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橘真紀視点1

----橘真紀の場合----


 梨花と出会ったのは高校入学直後だった。キャーキャーと新入学生(女子)に騒がれている生徒会長を相手に持ち前の天然を発揮して撃退していた。


「ほう?僕を見ても騒がないんだね?」

「騒ぐ?よくわかりませんが?」

「ふっ、変わった女だな」

「はい!弟にもよく斬新だねって言われます」

「なっ!?」


 梨花は壁ドンスタイルのまま目を白黒させる生徒会長を捨て置いてスタスタと去って行った。

 物陰で腹を抱えて笑った。笑い過ぎて五分はその場から動けなかった。

 当然、そんな面白い天然キャラを見逃すわけもなく、お近づきになり友達になった。今では親友と言っても良いポジションに収まっている。

 しかし付き合いを続けているうちに梨花に対する天然という評価は間違いであった事が判明する。頭の中ほぼ100%弟の事で占めているブラコンだった。口を開けば『慎ちゃん』『慎ちゃん』

 一度、弟君を名前で呼ぼうとした事があるがその後、拗ねられた。かなりめんどくさかった。その結果、それ以後『弟君』で済ませている。

 弟君は重度のシスコンである。梨花と二人でショッピングに行く約束をした時も当然のように待ち合わせに場所に姿を表す。登下校のみならず気が付けば二人で一緒にいる。


曰く『弟として当然ですから』


曰く『姉さんは可愛い』


曰く『姉さんに悪い虫が付かないように見張るのも弟の役割』


曰く『碌でもない男に姉さんは渡せない』


 お腹いっぱいだよ。ご馳走様。

 既成概念を捨てて二人で一人前として認識する事にした。梨花との昼食が三人になるのは当たり前の事。


***


 昼食を梨花達三人でとった後、教室に戻ろうとした時にポケットにメモが入っている事に気が付いた。


『ホームルーム前の小休憩時間に屋上に来てください』


 物理的にメモを入れられる人物は二人しかいない。消去法的に犯人は弟君だと判明する。

 明らかに梨花絡みの案件だ。梨花に内緒にする必要があるからメモをコソッとポケットに入れたのだろう。もし違うのなら梨花本人のいる前で言えば済む話だ。

 しかし残念だったな、弟君。梨花相手に弟君の秘密なんて存在しないのだよ。全てご注進して指示に従うのみ。私は学習したんだよ、学習。ブラコンとシスコンには積極的に関わってはいけないという事を。


***


「どうかしたのかな、弟君?」


 屋上に到着してしばらくして弟君が現れた。


「話があるって?告白でもしてくれるのかな?」


 笑いを取るつもりは無いけど反応がない。つまらない奴め。本命以外には目もくれないって?


「梨花と離れてても不自然じゃないタイミングを狙ったって事は梨花絡みの事だね」

「ええ、そうです」

「梨花が好き過ぎて夜も眠れないとか、そんな相談ならごめんだぞ」


 出来れば話を聞かずに帰りたい。絶対に面倒臭い案件に決まってる。シスコンとブラコンの姉弟喧嘩なんて仲裁出来ないぞ。


「逆です、逆!姉離れしようと思いまして、それで相談に乗って貰おうと思ってお呼びしました!」


 弟君は私に向かってコメツキバッタの様にひたすら頭の上げ下げを繰り返した。


***


 詳しく話すには時間が足りないと放課後に改めて集合する事にして二人は解散した。当然、梨花に報告する時間稼ぎの為の口実だ。

 待ち合わせの喫茶店に着くも弟君の姿が見えない。油断する方が悪いのだよ。部活後の腹ペコ具合を舐めてもらっては困る。弟君の許可なく料理を注文しまくる。

 そして料理が出てくるのとほぼ同時に弟君が姿を現した。


「じゃあ、詳しく話を聞かせてもらおうかな?あっ、当然ここは弟君の奢りという事で。よろしく!」


 ただ飯は美味しい!あ、見つめても分けてやらないぞ。コソッと弟君に気づかれない様に胸ポケットに入れているスマホの通話ボタンをオンにした。

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