没予定作品 僕を殺した責任、取ってくれないか?
プロローグと設定だけはサクッと出来上がったのに、その後が続かず没作品候補入り。
勿体無いのでプロローグ部分と設定の一部を投稿します。
「今から突拍子も無い事を言うが、一先ず、黙って全て聞いてくれ」
人払いをした部屋で、目の前の皇子はそう切り出した。
「僕は二十五歳になり、とある奴と戦い殺されて、十年前の十五歳の頃に戻ってしまう。そんな謎の現象が、現在、僕にだけ起きている」
真剣な表情で語った、皇子に起きている謎の現象。
それを聞いた自分の感想は、『ライトノベル系ジャンル『死に戻り系』と同じ事が発生しているのかしら?』と言う、大国の若き皇子に対して超絶不敬で、超不謹慎なものだった。いや、ちゃんと困惑はしたよ。
死んで過去に戻り人生をやり直している。
そんな告白を受けたら、ラノベ愛読者だったらそう思うでしょ? え? 違う?
「過去への死に戻りは十回発生した。今の人生で十一回目だ。未来を変える為に色々と試したが、過去十回全て、とある奴のとの戦闘で死んでいる。勿論、そいつとの戦闘を避ける努力はしたが、敵対している奴らのせいで、過去十回、日付は多少前後したが同じ奴に殺されている。思い付く限り、権力の範囲で色々と試したが全て失敗した」
大国の皇子が手を尽くしても変えられない未来。
情報が正しければこの皇子は、竜神の血を引く一族の末裔で、皇族の中唯一の先祖返りだ。先祖返りの影響で常人の十数倍の魔力を誇るも、魔力を完全に制御し切れていないとも聞いている。
魔力制御の補助として、魔力と魔石で稼働する魔道科学の産物の『魔道礼装』を使用しているので、並みの魔法剣士よりも強い。
大国の魔導礼装の技術力と『たまたま先祖返りだから』皇子は強いんだと僻む奴もいる。けれども、自分がこの皇子の逸話を聞いた限りでは、下地が出来上がっていなければ無理な場面と遭遇しているから、完全な個人の実力だと判断している。
「十一回目だが、既に九年近い時間が過ぎている。このままだと、とある奴との戦闘で僕が死ぬまでの残り時間は一年三ヶ月だ」
二十五歳で死に戻る、その一年三ヶ月前と言う事は、まだ二十四歳なのか。今年で十八歳になるから七歳年が離れているのか。
ここまで聞いて二つの疑問が残る。
「死ぬまでの残り時間が少ない事も含めて、殿下の状況は理解しました。一年三ヶ月後に誰に殺されるかは知りませんが、今ここで私に話したと言う事は、私の手を借りに来たと言う事でしょうか? 我が国の数倍の人口を抱える帝国ならば人材も豊富でしょう。何故、私にその話をしたのですか?」
一つ目の疑問は、自分に話した理由。
信憑性よりも、何故自分に話をしたのか? 大陸屈指の大国の一つの帝国からすると、内の国は小国と言っても良いだろう。国土に至っては五分の一しかないし。
二つ目の疑問は、誰がこの皇子を殺したのかだ。
ここまで皇子は『誰に殺されたのか』を口にしていない。男か女かすらも判らない。帝国最強とも言われているこの皇子を殺せる人間がいるのだろうか?
長々と喋っていた皇太子だが、紅茶を一口飲んでから、徐に口を開いた。
「僕を殺した女の名は、『セシリア・クァンサー』と言う」
「むぐっ」
飲んでいた紅茶が変なところに入った。咽かけたが強引に飲み込む。
――おい、待て。同姓同名な、だけだよな?
