笑顔
俺は出口まで走ろうとしたが、ナーラが俺の腕を掴んだ。そして、ナーラは立ち止まったまま口を開いた。
「残念やけどウチは行けん!その… またどこかで会おうや!」
ナーラは残念そうな顔をしている。今にも泣きそうだ。
「…ああ。そうだな。これでお別れだ。」
俺はナーラの頭を撫でてやった。ナーラの髪はとてもサラサラしていて、俺の髪の手触りと全然違う。
「や、やめんか!あんたもう!最後の最後で…」
「どうせなら笑顔で別れるか。」
「え?」
「ほら、最後くらいは笑おうよ。また会えると願って。」
「…わかった。」
ナーラは鼻声になっているが、涙は流さないように必死に我慢している。そして、ナーラは今までで一番の笑顔を俺に見せてくれた。
「さよなら。」
俺もナーラに負けない勢いで本気の笑顔を作った。
「さよなら。またどこかで!」
俺はそう言うと、走って出口から脱出した。しかし、早くも出口で待機していた数人の見張りに見つかってしまった。
「脱走者がいるぞ!あいつだ!捕まえろ!」
前にも後ろにも、応援が駆けつけてくる。さっきまで敵は数人だったのに。唯一通れそうなところは危険そうな森しかない。このままでは捕まってしまう。もう考えている時間はない!!!
「捕まってたまるかーーー!」
俺は思わず森の中に入ってしまった。すでに息切れしているが、走るペースを落とさずに必死で逃げている。休めば捕まってしまうからだ。
「もうだめ… 後は頼む…」
見張りたちは限界のようだ。座り込んでいるやつもいる。だが、その光景を見てもなお、俺は走るペースを落とさなかった。モンスターがいてもお構い無しに走り続けた。しかし、やはり俺にも限界はくる。丸二日走り、ついに俺は倒れてしまった。
「もう何も感じない…ああ…せっかく逃げられたのに…ナーラごめんな…」
俺はそのまま意識がなくなった。