13話 調査結果と魔女のこれまで
お互いの色んな事を、知ることが出来た。
そんな晩御飯と、食後のお茶の終わる頃に、ラングが保育園に訪ねて来た。
「あら? 家じゃなくて、保育園の玄関の方に来てしまったみたいね」
ノアが席を立ち、室内から保育園の方へ行く。
5分ほど経ってから、ノアがラングを連れて帰ってきた。
「こんばんは、お邪魔致します。申し訳ございません。女性だけでお住いのご自宅に、顔を出すのはどうかと思ったので、保育園の方を訪ねたのですが、ノアさんがこちらでと仰るので、恐縮ですが……お言葉に甘えさせて頂きました」
「そんなに畏まらないでください。どうぞこちらへ」
「すみません、晩御飯もう終わってしまって……なにか用意します!」
「いや、お構いなく! 食事は済ませてきましたので、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
「ステラも座ってて、今お茶を入れますから」
「ありがとうございます」
食事をしたキッチンルームから、リビングに移動して座る。
ラングも、持ってきた鞄を横に置いて座り、話し始めた。
「今し方、ミナルカで魔人になった人、全員の無事が確認されました。徘徊して、町の外へ放浪していることも想定していましたが、全員が、町の中にいてくれて助かりました。軽く身体検査もしましたが、みなさん異常ありませんでした。ノアさんも五感、体調に異常ないそうなので安心しました」
良かった……という空気が広がる。
ノアの様子から、大丈夫そうだと想像できたが、ミナルカの人が全員完全に戻れたのは、フィナの詠唱が完全に上手くいった証明だった。
「じゃあ、魔人を人間に戻す詠唱は、魔人になってからの時間経過は関係なく、安全に人間に戻れるということですね?」
「そういうことです。そして、肝心の魔人になっている間の記憶ですが……ノアさんはどうですか?」
「はい……魔人になった後も、鮮明ではありませんが、自分の意識は確かにありました。でも、身体は動かせず、言葉も喋れず、自分の身体なのに、全く意志通りに動くことは出来ませんでした」
「五感はいかがでしたか?」
「これも今のように鮮明ではありませんでしたが、目は見えたし、耳も聞こえて……嗅覚も触覚もありました。味覚だけは、何も食べなかったので分かりません」
「何も食べずに1か月過ごして、身体的に影響がないって不思議ですね」
マイトが疑問を口にする。
魔人でいるとお腹が減らない……衰弱もしないという事なのか?
そんな事、あり得るのかと考える。
「町の人達も、そうだったようです。疲れや空腹を感じることがなかったと、皆言っていました。何か理由があるとは思うのですが、現段階では不明です」
「それと、意識がある時間……私が起きている時と、意識が無い時間……私が眠っている時が繰り返されるんです。それで起きている時に、自分の笑い声が、耳に聞こえるんです」
「今の話も、皆さん仰っていました。おそらく魔人が笑っている時は、その人の意識がある時。魔人が無言の時は、その人が眠っている時と考えられます。魔人が眠るという事例はないので、その人が眠っている間は、魔人は無意識に徘徊しているだけと想像出来ます。といっても、起きていて意識があったところで、魔人である身体を動かせないので関係ありませんけどね」
「ただ……自分が思ってもないことを、やるわけでもありませんでした。自分の普段の生活圏を回っているというか……」
ノアが何かを思い出した様に呟く。
「魔人になった後も、その人の習慣が無意識にある程度、反映されるというわけですか」
「だからノアさんは、保育園の庭で祈りを捧げていたんですね」
マイトは、魔人でありながらノアが祈っていた場面を思い出して口にする。
