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投稿予定及び没ネタ小説集  作者: 天原 重音


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キャラ名無き作品 その13

R15は念の為です。


キャラの名前を考えずに、気晴らしで書いた作品です。

息抜きのように勢いで書いたので、キャラクターの名前はありません。これだけはご了承下さい。


エピソードタイトル

偽の聖女呼ばわりされた直後に、聖女召喚されました

 夏が終わり、昼間でも薄着では少し肌寒く感じる頃になったある日。

 王家主催のお茶会が、王城の中庭で開催された。

 お茶会と銘打っているが、その中身は『我儘で問題行動の覆い第一王子の婚約者探し』だ。

 自分は来年に行われる『次期筆頭聖女選考会』に、参加(強制)しなくてはならないので、勉強を理由に参加を断った。現在王城の図書館の個室で勉強中です。

 だってあの第一王子(アホ)は『よし、あの悪役令嬢を排除して~』とか、血迷った事を年中ほざいているんだもん。近づきたくない。

 何より、何もしていない高位貴族の令嬢三人に濡れ衣を着せて罵倒する、謎の行動を取った。どこぞの下位貴族の令嬢(庶子含む)を虐めたとか、当事者以外の目撃証言が無い事で、自身の婚約者候補だった令嬢を人前で責め立てた。

 令嬢本人は何もしていないので、ご家族共々大激怒。

 愚行をやらかし、罪を着せようとした令嬢が二人になった時点で、王太子の座から引き摺り下ろされたのに、未だに懲りていない。王位継承権が男子優先でなければ、王太子にすらなれなかったのに、何を考えているのやら。

 今日のお茶会でやらかしたら、去勢して捨てるそうだが、決断が遅い。国王夫妻の子供で、唯一の男(一男三女の長男で末っ子)だからと、王と王妃が甘やかした結果だ。若干放置気味だった三人の王女は、滅茶苦茶凛々しい『頼れるお姉様』って感じに成長している。次期女王に誰がなるのかは、三人が話し合って決める事になっている。

 同じ夫婦の子供なのに、この違いは何だろうね。

 読んでいた本を閉じて、軽く伸びをする。その際、服の下に隠していた、筆頭聖女が決まるまで四六時中身に着けるようにと言われている、大粒の水晶が付いたネックレスが小指に引っ掛かって出て来てしまった。周囲に誰もいない事を確認してから、服の下に戻した。現在着ている服はドレスだが、露出は少ない。見た目はシンプルなワンピースに近い。

 王城敷地内の図書館を利用するに当たり、一応公爵令嬢兼宮廷魔術師兼次期筆頭聖女候補の一人なので、立場に合う服を着ている。

 次期筆頭聖女候補の一人だから、法衣でも良さそうに感じる。でも、候補になった頃、法衣で登城したら祭典官に滅茶苦茶怒られたので、以降はドレスを着て登城している。

 トラブルに巻き込まれない内に帰るかと、考え始めた直後、図書館内が騒がしくなった。

 何事かと思えば、疲れ切った顔をした文官の男性が図書館に現れた。

 自分は読み終えた本を元の場所に戻す為に、文官を無視して本の返却作業に移った。だが、文官は何も言わずに自分の腕を掴んだ。空いた手で文官の手を叩き落とすと、文官の額に青筋が浮かんだ。

 その異様な雰囲気に、図書館内にいた警備担当者が文官を拘束した。拘束された文官が何やら喚いて暴れ出す。

 この文官の胸を見る。胸には所属を示すバッチが付けられており、王城内の下級文官のバッチが付けられていた。この国では、能力が有れば上に行く事が可能だ。だから、平民でも狭き門を通り、結果を積み上げれば高級文官になれる。

 この文官が何を考えて、自分の腕を掴んだかは知らない。だが、自分の身分は公爵令嬢で、次期筆頭聖女候補だ。


 各国から筆頭聖女候補を一人ずつ選び、その中から決める為、この大陸で筆頭聖女は一人しかなれない。

 その為、筆頭聖女を輩出する為に各国が色々と動く。勉強の為に、王家主催のお茶会の出席を拒む程度の我儘も許される。今日のお茶会に関しては、三人の王女から『嫌なら出なくても良いよ』と事前に不参加の許可が下りていた。