声に出てしまいそうな突っ込みを飲み込み、ソーサーとティーカップをローテーブルに置いた。飲み食いしている時に何かを言われたら絶対に、噴き出すだろう。
「君は過去十度も僕を殺した。そして十一回目の今世で、どう言う訳か、今日出会った」
同姓同名であって欲しいと思ったが、皇子はとびっきりの良い笑顔で言い放つ。
「――僕を殺ろした責任、取ってくれないか?」
「いや、どうやって取れって言うのよ!?」
まだやってもいない『未来の責任』なのに、どうすれば良いんだだろうか……。
つーかさ、何をどう考えたらそんな言葉が出て来るのよ?
※※※※※※※
死に戻り十回目 ~シェリントン視点~
呼吸するだけで肺が痛い。いや、痛みを訴えているのは全身だ。
彼女との激しい戦闘の末に敗北し、地面に仰向けに倒れた僕――シェリントン・アーリス・ファーニヴァルの胸に剣が突き刺さっている。
――十度目となる死に戻りの人生の終わりも、見知らぬ彼女との戦闘による敗北で終わろうとしている。
死ぬまでに、どれ程の時間が残っているのか。見当も付かない。
無様に地面に倒れている僕を二つの黒い瞳が見下ろしている。
瞳の持ち主は、九回も、いや、十回も僕を殺した黒髪黒目の少女だ。無愛想な彼女の顔には『仕事が終わった』と書いてあった。
何時もならここで意識が途切れて、死に戻りの開始日となる、十年前のあの日に戻る。
けれど、今回は過去九回の人生よりも長く意識を保っている。
どうせ、過去へ死に戻るのだ。必ず僕を殺しにやって来る、彼女の情報を得なくてはならない。声を上げようとしたが、咳き込む事しか出来なかった。
「あれ? 意識が残っている? いや、正気に戻ったのか」
正気に戻った?
意味不明だけど、見落としている事を言われた気がして、僕は声を上げようとした。しかし、出たのは咳き込む声だった。
僕の様子を見てか、彼女は背後へ視線を送った。彼女の背後には誰もいない。
「ねぇ、イシス。これ、どう思う?」
誰もいない筈だった。だが、鈴を転がしたような声が虚空から響いた。
『う~ん。そうですねぇ』
虚空から声が響くと同時に、地面から淡い光の粒子が立ち上った。光は陽炎のような人の姿を形作った。光が作り上げたのは白い薄布を幾重にも重ねてワンピースのように見える衣装を身に纏った女性の姿だ。だがそんな事よりも、少女が呼び掛けた相手の名が気になった。
イシス。多神教の大陸において、月(昔の大陸では、月は死後の世界の象徴とされていた)と豊穣の女神の名として知られている女神の御名だ。
『多分ですけど、主導権を握り、融合し掛けていた片方を追い出した結果でしょう』
「つまり、主導権を握っていた方がいなくなったから、負けていた方が目覚めたって事か」
『この様子を見た限りだと、そう言う事になります。――それにしても、しぶといのはアーヴァインの子孫だからでしょうね。秘術の王と呼び声高い、ファーニヴァルの女王も、一体何を考えて『竜狩り』を婿に迎え入れたのやら。挙句の果てに、帝国まで興しちゃうし』
「それは王国から帝国に名を変えただけでしょ」
二人の漫才じみたやり取りが行われている間も、僕の残り時間は減って行く。僕は残りの体力を振り絞って、可能な限り息を吸って声を出す。
「き、……ぁ、だ、れ、なんっ」
「誰ねぇ。これから死ぬ奴に、名を教えても……」
どうするかと、少女は首を捻っている。そうか。彼女は知らないんだった。僕が十度目も死に戻っていると説明すれば教えてくれるかもしれないが、そんな時間は無い。
『冥途の土産として教えてあげても良いんじゃないですか』
「どこでそんな言葉を覚えたのよ」
ナイスだ女神。死に戻って時間に余裕が出来たら、一度は神殿に参拝に向かうよ。
「ま、いいか。セシリアだ。セシリア・クァンサー。マグラス王国の六公爵家の一つ、クァンサー公爵の孫娘の一人だ」
少女の名前と出身地を知り、僕は驚きから僅かに目を見開いた。
マグラス王国は僕の故国、ファーニヴァル帝国と隣接している国だ。それにしても、隣国の出身者だったのか。これだけの実力者だから、大国出身だと思っていたよ。まさか、小国出身だったのか。
