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第107話「京骸、美波 VS A、キース『最強』」


 場所は地上。ルーカスと若松たちが戦いを終えたところにルーカスの腹部を貫く一本の刃をジャンセンは唖然として見つめる。

「ルーカスさん?」

 ジャンセンの視界ではルーカスの後ろのべったりと竹岡が張り付いていることを認識したジャンセンは。

「竹岡! 貴様なんのつもりだ」

「…」

 竹岡から返事がなかった。竹岡がふざけているのかとジャンセンは竹岡の襟首をさすって応答を要求したが、竹岡はジャンセンに体重を全て預けて力なくもたれかかる。


 竹岡の顔は真っ白だった。当然ながらジャンセンの問いかけには答えない。

 ジャンセンは疑っていた竹岡から視線を上げてようやく、その刃物を持っているヴァンパイアの正体を突き止めた。

 あまりの細さに、後ろに隠れていることがわからなかったヴァンパイア。

「お前は…」

 ジャンセンは驚きを隠すことができなかった。なぜなら、その大きな刃物を持っている正体がALPHANo.2のパッチだと思わなかったからだ。


 パッチはルーカスと竹岡を貫いた大鎌を引き抜いた。

「ルーカスさん!」

「すまない。ジャンセン、私はここまでのようだ、私としたことが油断したのがいけなかった」

「そんな! まだ助かります。すぐに、医務室に行きましょう」

「いや、いい。それよりもコイツを早く倒せ。私の命よりも優先だ」







 現在、モラドと人間の一時的な連合軍とALPHAは最も人間が多く、ゼロの本部がある新宿区を中心に戦っている。

 その新宿の喧騒の中、1人のヴァンパイアは今後の自分を左右するであろう選択に迫らられていた。


「た、頼む命だけは、命だけは助けてくれないか」

 そのヴァンパイアは刀に映る自分の顔を見てから命乞いをする目の前の人間に視線を落とした。

「やらなきゃ。やらなきゃルイに…いやルイ様に認めてもらえない」

 戦争中の東京にさまざまな感情が入り混じるこの空間に、その人間の男の断末魔がその中の一つとして響いた。

 刃物が軟弱な人間の肉を貫く感覚を実感したヴァンパイアは人間の男性から引き抜いた刀の見て思わずこぼした。

「俺がヒトを殺したのか」

 怯えるそのヴァンパイアの肩を宥めるように掴んだ銀髪のヴァンパイアは言う。

「そうだよ。竜太、君は今ヒトを殺した。僕らの食糧であるヒトを、ね」

 人間の血のついた刀を呆然と見つめる竜太にルイは耳元でそっと言葉を放つ。

「君の覚悟はよくわかった。君は僕の大切な仲間だ」






 場所は地下通路。京骸と美波は壁を破って最短距離で直進し、楓とケニーの援護に向かっていたが到着した頃にはすでに決着だついた後だった。

「アイツの匂いがまだ残ってるな」

「ねぇ、これ」

 美波が京骸に言って地面を指差すとそこには血溜まりと引っ掻き傷のような跡があった。

「これはAの鉄扇で間違いねぇな。モラドの裏切り者を粛清するいい機会だ。てか、おい、美波どうした?」

 美波はその引っ掻き傷の近くで隠れるように眠っている少女を見つけた。

「そうだったのね」

「そいつは…」

「最後まで頑張ったわね」

 ユキが息をしていないことを確認して、美波はユキの頭を膝の上に乗せて、もう二度と笑うことのない顔にそっと手を乗せる。そして、そっと開いた瞳を閉じた。



「京骸、あの子の匂いがまだ残ってるわ、追いかけましょう」

「ああわかってる。でも、どっちだ、両方から混血の匂いがする」

 京骸と美波は目に前に空いた二つの穴はお互いが逆方向に向かって伸びており、その両方からする血の匂いを嗅いでみるが、どちらからも同じ匂いがする。

「きっと、混血の子もケニーとAを相手にしてたなら暴走してたとしても手負いのはずよ」

「すると、こっちの方が臭いが濃いな。いくぞ!」


 京骸と美波はしばらく混血の匂いがする方へ走って行った。進行方向には所々引っ掻き傷で壁が破壊された後や、力で強引に道を開通させた大穴など京骸と美波が向かっている先には何者かが存在していることを予期させた。