ノアは頷きながら続けた。
「神に祈りを捧げるのは、魔人になった後もやっていました。あの時は、不思議な感覚でした。自分の意志と関係なく動いてた身体が、自分の意志と重なる時間でした。今日は本当に驚きましたよ。急にステラの声が聞こえて、フィナが私に触れて……視線が上がって2人の姿が見えた時は、これほど身体が動かせなくて、声が出せないことを、もどかしいと思ったことはなかったです」
今日の詠唱前の様子を、ノアが魔人だった時の視点で語られる。
本当に魔人になっても、自分の意識はちゃんとあるんだと実感できる。
フィナはノアの話を聞いて、あの時……迷いながらも詠唱出来た事に、心から良かったと実感した。
「魔人になっても、その人はちゃんと生きている。そしてマイト君の詠唱文で、正常な状態で人間に戻すことが可能だと分かりました。これが判明したのは大前進です」
「ではイオニアの人達も、13年前に最初の魔女に魔人にされた人たちも、助かるかもしれないんですね」
ノアが嬉しそうに聞くと、ラングも確信めいた表情で頷く。
「はい、希望が持てます」
「……あの、魔女って13年前からいるんですか?」
マイトは、初耳の情報について聞いてみる。
「ああ……そうですね……マイト君は来たばかりですから、知らないのも無理はない」
「僕が魔女について知っているのは、人間を魔人にする。詠唱師なのに、舞台師なしで詠唱出来る。喋ることも出来る。……このくらいです。魔女に関しては、神様も知らないと言っていたので……」
「……! そうか……マイト君は、神イーリアスと会話したことがあるのか……本当に興味深い」
ラングは人差し指でメガネを直しつつ、意志の籠った視線をマイトに送る。
「神と会話したって本当に凄いよね、想像できない」
ステラが言うと、フィナもノアも尊敬の眼差しでマイトを見る。
「しかし、神すら知らない……か。なるほど……予想はしていました。でないと人間が、魔女によって滅亡寸前まで追いやられた、この状況が説明出来ませんから」
ラングが冷静に現状を振り返ると、ステラも同意する。
「そうですね……別の世界からマイトさんを召喚したくらいだから、神自身ではどうしよもなかったってことですもんね」
「そういうことです。しかし……神が知らないですから、研究してるとはいえ、私もほとんど理解出来ていないのが実情です」
そう言うと、ラングは懐から4つ折りの紙を出して、テーブルに広げた。
「これはラプソディアの地図です」
大きさのサイズ感は分からないが、形としてはアメリカ大陸の北米と南米をくっつけて、左右反対にしたような印象だった。
その地図の上の方、今の印象で例えると、アラスカの辺りをラングが人差し指で差す。
「今から13年前、ラプソディア最北の村イオスに、最初の魔女が現れて、イオスの村人を全員魔人にしました」
「13年前は……フィナが4歳で、私が引き取ってこの家で一緒に暮らし始めた年なので、よく覚えています。失礼ながら、北の果ての出来事なので実感がわかず、噂話くらいに受け取ってしまいました」
ノアがそう言うと、ステラも同調した様に続ける。
「私も、中部のリュオスの町でお父さんと暮らしてた時だったけど、世界の危機だなんて全く思ってなかったよ」
「そうですね、私はその時イオニアにいましたが、イオニアでも半信半疑だった。前例のない……未知の出来事でしたから」
そうだ……神様も言っていた『当初は、人間が絶滅するほどの事態だとは、思っていなかった』と。
「しかしそれは現実だと、突き付けられた出来事が起こった。ノアさん達はご存じだと思います……『ジンクの手記』と呼ばれる文章を」
「はい、あの手記の写本は読みました。今となっては、世界中の人が目にしたことあると思います」
ジンクの手記?
