13. 魔剣のめざめ
活気に満ちたグラナの商店街。この通りもそろそろ見納めかと思うと、途端に惜しくなる。
地域限定のおいしいものは今日の内にすべて胃に収めてやろう。そんなつもりでぶらついていると、やがて香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
煙をもうもうとたき、肉の弾けるじゅうじゅうという音。焼き料理の屋台とみた。
今世の自分は辛い酒や肉よりも、甘い菓子や茶などが好きなようだが、前者が嫌いになったわけではない。むしろ好き。その魅力につられ、ふらふらと店頭に引き寄せられる。
「いらっしゃい! おお!? どこのご令嬢か存じないが、こんな大衆料理でもいけるかい、嬢ちゃん!」
店主であろう親父さんは、大声で話しながらもてきぱきと手を動かし、商品をひとつ突き出してきた。
「美人さんにはひとつサービス」
得した。容姿の良い者が多い、先々代雷の勇者の血に感謝する。
受け取ったそれは、肉や野菜を一本串にまとめて刺したものだ。まるで野営時に火を囲んでする食事のようでなんとも豪快だが、腹を満たすだけのあれとは違い、香りと焼き色が食欲をそそる。
ひとくち、噛みついてみる。
もぐもぐと咀嚼し、飲み込む。ソースで汚れた小さな自分の口を、ぺろりと舐めた。
おお。うまいぞ……! 甘辛いソースが肉と野菜に豊かな風味を与えている。素材のやわらかい歯触りと弾力あるのどごしも絶妙だ。
こういう体験をすると、平和な世における人間の生活レベルの発展を感じる。我々勇者は、おいしいもの溢れる世界にするために、日夜戦っているのだなあ。
店頭に貼られた値札を見て、頭の中で計算する。
懐から取り出した財布はなんと、これまでになく丸々と太り、嬉しい重みを腕に加えている。地魔やその子どもの死骸を、ティーダが金に換えた結果だ。すべての魔物が死体を残せばいいのに。……いや、あまり金になりそうなやつは、いないか。
ふたりの財政を管理しているユシドなど、もっと手元に金を蓄えているはずだ。財布ではなく金庫が必要なほどだろう。2年くらい豪遊できそうじゃないかな。あいつがまた変な買い物をしても、許してやろうじゃないか。
……ええい、計算など必要ない。マネーはたんまりある。
ユシドにも買っていってあげよう。あいつは濃い味付けが好きそうだからな。
おっと。ついでにカゲロウとティーダの分も。
勘定を終え、受け取った厚い袋を腕に抱え、手に持った一本をもうひとくち頬張る。
ううん。うまい。しかしトリともウシとも何か違うな。ブタか? ……いや。新しい家畜が研究されたのかな?
「おじさま。これは何という動物のお肉ですか?」
そんな疑問を投げる。
気持ちのいい笑顔で威勢よく客引きをしていた親父さんは、オレの質問を聞くと、急に無表情になってスン……と押し黙った。
……え? 何? なんの肉なのこれ!?
暇つぶしを終え、約束していた時間にカゲロウの店へ寄る。
そこには、先に来ていたユシドと、少し久々に見るティーダの姿があった。カゲロウの姿はまだ店頭にはない。
ふたりはどこか、疲れたような表情をしていた。おみやげを渡してねぎらいながら、話を聞く。
「無事ギルドは引退できましたか、ティーダ殿」
「……いやー、ハハハ」
ごまかすように笑って赤い頭をかく男。もうそれだけで大体結果がわかった。
あれを倒してから、ここ数日のティーダはそれはもう大忙しだったが、我々の旅に同行するにあたって彼が消化しておきたい問題のひとつが、ハンターズギルドからのS級認定である。
あの強力な地魔を打ち破ってしまったのだ。もうギルドとしては手放したくない戦力になってしまったのである。本末転倒という言葉を体現したようなバカだな。
あとついでにグラナの町民たちにも、旅立ちを引き留められているようだった。ずいぶん人気者のようだ。
あちこちとの付き合いに顔を出しつつ、今日は懸念のギルドに顔を出してきた帰りだろう。しかしこの反応、どうやら芳しくない事態になったようだ。
「もう最終手段だと思って、ユシド君まで動員して、こいつを見せびらかして説得にかかったんだけどさ」
