立場
エディの休憩時間がなしになったことを知らず、ナーラはいつものように部屋でエディを待っていた。
「エディどうしたんやろ。全然来なへん。」
そのまま1時間以上待っていたが、エディは一向に来ない。ナーラは心配になり、作業部屋に向かった。貴族たちは部屋にいなかったため、正面から入っていった。
「なんやエディ、今日はなんで来なかったん?」
ナーラはとても心配そうにこちらを見つめている。正直ナーラから来てくれるとは思っていなかった。俺は作業を中断してナーラに近づいた。
「悪いナーラ… ちょっとな。もしかして心配してくれたのか?」
「そんなわけないやろ!気になっただけや!」
ナーラの顔が赤くなっている。よっぽど心配してくれていたのか。
「さすが、ナーラは優しいな!」
そう言うと、俺はナーラの頭を撫でた。
「ばか!そんなわけあらへん!あと、ウチの頭撫でんといて!」
こうして俺はナーラと出会って人間としての感情が戻りつつあった。俺が今、こうして笑っていられるのはナーラのおかげだと言っても過言ではない。しかし、別れは突然。俺とナーラは作業部屋に貴族たちが戻ってきていることに気付かなかった。
「見ろ!奴隷がナーラを叩いているぞ!母親を呼んでこい!」
「え?!」
俺はいきなり強そうな貴族たちに手錠をかけられた。それと同時にナーラの母親が慌てて部屋に入ってきた。いきなりの出来事に俺は動揺を隠せない。
「ちょっと待て!ウチは叩かれていたとちゃう!」
「そこの奴隷にそう言えと言われたのか?」
「ほんまや!」
「ナーラ!奴隷に頭を叩かれて脅されて…かわいそうに…」
「おかんまで…」
ナーラは必死に庇ってくれた。しかし、言い訳を聞いてもくれない。
「こいつどうする?」
「そうだな。こいつは奴隷としての価値は下がった。処分してもいいぞ。」
「でもまだ使えそうだよな。我は終身刑にして一生働かせることに一票。今度逆らったら処刑かな。」
「じゃあそうするか。」
そう言うと、貴族たちはすぐ、俺を奴隷監禁所に連行した。
「いやちょっとまて!叩いていない!ナーラの頭を撫でていただけ!」
俺は必死に言い訳をするが、貴族たちはもちろん聞いてくれない。当然だが、俺とナーラの立場は違う。貴族と奴隷の差を見せつけられたのだ。俺は頭が真っ白になっていた。ショックの余り、涙も流さなかった。そして、絶望したのであった。