 文官を警備兵に任せて、自分は本を返却し、図書館から出た。魔法を使って公爵邸に変える為に、敷地内から退去する手続きを行う事務室へ向かう道中、疲れ切った顔をした複数人の近衛騎士を遠くに見た。

 嫌な予感がした。魔法で姿を消して移動する。案の定、と言うべきか。近衛騎士達は焦った顔をしてどこかへ行った。その際、『こっちにいたか?』とか、『向こうを探すぞ』と言った、誰かを探しているような会話が聞こえた。

 王城敷地内への出入りを管理する事務室で、敷地外への退去手続きをするついでに、文官と近衛騎士の様子がおかしかったと、事務官に相談する。

 けれども、事務官も知らないのか、不思議そうに首を傾げた。

 互いに顔を見合わせたが、分からないものは分からない。

 退去手続きを終えたので、事務室の出入り口に顔を向けたら、近衛騎士が駆け込んで来た。

「こ、こちらにいましたか……」

「? 陛下から『お茶会よりも選考会の勉強を優先して欲しい』と言われましたので、図書館にいましたが? ああ、先程図書館で、無言で腕を掴んで来た下級文官の方がいましたね。警備兵に拘束されていますので、確認お願いします。私はこれから帰宅します」

 家に帰ると言ったら、近衛騎士はギョッとした。それから、近衛騎士は目を泳がせた。

「あ、あの、王子殿下が……」

「王女殿下から『無視するように』と言われています」

「ええと」

「陛下からも『第一王子を無視しても不敬罪に問わない』と許可を頂いております」

「……………………すみません。俺が退職に追い込まれるので一緒に来て下さい」

「お断りします。さよなら」

 絶望顔から白目を剥いた近衛騎士を放置して、事務室から出ると、廊下で金髪を揺らしていた騎士服格好の第一王女と遭遇した。自分に会うなり、王女は紫色の目を細めた。

「無事だったか」

 開口一番に、自分の安否確認を王女が行う。第一王子(アホの子)は一体何をやらかしたのか?

 王女の口から何が起きたのか説明を受けて、自分は額に手を当てて深いため息を吐いた。

 ……あのアホオヤジは、何て馬鹿をやったんだ。せめて法律を守れよ。

「会場に二人の妹も向かっている。私もこれから向かうが、君はどうする?」

「お邪魔で無ければご一緒します」

「分かった一緒に行こう」

 事務室内で白目を剥いている近衛騎士を放置したまま、自分は第二王女と一緒にお茶会の会場へ向かった。

 


「来たな。筆頭聖女を語る偽物! 母親が違うとは言え、妹を屋敷に住まわせない悪魔が聖女を名乗るな!」

「「「「……は?」」」」

 お茶会の会場向かう途中で合流した二人の王女と一緒に、四人で会場入りするなり、異母妹を腕にしがみ付かせた王子が見当違いな事を言い出した。 

 三人の王女と顔を見合わせて嘆息してから、王子の発言を訂正する。

「訂正箇所があるので、そこを訂正します。先ず、私は次期筆頭聖女『候補』であって、筆頭聖女ではありません。大陸でたった一人の筆頭聖女を決める選考会の開催は、来年です」

「は? 候補?」

「え? 嘘でしょ!? じゃあ、大粒のダイヤが付いたそのネックレスは何なのよ!?」

「これは筆頭聖女候補者に、神殿から貸し出されたもの。それと、等級が高いから勘違いされやすいけど、これは水晶よ」

「え゛!?」

 水晶とダイヤモンドを見間違えたと言う、かなり恥ずかしい事をした事に気づいた異母妹の顔が真っ赤になった。とんでもない恥を掻いたからか、異母妹はドレスの端を握り締めて俯いた。

「それから、同じ屋敷に住めないのは、この国の法律で決まっています」

「「法律!?」」

 王子と異母妹が揃ってギョッとした。その反応を見た三人の王女は天を仰いだ。弟が知らない事を嘆いている。

 第一王女が自分の発言を肯定する。

「いかにもその通りだ。甘やかされた貴族の愛人や後妻の子供が、高確率で此度のような馬鹿げた騒動を引き起こすから、愛人と後妻は許可申請制になっている。そして、仮に許可が下りても、貴様のように騒動を引き起こした場合、問答無用で身分が剥奪され、産みの母親と一緒に犯罪奴隷になる事が国法で定められている」

