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第100話「連堂VSパッチ④『自分探し』」

 パッチは失った腕とは逆の腕で大鎌を拾って立ち上がった。

 片手で振る鎌は十分に威力があるが、それでも両手で振るときほどの破壊力は存在しない。

 今度は連堂の方が優位になりここで距離を詰める。青い刀をパッチに向ける。片腕を失い紫に光る大鎌を地面に引きずりながらパッチは後退していくと後ろは壁で逃げ場を失った。

「ここまでだ、この戦いを終わらせよう」

 連堂はパッチの喉元に刃先を向けた。パッチの仮面の下から滲む汗が滴り落ちて喉元を滑り落ちてゆく。 

 すると、パッチの体が突然震え始めた。初めは微振動で徐々に体を左右に揺らして。

「グウゥウオオオオォォォォオオオオ」

 言葉にならないような声。獣が低い音で唸り声を上げているような音に近かった。

 パッチの体の中が沸騰しているみたいに皮膚の下がボコボコと泡立ち始めてそれはやがて額にも届いていた。額の泡は弾けて仮面の上部から二本の角が生える。それは鬼化が始まったことを意味していた。


 その後、パッチの体は風船のように膨れ上がり始めた。爆弾のように今にも破裂しそうな勢いで膨れ上がっている。敵はALPHAのNo2。どんな手を使ってくるかわからない。そう思った連堂は一度距離をとって様子をみることにした。

 パッチの体はさらに膨れ上がる。元の体の10倍ほどの厚さに膨れ上がると膨張はピタッと止まり。いきなり収縮し、しぼみ始めた。パッチの元の体を中心に膨らんでいた体は元あった場所に戻るように吸い寄せられる。

 その衝撃波は辺りに広がり、連堂はさらに距離をとってその衝撃波に備えた。衝撃波がおさまった後は、パッチを中心にして大きな穴が出来上がる。


 砂煙が晴れてパッチの姿をようやく確認できるようになった。

 そこに立っていた姿は、頭に○を書いて、首から下は「大」の字を書いたような棒人間そのものだった。首は角が生えたこと以外に変化はないが、首から下はそのような大きな変化があった。

 そして、その棒人間のような体をしたパッチは新しく生え揃った両腕で体よりも何倍も太い大鎌を構えた。


「それがお前の本来の姿ってわけか」

「××××××××××××××××」

 パッチが何かしゃべっているようだが言葉として意味をなしておらず誰も意味を理解できない、しわがれたような掠れたようなハスキーのような聞いたことないような声で何かを言い放ったそれは不明な音となって空気中に溶けてゆく。


 パッチは何度かその意味不明な音を出して何か意味のある言葉を紡ごうとしている様子だった。

「よう××××××やk××××××××く××××しゃべ××れた」

「ようやくしゃべれた? お前元々話せなかったのか?」

「お前含めて××××しゃ××べれ××××××たの、2××××回目」

「2回目?」

「お××××××まえ×××僕×××の×××××××××強さ×認めた。××××××うれ×××しい」

 ケラケラと笑っているのかパッチは首を上下してそんなことを思わせるような動作をしている。


「僕も××『思い』見せる」

 パッチは質量を感じさせないほどの細い腕で大きな鎌を振り上げた、そして振り下ろす。

 鎌が投げられる。その動きからどんな攻撃が繰り出されるのか連堂はわかっていた。パッチが投げた大鎌は縦回転しながら飛んできた。腕の角度、鎌の回転速度から軌道もわかっていたはずなのに、交わせなかった。

 投げられた大鎌は連堂の片腕をそいで再びUの字を描いてカーブし、持ち主の元へ戻った。連堂は切断されて少してから避ける体制に入り横へ転がった。避ける動作がだいぶ遅かった。

 痛む腕を連堂は抑えて前方の敵を睨みつける。

「大垣さんのために俺は負けられない」

 

「ルイ××様。僕は負けません。あの時から僕の命はルイ様のために」



「お前の顔気持ち悪りぃんだよ。俺たちの視界に入ってくんな」

「…」

「こいつ声キモイから喋らないんだよ。最後に喋ったのなんて2年前らしいから」

「マジ? だったら、告げ口される心配ねぇから、もっとやっちまおうぜ」

「やろやろ」「さんせーい」

 

 しばらく気を失ってたのだろうか。目の前が真っ暗になってようやく目を覚ました。まず初めに感じたのは唇が切れてて痛かったこと。それから、鼻の骨が折れててジンとした鈍い痛みも遅れてやってきたことだ。