急に視界が歪み、少女と女神の会話が遠くなった。
これは、死に戻る前兆だ。
帝位を狙う異母兄弟が競争相手を減らす為だけに、僕の食事に複数の毒を盛り、奇跡的に助かった翌日に戻る。
意識が朦朧とする最中、セシリア嬢の声がはっきりと聞こえた。
「本当に助けが欲しいのなら、あたしをククリと呼びなさい」
意味が解らない。だが、忘れてはならない情報だ。
プツリと意識が途切れた。
「――殿下! 殿下!」
強く揺さぶられて目を覚ました。
視界一杯に広がるのは、母の兄の息子の三兄弟だ。揃って心配そうな顔をしている。
三人の顔を見て、僕は『十一度目の死に戻りが起きた』と理解した。そう、十年前のあの日に戻って来たのだ。
この日に目覚めて以降、僕は大忙しだった。まさか同じ事を十回も繰り返すとは思わなかったよ。
僕に毒を盛った異母兄弟を後見の家ごと纏めて裁判で裁いて、没落、強制労働所送り。まだ残っている僕を蹴り落とそうと企む他の異母兄弟姉妹と後見の貴族の没落か力を削ぐを行う日々だった。
月日はあっと言う間に過ぎ去り、気づけば、九年近い時間が過ぎていた。
カレンダーを見て、今日の日付を確認すると、残りの時間は一年四ヶ月になっていた。
残り時間は少ないが、母の実家であるアーリス公爵家の安全確保は最優先事項だ。失敗した時の事を考えると、これだけは譲れない。
慌ただしく動いていたある日。僕は父でもある皇帝に呼び出された。
「マグラス王国ですか?」
「そうだ。来月中旬に、あの国の貴族学院の卒業祝いを兼ねた夜会が行われる。それに参加して来い」
マグラス王国。僕を十度も殺した、セシリア嬢がいる国だ。九年近い月日が過ぎているのに、帝位に執着する異母兄弟姉妹のせいで、何一つ調べる事が出来なかった。
「シェリントン。お前は今年で二十四歳になる。そろそろ婚約者を、この際、婚約者『候補』でも良いから捕まえて来い。マグラス王国のセシリア・クァンサー公爵令嬢なんかどうだ? 複数の国の王族と付き合いがあり、マグラス王国有数の大きな商会の会長も務めているらしい。お前の魔力に怯えず、お前の目を見て会話が出来る貴族令嬢なら誰でも良いがな」
父から彼女に関する追加情報を貰い、過去十回の記憶を探る。マグラス王国の貴族学院の卒業式の日に行われる夜会に参加した事は無い。
……過去十回、僕は参加を断っていたな。
マグラス王国は国交のある隣国だが、ファーニヴァル帝国と仲の悪いウールドリッジ皇国に挟まれた小国なので、僕は『扱いが面倒な国』とだけ認識していた。
十回目の人生が終わる間際の情報が無ければ、気にも掛けなかったに違いない。
「分かりました。マグラス王国へ、向かいます」
僕が頷いたところを見て父は満足そうな顔をした。
誰にも怪しまれる事無くマグラス王国へ行けて、しかも彼女に会えるかもしれないのだ。断る理由は無い。
更に僕は『セシリア嬢の商会が見たい』と理由を無理矢理こじ付けて、予定よりも少し早くに、三人の従兄弟と一緒にマグラス王国へ発った。
予定よりも十日程早くに到着したマグラス王国で、僕は許可を取ってから王宮敷地内を散策した。事前に立入禁止の場所を聞いて、マグラス王から敷地内の地図を借りての散策だ。従兄弟三人と久し振りにのんびりとする。
「あれ?」
「ケント、どうしたんだ?」
「いや、今、変な音が来こえた気がしたんだ」
四人で顔を見合わせて耳を澄ませると、確かに奇妙な音が聞こえる。音源に向かって歩くと、重い音と一緒に、悲鳴らしい声まで聞こえて来た。
困惑するも足は止めない。騎士のケントを先頭にして歩を進め、やがて、敷地内でも離れたところに辿り着いた。遠くに見える背の高い大木が揺れている。
建物の陰から音源を見ようとケントが顔を出した直後、眼前を何かが高速で通り過ぎ、轟音を立てた。
「「「「……」」」」
四人で音源に視線を向けると、人間の上半身が木造の壁に突き刺さっていた。陸上に打ち上げられた魚の如く、床に向かって垂れている足が痙攣していた。
一体何が起きている?