 そして、その先に待っていたのは、

「う~ん、待ちくたびれたよ」

 ワイングラスを優雅に揺らしながら赤い液体を口に注ぐキースの姿だった。

「匂いの正体はこれってことね」

 キースはそのグラスを得意げに揺らして中の赤い液体を波立てている。

「お前はあの時、殺ったはずだが?」

 キースは悠然と口元のよく揃えられた髭を指の腹でそっと撫でてから言った。

「我々の技術は君たちが仲良しごっこをしている間に日々進歩していてね。見ての通りその恩恵にあずかったというわけさ」

 キースは両手を広げ自分が健康な姿になっていることを余計なほどにアピールする。

「この死にぞこないが。混血はどこへやった」

「さあ? どこだろうね。今頃、我々のために尽くしてくれていることだろうけどねぇ。追いかけるというなら、私たちを倒してからということになるけどねぇ」


「あなたたちはあの坊やをどうするつもり?」

 京骸と美波の先にはキース1人だったが、「あなたたち」という言葉に反応してキースの裏にある破壊され、洞窟のような状態になっているところの影から目元を布で覆ったヴァンパイアは、鉄扇を手の平で叩きながら存在がバレたことをさもおかしなように出てきた。そして、言う。


「混血はこれからルイ様のために死ぬ」

 京骸と美波はようやく出てきたかというような表情で暗闇から出てきたそのヴァンパイアに視線を送る。

「よお、A久しぶりじゃねぇの。交流会以来だっけか? 何年前だかもう忘れたけどよ」

 面識のありそうな口調の京骸だったが話しかけられたAは表情一つ変えることなく昔の記憶を辿るようにして続けた。


「そうか。そうだったな。お前たちに会うのは久しい。しかし、せっかくの再会を楽しみたいところだが、今日でお前たちと会うのは最後になるだろうから昔のよしみとしてお前たちの質問に答えてやるよ」

「ほお、それはありがたいね」

 Aは持っていた鉄扇を開いて、扇の形に広げた。

「混血の血を飲んでも不死身にはなれない。それは、我々が捕えたもう一体の混血から明らかになったことだ。でもな、俺たちALPHAにはこの混血の血を使って普通のヴァンパイアでも不死身になれる装置を開発した。ルイ様はそれを使って永遠の命を手に入れるおつもりだ」


「全く悪趣味ね。その生命力ももっと違う使い方ができたらいいのに」

「美波、お前たちは混血をこれが混血の存在意義なんだよ。今まで劣勢を強いられてきた我々ヴァンパイアがようやく優位に立つチャンスであり、死の恐怖を克服したヴァンパイアは地上でも昼夜構わず活動できる。地下でこっそり生きていくことなく地上も支配することができる。悪いことはいわねぇ、お前たちもこっちへ来いモラドなんかで叶うはずもねぇ仲良しごっこしてるよりよっぽど現実的だろ」

 美波はAの発言に呆れたようにため息を漏らした。

「地上を見て言ってるのかしら? あなたの言う叶うはずのないことが今、実現しそうな状況なのよ」

「あんなのは人間どもが自分達の身を守るために一時的に協力してるだけにすぎない。人間とはそういう自分勝手な生き物だからだ。っつてもな、せっかくお前らにチャンスを与えたんだがな。そっちがその気ならしょうがない」