右手に刻まれた、勇者の紋章をちらつかせる。自分の立場を明かしたのか。しかもユシドも。
勇者の旅の責任を、人々が理解してくれるとは限らない。どう考えても紋章をさらすリスクは大きい。
ティーダはいいとして、ユシドをじっとにらむ。しょぼくれた顔をしたので、許す。
「支部長から『勇者の活躍で魔物が弱くなったら、うちの需要が減るから、むしろもっとダメ』って言われて、やめさせてもらえなかった」
うーん。相手が悪いな。
しかしその支部長の言うように魔物の台頭を放置してしまえば、いずれ腕利きのハンターや冒険者でも対処できなくなる。今回の地魔がその好例ではないか。
それをわかってほしいのだが。
「まあでもユシド君が説得に加わってくれてさ。支部長は真面目な若者が好きだから、気に入ってくれてね。なんとか俺の方はA級で落ち着けることになった。これなら、遠方へ強制招集をくらう頻度は少ないはずだ」
S級の一歩手前か。
おそらくこれからは、新しく大きな町を訪れるたびに、ティーダはハンターズギルドに寄って仕事をこなし、経営側の機嫌を取る必要が出てくるかもしれない。
……資金源にもなるし、旅の致命的な遅れにならなければ、まあいいか。そう悪い話でもない。
しかし、ふたりは眉尻の下がった表情を直さない。困り顔というやつだ。
「それでその……気に入られちゃった少年がね。試験無しでハンターに登録されちゃった」
「は?」
申し訳なさそうな顔で、ユシドは懐から蒼い石を出して見せた。魔物の討伐を証明するのに使う、例のマジックアイテムだ。あれがギルドの一員である証なのだろう。
「何しに行ってきたんだお前ら」
「面目ない……」
当初の決めごとと全く違った結果になったことを反省しているようなので、表情だけ怒って見せて、説教はひかえめにする。
A級のティーダはのらりくらりとやっていくだろうし、ユシドは多分かけだしのランクだ。たしかFだかEだったかな? S級にさえ上がらなければ無茶な仕事は来ないし……いざというときは、逃げてしまえばいい。手練れぞろいのハンターズギルドとはいえ、まさか星の台座まで追いかけてくるような、屈強すぎるスカウトマンや経営陣はいないだろう。
ギルドは魔物の情報が飛び交い、強者が出入りする施設という見方もできる。残りあと4人の勇者の情報を得るのに、所属員の立場を役立てることはできるだろう。
……しかし、まあ。
4人のうち、1人はもう、心当たりがあるのだが。
「それで今朝ね、ふたりでさっそく依頼を受けさせられてさ。クリアしないと街からは出さん! とか言うんだもんよ」
「グレート・ワンダフル・デリシャス・ミート? とかいう、やたら強い豚の魔物を、わざわざ気絶させて街まで運んできたんだ。大変だったよ」
「“幻のグレート・ワンダフル・デリシャス・バーニング・ミートJr”だよ」
「正直どうでもいいです……」
沈んだ顔のユシドが、串焼き肉に口をつける。
そして、ぱあっと顔をほころばせた。いいね、キミのそういう顔が好きなんだよ。
「これ美味しい! ミーファ、ありがとう」
「ふふ。どんどん食べて大きくなりなさいよ、おかわりもあるよ」
そうして、3人でこれからの方針を話し合う。
地の勇者ティーダが加わってくれるというのは、やはり心強い。グラナでの生活や立場もあるというのに、よく決めてくれたものだ。孤児だから自分を心配する家族はいない――そう言っていたが、町を少し歩けば、彼が人々から慕われているのはすぐにわかる。
たまたま持って生まれた強い魔力と紋章を、勇者の伝承と結びつけるまでに、彼にどんな人生があったのかは知らない。しかし今目の前にいる者は、正しく使命の重さを理解した、勇者にふさわしい人物だと言えるだろう。おちゃらけた性格はともかく。
……これから出会う勇者が、簡単に使命に頷いてくれるとは限らない。ユシドのように、過去の勇者の存在や血筋が色濃く伝わる土地の出身であれば、本人も強い決意を持ち、家族からも快く送り出してもらえる。しかしただ偶然、力を持って生まれ、育ってきただけの人間が、オレ達とともに旅立ってくれるかは怪しい。彼らにもこれまでの人生があるからだ。