「そんなっ!?」

 異母妹は絶句し、絶望からその場に座り込んだ。公爵令嬢になれて、王子の婚約者になれたと喜んだのも束の間で、犯罪奴隷に零落れる事が確定した。天から谷底に落ちるような感じだな。

 王女三人は異母妹の様子を見ても、追撃の手を緩めない。

「申請が出ていない場合、父親も同罪だな」

「誰か、公爵の拘束に向かえ。これの母親も纏めて拘束しろ」

「陛下の許へ連れて行く! この二人を拘束しろ!」

 二人の王女の指示が飛び、控えていた近衛騎士が慌ただしく動き始める。

 そして、お茶会に参加していた令嬢達の視線は、三人の王女に釘付けだ。その中には、顔を赤らめている令嬢までいる。

 王子はおまけ。本命は凛々しい三人の王女。同情はしない。だって王子はアホの子なんだもん。

 お茶会は当然中止になった。参加していた令嬢達は、後日、詫びとして三人の王女が主催するお茶会に招待する事が決まった。令嬢達は大喜びだ。

 その様子を見て、王子は愕然としていたが、誰も慰めない。それどころか、令嬢達は三人の王女に礼を言って帰る始末。膝を突いて絶望する王子に誰も目も向けない。哀愁漂う姿だか、自業自得だ。

 そんな令嬢達を見て、異母妹もこの王子がハズレだった事を知る。


 自分の足元が光輝いたのはそんな時だった。


「今度は何!?」

 自分がギョッとする番になったが、足元で光り輝く物体の正体を知り少し冷静さを取り戻す。

 足元に出現したのは『魔法陣』だった。魔法陣に使用されている文字を目を凝らして見ると、この世界のものだった。

「大陸で禁止されている『聖女召喚術』か! 召喚先は、……隣国!?」

 三王女の中で、最も魔法に詳しい第三王女が魔法陣の内容を看破した。

 ……偽物呼ばわりされた直後に、聖女として召喚されるって、どうなっているのよ!?

 内心で絶叫した直後、視界が真っ白に染まった。



 歓声と共に視界が正常に戻り、沈黙が下りた。

「……隣国の次期筆頭聖女候補?」

 自分の正面、雛壇上の豪華絢爛な椅子に座っているのは、間違い無く隣国の国王だ。心なし、国王の顔色は真っ青だ。


 そりゃそうか。


 どこかにいる『聖女の資質を持つ異世界の女性を召喚する』術式は、この大陸では禁忌とされている。

 過去に異世界の女性を聖女として召喚し、上手く行かずに国内情勢が乱れた国が幾つも存在する。その中には、国内の政治バランスが崩れただけでなく、そのまま分裂してしまったケースも存在する。

 この前例が存在するので、国家を乱す存在を招く、異世界の女性を召喚するこの術式は禁忌とされた。

 使用がバレたら周辺国から白い目で見られるし、下手をすると国家丸ごと破門される。

 そんな事よりもね。異世界から召喚する術式なのに、どうして自分が召喚対象に選ばれたんだろうね?

 やっぱり、転生者だからか?

 疑問は尽きないが、やる事は一つ。そう、帰国する事だ。

 召喚されたあの場には、王女がいた。今頃、国王の許に知らせが届いている頃だ。

 三王女は非常に優秀なので、あちこちに連絡が行っていそうだ。

 さて、国に帰る前に――ここにいる連中から、聖女召喚術を使用した経緯を聞き出そう。出入り口っぽい場所に障壁を展開して逃げ道を塞ぎ、拳で行う尋問を開始した。

 


