特訓5
街は洋風の建物が並んでいる。窓はガラスでできている。街灯も建っている。本当に都会に来たと実感できるような風景だ。俺は手でフードを押さえながらも辺りの建物を楽しみながら歩いた。
「着いたぞ、ここが今日の新人歌姫の聖地だ!」
ファビにそう言われて俺は正面を向いた。しかし、ここは屋外ライブ会場であった。しかも結構広めである。新人がこんなに大きなライブ会場で歌えるわけない。
「えっと、ここライブ会場ですよね?!」
「ああ、ここでオーディションをやるんだ。入場料は無料。」
「ん?オーディションの段階ですか?!てっきり今日発売の音響魔石を買いに来たのかと…。」
音響魔石とは、音の情報を付与した魔石のことだ。映像よりも付与が簡単なため、比較的安い。専用の魔道具を使うことによって音量調節や楽曲のスキップなどが可能となる。
「やっぱり生で聴かないとね~。」
(生と録音って聴けば同じような気がする…。)
俺たちは入場して、会場の最後尾から三番目の列の席に座った。なにしろ客が多い。入場制限がかかりそうになるほど。会場には見たことがない服を着ている人もいる。
「周りを気にするな。そろそろ始まるぞ。」
そう言われて、俺はステージを見た。さっきまではステージには誰一人いなかったが、俺が周りを見渡している間にステージには10人ほど入場していた。そのうちの二人は音量調整をしているから音響担当、三人は机に貼ってある張り紙通り審査員、ポツンと立っている一人はたぶん司会だろう。残りの四人は衣装的にアーティスト。この中に俺を助けてくれた人がいるのかわからないが、その人を探しつつ単純に音楽を楽しむことにした。そして、司会らしき人が前に出てきて喋り始めた。
{初めまして。今回の司会を任されましたレオンです。今日は未来のスターたちが奏でる音楽を楽しんで下さい!早速やっていきましょう!まずは、弾き語りでみんなを幸せにする歌姫!どうぞ!}
レオンがそう言うと、一人の女の子が椅子に座り、弾き語りを開始した。歌姫というワードに反応してしまったが、俺が聴いた声ではなかった。この人ではない。
{ありがとうございました!名前をどうぞ!}
{エニーです。よろしくお願いします。}
{イニー?}
{エニーです!え、に、い!}
「「フハハハ!」」
「ハハハ…。大丈夫かよ…。」
レオンの聞き間違いで思わず苦笑いしてしまった。
{次…次!ハードロック楽曲が魅力のユニッオ…。ユニット!}
レオンは顔を赤くして進行している。かなりテンパっているらしい。
「彼は司会には向いていなさそうだな…。」
「そうですね…。」
このユニットは知っている。俺が住んでいた家の近くにも路上ライブをしていた。ユニットの名前は「ロッカー」。
{さて、次もロックが魅力なシンガーソングライター…て…あれ?いません…。}
「「え?どういうこと?」」
「「いない???」」
会場がザワザワしている。主役のアーティストの一人がいない、というアクシデントがあったのだ。
{ここで休憩にします!再開する時間は後程!}
「はぁ…。残念だよ。」
「そうですね。俺たちも探してみますか?」
「そうだな。一回外に出て占ってみるか。」
(占いって…。なぜそうなるのかわかんない…。)




