変わりゆく日常2
いつもと違い校門前で真紀先輩が待機していた。
珍しい事もあるものだ。雨でも降るのかな?
「梨花に慎司、おはよー!今日もいい天気だね」
「真紀、おはよう」
「真紀先輩、おはようございます!」
「あれれれ?今日は恋人繋ぎなんだ?へぇ、慎司、どういう事かな?」
確かに今日は姉さんと恋人繋ぎで手を繋いでいる。家を出た時に姉さんからして来たので断るという選択肢は僕には無かった。
「真紀、その前に私に何か言う事がないかしら?」
「はいはい!昨日電話でも話したけど、慎司に交際を申し込まれました。もちろん承諾したよ!だから慎司とボクは彼氏彼女なのだ」
真紀先輩が僕の左腕にしがみついてくる。凶器が当たって痛いです。ゴリゴリと骨が削られてるんですが、胸の柔らかさはどこに行っちゃったんですか?
「慎司、少しは嬉しそうな顔しなさいよ!」
名前が名前だけに下手な名言吐けないんだよ。パロディになっちゃう。
「わ、笑えば良いのかな?」
「もう真紀ったら!」
「もちろん梨花の心配もわかるよ。でもボク達三人の関係は変わらないよ。そうだろう?」
そもそも真紀先輩が本気で僕と付き合う気があるのかどうかさえも疑わしい。
姉さんが真紀先輩に対抗するように繋いだ手を離して腕にしがみついて来た。
「私も負けないんだから」
いつから勝負になったんだ?そして、何の勝負をしているんだろ?
流石に両腕を左右からそれぞれ拘束されると身動き出来ない。校門前でのカオスな状態に登校している他生徒達の視線が痛い。
「取り敢えず手を自由にしてくれないかな?これじゃあ、歩けないよ」
「えへ、仕方ないな。手を繋ぐので勘弁してあげるよ」
「もう、真紀ったら」
両手それぞれが姉さんと真紀先輩の二人と恋人繋ぎで繋がれる。
もはや保育園の登園姿そのものだ。きっと周りには微笑ましく写っているのだろう。僕は観念して歩き出すのだった。
***
「おはよう、慎司!今日は特別に目立っていたぞ」
教室に入るとクラスメートの山上あきらと一ノ瀬隼人が声を掛けてくる。
「おはよう、目立ってたか?」
「おいおい、あれだけ派手にやらかしてて。放課後ファンに呼び出されても知らないぜ」
「花澤先輩のファンはまだしも、橘先輩のファンは熱狂的だからな。後ろから刺されてもおかしくないぜ」
あきらが、ブス!っと包丁らしき凶器を刺す真似をする
やめてくれまだ死にたくない。
「おっぱいとちっぱいに挟まれるなんて男なら一度は体験してみたいよな」
「あきらはちっぱい派だもんな」
隼人の言葉にあきらが頷く。
「ちっぱいこそ至高!」
ちっぱい?まな板の間違いじゃなくて?もちろん口には出さない。
「いやいや、巨乳派としては花澤先輩のおっぱいは堪らなく素敵だぜ」
「朝っぱらから教室で己の性癖を熱く語らないでくれないか」
熱く語り出す隼人の発言を遮る。
目の前で身内の身体的特徴への評価を聞かされるとかどんな拷問だよ?
「やれやれ、確かに」
隼人が大袈裟に肩をすくめてみせる。
「続きは後でな」
二人は片手を上げるとそれぞれ自分の席に戻って行った。