というものを、もちろんマイトは知らない。
「どういったものなんですか?」
その問いにステラが答える。
「世界で初めて、魔女や魔人の存在を確認した人……ですよね」
「そうです。イオスの村人が魔人になり、村と連絡が取れなくなって、様子を見に行った近隣の町の人も、魔女によって魔人にされて帰らなかった。この現象が起こっていることは、イオニアの協会本部にも届いていました。しかし、その時点では魔女や魔人存在は、まだ明るみになっていませんでした。つまり、原因が分からなかったんです。そんな時に、ラプソディア北部の協会支部、ランダラス支部に居た調査員のジンク・モッドが、イオスに調査に行きました」
ジンクという人は協会支部の人だったのか。
しかも、ラングと同じ調査員という立場だった。
「街道の整備がされていない、ライグーでも場所によっては通りづらい、北部特有の厳しい地形の関係上、イオスは詠唱師が行きにくい場所のため、イオスには詠唱師が駐在していました。シャーロット・レイアーという詠唱師で、アルカナ白……詠唱師になって間もない、若い女性でした。イオス駐在は1年の予定で、新人研修のような名目でした。出身はランダラス……ジンクとは同郷で幼なじみだったそうです」
ジンクの幼なじみが、イオスの駐在詠唱師。
しかも、詠唱師になったばかりの若い女性って、フィナと同じ立場みたいなものか。
「ジンクは、連絡が取れなくなったシャーロットを心配していたそうです。ジンクにとって、イオスの調査は協会の任務というだけでなく、個人的な想いも含まれていた。そしてイオスに着いた彼は、そこで見た光景を手帳に書き記しました」
ラングは、一枚の紙をマイトに見せた。
手書き文字。
『ジンクの手記』の写本だった。
『人間に角と牙がある
顔が笑っていて不気味に動いてる
見た目は魔獣のような人間
魔人とでもいうべきか
明らかに意識がない 亡霊のようだ
言葉を発しない
笑い声だけが聞こえる
話しかけても触れても反応がない
無視される
服装などの様子からイオスの村人が
このような姿に変わったと思われる
現時点で詠唱師は見つからない
突然 魔人女の 』
文字が乱れ途切れている。
ここで魔女が現れて、ジンクは魔人にされたと思われる。
「その後……魔人になったジンクは、いつのタイミングかは解りませんが、魔人でありながら村の外に出て、平原を徘徊してるところを発見されました。上着のポケットには手帳が入っていました。その姿と、魔人になる前に残した手帳の文章によって、魔女と魔人の存在が世界に知られることになりました」
そんな経緯があったことに驚くマイト。
ジンクという人が書いた、この手記がきっかけ……。
「魔人となって発見されたジンクは、その後、イオニアの詠唱師協会本部に運ばれて、生態の観察や研究が行われました。それで解ったことは……どんな詠唱でも戻せない、話さない、表情は笑顔で変わらない、食事をしない、排泄しない、髪や体毛は伸びない、呼吸はしている。1日の笑い声を発する時間と、止まる時間は半々。目は白色で、笑い声を発する時に微かに目が光る……などです。協会では、とにかく元に戻そうと尽力しましたが、叶いませんでした。そして今も……イオニアにいます」
今となっては、観察や研究をしていた人達も、みんな魔人になってしまった。
もちろん、ジンク自身も魔人のままで……。
「実は私も、協会研究部に配属になった際、魔人のジンクと対面しました。その時は正直、この人の意識は完全に失われている……つまり、生きる人形のような存在だと思いました。しかし、今日……魔人になっても本人の意識はちゃんとある、という事実を知り、驚きを隠せません。魔人にされた人々は、今も……文字通り生きている。魔人研究に携わる人間として、とんでもない発見でした」
ラングは興奮した様に語る。
それだけ元に戻った人達の、証言のインパクトは大きかったということ。
「失礼しました。熱が入ってしまい、話が魔人の方へ行ってしまいました。魔女の方に戻します」
そう言うと、イオスに様子を見に行ったジンクが、魔人になって発見されたところに話は巻き戻る。
「ジンクの件を受けて、協会の調査員が再びイオスへ行くと、村の入口に立て札が立っていました。『これより先に入るな』と書かれていた。イオスに入ったら魔人にするという、魔女の警告でした。これにより魔女は言葉が分かり、意志の疎通が可能であり、しかし、人間と関わる気はない、という事が判明しました」
