表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

変わりゆく日常1

「ただいま」


 玄関を開けて家の中に入る。時間は午後八時前、少し喫茶店で長居しすぎた様だ。

 奥から姉さんが姿を現す。


「慎ちゃん、おかえりなさい!ご飯まだでしょう?」


 真紀先輩が豪快に食べる姿を見るだけだったので余計にお腹が空いている気がする。


「お腹ぺこぺこだよ!父さんと母さんはまだ帰ってないの?」


「二人共もう少し時間が掛かるみたいよ。待たなくていいから先に食べておきなさいって。先にご飯にする?それともお風呂にする?それとも」


「サッパリしたいから先にお風」


「私?」


「!?」


 ブフッ!思わず目を見開いてしまう。


「嫌だなぁ、姉さん。冗談が上手いんだから」


 あれ?笑ってるのに目が笑ってない気がする。気にせいかな?気のせいだよな。


「うふふふ」


「と、取り敢えず制服を着替えてくるよ」


「そう。じゃあ、お風呂準備するわね」


 そう言って姉さんは奥に戻って行った。僕が部屋で制服を着替え、風呂に向かうと湯舟にはお湯が張られていた。


「姉さん、ありがとう。じゃあ、先に入らせてもらうよ」


***


 カチャ。髪を洗っている時に脱衣室の扉が開く音がした。姉さんが着替えの補充をしていると思い気にせずに頭を洗い続ける。


「慎ちゃん?」


「姉さん、どうかしたの?」


「着替えここに置いておくわ」


 やはり姉さんだった。一度シャワーを止めてお礼を言う。


「ありがとう、姉さん」


「うふふふ、背中流してあげましょうか?」


「き、今日はいいかな」


「姉弟なんだから恥ずかしがらなくてもいいのよ」


「丁度、さっき洗い終わったところなんだ」


 上から洗う派なので大嘘である。


「そう?じゃあ残念だけど仕方ないわね。明日にしましょう」


「そ、そうだね」


「あまり長湯しすぎるとのぼせちゃうわよ」


 気を付けて、と言うと姉さんは脱衣室を出て行った。


***


「はい、あーん。美味しい?」


 もぐもぐ、ごっくん。


「とても美味しいよ、姉さん」


「良かった。じゃあ、こっちも。はい、あーん」


 もぐもぐ、ごっくん。


「美味しい、最高だよ」


「うふふふ。はい、あーん」


 風呂タイム後の晩飯を姉さんに給仕して貰って食べている。果たして口まで運んでもらうのを給仕と呼んでもいいのかは疑問だけど。


「そろそろ自分で食べるよ」


「姉弟で遠慮なんてしなくていいのよ。慎ちゃん、もしかして嫌なの?」


 全力で首を振って否定する。


「大好きな姉さんに食べさせて貰えて嫌なはずないよ」


「うふふふ、良かった」


 僕の言葉に姉さんは心底ホッとした様な表情を見せた。


「はい、次ですよ。あーん」


***


「あっ、こら!動いたら駄目です」


 食後、二人で一緒に洗い物を済ませた後に、まったりと横なってる僕の耳掃除を姉さんが始めた。


「やっぱり一人だと駄目ですね。ほらこんなに大きな耳垢が取れましたよ」


 見せて貰った耳垢は大きかった。小指の先程もの大きさはある。その後も耳の中でカサコソという音と共に耳垢が回収されていく。


「はい、こちら側は終わったわよ。ふぅっ」


 優しく耳に吹きかけられる吐息に反射的に身体がゾクゾクする。


「はい、反対側を向いてちょうだい」


 身体の向きを変えようとして、姉さんの膝の柔らかさを改めて感じてしまう。どうしてこんなに柔らかいんだろう?


「こちら側はあまり無いようね」


 再び、カサコソという音と共に耳垢が回収されていく。


「はい、お終い!ふぅっ」


***


 コンコンコン。ノックの音がする。


「慎ちゃん、まだ起きてる?」


「姉さん、どうぞ」


 僕はベットから半身を起こすと扉に向かって声を掛ける。部屋に入って来た姉さんはヘンテコな人形を抱えていた。

 薄明かりの中、その人形を見てるとどこかで見たような、見たことないような不思議な感覚に襲われる。


「あのね、いきなりだけどお願いがあるの。良いかな?」


「もちろん、僕に出来る事なら何だって手伝うよ」


「本当!良かった。慎ちゃんじゃなきゃ駄目なの」


 僕じゃなきゃ駄目?何だろう?


「それでお願いって何かな?」


「慎ちゃんが足りないの」


「へっ?」


 思わず間抜けな声が出てしまう。


「全然、慎ちゃん成分が足りてないの!」


「僕?」


「だから今晩は一緒に寝ましょう?いいでしょう?」


「一緒に寝るの?」


「姉弟だから大丈夫、平気でしょ?」


「そ、そうだね。一緒に寝るくらい姉弟ならよくある事だよね」


 突き放して不自然になるよりはマシだと提案を受け入れる事にする。


「じゃあ、お邪魔するね。うんしょ」


 僕が身体を奥に詰めて出来た右側の空間にスルリと入り込んで来た。


「うふふふ、暖かい」


 姉さんは僕の右手に抱き付いて嬉しそうに呟く。

 柔らかい物体に利き腕を拘束された僕は身動きも出来ずに固まってしまう。

 柔らかい、、、って駄目だ!弟は姉に邪な感情を抱かない、抱かない。

 すやすやと寝息を立て始めた姉さんの横で身動きもできずに睡魔に襲われ意識を失うまで悶えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