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第104話「鳥田VS?『決着』」

東京都の地上。ビルや高層マンションや繁華街など以前までは賑わっていた地上の世界で今は安全なところはどこにもない。

 今人類とヴァンパイアがお互いの世界の存亡をかけて衝突している。


 ゼロのS級隊員のトップ鳥田玄治、ALPHANo3の西園寺走の力と力のぶつかり合いが今、山本隊の3人の目の前で繰り広げられている。

 鳥田の両手に持った槍の突きの連撃、そして西園寺の大きな拳の連撃、どちらも互角に力がぶつかり合っている。

 ただ、人質を取られて気持ちが入っている分、鳥田の攻撃の方が速かった。弾ける光をまとう人類の希望を背負った槍は西園寺の肩にもろに一撃入った。槍で突いたところには穴が空いて、槍を抜くと向こう側が見えた。


「ヒャッハー! ええのもらったわぁ、普通ここまでやるかぁ。人間がぁ。興奮するわあ」

 肩に出来た大きな穴はすぐに塞がって今の攻撃がまるで無かったかのようだった。

「次はワシの番でええよな?」と丁寧に相手に尋ねる。

「…」

 鳥田は腰を低くした西園寺が向かってくることに備えて、大きな槍を体の前でクロスするように構えて防御の体制に入った。予想通り、瞬間移動でもしたかのように一瞬にして鳥田の前に現れて、その槍に大きな拳をぶつける。

 鳥田はその衝撃で口の隙間から血を漏らした。鳥田がアトンの力を開放してすでに10分は経過している。

「どうした、どうした。防御が甘くなってるでぇ。そんなんじゃ、期待してた強さちゃうやろ。もっと、もっとこの時間を楽しもうや」

 今度は鳥田が防ぐだけで西園寺は一方的に攻撃を続けている。槍をそのまま破壊しようかという勢いで攻撃をして、やがて鳥田の片方の槍が西園寺の下から蹴り上げた足で飛ばされる。鳥田の身長よりも大きな槍は木の枝でも飛ばしたように回転しながら飛んでいき、ガラス張りのオフィスビルの窓を盛大に割った。


 そこに出来たスキで西園寺は更にもう片方の足で回し蹴りをすると鳥田の腹にもろに食らった。体が「く」の字に折れて、鳥田の大きな体は宙に浮き、後方にあった槍が入ったオフィスビルの壁に体を叩きつけた。衝撃で吐血し、額から鼻の両側を通って血が流れ落ちる。


「内蔵逝ったなこれ。人間は脆いわ、せっかくこんな楽しい戦いをしてても一発食らったらもう動けん。なあ、立てるか? 鳥田はん。頼むから終わらないでくれよ」

 西園寺は壁に背を預け俯いたまま動かない鳥田に向かってゆっくりと歩き始める。

 山本たちは声をあげようとしたが、部下のヴァンパイアが喉元にかざす刃物が少し触れて声を出すことすらさせてもらえない。

 ついに、鳥田の目の前まで来て高い視線から見下ろす。

 鳥田は指先の感覚が戻ってきて一度手放した槍を片方の手で掴み直した。蹴りで槍を飛ばされたもう片方の腕はしびれてまだ動かない。

 掴んだ槍を地面に刺しながらなんとか立ち上がる。

「人間ってのはヴァンパイアより体が弱くても諦めの悪い生物でね。今まで紡がれてきた思いを私で断ち切るわけにはいかないんだよ」

 西園寺は感心したように、自分の顎を撫でる。

「ほう、したら見してくれやその諦めの悪さってやつを…よっ」

 立ち上がったばかりの鳥田に西園寺は蹴りを入れる。槍で防ごうとしたが力が足らずにまた鳥田は壁に叩きつけられる。出血もひどくなってきてアトンの輝きも失われつつある。


 そこから西園寺は手負いの人間相手に容赦がなかった。大きな拳で殴り、太い脚で蹴る。鳥田は出血のあまり顔を識別するのが困難な程だった。

 それでもまだ、アトンの光は消えていない。震える体を一本の槍で支えながらふたたび立ち上がる。

「しつこいのぉ、もう戦えんやろ。いっそ楽にしたろか? なんなん、人間はそこまでして死にたいんか」

 鳥田は静かにそして、間隔の短い呼吸をゆっくりと整えてから笑う。

「これから新しい時代が始まる。我々人間が思い込んでいたものとは違っていた新しい時代だ。大きな変化を起こすには今まで信じてきた物を捨て、新しい変化を受け入れなくてはいけない。まさか、私がそれを受け入れるなんて思いもしなかった」

