特訓6
俺とファビは外に出た。周りを見ると、何人かのスタッフが何かを探しているような素振りをしている。きっと行方不明のアーティストを探しているのだろう。
「ここで占うからエディは離れてて。」
「わかりました。」
俺はファビから数歩離れた。ファビは魔石と白紙のカードを取り出し、占い魔法の準備をしている。思えば、俺はファビが占いをしているところを直接見たことがない。初めて見るため、少しワクワクしてしまう自分がいる。
ファビは持っていた魔石とカードを地面に置いた。すると、置いた魔石を中心に魔方陣が地面に描かれた。ファビは魔石とカードを置いた後、手を合わせて祈った。ファビが祈った直後、カードが勝手に宙に浮いて赤色に光った。しばらくすると、光が消えてカードが地面に落ちた。それと同時にファビはカードを拾い上げた。
「これはヤバイな。魔物に襲われているようだ。探すぞ!」
ファビがさっきのカードを見せてきた。さっきまで白紙だったカードだが、魔物と人間の絵が描かれている。
「魔物…ですか?なんで街に…。」
「わからない。だが、占い結果が襲われていることになっている。助けないと…。我は大通りを見に行くからエディはライブ会場の周辺を見てきてくれ!」
「わかりました!」
俺はライブ会場の裏まで来た。すると、マネージャーらしき人がポニーテールの青い髪の人を守るように魔物と戦っているのが見えた。魔物は虎のような形をしているが、額には魔石があるため魔物だ。マネージャーらしき人は体の数ヶ所から出血しており、いつ倒れてもおかしくない状態だ。
(ファビを呼びたいが、あの状態だと間に合わないかもしれない。しかも今は武器を持っていない。いけるか…?)
俺は最近レルガから教わった効率のよい戦い方を思い出した。まず、無詠唱で身体強化魔法を発動しする。これは付与魔法を応用したものだ。
「こっちだ!こい!」
俺は魔物をおびき寄せて走った。そして、走る途中で魔法「落とし穴」を数ヶ所に発動させた。これはその名の通り、何かがそこを踏むと地面が柔らかくなり、地面に固定される罠だ。「あまり威力は強くないが、罠としては使える魔法」だとレルガは言っていた。案の定、魔物はすぐ罠にかかり、身動きがとれなくなった。
「さて、次は…。」
動けなくなった魔物に魔法を打ち込むという作戦だ。これなら武器がなくても討伐ができる。しかし、罠を仕掛けすぎたためか、突如自分の体は地面に固定されてしまった。自分の罠を踏んでしまったようだ。
「やべっ!自分で仕掛けたのに!」
落ちたところが悪く、魔物との距離は数cmくらいだ。魔物は暴れ、前足と俺の手が触れそうになった。俺は怖くなって火魔法を魔物に連射した。
「ファイア!ファイア!」
初級魔法だったが魔物が罠で動けなかったため、魔法を数十発連射してなんとか討伐できた。しばらくして治癒魔術師が数人駆けつけた。青い髪の人は無傷、マネージャーらしき人は医務室へ運ばれた。俺も罠から抜け出すのを手伝ってもらった。今の気持ちを一言で言うなら「疲れた」。罠から抜け出した後、ファビが走って駆けつけた。
「大丈夫か?一人でよく頑張ったな。戻るか。」
「ああ…。」
俺たちはライブ会場に戻ることにした。戻る途中で誰かに話しかけられた。
「あの、さっきはありがとうございました。」
そう聞こえ、俺は周りを見渡した。背後にはさっきの青い髪の人が笑顔で立っていた。
「いえいえ、観客があなたを待っています。早く戻りましょう。」
「はい!」
{ライブを再開します!ロックが魅力なシンガーソングライター!}
さっきの青い髪の人がステージに立った。そして、聞いたことのある声で歌っていた。
{炎のような、水のような、キレイでどこにでもある~。}
歌詞に合わせて火や水が動いている。あの時と同じく、歌詞と現実がリンクしている。
(なるほどね…。この人は歌詞に魔力を込めることによって本来あり得ない現象を引き起こす能力がある。たぶんあのときの人だ。)
歌い終わると、ライブ会場に歓声が広がった。
{凄かったですね!名前をどうぞ!}
{キアです。}
{イワ?}
{キアです!き、あ!}
{えっと…。あ!エワさんですね。次行きましょう!}
「「「ハハハハ…!」」」
「ははは…。」
「今のが優勝候補かつ、これから大物になるアーティストだ。エディはわかったかな?」
「まあ、なんとなく。」
(ようやく出会えた。あのときの、あの歌の…!)
「何かいいことでもあった?」
「ま、まあ。ちょっとね…。」




