二年後…
魔族に遭遇してから数日…。俺は元気がないまま稽古を続けていた。
「でね?レルのやつ、この部屋でエワの曲を流していたら『うるさい!』って怒鳴ってきたの。曲を流すための魔力は加減したはずなのに酷いよね?」
「…。」
俺はファビの部屋でぼーっとしながら身体強化魔法を使い続けていた。身体強化魔法を安定させて使い続けると魔力操作が上手くなるらしい。ただ、この修行は他人から見ると、なにもしないで突っ立っている人にしか見えない。そのため、数ある魔法の中でトップレベルに地味な魔法である。ファビは暇なのか、俺にレルガの愚痴を言っている。全然聞いていなかったが…。
「エディ?聞いてる?」
「…。え?あ!うん!はい!」
俺はファビに尋ねられて戸惑ってしまい、思わず身体強化魔法を解除してしまった。とりあえず適当に返事をしたが、またすぐに自身に身体強化魔法をかけた。
「まったく…。ここ最近変だよ?強さを求めるのはいいけど、もっとエンジョイしたら?」
「…。」
「エディ?」
「は!はい!ごめんなさい!頑張ります!」
俺は勢いよく返事をした。ファビは俺の返事を聞くと、「エディに嫌われた…」と、独り言を言いながらすぐに部屋から出ていった。そして、
「1年後は…セーフ。2年後は…セーフ。よかった!!関係は悪化していない!」
と、何やら、廊下で未来占いをしているようなファビの声が聞こえてきた。
(もうそれ『占い』ではなく、『予言』のような気が…。)
と、苦笑いをしてからすぐに修行を再開した。
俺はあの魔族のことを考えていた。街中に魔族がいるということは、近いうちに戦争になる。何かしらの陰謀がある。そう思い続けて稽古をしていた。しかし、俺の予想は的中しないまま、2年が過ぎた…。
俺は13歳になっていた。あれから特に大きな事はなく、黙々と修行を重ねてきた。剣術の腕はいつの間にかレルガを上回っていた。それだけではない。俺は独学で合成魔法を習得した。合成魔法とは、元ある魔法を複数同時に使用するテクニックである。初心者はよくここで挫折してしまうようだが、俺は自力で習得できたようだ。レルガたちからは、「もう教えることは何もない」と、言われてしまった。2年前と比べると外見は大分変わった。俺の髪は肩まで伸びており、高身長になった。声変わりは済んでおり、男子にしては早めの成長期である。
「だからなぁ?お前があそこで魔法を使っていなければゴブリンを捕まえられた!俺が剣で仕留めればよかった!わかるか?」
「わからん。我が魔法を使わなければキサマは怪我をしていた。」
「いや、お前が魔法を使わなくても俺は避けられた。」
「はぁ…。貴方たちはいつまでもそう喧嘩していて恥ずかしいとは思いませんの?私はもううんざりしていますわ。」
ダンジョンの帰り、レルガとファビはいつものように喧嘩をしていた。俺たちはよく街のギルドで冒険者としての依頼を受けるようになった。…と言っても、冒険者登録するには身分を書く欄があるため俺は冒険者登録をしていないが…。
「エディはどう思う?」
「え?」
「さっきのことだよ。やっぱレルガが悪いよな?」
「は?悪いのはお前だろ?」
「えっと…。ファビは善意でレルを守ろうとしてましたよね?ならレルはファビにお礼を言うべきだと思います。」
「ほ、ほら!エディも言ってるだろ?」
「は、まてよ!そりゃないぜ!お前がいなくても俺一人で勝てたのによぉ!」
「ははは…。」
俺は前よりも明るくなったような気がする。以前はもっと暗く、修行熱心であった。しかし、今は仲間と笑いあって、楽しく暮らしている。今ならあの時のナーラが言っていた言葉に深く共感できるかもしれない。そう思った。