「魔女の警告……」
この世界に現れた直後から、自分の意志を人間に示したというのか。
「この魔女の警告を受けて、人間側がなにもしなければ、魔女も何もしてこない『空白の10年』が生まれました」
「じゃあその空白の10年では、魔女が人間を魔人にしなかったってことですか?」
「はい、ジンクによって魔女の存在が明らかにされた直後から、10年間は膠着状態が続きました。平たく言えば、平和な10年間だったんです」
ラングの話を聞いていたノアが、当時の印象を語り出す。
「それもあって、北の果ての出来事なので、実感がないと思ってしまったんだと思います。魔女の存在が明らかになったものの、北の果てから出て来ず、10年も経ったものですから……」
「そうだよね、私たちの生活には関係がない事っていう感覚が、当たり前になっちゃってた。私はこの期間に、お父さんが死んじゃって、この家に来たっていう事があったから、魔女の事なんて考えたこともなかった。ここが南部で、イオスとは離れすぎてるのもあると思うけど……」
ノアとステラの本音と云える言葉に、ラングも同調した様に言う。
「いや、正しい感覚だと思います。そもそもラプソディア南部の人が、北部に行く機会が生涯無いのが、当たり前ですから。逆もまた然りですし、魔女は、遠い世界の出来事と思っても無理はないです」
「ラングさんがいた協会本部ではどうだったんですか?」
マイトは、詠唱師協会がどう対応したかの質問をする。
「10年間で、様々な議論がなされました。協会内でも、イオス奪還派と慎重派で分かれた。今すぐ乗り込んで行って、魔女を討伐し、イオスの住人を救出すべきと奪還派は訴えた。対して慎重派は、ジンクの件を理由に、迂闊に手を出すべきではないと訴えた。魔女は不明な事が多すぎたため、不透明な状態で挑むのは危険だし、そもそもイオスの住民を元に戻す手段がない。二次被害が拡大するだけだと主張した」
「ラングさんは、どっち派だったんですか?」
「私個人としては慎重派でした。やはり不可解なことが多い。慎重に対応すべきだと思っていました。しかし年月が経つにつれ、このまま手をこまねいていても、どうにもならないという意見が。多数を占めるようになりました。そして最終的に10年が経過した頃に、協会本部の精鋭の詠唱師隊が結成され、イオスに進行し、魔女に打って出ました。それが今から3年前になります」
「私とフィナが14歳の時です。イオス奪還作戦決行のニュースは南部でも大きく知られることになったので、よく覚えています」
ステラの言葉に、フィナも頷く。
魔女が現れた時に、4歳だったフィナとステラが14歳になった時に、空白の10年が終わったということか。
「それで、そのイオス奪還作戦は……」
「失敗しました……満を持して送り出された詠唱師隊は、帰って来なかった。さらに……警告を破り、イオスに入ったことで、魔女の怒りをかったのか……魔女はラプソディア北部全域を魔人化した」
「え? イオス以外も、魔人に?」
「そうです。協会支部のあるジンクの故郷ランダラスを始め、北部地域の町や村全ての人間が魔人に変えられた。しかも、たった1日で……今考えても、あり得ない事が起こったとしか思えません」
魔女に挑んだ結果、詠唱師達は返り討ちに遭い、報復で北部全域が魔人に変わった。
魔女の力を見誤ったということだ。
「悲劇はこれで終わりませんでした。北部陥落から1年後、今度は中部へと魔女が侵攻を始めました。ただ……北部の時は、広大な北部地域全体を1日で魔人にされましたが、中部の時は、ゆっくりと町や村が一つ一つ魔人に変えられて行きました。しかも一気には攻めて来ず、頻繁に北部に帰って、中部に来るという往復を何度も繰り返していた。これは現在の南部進行と同じ構図です」
「南部に来ては北部のイオスに帰るっていう、子供の魔女がやってることを、中部進行の時から、すでにやっていたということですか?」
「そうです、中部を進行していた魔女は 子供の魔女とは別の……2人の魔女でした。魔女は4人いると推察されています。北部を魔人にした最初の魔女。中部を魔人にした2人目と3人目の魔女。南部を魔人にしてる子供の魔女の4人です」
「そういえば神様も言っていました。魔女は4人いるって……」