 僕のことを殴っていった奴らは声が聞こえないからどこかにいったらしい。でも、僕の目の前に誰かいる。地面に横になってるから足しか見えなかったけど、まだ奴らの仲間が残っていたのか。また殴られるんだな、いやだな。


 僕は視線を上げてその人物を見上げた。

 その人物は銀の髪色をしていて瞳はヴァンパイアにしては珍しい青色の瞳をしている。

 みたことない顔だった、同じ学校だったらこんな目立つ容姿をしていたら友達のいない僕でも存在自体は知っているはずだし、どこの誰だか知らないけどこの場所を知ってるってことは学校の生徒だろう。きっと、僕のことをいじめに来たに違いない。きっとそうだ。

 僕がこの場を去ろうと立ち上がろうとしたとき、その少年は僕が予想しなかったことを言った。

「無理しないで傷口が開くよ。これで血を拭いて」

 そう言って僕にハンカチをくれた。これは僕を助けたってことなのか? 何か言ったほうがいいのだろうか? よくわからない体験に僕は戸惑った。なぜなら初めての体験だったから。


 ハンカチを受け取った時、彼と目が合ってしまった。僕は咄嗟に自分の顔を両手で隠した。

 僕は自分の汚い声が嫌でしゃべらないようにしてるし、醜い顔だから誰かと目を合わせないようにしている。それでも、そのヴァンアイアはしっかりと僕の顔をみて、目を合わせて言った。

「君はいずれ本当の自分を見つけるよ。そしたらまた会おう。僕は君の本物を知っている」

 名前を…聞けなかった。僕は誰とも話さないようにしているけど彼は今まで会ったヴァンパイアとは何か違った。僕にそんなこと言ってくれるヴァンパイアなんて今までいなかったからだろうか。

 僕は差し出されたハンカチを手にとって自分の顔の血を拭った。一通り拭ってそのヴァンパイアに返そうとしたがなぜか姿が見えなくなってしまった。

 本当の自分…。

 それがなんなのかわからなかった。それから僕は向きあいたくもない現実と向きあいながら僕はそれを考え続けた。


 その出来事から数日後、また僕をいじめる奴らから学校の校舎裏に呼び出され僕は言われるがままに向かった。

 あの時会ったヴァンパイアの言葉がずっとひっかかっていた。だから、今日の僕はいつもとは考え方を変えていた。もう何年間も嫌がらせを受けてきた自分を変えなくちゃいけない、そう思ってたからだ。


「そのお面なに? キモ」

「きっと、自分のキモイ顔を隠そうとしてるんだよな」

「うわ、怖。お前さ今日からその面ずっとつけてろよ、キモイから。それ罰ゲームな。そんなことよりもさ、なんで呼び出されたか、わ、か、る?」

「…」

「喋るわけねぇよなクソブスが」

 3人はただそれだけのやりとりをすると何も話さない僕の顔をみて腹を抱えて笑っている。

 今日の僕は違う、行動を起こすんだ。だから、勇気を振り絞った。僕には僕のまだみない力があるはずなんだ。だから、勇気を振り絞れ!


「お、おいよせよ。なんだよそれ」

「冗談だろどうせお前がそんなことできるわけないだろ」

 僕は、学校の倉庫から持ってきた草を狩る鎌を背中から取り出して3人に突きつけた。今まで、何年もやられっぱなしだったけど今日は違う。初めて僕は一歩前進するんだ。


 僕はその鎌一本で3人をバラバラにした。断末魔がうるさくて口に手を突っ込んで黙らせた奴もいたが全員もれなく原型をとどめないほどバラバラの細切れにしてやった。身体中に返り血を浴びて、目の前で3人が死んでいることを確認してようやく気がついた。

 気持ちいいって。

 この瞬間、自分の内側が解放されたような快楽を感じた。刃物で肉を切り裂く感覚が自分の手に伝わって妙にしっくりくる。これが本物の自分なんだって、初めて銀髪のヴァンパイアが言ったことが理解できた。


「なんだ、笑えるじゃん」

 木陰から1人の少年が出てきた。 

 彼は、あの時会ったヴァンパイアだった。銀髪に青い瞳を持った異彩を放つヴァンパイア。

「あなたは…」

「僕はルイ。君を正しい方向へ導くものだよ」

 僕はルイのおかげで進むべき道がわかったような気がする。

 この時、僕はようやくあの時のハンカチをルイ様に返すことができた。

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