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第117話「大垣家」

 私はレオと出会って、ヴァンパイアと友好関係を築いてあることに気がついた。

 それは、人間という、か弱い生物がヴァンパイアという大きな力を手に入れたということだ。

 いくら人間の兵器の開発が進んでるとはいえ、いきなり地上にヴァンパイアが出てくればこちらの方が有利だし、夜は人間にとっても視界が悪く、ヴァンパイアには有利な戦況。

 これは使える。

 

 彼らを利用すれば私のことをヤブ医者と罵った奴らに復讐し、私の力を認めさせてやることができる。先祖代々大垣家は医者として由緒正しい家系なのだ。私で大垣家の名誉を傷つけるわけにはいかない。しかし、現在私は医者としての信頼を確実に失ってしまった。

 でも、どうしても、どうしても地位が欲しい。


 今の私に人間たちに報復させるためには何ができるだろうか? 正面から戦えばヴァンパイアの肉体は鉛玉で貫かれてしまう。人間たちに戦う準備があったら一度、敗れたヴァンパイアたちはまた負けてしまう。そもそも、朝になると戦えなくなるどころかヴァンパイアは死んでしまうのは不利だ。それどころか、何百年も地下で生きてきたというヴァンパイアたちはこの山すら出たことなく地上の世界の土地勘もない。


 しかし、永遠の命があったらどうだろうか? これさえあれば陽の下で戦うこともできるし、相手がどんな武器を持っていようと戦うことができる。その無敵の戦士たちを従える私を馬鹿にした奴らを平伏すどころか、この世界の実権を握ることができる。そして、幸いにも私はその不死身と良い関係を築いている。


 ここにいるヴァンパイアたちはレオと友好的な関係を築いている私以外はこの山に訪れた人間は殺し、吸血した。レオはその光景を見て言った。

「人間は陽が出ている間に活動し、ヴァンパイアは陽が沈んだ後活動する。人間はヴァンパイアに食われ、ヴァンパイアは人間を食う。私はこの相反する生物の平和を願っているが、私1人の力では限界がある。このように平和を目指すのは現状、非現実的だ」

 

 平和は待ち構えていては訪れることはない。だから、私は勇気を出して行動した。


 私はレオが眠っている時に麻酔を打ち気絶させ、念の為心臓と脳を潰し、確実に気を失わせた。レオはしばらく息をしていない状態だったため、私は精巣や実験に使う部位を手早く少々大胆ではあるが切除し、保存が効くように保管し、実験の大切な資料として保管し、レオを元の寝床に移した。

 幸いにもレオは翌朝何事もなかったかのように健康体で朝を迎え私にいつも通りの挨拶をした。


 私はこの山に迷い込んだ人間の女を確保し、その体を受肉体として混血の子供を作れないか研究した。

 しかし、生まれたものは全て失敗作ばかりだった。

 混血を象徴するという白髪で子供は生まれてくるものの、すぐに命を失ってしまう。最も長く生きたものでも30分も持たなかった。



 長く続けてきたが、私は研究を断念せざるを得なかった。いくらクローンを作ろうとしても、成功体が全く生まれる気配がない。 

 混血がなぜ不死身なのか? 人間と体の構造は変わらないのになぜヴァンパイアの姿になれるのか私の持っている知識で解明できることはほとんどなかった。

 まだ、混血についてわからないことが多すぎるため、もっと調べる必要があると推測した私は、ある日、深夜に再びレオに麻酔を打って精巣を取り出そうとした時だった。実験室からレオの姿がなくなっていた。

 私は必死になってレオを探しに行ったが私が実験を行っていた場所には、どこに行ったのか痕跡すら残っていなかった。長い時間創作した結果、私が実験を行った場所から10キロほど離れた場所でようやくレオの姿を確認した。しかし、その時にはすでに遅かった。


 レオは地下世界に入るゲートを開きヨロついた足で吸い込まれるように中へ入っていったのだ。

「大垣、やめておけ。人間は地下世界には入れない」

 私の後方から声が聞こえた。気配が無く、いつの間にか1人のヴァンパイアが立っていた。彼は確かレオの右腕のような存在だった。確か名はハージス。

「期が熟した。レオ様は旅立たれる」 

「旅立つ? どこへ?」

 ハージスは天を指差した。

「混血はヴァンパイアを見守る神であり平和を求める存在。地下世界の希望の光、つまり太陽になる」

 信じがたかった。混血という不死身の存在はその強大な生命のエネルギーを地下世界の太陽へと昇華し、地下世界を見守る守り神になるというのだ。

 現在、その守り神なっている混血。つまり、レオの父親は生命エネルギーが燃え尽きかけており、守り神としての寿命を終えるためレオと地下世界の太陽として交代するという。


 それから私は地下で何が起こったのかは知らない。少なくとも地上で何か変化が起きたわけではない。私の知らないところで、私たち人間に影響を与えることもなく、レオが消えたことを受け入れるしかなかった。