 三十分後。

 予想外に手間取ったが、必要な情報は聞き出せた。あ、国王は最後に尋問したよ。全員を殴り倒してから、拳を顔面に寸止めで放ったら、ぺらぺらと喋り始めた。

 こいつらは、召喚した聖女を『隷属の魔法』で縛り、操り人形にする気満々だった。ここまで来ると、アホとしか言いようがない。普通に犯罪だ。

 筆頭聖女を決める選定会前は大体こんな感じで、どの国も犯罪すれすれの行為を平然と行う。ウチの国は三王女が真っ当だから、この手の事が起きていないだけだ。

 これが小国だと、筆頭聖女がいる事で一時的にでも発言力が高まる事から、平然と犯罪を行う。

 名誉のように思われる筆頭聖女の座だけど、こう言う事に巻き込まれるから良いように思えない。辞退したいけど、ウチの国には他に候補者になれる人物がいないんだよね。

 そして、肝心な情報である『今回聖女召喚を実行した理由』なんだけど、もう呆れるしかない。

『異世界の女性ではなく、この世界の女性にいる聖女の資質を保有した女性を召喚すれば良いんじゃね? 他所から支援が欲しいから、やっちゃおう(意訳)』と、斜め上の発想で実行された。その結果は、隣国の公爵令嬢の拉致になった。

 これは、自分が転生者だから、召喚対象になったと見るべきかな?


 聖女召喚術が禁忌にされた理由は、『異世界人=異分子を呼ぶと、色々とバランスを崩すから良くない』以外に、『見ず知らずの女性を、国ぐるみで拉致しているも同然ではないか?』と意見が出た事も理由の一つだ

 女性を拉致しているの指摘だけど、拉致路言う単語から、『国家が犯罪行為を行っている』と認識されて、聖女召喚術を忌避するようになった。

 この指摘が出た以降、『国と関係の無い女性に大役を押し付けるのか?』とか、『わざわざ、拉致して教育を施して、大役を押し付ける必要ってある? 自力で解決出来ませんって言っているようなものだ』などの意見が相次ぎ、大陸全体で禁忌魔法の一つに数えられる事になった。


 聖女召喚術が禁忌になった経緯を思い出し、過去には真面な人物がいたのに、何故この国に真面な人間がいないのか。

 ため息が零れる状況だ。

 取り敢えず、目の前の国王を手刀で気絶させて肩に担ぎ、空間魔法でお茶会の会場と現在位置を繋ぐゲートを作る。

「あれ?」

 ゲートからお茶会の会場を覗き見たが、誰もいなかった。この短時間で片付けを完了させたのか。

 不敬になるが、一度ゲートを閉じ、謁見の間に繋いだ。

「む? おお、無事だったか!」

 謁見の間には三人の王女と国王夫妻、蓑虫のように縄でぐるぐる巻きにされている王子と異母妹がいた。

 荷物を担いだまま、謁見の間に降り立つ。ゲートを閉じてから、頼りないとは言え一応国王の前なので一礼する。

「緊急事態が発生した為、不敬承知で失礼します。禁忌術を使用した隣国の国王を捕縛しました」

「構わん。中央神殿の教皇様にも伝書魔法で連絡を入れたところだ。このまま突き出すか」

 国王ではなく、何故か第一王女が自分の言葉に対応した。何時もなら国王か王妃が反応するのに。不思議に思い国王夫妻を観察した。よく見たら、国王夫妻は二人揃って白目を剥いて気絶していた。椅子に座っていたから気づかなかった。第一王女直属の騎士に荷物を渡す。

「姉上。彼女がこちらに戻って来たのです。罪人を突き出す前に、拉致された後の事を説明しましょう」

「ん? ああ、そうだな」

「姉様の言う通りですよ姉上」

「すまんな」

 三人の王女が笑い合っている。三王女の性格を知らなければ、目の保養になる光景だ。

 王女は三姉妹で、性格の方向性も似ているし、髪と瞳の色も同じで、顔も似ているけど、三つ子ではない。第二王女と第三王女は年子だけど、第一王女が二つ年上の二十二歳だ。

 第一王女。通称、姫騎士。私設騎士団を率いる武闘派な女傑。聖剣よりも魔剣が似合う美女。

 第二王女。通称、参謀姫。宰相の補佐官を務める才媛。片眼が良く似合う妖艶な美女。

 第三王女。通称、姫賢者。国に五人しかいない、宮廷魔術師の一人で自分の三歳年上の同僚。手弱女外見の腹黒美女。

 妹王女の中で、第一王女の呼び方は『姉上』で、第二王女は『姉様』となっている。

 