四人で震え上がっている間も悲鳴が上がり、音は鳴り止まない。
改めて音源に目を向けると、こちらに背を向けた騎士らしき男と一緒にいる、同じくこちらに背を向けた黒髪の女性を見つけた。膝丈のスカートを穿いているから女性だろう。その二人の視線の先には、幾人もの人間が突き刺さった、木造の建物が存在した。
女性が近くの大木に蹴りを入れると、頭上から虫が落ちるように人間が落ちて来た。女性は落ちて来た人間を掴み、建物に向かって適当に投げていた。建物は人間が一人当たるごとに大きな軋む音を立てて震えて壊れて行き、最後の一人が当たった瞬間、轟音を立てて建物は全壊した。
「解体作業はこれで良い?」
「ええ、良いですよ。いやぁ、解体費用だけでも削減したかったので、助かります」
「次は救助訓練だっけ?」
「そうですよ。建物に埋まった人間を救助する訓練は滅多に出来ませんし」
遠くから聞こえて来たのは、マッチポンプとしか言いようの無い会話だ。
人間で建物を倒壊させて、一緒に埋めてから人命救助訓練?
マグラス王国は思っていた以上に修羅の国なのか。
恐怖で震えていると、黒髪の女性がこちらに気づいたのか、振り返った。
「え?」
女性の顔を見て、僕は間抜けな声しか出せなかった。
何故なら、その女性こそ、僕が探していたセシリア・クァンサー公爵令嬢だったからだ。
※※※※※※※
登場人物と予定設定類
マグラス王国
辺境伯家の代わりに六公爵家が国境沿いを守護している。辺境伯家は存在しない。かつては八公爵だったが、王家から無碍にされた(主に娘が理不尽な婚約破棄を受け、冤罪で殺されそうになった、追放されそうになった等々)為、独立した。
・セシリア・クァンサー
クァンサー公爵家の養女で、現当主の唯一の孫娘。十八歳。
商会(メイン商品は化粧品)を保有している。
年の近い従兄妹がいるけど、仲は悪い。月に一度、女神イシスとお茶会をしている。
元クァンサー伯爵令嬢だったが、実父が分家を継ぐ条件を破って愛人と庶子の娘(義姉)を連れ込んで放蕩の限りを尽くし、借金債務で没落。没落に至る経緯とは唯一無関係だった上に、生まれてすぐに母親共々殺されかけた為、本家に引き取られ、公爵令嬢として育てられた。実父と愛人は借金返済の為に鉱山に送られた。義姉は当時十歳だったが、それなりにやらかしていた為、国内で最も戒律の厳しい修道院に送られた。
・クァンサー公爵家
セシリアの祖父が当主を務める家。結婚済みの息子一人、孫息子二人、孫娘二人いる。
マグラス王国の国家予算のおよそ四割は、クァンサー公爵家の税収(セシリアの商会からの税金が九割)で賄われている。
次に王家が何かをやらかしたら独立を視野に入れると脅していた。
領地の両端がファーニヴァル帝国とウールドリッジ王国のそれぞれの辺境伯領と接している。
二代前の当主(現当主の伯父)が愛人と庶子の娘を連れ込み、実の娘を迫害した事を起点に一大騒動が起きた。
具体的に言うと庶子の次女は、長女のものを全て奪うだけでなく、全ての悪事を押し付け悪評を流し、挙句の果てに婚約者の王太子を奪い、複数の高位貴族の令息を侍らせ、義姉を冤罪で処刑させようとした。