 レオがいなくなってからというもの山神村にいるヴァンパイアたちはレオの監視がなくなったせいか私のことを襲ってくるものが現れるようになった。それでも、レオの右腕であるハージスは私のことを助けようとしたが、2対多。相手が多すぎる。


 所詮はヴァンパイア、人間という食料を目の当たりにして欲求を抑えることができないのだろう。このまま、終わるわけにはいかない私はここで彼らに交換条件を持ち出した。


「私を襲うのは君たちの自由だ。今君たちが腹を空かせているのなら私の血を与える。しかし、私1人では地下にいるヴァンパイアたちの分までわけ与えるには足りないはずだ。だから、どうだろう? 地上の世界に詳しい私は君たちに絶好の狩場やこの国の勢力関係などの情報を提供しよう。私はこう見えても元は将軍様に支えていた医者だ、この国のことならなんでも知っている」

「大垣、それではレオ様のいうことに反するのではないか?」

「しかし、そうしなければヴァンパイアが生きていけない」

「なぜだ大垣、どうしてそこまでするんだ?」

「レオの意志を継ぎたいからだ。私はレオを今までよくしてもらった、その恩返しじゃないが、今、私にできることはこれしか思いつかない」


 作戦は大成功だった。

 山を下山し、まず初めに襲ったのが小さな村だった。小さな村と言っても八代山に現れる人間より何倍も人間の数はいた。

 私の指示で人間を襲うヴァンパイアたちを眺める景色はまさに壮観だった。無抵抗の人間たちはあっという間にヴァンパイアに捕獲され、足の遅い人間は逃げてもすぐに捕まり、鬼ごっこにもならない。


 私が手に入れたヴァンパイアという兵器は私という人間と手を組むことで、大きな権力を手に入れる可能性が十分にあると私は確信した。そして、ここのヴァンパイアたちは私がいなければ安全に食にありつくことができない。地上世界の地形を知らずに戦えば遠距離から攻撃できる人間の方が有利だ。だから、私の指示に従わざるを得ないのだ。


 しかし、ハージスは私の邪魔をした。

「大垣、私たちヴァンパイアのことを思ってくれるのは嬉しいが人間にとってこれはやりすぎなんじゃないのか? 私たちも少量の血液があれば事足りる」

「ハージス、私は絶滅に追いやられたヴァンパイアたちを元の生活に戻してやりたい。このままではレオの言う平和は実現できないんだよ」

「しかし…」

「ハージス、私は本気だ」

「でもこんなの間違ってる」

「そうか。それは残念だ…君みたいな賢い者なら理解してくれると思っていたけどね。おい、ハージスを牢へ閉じ込めておけ」

「「はい、大垣さん」」

 十分な食料を提供し続ける限り目の前に人間がいても彼らは襲ってこない。所詮は動物だ。有益な情報を与え続ければ操り人形のように言うことを聞く。そうだ、私の言う通りにしていればいい、そうすれば安全に食料を提供し続けられるのだから。 


 私は人間として陽が出ているうちは地上の情報収集をし、私たちの兵力で落とせそうなところはないか調べる。そして、ヴァンパイアたちに指示を出し、襲わせる。これだけで私たちの勢力は徐々に拡大していき、それと共に地下でひっそりと暮らしていたヴァンパイアたちは私たちに協力するようになった。


 しかし、その時間はそう長くは続かなかった。人間も馬鹿じゃない。ヴァンパイアの復活を知った人間たちは遠距離からヴァンパイアの弱点である、額や胸を狙える新しい武器を開発し年月を重ねるごとにそれらは発展してゆく。


 私はヴァンパイアと人間の戦力が徐々に傾きつつある時に、病にかかった。自分の残された時間は少ない。ただ、大垣家のためにここまで手に入れた力を手放すわけにはいかない。私は今まで起こった出来事を全て一冊の書にまとめて、ある場所へ向かった。


「父さん! 本当に父さんなの?」

 そこは私が八代山に連れて行かれてから会うことがなかった息子の元だった。あるヴァンパイアが私のために調査して見つけ出してくれたのだ。

 私が村でヤブ医者として扱われ私が八代山へ送り込まれた後、私の嫁は村の人間から穢らわしい扱いを受けて、殺害された。その村から命からがら逃げ出してきたのが私の息子だった。


 私は息子との久々の再会に歓喜した。しかし、時間を長くかけてはいられない。私に残された時間は少ないのだから。

「息子よ、私のことが憎いか?」

 息子は首を横に振った。

「父さんは立派な医者、僕は信じている」

 息子のその一言だけが何よりも嬉しかった。だからこそ、大垣家のために息子のために今まであったことを全て話し、次に世代へと繋いだのだ。


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