 第一王女から、自分が拉致されたあとの説明を受ける。

 国王夫妻は三王女から、王子のやらかし内容の説明を受けて白目を剥いて気絶した。

 自分の父でもある公爵は城内にいたから拘束済み。後妻を拘束する為に、王都内の別邸と本邸に近衛騎士が派遣された。異母妹は王子と一緒に目の前に転がっている。

 そして、中央神殿にいる教皇(神殿長官は別にいて、教皇は全ての神殿を束ねる立場となっている)に聖女召喚術が使用された報告を、伝書魔法(短いメッセージを送りたい相手に即座に送れるメールみたいな魔法)で連絡済み。

 お茶会に参加していた令嬢達は帰宅済み。

 心配事は無い。こちらからも、隣国で得た情報を報告する。第二王女が頷いた。

「成程。それで聖女召喚術の対象に、貴女が選ばれたのね」

「姉様。召喚する対象がこの世界の住人であっても、他者を拉致する術式である事に変わりは無いわ」

「確かにその通りだ。隣国は、我が国の公爵令嬢を、白昼堂々と拉致した。この事実は変わらん。徹底的に抗議するぞ」

 三王女の中で、今後の方針が固まった。気絶している隣国の国王には悪いが、これはもう決定事項だ。この国の国王をもってしても、これは覆らない。

 王女達の方針が固まったところで、教皇の許にゲートを繋ぐ許可を求めたら、第一王女から二つ返事で許可が下りた。

 教皇の許に繋がるゲートを開く。


「ぐっぴ、……ぷっぱー、飲まんとやっていられんのう」


 ゲートの先には、真昼間からロックグラスで酒を飲んでいる素面の教皇がいた。しかも、神の血として扱われている、神職者でも飲酒可能なワインじゃなくて、アルコール度数が高いブランデーだ。

 教皇の周辺の床の上には、ワインボトルが何本か転がっていた。

「げっぷ、……ぬぉっ!? 何時からそこにいた!?」

「『飲まんとやっていられんのう』の辺りだけど。不良教皇。何で真昼間からワイン以外の酒を飲んでいるのよ?」

「あんな伝書魔法が届いたら、飲まずにいられるか!」

「あっそう。聖女召喚術を使用した国の国王を捕縛して、ここに連れて来ているけど、いる?」

「ここにいる? よし、差し出せ。儂自ら、異端審問をやってくれる!」

 そう言うなり教皇は床に転がっていた空のワインボトルを両手で二本も掴んだ。それで殴るのか。

 第一王女に一声掛けてから、騎士に預けていた隣国の国王を教皇に引き渡した。

 あとの事を教皇に任せてゲートを閉じた。

 今後の事を王女達と話し合う為に、今日は王城に泊まった。



 それからどうなったかと言うと。

 先ず、隣国は国ごと破門された。聖女召喚術を使用した理由は別のものに置き換えられ、『筆頭聖女を得て国際的な発言力を得たかった』になった。半分ぐらいは当たっている。端折った感があるが、この際、無視だする。隣国の破門を知った周辺国は次々に、隣国に対して断交を宣言した。

 我が国は、公爵令嬢の拉致に対する抗議と一緒に、あれこれ色々な苦情を第二王女が直接隣国に乗り込んで申し立てた。

 その際に第二王女は、権謀術策に長けた宰相ですら顔を青褪めさせるほどの鬼畜っぷりを披露して、拉致犯罪に関する謝罪として色々と毟り取った。共に外交官として同行したものは、誰も第二王女の雄姿を語ろうとしなかった。

 実家の公爵家だけど、自分が爵位を継ぐ事でケリが付いた。父は後妻と結婚する際に申請をしていなかった事が発覚した。異母妹と後妻と三人で、一緒に流刑地の強制労働所に送られた。一生出られないだろうね。


 父と後妻と異母妹の刑罰が、内容に反して重いと思われるかもしれないが、これは事前に公表している。

 何より、『国を傾かせる原因を作って、責任取れんのか? 子供が勝手にやったで、責任逃れする気満々だろ? 育ての親としての責任を果たせ。刑罰を重くした方が、法を守るだろう』と、法律を制定した時の国王がマジで言ったのよ。


