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距離を取る為に出来る事?

「さて、素直に白状してもらおうかな」


 詰め寄ってくる橘先輩に僕と姉さんの血縁関係がないと判った一連の出来事と、今まで通り義姉弟だと知らなかった事にして普通の距離感の姉弟を目指したい事を正直に話した。


「なるほど、なるほど!二人の間に血の繋がりがなかったと。なるほど」


 橘先輩がひたすら、なるほど、と繰り返す。

 そして、合間にお代わりしたオレンジジュースを飲み干す。ぷはぁ!

 三杯目だけどお腹大丈夫なのかな?


「納得したよ、うんうん」


 そう答える橘先輩の満面の笑みが何故だかニヤニヤしているように思える。相談する人を間違えたのだろうか?少し不安になる。


「今までは弟として、やましい気持ちが無かったから平気だった行為が恥ずかしくなったと。具体的には手を繋いだり、ハグしたり、膝枕してもらったり、あーんって食べさせてもらったり、そういう事?」


「はい」


「それらの行為を止めるにしてもいきなりだと怪しまれるので徐々に止めて姉離れしたいと」


「はい、そうです」


 僕は橘先輩から問いかけられる相談内容の確認に対して素直に頷き続ける。


「梨花といつも一緒にいるボクなら何かいい案が思い浮かぶんじゃないかと思って相談に来たと。そういう事でいいのかな?」


「はい」


「なるほど、なるほど。だけど肝心の梨花の気持ちを無視している所は気に入らないな」


「えっ?」


 予想していなかった橘先輩の唐突な言葉に僕は答えに詰まってしまう。姉さんの気持ち、、、


「それらは一方的な弟君の考えだよね。じゃあ、梨花の弟君への気持ちはどうなる?適切な姉弟の距離感なら勝手に収まると?ずいぶんと自分勝手な話だと思わないかい」


「でも、姉さんは立派な男性と幸せになって欲しいんです」


「それも弟君の一方的な考えだよね。梨花を幸せにする役は弟君だと無理なのかな?間違いなく今の梨花は幸せだよ」


「残念ながら弟なので」


「血が繋がっていないのに?」


「ええ、弟なので」


「梨花の事を女として見た事ない?」


「ええ、姉弟が結婚できないと知って以来、姉さんを女性として見た事は無いんです」


 嘘じゃない。これからもその気持ちを維持できる自信が無いだけだ。


「可哀想な梨花。弟君に振られたんだね」


「何か言いましたか?」


「うん?何でもないよ」


 橘先輩は聞き返す僕の言葉を打ち消した。


「よし、分かった。協力するよ」


「ありがとうございます」


「姉離れ、というか、シスコン対策に有効なのはそれより大事な存在をつくる事。すなわち恋人を作ればいいんだよ!」


 橘先輩が胸を張る。しかし、スレンダーで胸がないせいで、食べ過ぎのお腹がポッコリと出ているだけだった。


「こら、どこを見ている!」


 どこってお腹、、、

 ガツン!容赦ない橘先輩の鉄拳が頭に落ちた。


「嫌なら帰っても良いんだよ」


 それはただの食い逃げって言いませんか?


「すみませんでした」


 大人の対応で橘先輩に頭を下げる。頭を下げるなんてタダだ。いくらでも下げるよ。


「じゃあ」


 橘先輩が口の前に人差し指を立てて静かにと合図をしながら近付いて来くる。そして耳元で囁く。


「いいかい?今からボクの言う事を繰り返すんだよ、大きな声で。わかったら頷いて」


 僕は返事の代わりに頷く。

 それを確認した橘先輩が囁く。


「橘先輩、僕と」


「橘先輩、僕と」


「付き合ってください」


「付き合って下さい、えっ!?」

 

「ええっ!?いきなりでビックリしたけど、ボクで良ければ喜んで!」


 驚く僕の言葉に被せて橘先輩が大きな声で驚いた振りをする。何この自作自演?

 いきなりの展開に頭がついていかない。


「じゃあ、彼氏なのに弟君だとおかしいからこれからは慎司って呼ぶね。ボクの事は真紀って呼ぶ事!」


「真紀先輩?」


 話がよくわからないんですが?


「真!紀!」


「真紀」


 橘先輩の勢いにとっさに名前呼びする。


「はい、よく出来ました!じゃあ、明日から彼女としてよろしく。梨花には連絡入れておくよ。今日はご馳走様!」


 呆然とする僕を置いて真紀先輩は去っていく。そして正気に戻った僕は会計を済ませようとして料理の代金に気が遠くなった。

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