3 家に遊びに行ってもいいかしら?
近くの喫茶店「君の空」に着いた。
このお店は、最近できたばかりなんだけれど、ケーキセットがワンコインで食べられるとあって、学生の利用も多い。
私たちも例外ではなかった。
しかも、ここのショートケーキとっても美味しくてお気に入りなのだ。
いち果が、
「今日も安定のショートケーキね。ケーキにまで一途なんて可愛いわ紗名。」
嬉しいようななんなのか、よくわからないことを言っている。
時々、いち果は私が理解できないことをいう。
でも、そんな時のいち果は、きまっていつも楽しそうだから、私も嬉しくなる。
返事の仕様はないんだけどね。
私が返事に困っても、全く気にしないで、続きを話している。
「そういえば、紗名の家このへんなのよね?」
「そうだよ。」
宿題をやりつつ返事をする。
確かに、うちは、ここから歩いて10分くらいのところにある。
「家教えてくれないのね。秘密なのかしら。寂しいわ。」
寂しそうに俯く。
「今度うちくる?」
「いいの?」
「別に大丈夫だよ。うちに来てもおもしろいものなんてなにもないけど、それでもよければ。」
「いくわ!ぜひ!今度はうちにも招待するわね。」
「いいの?」
「もちろんよ。」
2人で話を進めていたら、白坂がかたまってる。
「白坂?」
「…。」
返事なし。
「白坂も来る?」
「いいのか?」
「うん。いち果も一緒だし。」
「?」
いち果が不思議な顔をする。
「ああ、うち共働きで家に誰もいないから。」
「いないから?」
「え?えっと、その、家に誰もいない時に男の人家にあげちゃだめ…なんだよね?」
いち果にきいてみる。
いち果は、目を丸くした後、
かわいいわと微笑み、それから、白坂をみた。
「わたしに感謝なさい。そして、白坂がいない時も、決して紗名は、男の人を家にあげない。なんて安心の女の子なの。」
「…。」
白坂は黙っている。
私は何か変なことを言ったのだろうか。不安になる。
その表情をすぐに読み取ったいち果は、
「そんな紗名が好きよ。」
と、目を見て言われて頬が赤くなる。
「あ、ありがとう。」
「おいおい、なんだその顔。彼氏の俺にも見せない可愛い顔しやがってー!妬くぞー!」
白坂の言葉に、
「え?可愛い??」
ボッ
さらに顔が熱くなるのを感じて、手で顔をおおいうつむいてしまった。
や、やだ、白坂がわたしを、か、可愛いって…。
最近、ちょっとした白坂の言動に、過剰な反応をしている気がしてとても恥ずかしい。
でも、白坂に告白されて、自分が白坂を好きだという気持ちに気付いてから、なんだか落ち着かない。
いち果が一緒にいてくれなかったら、普通にできていないかもしれない。
「え?黒田?」
私の様子にはたと動きを止める白坂。
さすがに今のは気づいたらしく、ちらっと白坂の顔をみると、その私の顔をみた白坂の顔がみるみる赤くなっていくのがみえた。
隣でいち果が深いため息をついた。
「はあ、バカップルね。」
「えっ!?カ、カップルに見える!?」
驚いていち果にきくと、そんな私の反応にいち果も驚いてパチパチと目を瞬かせてから、私と白坂を交互にみて、納得したようにうなずいた。
「見えないわね。」
いち果は、きっぱりさっぱり言い切ったのだった。
やっぱりそうだよね?
馬鹿なこと聞いてしまった。
恥ずかしいー!!!!!
そんな私達を見つつ、いち果は白坂に、
「紗名と一緒に、うちに来る?一緒に来てもいいわよ。」
と、揶揄うようにいうと、
「行かねーよ!お前んちなんか!」
うぇー、と嫌そうな声を出して断っていた。
「うふふ。失礼ね。」
と言いながら、
「うちに呼べば邪魔者はついてこないのね。紗名と2人っきりで女子トークができるわ。」
と、とっても楽しそうに言うのだった。