 王子は、他国へ出荷が決まった。程よく馬鹿で、頭が回らない婿を必要としている国が存在し、そこに送り出された。この話を持って来たのは第二王女だよ。王妃が号泣していたけど、第一王女が笑顔で黙らせた。

 そして国王は、一体何を思ったのか、突然、『第一王女に王位を譲る』と宣言した。

 国内は大騒動……にはならなかった。

 第一王女(長女)なら、王子のような事はしないだろう。

 そんな謎の安心感と共にあっさりと受け入れられた。

 第一王女は明朗快活な性格をしており、謀り事は苦手とする。だ・け・ど、第二王女は謀りが事大好きなのだ。第三王女もそれなりに『黒い』性格をしている。

 三人の王女は、それぞれが苦手とする分野を得意としている。


 第一王女は武力に長けているが、政治関係と魔法関係が苦手。

 第二王女は謀り事と政治関係に長けているが、本人は戦う事に関して無力。

 第三王女は魔法に長けているが、直接的な戦闘と内政関係が苦手。

 

 こんな感じで、三人は互いの苦手分野を補い合っている。改めて三人について考えると、じゃんけんみたいな構図だ。

 三人が対立しない限り、国家は安泰だ。

 国内が落ち着いた頃合いを見計らって、自分は大陸中央に存在する『中央神殿』と呼ばれるところへ向かった。


 神殿と呼んでいるが、特定の神を崇めていない。

 大陸全人口の一割にも満たない女性だけが使用出来る治癒魔法を、古代の人々は『天から賜った神聖な力』として崇めた。古代の人々は治癒魔法が使える女性を効率よく管理・保護する為に神殿を作った。

 そして、治癒魔法が使える女性を派遣する代わりに、浄財を貰っている。

 聖女の管理と保護以外にも、派遣先で治療対象者の怪我と病気が『治癒魔法を使わずとも治せるものだった』事を想定して、神殿では医者の育成を行っている。ここの医学校を卒業しないと医者は名乗れない。

 その為、この大陸では神職者の半数が医療関係者となっている。


 そんな内情の神殿は、大陸のほぼ中央に存在するテーブルマウンテンの上に存在する。

 テーブルマウンテンの標高は千メートル程度で、直径はおよそ五キロと、ちょっとした街並みの広さの台地を持つ。ここ神殿の総本山(その実態は大陸一の総合病院と言っても過言ではない)が存在し、大陸唯一のテーブルマウンテンである事から『神山』と呼ばれている。

 この神山の台地(五キロぐらいの平坦な山頂)は宗教医学都市となっており、多くの修道士や修道女に、医者の卵がここで暮らしている。

 平坦な山の山頂なのに、森と川が存在し、畑と牧場も存在する。牧場と言っても、鶏と牛(どちらもヒヨコと仔牛の時に連れて来た)しかいない。都市内での移動は、徒歩か牛車になる。

 自分の場合は、神殿にしか用が無い。なので、空間転移魔法で指定された場所へ移動する。前日に伝書魔法で『明日そっちに行くから、教皇に伝えておいてね(意訳)』と、連絡済みだ。

 神殿と呼んでいるが、建物の構造自体は教会に近い。そんな神殿内を法衣服姿で歩いて移動し、教皇の執務室に入った。



 侍従不在の中、教皇と執務机を挟んで向き合い、新女王となる予定の第一王女からの手紙を教皇に渡した。後日、返事を貰う約束を交わし、国内情勢の報告を行う。そして、隣国が破門された経緯を聞く。

「筆頭聖女を利用して、馬鹿な事をやらかす気満々じゃったから、一思いに破門を決めたわ」

「馬鹿な事? そもそも、筆頭聖女が決まっていないのに、何をするつもりだったの?」

「余りにも馬鹿過ぎて、そなたに教える価値すらないわ」

「……どれだけ、馬鹿な内容だったのよ」

 逆に気になるが、問いを重ねても教皇は答えないだろう。それでは時間の無駄になる。建設的な話題に切り替えて、教皇と話し合う。

 戴冠式を行う為の、教皇が来国で来そうな日を尋ねるとか。来年の筆頭聖女選考会についてとか。

「おお、そうじゃ。筆頭聖女選考会だが、辞退者が続出しており、参加者はお主以外残っておらん」 

「………………なんだって?」

 一瞬、耳を疑った。この不良教皇の爺は今、なんて言った?

