい、昨日のやつ、やっぱり強えよな。」一人が不満げに言った。背中に大きな傷があり、夜盗の仲間の一人、グラントだった。
「それだけじゃない。奴は不気味な力を使いやがった。スケルトンが周りにいるんだ。」隣にいるウィルが、目を光らせて言った。「俺たち、ただの人間じゃ勝てねぇ。」
「お前ら、情けねぇな。」リーダーのケインが苛立たしげに言った。「そいつに一方向から攻撃したら、撃退されるって言ってたろうが。次は二方向から行くんだ。」
「二方向から?それで勝てるのか?」疑問を持ったジョーが顔をしかめた。「あの奴がまた来たら、どうする?またやられるのが目に見えてる。」
「それを考えるためにここに集まったんだ。」ケインがテーブルを叩き、彼の周りの男たちが黙り込む。「昨日のやつ、特に強いって話だ。逃げ帰った俺たちの名誉もかけて、しっかり準備しろ。そいつが来たら、時間稼ぎをしながら撤退する。必要なものは全部取ってからな。」
「それ、いい考えだ!」グラントが興奮しながら言った。「とにかく、奴を引きつけてから、反対側からがっぽり盗むってわけだな。昨日のあの強いやつが来たら、特に気をつけるべきだ。」
ウィルは頷きながら、意見を述べた。「俺たちが一斉に攻撃して、引きつける間に他の奴らが後ろから来る。もし奴が出てきたら、奴を引きつけて逃げる。もう二度とやられるのはごめんだ。」
「いいね、計画は決まった。」ケインは男たちを見回しながら言った。「さあ、準備をしろ。明日には計画を実行するぞ。俺たち「夜狼」の名にかけて、成功させるんだ!」
男たちは一斉に声を上げ、計画を立てるためにそれぞれの役割を確認し合った。彼らの荒々しい笑い声と、金の話に夢中になった会話が、森の静けさを破っていく。
「明日が楽しみだな、がっぽり稼いで、また大酒を飲もうぜ!」とグラントが笑った。
「その後、またこの小屋を自分たちのものにするんだ!」ウィルが続けた。
その夜、荒れくれ者たちの笑い声は、森の中に響き渡った。
夜が深まると、夜盗たちは静かに小屋から出発した。ケインを先頭に、荒れくれ者たちは6人ずつに分かれ、南と東の二方向から町に向かって進んでいった。月明かりがほのかに照らす中、彼らは森の中を慎重に歩き、足音を立てないように草むらを踏みしめる。
「静かにしろ、奴らが寝静まるまで待つんだ。」ケインは南側のグループを率いて、低い声で指示を出す。
「わかってるよ、ボス。」ウィルが後ろで息を潜めながら応えた。「今夜こそ、がっぽりいただくぜ。」
東側ではグラントがリーダーとして、仲間たちを引っ張っていた。「ケインが奴を引きつけてる間に、俺たちは物資を奪うんだ。手早くやれよ。」
「わかってる、わかってる。今回は失敗できねぇ。」グラントの後ろのジョーが不安そうに言いながらも、周囲に目を光らせていた。
彼らはそれぞれの位置について、夜の静寂の中、町が完全に寝静まるのを待った。風が木々の間を吹き抜け、遠くでフクロウが鳴いているだけで、他は物音ひとつしなかった。緊張感が高まる中、ケインは手をあげ、合図を送る。
「よし、動け。」ケインがささやくように指示を出すと、南側のグループは町の家々にゆっくりと忍び寄り、まずは周囲の見張りを確認した。
「スケルトンの野郎どもはいねぇな…」ウィルがつぶやく。「今がチャンスだ。」
一方、東側のグラントたちも物音を立てないように、暗闇の中を進みながら、目標とする家々に目をつけていた。
「ここだ。すぐに荷物を持って逃げるぞ。」グラントは手で合図を送り、ジョーたちが慎重に家の窓を割り、中に侵入する準備を始める。
だが、彼らの計画通りにはいかない。南側のケインたちが町の中心に近づいたとき、不意に地面から骨が現れ、スケルトンが何体も出現した。彼らを取り囲むようにして、ゆっくりと迫ってくる。
「クソッ、またか!」ケインは怒鳴り声を上げ、剣を抜いた。「全員、時間を稼げ!やつらを引きつけろ!」
スケルトンたちは夜盗たちに向かってじわじわと迫り、次第に戦闘が始まった。東側にいたグラントのグループも、その異変に気づく。
「何だ?どうして騒ぎになってるんだ?」ジョーが焦りながら言う。
