裁判
「お母さん、見てみて!」
「まあ 可愛いお花!」
「これお母さんにあげる。」
「ありがとう。大切にするね。」
6歳だったころの俺は父と母と三人暮らしだった。当時はお金があって結構裕福だった。
「ねえねえ 僕もお父さんみたいに冒険してみたい!」
「そうね… 大きくなったら冒険者になってみたら?」
「えー 今すぐ冒険したいよー」
「それにしてもお父さん遅いわね。」
家族がいて、家があって、空腹も疲労も感じなかった。この頃の俺は幸せだった。だが…
「動くな!警察だ!お前たちに殺人の容疑がかかっている。」
突然警察が家を訪ねてきた。
「この家から殺された冒険者と同じ魔波が検出された。逮捕状も出ているからな。署までついてきてもらおうか。すでにこの家の家主も逮捕済みだ。」
魔波とは、生き物が無意識に放出している魔力のことだ。特殊な魔石によって計測できる。簡単に言えば、DNAのようなものだ。
「… お母さんたちが殺人犯?」
お母さんは震えていた。お母さんは何かを言おうとしたが黙っていた。そして、俺を置いたまま黙って外へ逃亡した。しかし、警察の拘束魔法によってお母さんは逮捕された。俺も小さな手錠をかけられてしまった。
「私は無実です!その時間は夫と家にいました!」
「じゃあなぜ逃げた?自白しているようなものだろ?それに、夫も容疑者だからアリバイにならない。」
お母さんと検察官は裁判でもめていた。次々とお母さんに襲いかかる証拠と、それを必死に否定するお母さん。当時6歳だった俺に状況はよくわからなかったが、ピンチだということはよくわかった。そして、幸せは壊れた。
「お前たちの家を調べたら麻薬が見つかったぞ。殺人の動機は麻薬の可能性が高いな。」
お母さんは麻薬の売人だった。異名は『裏世界での英雄』裏世界では有名人だった。家をよく調べられた後、小さな罪がいくつも見つかった。裁判の結果、お父さんは共犯者として、俺は償いきれない両親の奴隷期間を30年課せられた。裁判の後、すぐに奴隷監禁所に入れられた。お母さんは隣の部屋にいた。
「エディごめんね… お父さんが冒険者だっていうのはウソだよ。本当は… 麻薬の取り引きで…」
「もういいよ…」
俺はそれを最後にお母さんと会話をしなくなった。
そして半年後、お母さんは死亡した。医者によると舌の根っこ部分が喉に詰まったことによる窒息死だ。舌を噛み切ったことによる自殺とのこと。俺は完全に生きる希望を失ってしまった。しかし、よく見たら砂で地面に何か書いてある。お母さんの字だ。
『自分たちのせいでこんなことになったんだ。ごめんね。でも、人のこと言えないけど、情けない自分だけど、エディは幸せになって。』
俺はこの文字を読んで少しは生きてみようかと思った。そして、お母さんの分まで…。