当然のように前当主が全てを調べ上げて、事実を詳らかにして長女の冤罪は晴らされた。だが、当時の王家からの押し付け婚約を解消する機会になったので全く痛まない。と言うか当の王太子の父親たる王も『公爵令嬢を相手に、男爵令嬢との真実の愛からなる冤罪による婚約破棄劇』を引き起こしていた事による、後ろ盾欲しさの押し付け婚約だった。
前当主(現当主の祖父)が再び当主の座に戻り、陣頭指揮を執った事で騒動は終息した。やらかした三人は領地内の監禁されて、二年後に病死(本当は毒殺)した。被害者の長女は療養と言う形で領地に引き籠り、唯一の味方だった庭師の青年と結婚した。次の当主は分家の伯爵家(何時でも公爵家に戻れる弟で、現当主の父)の当主が選ばれた。
この時の王太子は取り巻きの令息達(婚約者がいたが解消された)と一緒に身分剥奪の上で、それぞれ別の強制労働所に送られた。王家有責で婚約解消となり、王は王弟に王の座を譲り渡し、妃と一緒に塔へ一生涯幽閉となった。
この一件で、クァンサー公爵家は王家からの押し付け婚約を向こう百年拒否出来る権利を得た。
だが、現王家の側妃がオツムの弱い第二王子の養い先欲しさに、セシリアに『第二王子と婚約して伯爵家を再興しろ』と脅迫した。これが原因で王家は、国家に収める税収を十分の一以下にするか、クァンサー公爵家の独立を認めるか、向こう三百年の登城と王命の拒否権を出すの三択を迫られた。
セシリアの友人達
本編開始三年前、ヴィクトリアが皇太子妃としている帝国主催の武闘会で知り合った。
・アンジェリカ
セシリアが保有する商会の経営担当。二十三歳。
一国の王女だが、両親が頭を抱える程に商売が大好き。ヴィクトリア経由でセシリアと知り合った。
婚期を逃しているけど気にしない。後にセシリアの紹介でアランと婚約し、国を挙げて祝福される。
・マイカ
アンジェリア付きの専属侍女で乳母姉妹。二十三歳の伯爵令嬢。
結婚せずにアンジェリカに付いて行く気満々だったが、後に知り合ったトラヴィスと意気投合し婚約する。
・ヴィクトリア
自称、セシリアの拳の友。十九歳。
ファーニヴァル帝国とほぼ同じ国力を誇る帝国の皇太子妃。自国主催の武闘会の決勝戦にて、三年連続準優勝だったが優勝はセシリア。セシリアの実力と敗北を認めて拳の友と認定した。
セシリアを義妹にすべく弟のエリオット(十七歳)との婚約を勧めていたが、弟が『年上の女は嫌だ』と嫌がり全く進んでいなかった。後に一つ年下のベリンダをセシリアから紹介されて婚約する。
夫の皇太子は腹黒く有能な事で有名。
・ジュリア
一国の王女だけど、王家の決まりで剣を嗜んでいた。騎士団で活動経験がある為か、国内の貴族令息からはちょっと距離を置かれている。男装の麗人系王女。
ヴィクトリアの祖国の帝国主催の武闘会でセシリアと出会う。
後にアーリス家の騎士団を継ぐ予定のケントと婚約する。
ファーニヴァル帝国
大陸屈指の大帝国。同じ国力を誇るウールドリッジ皇国とは、マグラス王国を挟んで仲が悪い。現皇帝はジェローム。
政治的なバランスを考慮して皇帝の妃を複数娶る事が多い為、複数の皇妃がいる場合皇后を決めない。皇后を決める場合は、他の妃を娶らない時になる。