「くそ、奴らに気づかれたか。俺たちも急いで物を取って逃げるぞ!」グラントは慌てて指示を出し、仲間たちが素早く家から盗品を掴むと、撤退を始めた。
スケルトンと夜盗たちの戦いは激しさを増し、南側ではケインが苦戦しながらもスケルトンを次々と斬り倒していた。
「撤退だ!」ケインは叫び、部下たちに逃走を指示した。「これ以上の失態は避ける。引け!」
夜盗たちはあっという間に集結し、二方向から襲撃したものの、計画は不完全燃焼に終わった。全員が手に入れた物を抱え、森の中へと逃げ戻っていった。
「次こそ…次こそは成功させてやる!」ケインは歯ぎしりしながら、森の暗闇に消えていく背中を見せた。
夜盗たちは、疲れ果てながら伐採小屋に戻ってきた。月明かりに照らされた荒れた顔には汗がにじみ、不安と苛立ちが交錯していた。小屋の中に集まると、まずケインが口を開いた。
「おい、どうなってやがる?南側も東側もスケルトンに囲まれてたじゃねぇか!」彼はテーブルを叩きながら、苛立ちを露わにした。「どっちも狙いがバレてたってのか?」
「くそ、俺たちは完璧にタイミング合わせたんだぞ。なのに、どこに行っても骨の奴らがいやがる。」グラントが腕を組みながら険しい顔で吐き捨てた。「何が起こってるんだ?あの町には、何か妙な力が働いてやがる。」
「骨の連中なんざ、もともと相手にならねぇはずだったのに。」ウィルが苛立ちを隠せず、椅子に座り込みながらつぶやいた。「毎回、何かしら現れて時間を取られて、その間に奴らに逃げられる。」
「おい、落ち着け。」ケインが荒れくれた声で皆をなだめる。「誰がやってるかはわからねぇが、町の連中が俺たちの動きを察知してやがる。今のままじゃ、こっちがやられるだけだ。」
「けどよ、ケイン。」ジョーが顔をしかめながら言った。「スケルトンがあちこちにいるってことは、誰かがコントロールしてるんだろ?いったい誰が…?」
「それが問題だ。」ケインは拳を握りしめ、壁をにらんだ。「どこかに操ってる奴がいる。それがわかれば、ぶちのめしてやるだけだ。」
「だが、こんなことが続けば、俺たちがやられる日も近い。」グラントが険しい顔をして続けた。「これ以上の失敗は命取りになる。」
「じゃあ、どうするんだ?」ウィルが苛立ちを隠せずに声を荒げた。「もう一度計画立て直すのか?それとも、ここで手を引くのか?」
「食料の残りも少ねぇし、酒も底をつきやがった。」ケインは重々しい声で言いながら、壁際に掛かっている戦斧を見つめた。「このままじゃ俺たち、飢え死にだ。もう明日、やるしかねぇ。」
「くそ、最初の3日はうまくいってたのによ。」ウィルがため息をつき、椅子に深く座り込んだ。「だが、このまま引き下がるのも腹立たしいってもんだ。」
「そうだな。奴らがいくら骨を使おうが、明日でケリをつける。」ケインはゆっくりと立ち上がり、壁に掛けていた戦斧を力強く握りしめた。「この戦斧を使って、奴らを叩き潰してやる。」
「おい、本気か?」ジョーが少し不安げに顔を上げた。「ただの強盗じゃなくなるぞ。殺しになっちまう。」
「今さら躊躇してどうすんだ?」ケインが斧を肩に担ぎながら、荒々しい笑みを浮かべた。「奴らが俺たちを殺しにかかってるのは見ての通りだ。骨のやつらが俺たちに襲いかかる前に、こっちが仕留めるだけだ。」
「そりゃそうだ。」グラントが同調し、ナイフを抜いて手入れを始めた。「骨なんざ叩き壊しても罪にゃならねぇだろうし、そもそも相手は冒険者だ。俺たちがやらなきゃ、あっちがやる。」
「それに、明日が最後のチャンスだ。」ケインが鋭い目で仲間たちを見回した。「もう食い物もねぇ。酒もねぇ。待つ時間なんて残ってねぇんだよ。」
「じゃあ決まりだな。」ウィルは立ち上がり、腰の剣を抜いて一振りした。「明日、全力で襲う。だが、俺たちがやるのはあくまで盗みだ。できるだけ殺しは避けるんだぞ。」
ケインは戦斧を握りしめ、薄く笑った。「そのつもりさ。だがもし、邪魔する奴が出たら…その時は斧の出番だ。」
夜盗たちは重々しい沈黙の中で明日の作戦を決意し、ケインの戦斧がこれからの運命を決定づけるように、暗く冷たい夜が続いた。




