出会い
奴隷にされてから1年が経過した。あれからほぼ毎日付与魔法を魔石に使っていたため、10時間の作業を5時間で仕上げられるようになった。だが、少しでも欠陥品があれば貴族たちにムチで叩かれる。しかし、そんな俺にも転機が訪れた。いつものように魔石に付与魔法をかけていたとき、
「あんた誰?」
ある1人の貴族の女の子が俺に話しかけてくれた。風呂に全く入っていない、汚くてだらしない、奴隷である俺に。
「エディです。」
「ウチはナーラ。よろしく!」
ナーラは俺と同じ10歳だ。身分とか関係なく、俺に優しく接してくれる唯一の貴族だ。
「あと、ウチに敬語はいりまへん。ウチはただ、奴隷制度がなくなればいいと思ってんねん。」
ナーラは雇い主の貴族たちの目を盗んで付与魔法を手伝ってくれた。
「これを毎日やるとか大変やな。」
「別に?でも1年前はこの作業に10時間くらいかけていたよ!」
俺は奴隷になってから、初めての雑談をした。ナーラと会話していると、体からストレスが抜けていくような気がした。
俺に与えられた作業の合間の休憩時間は20分程度だ。食事もトイレも20分の間に済まさなければならない。
「ヤバいよ遅れているよ!」
「ごめんな。ウチとお喋りをしていたから遅くなってしもて…」
「ナーラのせいじゃないよ。」
そう言って俺はナーラを部室に残し、走って作業部屋に向かった。作業部屋を覗くと、今日はいつもより部屋にいる貴族の人数が多かった。貴族たちは恐ろしいことに、全員ムチを持っていた。
「制限時間は20分だと言ったのにな。2分も遅れてやがる。奴隷のくせに偉くなったな。」
「今回はお仕置きして許してやりましょうよ。」
「そうだな。全員並べ。1人1回、子供だからって容赦はしなくていい。」
そう言われて俺はいきなり貴族にムチで背中を叩かれた。それに続いて残りの貴族全員からムチで背中を叩かれた。とても痛い。
「明日から休憩時間はなしにしましょうか。」
「それだけはやめてくれ!お願いだ!作業時間を増やす!それで許してくれ!」
俺は必死に反発した。休憩時間が無くなると、ナーラと会う時間が減ってしまうからだ。作業も手伝ってくれなくなる。しかし、貴族たちは俺の意見を聞いてくれない。
「異論はあるか?」
「なし」
「嘘だろ…」
ショックのあまり、俺は大粒の涙を流した。気がつくと、俺はもう何も言えなくなっていた。
(ナーラとの時間が… うわぁぁぁ!)