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変わりゆく日常4

「よう、花澤弟!ちょっと顔貸してもらいたいんだが良いかな?」


 五時限目の授業が終了した直後に突然現れた上級生集団に囲まれて、僕はそのまま屋上へと連れて行かれた。屋上の明るい日差しの下で落ち着いて数えると全員で五人だった。


「何点か質問があるんだが素直に答えて貰えると助かるんだわ」


 こちらも六時限目の授業に間に合わせる為に急ぎたい。質問するなら早くして欲しい。


「僕が答えられる質問でしたら」


「素直が一番だ。ところで妙な噂が流れているんだが、本当かな?」


「妙な噂、ですか?」


「そうよ!橘真紀とお前が付き合ってるって噂だよ」


 興奮したのか発言しているリーダー格の男の声が大きくなる。


「付き合っているというか、、、」


 姉離れの為の訓練に付き合ってもらってるとは言えない。ましてや真紀先輩の顔に泥を塗るわけにもいかない。


「いや、そうです!僕が真紀先輩と付き合ってます」


「何だと?」


「真紀先輩だと?」


「我らの真紀ちゃんを」


「貴重な僕っ子がぁ!!」


 意外な事に五人揃って悶えだした。てっきり胸ぐらでも掴まれて殴られるのかと身構えていた僕はすっかりと毒気が抜かれた。


「皆さんは真紀先輩とどういうご関係ですか?」


 僕は恐る恐る尋ねる。


「俺か?俺は真紀ファンクラブ会員No.1大黒兵太」


「俺は真紀ファンクラブ会員No.2原口太陽」


「同じく会員No.3井上桂馬」


「同じく会員No.4坂上浩司」


「同じく会員No.5五十嵐清風」


 よく分からないが真紀先輩のファンクラブの人達だったようだ。


「それで真紀先輩と付き合っていたらどうだっていうんですか?何か皆さんと関係があるんですか?」


「この人数の前で啖呵を切るとはてえしたもんだ。さすがは真紀ちゃんが認めた男だ」


 そんな事より早く用件を終わらせてくれ、授業が始まっちゃうよ。


「真紀ちゃんを泣かさないと俺たちの前で誓えるか!」


 どう考えても本気でない真紀先輩が僕のする事で泣くとは思えない。だから自信を持って言える。


「当然です。誓ってもいいです!」


「よしわかった!みんなもいいな!」


「「「「はい!」」」」


 リーダーの言葉に後ろに居た四人が一斉にうなづいた。


「お前たちの交際をファンクラブとして認める!」


 交際に許可がいるとは思わなかったけど、無事に認められた様だからいいのかな?


「ただし、一つだけ条件がある!条件というか我々からのお願いだな」


「お願い?何ですか?」


「我々が卒業するまでは真紀ちゃんに手を出さないでくれ。清い交際をお願いする!」


 唐突な発言に戸惑いしかない。一体何の話をしているんだ?


「話の流れがわからないのですが?」


「もちろん、胸をも、揉むのも駄目だぞ」


 揉む?揉むほどの大きさがあっただろうか?真紀先輩の胸を想像してみる。

 うん、無いな。見事な程に無いな。直接実物を見たわけではないが、胸と呼べるものはなかったはず。


「貧乳じゃ無くなった真紀ちゃんなんて、想像でもしたくない」


「うおおぉ」


「ちっぱいこそ最高にして至高」


 爆乳にでもなった真紀先輩を想像しているのかリーダー含め五人とも号泣し始めた。


 何このカオス?僕は屋上から退散した。

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