「欠損した四肢すら癒やす、お主が参加すると公表した結果じゃ。殆どのものが『欠損した四肢を生やし、虫の息の人間を一瞬で完全回復させ、殴打のみで竜すら下す、撲殺聖女様と競い合うなんて恐れ多い』と言ってな」

「誰が撲殺聖女だ!?」

 自分は憤慨した。怒りの余り、教皇の机を叩いた。机の上のものが揺れて、軽いものは倒れた。だが、持ち主の教皇は気にしない。自分を真っ直ぐに見たまま言葉を紡いだ。

「これまでの行動を思い返せ。そなたは巨大な戦槌で、今までに何匹の竜種を屠って来た? ワイバーンだけで、軽く四桁は超える。ドラゴンに至っては、先々月に丁度、百体目を討伐したじゃろう」

「そうだけどさ」

「他の候補者の聖女は、治癒魔法しか使えぬ。治癒魔法が使えるものは女性だけで、聖女と呼ぶのが習わしだ。だが、そなたは治癒魔法以外にも多くの魔法が使える。そのせいか、他の聖女に比べて、積み上げた功績が段違いなのだ」


 教皇の言う通り、この世界の聖女の九割は『治癒魔法しか使えない』のだ。自分は残りの一割に属し、自分以外にも治癒魔法以外の魔法が使える聖女はいる。

 ただし、複数の種類の魔法が使える代償なのか、それぞれの魔法の威力は弱く、保有する魔力の量も少ない。

 地味に『自分は例外中の例外だ』と、現実を突き付けられて凹んだ覚えがある。


 教皇に『誰が自分を撲殺聖女と呼び始めたのか?』と尋ねようとしたが、タイミング悪く教皇の侍従が戻って来た。教皇に『今日はもう帰れ』と執務室から追い出されてしまった。

 ……手紙の返事を貰う約束は交わした。来国日程はその手紙で判明する。隣国が破門になった経緯と、筆頭聖女選考会の情報も得られた。

 これ以上、ここに残ってやる事は無い。

 思うところしかないし、心残りもあるが、今日は帰国しよう。

 帰国した足で、第一王女に手紙の返事が来る事と、隣国について報告し、帰宅した。流石に聖女選考会については、報告出来なかった。



 それから半月後、教皇から手紙の返事が来た。

 その手紙で、第一王女の立太式と戴冠式の日程が決まった。国内は立太式と戴冠式に向けた準備で慌ただしくなる。自分も女公爵になので、急に忙しくなった。

 繁忙期を乗り越えて、迎えた第一王女の立太式と戴冠式が終わって、一年の残りが過ぎ、翌年となった。

 年が明けたら、次期筆頭聖女選考会が行われる。その予定なんだけどね。

 教皇の言う通り、集まった候補者の聖女達が揃いも揃って辞退を表明した。

 自分も辞退を表明したが、受け入れられず――なし崩しに自分が筆頭聖女になる事で選考会は終わった。

 帰国したら大騒動で、もうやっていられない。あんなのは、選考会とは言わん。お披露目のパレードが行われたが、大騒動だった。

 元第二王女(第一王妹)が悪ノリして、パレードの規模が大きくなったのが原因だ。

 筆頭聖女になると、大陸各国から呼ばれるから嫌だったのになぁ。


 

 これ以降の日々は、慌ただしかった。何時になったら平穏が戻って来るんだって何度か思った。

 一応、公爵位を保有している身で、筆頭聖女業を行うのは無理がある。

 親族で爵位を譲渡しても良さそうな人物を選出し、元第二王女(第一王妹)元第三王女(第二王妹)が圧迫面接を行って、とある人物に爵位を譲った。けれども、自分の身分に『公爵令嬢』は残った。

 そもそも、自分は国に五人しかいない宮廷魔術師の一人だ。宮廷魔術師は『魔法伯』とも呼ばれ、伯爵相当の地位が与えられる。

 こんな経緯があり、自分は元々伯爵位を持っていた。父親の愚行で増えただけだ。

 筆頭聖女活動の合間に、広大な公爵領の管理までやるのは難しいから、公爵位だけでも譲渡で来たのは良かった。

 