「はい、結果的に中部は、1年間にわたり2人の魔女によって魔人にされていき、世界最大の都市イオニアが落とさるという重大な事象を経て、中部全域が魔人化しました。今から1年前の出来事です」
「イオニアが魔人になった時は、世界が終わったって言われたからね……あれで南部に居る私たちも、本気で危機感を覚えたもん」
「神の街イオニアが落ちたと聞いた時は、本当に信じられませんでした。大変なショックで、何も手につかない状態になってしまいました」
ステラとノアが当時を振り返り、心境を語る。
フィナも頷いて同意していた。
「しかし、これで魔女は止まったと思われた。中部陥落からしばらくは魔女が現れなくなったので、南部には来ないのではないかと囁かれたのですが……中部陥落から半年後、つまり今から半年前に、中部との境にあるオーリーホルンの街に、子供の魔女が現れ魔人に変えた。これは南部侵攻が始まったことを意味した。すなわち……人類滅亡のカウントダウンが始まったことを、告げるものだったんです」
「本当に終わりが迫ってくる感覚は怖かったです。だからこそ、最後まで日常を過ごそうってミナルカで生活していました」
「それから半年間、南部侵攻は続き、あとはテリルとダウナのみとなり、世界から人間が居なくなるはずだった昨日……マイト君が現れて人類は滅亡の危機から脱することが出来た」
整理すると……13年前に最初の魔女が現れて、イオスの村を魔人にして、立て札を立てた。
これにより10年の膠着『空白の10年』が続いた。
今から3年前にイオス奪還作戦が決行されるが失敗。
報復により,1日で北部全域が魔人にされた。
そこから1年が経過した、今から2年前に、2人の魔女によって中部侵攻が始まる。
1年でイオニアを含む、中部全域を魔人化した。
それが今から1年前。
それから半年後に、子供の魔女によって南部進行が始まり、半年かけて現在に至る。
「ここまでが、世界と魔女とのこれまでの経緯です」
「結局、魔女は何者なんでしょう……どうやって生まれたかは、解ってないんですか?」
「どういう原理で魔女が誕生しているかは、色々な考察があり、様々な説がありますが、現在も正確な事は不明のままです」
マイトの疑問に、ラングは正確な答えを持っていない。
しかし、事実を基にした推察ならあるようだった。
「昼間も言いましたが、魔女の目的は人間全てを魔人に変える事ではないと思っています。本気で人間を滅ぼしたいなら4人全員で攻めてくればいい。そもそも、空白の10年なんてものも存在しない。イオスに10年も引きこもってないで、さっさと人間を魔人にしていくはずです。イオスから出て世界を魔人に変えるきっかけは、人間側が魔女の警告を無視したからで、3年前にこちらが手を出さなければ、今も空白期間は続いてるはずです」
確かにそうだ。
10年もあったのだから、魔女がその気なら、とっくに人間は絶滅してる。
「北部の魔人化は報復だと推察されますが、同時に今後、人間がイオスに近づかないように、魔人範囲を広げたとも考えられる。
あくまでも、魔女は人間が近寄らないようにしていた。
立て札の警告や、それを破った報復などで、それが伺える。
「ただ……不可解なのが、それから1年経過した後に、中部侵攻を始めたことです。なぜ1年も置いたのか。そして北部は1日で魔人化したのに、中部は魔人化に1年間もかかっている。広さや、町の数の違いもありますが極端過ぎる。さらに、南部進行も半年置いた。しかも南部は、子供の魔女1人で侵攻してる。不思議な事だらけだ。一貫性もないし、全く合理的ではない」
「でも、実際に魔女は、人間を魔人にしてるじゃないですか」
「そうなんです……急いではいないが、着実に魔人にして来て、世界は終わりかけました。私の見解としては、別の目的があって結果的に人々を魔人にしてるんだと思います。それが何なのかは解りませんが、そうでないと辻褄が合わないことが多い」
「確かに魔女の目的が人間を魔人にすることなら、マイトさんが来る前に、この世界に人間は居なくなってたと思います」
「はい、どちらにせよ……昨日終わるはずだったこの世界を、救ってくれたのはマイト君だ。そして今日の詠唱の結果を踏まえると、これから人類の反撃が可能になることが確定しました」
ラングはマイトを見ながら、そう口にした。




