表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2 変わったことといえば

放課後


「黒田帰ろーぜー。」

白坂が席に来た。


そうだ。変わったことといえば、これ。

お揃いの携帯ケースを買いに行ってから、白坂が部活がない日、一緒に帰るようになったのだ。


「紗名、お待たせ。」

そして、白坂と同じ部活の赤山いち果とも。


「こらまた邪魔して!」

「それはこっちのセリフかしら?」

いち果は、白坂を「ふふん」と鼻であしらっている。

「しかも、な、なんだそれは…!!」

私の席の前で、 2人はいつものように言い合いをしていた。


「なんだそれはって何かしら?それに、私も同じ気持ちよ。たまには気が合うわね〜。」


また、「ふふん」って笑ってる…。

「赤山、まじでその笑い方やめろ!」

今日もまたはじまった2人のやりとりを、横目でみながら帰り支度をする。


「で、『なんだそれは』ってどういう意味かしら?」

白坂をみて悪戯っぽく笑う。

一瞬たじろぎながら、

「な、何って…。えっと…。そ、それはだな…。」

言葉に詰まっている…


「それは?」

いち果は、悪戯っぽい笑みで白坂をのぞきこむ。


「そ、それは…、そう、それだよ!」

開き直ってそういう白坂に向けて、


「はあ。」

と、いち果がため息をついた。


「な、なんだよ赤山ー!そのため息はなんなんだよー!最近俺に向けて、ため息つくの多くないか!?」


早速話がずれてきた。

最近見慣れた光景である。


いち果は、

「はあ。」

もう一度ため息をつくと、

「紗名、行きましょう。」


白坂から視線を外し、私の方を向いた。


「うん。」

いち果は、私の名前を呼ぶとき、ちょっとはにかんだような笑顔をする。


実は、私はそれがとても気に入っている。

いち果が、他の人の名前をこんなふうに呼ぶのを見たことがない。

なんだか特別な気がして、勝手に1人喜んでいた。


私の名前を大切に呼んでくれている気がして嬉しかった。

そのせいか、最初は私の方が顔を赤くしていたのに、今では普通に

『いち果』

って、呼べるようになっていた。

進歩だ、私!


そんないち果の隣で、

「それ、今のそれだよ!赤山!」

抗議するように白坂が、いち果に向かって何かを言っている。


「それね。」

さらっと返事して、私をみると


「いきましょう さ・な!」

と、私の名前をわざとらしく強調して言って、私をみて笑ってみせた。


「うん。」

白坂といち果のやりとりをいつも通りだなと思いながら、帰宅準備の終わったカバンを持って席を立つ。


「ま、待て。」

白坂も慌ててあとをついて教室を出た。



下駄箱で靴に履き替え、駅の方へむかう。



「ねえ、紗名。」

「なに?」

「今日、時間あるかしら?」

「今日?」


「ないないないない。」

白坂が勝手に答えてる。

そんな白坂を無視して、いち果は話を進める。


「紗名ってば勉強得意じゃない?今日の宿題範囲苦手なの。ご馳走するから、帰りどっか寄って教えてくれないかしら?」

「ご馳走?いいの?別に何もいらないよ。私ができることなら。」

私の返事を聞いて驚いた顔をしてから、私をぎゅっとする。


「紗名、気持ちだから受け取って。ね?」


そう言われるとなんだかくすぐったい。

「あ、ありがとう…。」


「なに顔を赤くしているんだ黒田!」


外野がうるさい。

ので、

「白坂も一緒に宿題やる?」


聞いてみると、

ぱあっとうれしそうな顔をして、

「もちろんだ!一緒に宿題やろう!さあ行こう!」


乗り気に歩き出す。


「単純っ」

いち果がクスッと笑って、白坂の背中をみている。

私も視線を動かすと、急に白坂が振り返って目があった。


ドキッ


あ、あれ? 

なんか恥ずかしい。

顔に手をやる。

今、初めて…私から白坂を誘った…かも…。

そのことに気がついて、急激に恥ずかしくなる。

なんか、話の流れでつい…。


白坂はそんな私に気づく様子もなく、

「えっと、それでどこ行くんだっけ?」

と、間抜けな質問を投げかけてきたのである。


私の隣でいち果が、

「はあ。」

と、また短くため息をついたのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