 Aは扇に広げた鉄扇を顔の前で広げ、隣に立つキースは腰に携えていた針のように先の尖った細い剣を抜く。そして、Aの鉄扇とキースの剣は青緑に光る。


「俺はAをやる。お前はキースだ」

 美波は頷き、青緑に輝く短剣と小型のピストルでキースと応戦する。そして、京骸はAが鉄扇から放つヴェードの衝撃波を刀一本で受け流していく。そして、あっという間にAとの間にあった距離を縮め直接鉄扇と青く輝く刀で交わる。

「やっぱりお前の方がヴェードも力も強いな」

「そうかよ。今、負けを認めれば腕2本で許してやる」

 京骸がAの鉄扇を振り払って腕を切断しようとした時だった、横の壁にヒビが入りやがて破壊された。京骸はAの腕を切り落とすことができずに飛んでくる壁の破片を回避するしかなかった。


 そこから現れた人物にその場にいた全員の視線が集まった。

「なるほどね」

 Aは笑い、キースは眉を上下して余裕の表情を見せつける。

 顔が左右非対称で溶けたように歪んだ鼻や目、そして自分の体と同じくらいの大きさの大きな鎌。そのヴァンパイアの体は◯の下に「大」を描くような棒人形のような体をしている。

「パッチさんやったんですね?」

 Aはパッチに問いかけるとパッチは頷く。そして、そのパッチと刀を交えているが圧倒的に劣勢に立たされているジャンセンは京骸と美波を見つけるとすぐに叫ぶように言った。

「大変です。ルーカスさんと連堂さんがパッチにやられました」

 やや時間があってから京骸が答える。

「それは本当なのか?」

 ジャンセンは頷く。

「連堂もルーカスもやられただと? モラドのNo.2とNo.5だぞ」

 Aは京骸の方に視線を送った後、わざとらしくパッチに言った。

「パッチさんさすがです。私たちはパッチさんならやってくれると信じていました」

「…」 

 何も喋らない。


 ヴェードはジャンセンが緑、パッチが紫。2ランクも違いがあるのに未だジャンセンが無事でいられるのは連堂がパッチにつけた傷が深く、まだ治癒していないためだった。そのため、パッチの動きも連堂と戦っていた時より足を引きずりながら戦っているためかキレが落ちている。

「連堂、ルーカス。お前たちの戦いは無駄じゃなかったって証明してやらないとな。天国に言ったあいつらが報われねぇ」

 京骸はもう片方の腰に携えていた刀を抜いて脱力したように腕をぶら下げ、刃を地面につけた。そして、引きずりながらパッチの元へと歩いて近づいてゆく。

 パッチは弱ったジャンセンを蹴り飛ばし、京骸の方へ構えた。京骸との戦闘に備えた。

 パッチは言葉として意味をなさない音を叫びながら京骸に向かっていった。

 

 しかし、結果はあっという間についた。そして、結論から言えばパッチは京骸に3枚におろされた。

 京骸の早すぎる剣技に誰も目が追いつかず、気がついた時にはパッチの体が3分割されていた。


 パッチの質量がほとんどない体は枝葉が地面に落ちるが如く、音もなく崩れていった。No.2のなんともあっけない最期。あまりの早期決着に唖然とするジャンセン。


「あーあ、パッチさん。深手を負いすぎですね。ここまで追い詰めた連堂もさすがと言ったところ」

「A、次はお前だ」

「そうだな。でも、今の俺はお前と対等、いやそれ以上に戦える力を持ってる」

 Aは首を左右に曲げて音を鳴らして、準備万端といったような様子だった。

 それから、Aの額からは2本のツノが生えてから唸り声を上げて身体中の血液が沸騰しているかのように皮膚が上下に波打っているとその泡は背中に集まって、Aの皮膚を突き破った。

 Aの背中からは羽の骨組みのようなものが背中の皮膚を突き破って出てくる。その鉄の骨組みは、しなるように振るうとAの体が宙に浮いていた。

「京骸、どこからでもかかってこい。元モラドのヴァンパイアとして語り合おうじゃないか」

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