変わりゆく日常7
せっかくの休み時間だというのにあいも変わらず隼人とあきらはくだらない討論を繰り広げていた。
「だからやっぱり異世界ものの王道的展開にヒロインは小ぶりでないとダメだ」
「いやいや、そこは溢れる母性を表現する為にも、たおやかな巨乳美女じゃなきゃいけない」
なぜ僕の机に集まる必要がある?
「姫騎士こそ貧乳でないとダメだ」
「逆だよ、逆。活動を阻害するたわわに実った胸を強調してこその姫騎士」
己の性癖を大声で主張しなくてもいいと何度言えばわかるんだ、お前たち? ここは教室で女子達の視線が痛いよ。気付かないのか?
ふと視線を遠くに向けると、閉まっている教室の扉の前で荷物を持ち両手が塞がった女子が困った素振りをしている。
僕は馬鹿話を捨て置き立ち上がり扉まで行き、扉を開けながらおさげ髪の学級委員に声を掛けた。
「河原さん、重そうだね、僕が持つよ。どこに運べばいい?」
「あら?花澤君。職員室までなんだけど──じゃあ、頼もうかしら?ありがとう」
僕は河原さんから荷物──書類の束を受け取ると職員室に向かって歩き出した。
「花澤君って最近、フレンドリーだよね。女子からの評判いいよ」
「フレンドリー?」
「そうそう、女子が荷物持っていたらすぐに助けてあげてるでしょう?」
「女性に重い物を持たせるわけにはいかないよ」
「ふふ、そこよ。以前はそんなにフェミニストだった記憶ないもの。ほとんどクラスの女子と交流無かったでしょう?」
「機会がなかっただけだよ」
「じゃあ、そういう事にしておこうか。最近、クラスの女子達の暗黙のルールがあってね、重めの荷物があったら花澤君が近くに来るまで待ってるんだよ。良かったね、人気者じゃない?」
「それは人気者とは言わないよ。雑用係かな。そうだとしても、女性に重たい荷物を持たせるわけにいかないよ。ここでいい?」
職員室のクラス担任の席に着いたので確認に聞いてみる。残念ながら席の主はいなかった。
「先生いないから仕方ないよね。勝手に置いていきましょう。これで作業終了、お疲れ様。ありがとうね、助かった」
「どういたしまして。戻ろうか?」
二人で来た道を教室まで引き返す。
最近は全ての女性を仮想姉さんとして処理している。この調子だと姉さん離れもそう遠くない内に達成できるだろう。
「花澤君って2年の先輩と付き合っているって本当なの?陸上部の橘先輩だって話だけど」
「そうだよ」
否定する意味もないので河原さんの質問に素直に答える。
「なるほど、橘先輩仕込みのフェミだったんだね。最近の好感度上がってる花澤君は彼氏候補No.1で狙ってる子多かったんだけどな、彼女達には残念な事だね」
「それは光栄だね。お世辞でも嬉しいよ」
手伝ったお礼の河原さんからのヨイショを僕は華麗に聞き流した。
***
部活終了後、片付け終わった校庭の片隅で僕と真紀先輩と姉さんの三人でくつろいでいた。
「ほうほう、結構筋肉付いてきたよね。引き締まってきたというか」
ペチペチ、スリスリ、なでなで。
真紀先輩が好き勝手に僕の身体を弄りまわす。
真紀先輩の専属マネージャーをする事になって早くも一週間以上経ち、なんとか練習にも最後までついて行けるようになった。
筋肉も多少はついたようだ。
「もう少しガッチリした方がボクはタイプだな。しっかり頼むぞ、慎司」
「何言ってるのよ、真紀! それにいつまでも触っていないで離れなさい」
姉さんが真紀先輩の背後に回って僕から引き離そうとするが、真紀先輩はその手をするりとすり抜けた。
「慎司には代わりにボクのを触らせてあげるからおあいこだよ。さあ、慎司、どうぞ! どこから触る?」
懲りずに真紀先輩が僕の目前で胸を張る。
──触って楽しい所あるかな?
「ああ、また残念そうな顔したな! ほれ、これでどうだ。ボクの自慢のお尻だぞ」
真紀先輩が僕の手首を掴むと、そのまま自分のお尻まで僕の手を持っていった。
ムズン。もみもみ。これは。
「あっ」
もみもみもみ。硬いのに張りがあって。
「あーん」
もみもみもみもみ。弾力があるぞ。
「あ、あっ」
「慎ちゃん! ダメ!」
はっ! 僕は何を? 姉さんの声で我に返った。どうやら無意識に真紀先輩のお尻を揉みしだいていたようだ。
「慎司って案外情熱的なんだね」
「真紀! いい加減にしなさい」
「えーん、小姑がいじめるよ。慎司、助けて」
真紀先輩が姉さんが振り上げた手を避ける素振りで僕に抱きついてくる。
相変わらず真紀先輩の腹の中が読めないよ。まさか本気じゃないよね?
本気じゃ無いにしても異性に簡単にお尻を触らせるのはどうなんだろう?無防備としか言いようがない。
「真紀先輩も妙齢なんですから、僕にしろ僕以外にしろ、簡単に異性に触らせちゃ駄目ですよ」
「安心していいよ。慎司以外には触らせないからね。これでも一途なんだぞ」
だから、それが危ないって話をしてるわけで
「慎ちゃん、私ので真紀を触った手を消毒しましょう」
姉さんが僕の手を掴もうとする。
「早く!」
どうする事も出来ずに姉さんに捕まれた僕の手はそのまま姉さんの胸に添えられるのであった。




