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奇談その2 センサーライト

作者: 蒼山 夢生

 ラフカディオ ハーンの『怪談奇談』の様なスピリッツの効いた作品を

目指しての作品『奇談』の二作目です。

今回は中陰の世界に行く前の出来事について書いてみました。


 その男の住む地方には未だに昔からの風習が色濃く残っている。

特に冠婚葬祭ではその名残が今でも色濃く残っている。

中でも、今では行われないのであるが野辺送りの配役では

それが如実に表れるのである。


 ある日その男の本家の家長が急に亡くなった。

 喪主がその男の家を訪ねてきて留守居役を頼んで帰った。

 留守居役とは文字通り留守番をする役目である。

留守居役は、よほどの信頼がなければ頼まれない役柄なのである。


 その男の本家は江戸時代に建てられた古い家で、部分的に改築して

今に至っているが、土台や梁は当時のままである。そのため日中でも

薄暗いので、廊下や階段、玄関と色々な所にセンサー付きのライトが

設置されていた。

 そう、人が近づくと電灯がともるアレである


 その男は出棺を見送り、家の中を片付け、お寺に行った参列者が

一時戻ってきてお茶を飲む準備をし終えて、亡くなった家長の部屋の

障子戸を外し、一休みをしていた。

 時々遠方より訪れて来る弔問客の対応以外は何らもすることが無く

誠に暇なのである。ポツンと座り亡くなった家長との思い出に浸って

いると、ふと廊下に設置されているセンサーライトが不自然にに

点いては消え、点いては消えるのに気が付いた。

男は故障でもしているのだろうと気にも留めなかったが、

まるで何者かがセンサーライトの前を行き来しているかの様な点き方が

さすがに気になった。

 そこで男は故障しているのかを確かめるためにそのライトの所に行くと

そのライトは点き、離れると消え、故障してはいないと男は思った。

それ~何がこのライトを点滅させているのだろうと暫く考え、

部屋の中に戻ると、横になり再びセンサーライトを見つめていた。


 暫くするとまたそのセンサーライトが再び不自然に点いては消え、

点いては消えを繰り返しはじめた。

 男はひょっとして亡くなった者がそこを行き来しているのかも

しれないと考えついた。

 そこで男は亡くなった家長の名を呼び、部屋に入ってきてくれるよう

呼びかけた。

 するとすぐにセンサーライトが点いた。

 男は合点がいった。そこで点きっぱなしのセンサーライトの方向に

向かってこう言った

「皆はお寺に行っているから、それからお前様もお寺に居るから、

早くお寺に行くといい」

 すると部屋の入口のセンサーライトが消え、廊下のセンサーライトが

次々と点き、玄関のセンサーライトが点き、そして消えた。

 その後はどのセンサーライトも点くことはなかった。

 男はやはりそうかと思った。


 最後まで目を通して頂き、有難うございました。

 人は亡くなると魂と肉体とに分かれ、魂は中陰を経て今生で経験し、

学んだことを復習し、次に生まれ変わる準備をするという思想が

あります。いわゆる輪廻転生の考え方です。

 今回の作品はそのような事をモチーフにして書いてみました。

 突然亡くなった場合には、魂は案外亡くなった事に気が着いて

いないのかもしれません・・ネ。


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