「何をブツブツ言っとん」

「その新しい時代にお前たちの姿はない」


 鳥田はもう片方の手を自分の胸の前でかざした。大きな槍の形をした光の塊が現れてそれは実体化し、鳥田はそれを掴む。

 一度、空を見上げた。なにか祝福するようなそんな満点の星空がこの都会でも広がっている。大きく息を吸ってから吐いた。

「えりぇぁぁ!!!」

 腹から出した力強い雄叫びとともに再び2つの槍で連撃を始める。決着が付いたと油断した西園寺は両腕を切り落とされて驚いた様子だった。

 足で攻撃をしようと考えた西園寺だったが、簡単に自分の腕を切り落とした槍に足まで落とされることを考えて交わすことに徹した。鳥田は西園寺の額めがけて突きを行う。正確なコントロールは出来ていないがそれでも、槍は西園寺の坊主頭をかすめ、耳を弾き飛ばし、頬から口の中に貫通する一撃もあって、少しずつ制度が増してきた。あと、もう少し、腕が治りきるまでに額を捉えたい。鳥田も山本隊も誰しもがそう思った。

 しかし、あと一発というところで鳥田の動きが止まった。まるで、電池が切れた人形のようにピタッと静止した。アトンの光は切れかけの豆電球のように弱々しくやがて光を失った。鳥田がアトンの力を開放してからおよそ20分。その力は切れて首元にしているネックレスに吸い込まれるように消えていった。

 地面には黒いスーツ姿の鳥田の大きな体が西園寺の目の前に横たわっている。


「なんや電池切れか。生きたまま食ってやりたかったけど、しゃーないわな。ほな、おおきに」

 西園寺が足を上げて、鳥田の頭に西園寺の大きな足の陰がかぶる。

 鳥田の頭に西園寺の足が乗った。足だけが乗った。


「クソッ! 遅かったか」

 西園寺は切断された自分の足の断面を見て、鋭利な刀で切り取られたことを理解した。

 西園寺の前に立っているのは、金髪に青いスーツ、そして香水の香りをふわりとなびかせるのは鬼竜奏手だった。

 鬼竜は自分よりも大きな体の鳥田を軽々と担いですぐに捕まっている山本たちのところへ移動した。見張りでいた部下のヴァンパイアたちは鬼竜に簡単に殺されて、厳重に縛られている縄をほどいた。

 山本は縄を解かれるとすぐさま鬼竜が担いでいる鳥田のもとへ向かった。

「鳥田さん!」

「悲しいのはわかるけど今は時間がないよ。この人を安全な場所へ避難させるのが優先。だから、3人は早くここから離れたほうがいいよ」

 しかし、3人は誰も動かなかった。3人を代表して山本が言う。

「俺たちは鳥田さんの有志をただここで見ていることしか出来ませんでした。鳥田さんの後輩としてこのまま引き下がるわけにはいきません。だから、俺たちも一緒に戦わせてください」

 鬼竜は山本とそして、両脇にいる少年と少女の面構えを確認にした。そして、正面に振り返ると、背中にクロスするように収められている鞘から二本の短剣を取り出し、その刀は青緑色に輝いていた。


「僕が知っている人間もアホが多いんだけど。君たちも例外じゃないようだね」

 二本の刀の切っ先を前方の西園寺に向ける。

「君たちの覚悟ってやつを見せてよね」


「人間の次はヴァンパイアか。しかもモラドときた。そのデカブツ食えなくて今めっちゃ腹減ってんねん。つまらない戦いするようやったらお前も食うで」

「発言がいちいちはしたないな。君はモテないだろうね」

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