 日々忙しいと、月日の流れが速い。

 あっと言う間に、三年の月日が経過した。

 最近の国内の話題は、『女王の旦那』についてだ。王の配偶者決めで、国内の話題は盛り上がっている。

 女王は今年で二十五歳になる。国内もそれなりに安定している。

 大雑把に言うと、『女王陛下。婿を貰って世継ぎを産んで』である。

 婿探しは難航した。

 何しろ、国内で最も男前な女傑の婿探しだ。婿に来て貰えそうな他国の王族(もしくは皇族)男子に声を掛けても、色よい返事は貰えない。国内は既に探した。

 

 事件が起きたのはそんな時だった。


 元第三王女(第二王妹)が、訳の分からん秘術書を見つけて来た。

 そんで、その秘術を女王に掛けて……意味が分からない事に、自分が女王に壁ドンで迫られている。元第三王女(第二王妹)に説明を要求した。女王に一体何の術を掛けたのかと。


「姉上の婿は見つからない。何故難航するのか? それは、姉上が女だからよ。だから、秘術を使ったの。『一時的に肉体を男にする』秘術を! 姉上の嫁ならば、簡単に見つかるわ!」


 元第三王女(第二王妹)の口から、納得してしまいそうな、訳の分からない理論が飛び出した。

 婿が見つからないのなら、一時的に男になって嫁を捕まえれば良い? 何を考えているのかしら?

「それなら、他の令嬢を当たれば良いのでは?」

 マジでこの女王に抱かれたい女は掃いて捨てる程にいるだろ。

「貴女以上の身分を持った令嬢っている? 大陸で唯一の筆頭聖女様?」

「……いないですね」

 この反論は肯定するしかない。でも、こんな百合オチは要らんと思うの。つーか、拒否権寄越せよ。それ以前に、『お姉様に抱かれたい』って令嬢はマジでいるのよ!?



 謎の理論で、自分は女王の嫁にされた。もう意味が分からなねぇ。拒否権は『国の為よ』の一言で封殺された。

 外堀埋めは元第二王女(第一王妹)がもうやっていた。教皇にも連絡・許可取得済みだった。

 白目を剥きたくなる怒涛の展開に、思わず天に祈った。

 ――ああ、別の世界に()きたい。

 願いは当然のように叶わなかった。


 ここまでお読み頂きありがとうございます。

 キャラ名すら考えずに書いた、聖女召喚系の作品となりました。

 最初に考えたプロットでは、百合エンドどころか三人の王女も出て来ません。


 夜会で糾弾。

 愛人と後妻に関する法律と筆頭聖女選考会が行われるまでは聖女は全員『候補者扱い』だと、二つを説明。

 説明終了後に隣国に召喚される。

 隣国の関係者を全員殴り倒し、帰りに白い犬を拾い、帰国。

 帰りの道中に拾った白い犬が、呪いで犬にされていた他国の王子だった事が判明。

 他国の王位継承権争いに巻き込まれて、ため息を吐いたところで終わり。

 

 こんな感じにする予定でした。

 夜会をお茶会に変えた時に、ふと思いついた流れが面白うそうだったのでこちらに変更。

 最初のプロットでは短く終わらせる予定だったのに、何故か詰まった。変更したらめっちゃ進んで、二日で書き上がり驚いた。それでもエンディングは百合オチにするか迷った。

 ぶっ飛んだ発想の王女が三人もいるから良くねと、採用したらちゃんと終わった。

 

 ちなみに、秘術は残り二人の王女も使用した。主人公は三人の王女の嫁扱いされて終る。

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― 新着の感想 ―
百合エンドめちゃめちゃ読みたい
三王女が真っ当だから、筆頭聖女を目指して色々やらないと言っているけど多分違うのでしょうね。ククリさんが居るから無理なことをする必要がないのでしょう。どうせ筆頭聖女の座は決まっているのだから。ククリさん…
12はリリなの二期のヴィヴィオ的な娘育成はちゃめちゃコメディの前日譚っすなw 13は私自身が男になることだ…で百合の間に男挟ませなかったの草ァ! 三人のお嫁さんとか夜は大変な世界でしたね(^q^)
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