皇子と皇女のミドルネームは母親(妃)の実家になる。
皇帝と皇太子のみ、ミドルネームの後ろに初代皇帝の名の『アーヴァイン』が入る。
ジェロームの場合は『ジェローム・フォーガス・アーヴァイン・ファーニヴァル』になる。
・シェリントン
一大帝国のファーニヴァルの皇子。正しい名前は『シェリントン・アーリス・ファーニヴァル』になる。黒髪と金の瞳。
死に戻るループを十回経験した。十回全てにおいて、セシリアとの戦闘が原因で死亡している。十一回目でセシリアと一年以上も前に遭遇した。協力を求めるついでに監視する為に、自身の婚約者に据えた。
微笑み皇子の渾名を持つが、そうでもしないと保有する魔力による無意識の威圧が原因で、他人とまともに話が出来ない。
魔力量の高さから目を見て話が出来る人間がおらず、何かと避けられていた。貴族令嬢でシェリントンと目を見て話が出来るのならば、誰を婚約者に据えても良いと許可を貰っていた。
ミドルネームのアーリスは母の実家の公爵家の家名。
・アラン、ケント、トラヴィス
アーリス公爵家の令息達で、ケントとトラヴィスは双子。ベリンダと言う妹がいる。
アランは嫡男、ケントは家の騎士団を引き継ぐ予定、トラヴィスはアランの補佐役になる予定だった。
後にセシリアから婚約者となる女性を紹介されて、全員婚約する。
・ジェローム・フォーガス・アーヴァイン・ファーニヴァル
現皇帝。シェリントンの父親。本人曰く、地位に見合わない凡人。現在妃が十人もいるけど、亡きシェリントンの母を含めると十一人。全員押し付けられた側室で、正室はシェリントンの母エリザベス。
元第三皇子で、シェリントンの母と婚約し、アーリス公爵家が管理する伯爵家を受け継ぐ形で臣籍降下する予定で、帝位争いが激化する事には『既に継承権を放棄して』婿入りしていた。
だが、二人の叔父と二人の兄の四人が帝位を求めて暗躍を繰り返した結果、三人揃って罪人として裁かれ、皇室から追放された。皇太子候補がいなくなった為、急遽、継承権を放棄していたジェロームを皇室に戻す形で皇太子にした。他にも継承権を持つ人間はいたが、継承権を放棄したとはいえ元皇子だった事も在り戻された。
皇太子になる際に『エリザベス以外は娶らない』事を条件にし、議会にも承認させた。が、僅か一ヶ月で強制的に無効にされ、十人の令嬢を押し付けられた。
・ウールドリッジ皇国
ファーニヴァル帝国と同程度の国力を誇る大国で仲が悪い。
・ランドン
ファーニヴァル帝国と仲の悪いウールドリッジ皇国の皇太子。三十一歳。妃が十人もいる。
・女神イシス
多神教の大陸において、月(昔の大陸では、月は死後の世界の象徴とされていた)と豊穣の女神として祀られている。
月に一度、セシリアに降臨術を使わせて、献上品のお茶と菓子を食べている。
タイトルの元ネタは『新月譚月姫』のヒロインの台詞です。リメイク版がスイッチで販売されています。スイッチを持っていないので作者は未プレイですが、アニメ版は全部見ました。
始めタイトルは『転生令嬢と死に戻り皇子』にしようかと思ったのですが、作品大体の流れとエンディングで『責任を取って終わる』形になりそうだと判断して、今のタイトルになりました。