次回もこのように、気持ちのいい青年や女性が、紋章を宿してくれていればいいのだが。
「おはよーう、お三方……」
真昼のときに朝の挨拶をしながら、カゲロウが店の奥からのっそりと出てきた。どうやらこの時間まで眠っていたようだ。
そして。
彼の両手には、ひとふりの剣と、鞘が、それぞれ握られている。
しずかに台座に置かれたそれらを、全員がしげしげと眺める。はやる気持ちでカゲロウに視線をやると、彼は不健康そうな顔でにこりと微笑んだ。
「人生最高の素材で鍛えた、人生最高傑作だよ。ミーファちゃん、検めてくれ」
震える手で剣を手に取る。それほどまでに、その武器は、一種の覇気を発していた。
片手剣。重さは右手にずっしりと圧し掛かる。握りこんだ柄は何故か十年来の相棒のように手になじみ、強烈な一撃を容易に想像できた。
刀身に目をうつす。それは白くきらびやかで美しい、というものではなく。鋼鉄の頑健さや重さが現れたような、鈍色の刃だった。
……地魔の鋼殻から創り出した剣。風魔の剣に続く、地上に二振りとない魔剣であった。
「外いこうぜ外! おっちゃんに魔法剣見せてくれや」
興奮した様子で真っ先に店を出ていく店主。
そのあとをついていくと、人気のない広場に出た。
すぐ近くには、グラナの周りを囲む高い壁が見える。街はずれのここなら、人に魔法術をぶつけてしまう心配もない。
離れた場所の3人に目配せをする。カゲロウが頷きを返した。
呼吸を整える。体内の魔力を全身に行きわたらせ、その剣を構えた。
黄金の雷が、鈍色の刃に宿る。
振り回す。軽いとも重いとも言えるが、それでいて、まるで自分の手足の延長のようにも感じる。
激しい剣戟を繰り広げる。……魔力の通りがいい。無駄な発散や抵抗が、通常の剣より抑えられている。これが、自分の身体のように操れることの一因だろうか。
立ち止まる。
剣を空高くへ向け、一条の電光を上へ上へと伸ばす。それに刺し貫かれた白雲が、ごろごろとがなりたて始める。
ぴしゃりと、紫電が落ちた。
身を焼き焦がしかねない電気の力が、いまこの手の中にある、はず。しかし紫光きらめく刀身は、それを感じさせないほど静かだ。まるで雷電が刃の中だけをゆったりと泳いでいるかのようで、これまで抑え込むのに必死だったことが嘘のようだ。
少しの間、ゆっくりと、型をたしかめるように剣を動かす。雷の力を撃ち放たずにそこに留めたまま、限界まで舞う。今まで、こんなふうに自然の雷を扱うことは、できなかった。
稽古のようなその時間を終える。深呼吸をするように、慎重に上空へ放電し、エネルギーを霧散させる。
手に残った、地魔のつるぎを見る。
……傷ひとつない、無事なままの姿で、剣はそこにあった。
「すごい」
同じ雷属性の魔剣ではないため、注ぎ込んだ力を増幅させたり、剣自身がいかずちを操るなどといったことはできない。しかし、電撃をまとわせるという使い方で、これ以上のものは存在しないだろう。剣の芯を紫電が殺してしまうこともなく、ただ表層に力を循環させ続ける。
まさしく、自分とユシドが求めていたもの。
雷の力で損なわれることのない、魔法剣士のための武器だ。
「鞘の方も受け取ってくれ」
カゲロウが、もうひとつの品を受け渡してくる。
琥珀色の宝石があしらわれた、華美ではないが装飾のあるデザイン。手に取ると少々重みがあり、頑丈そうだ。
「その鞘はあのデカブツのコア……魔力を身体に送り出す器官を素材にしてつくったものでね。秘密の機能がある」
刃をそこにしまう。まるで吸い付かれるように収まった。
カゲロウの解説に耳を傾ける。
この地魔の剣。その耐久性が折り紙付きであることはもう間違いないのだが、それでも武器は消耗品。「ミーファちゃんほどの魔法剣士」が使っていけば、定期的にメンテナンスが必要になるという。それもそうだ。
ところが。そうして刃に損耗があらわれたときは、鞘にしまって魔力をくわせてみる。すると不思議なことに、剣の傷がひとりでに治る、のだそうだ。
……それが本当なら、カゲロウは天才だ。どこまでも都合が良い。一生ものの品だ。いや、一生というのは誤りだ。ウーフ家に残した風魔の剣のように、自分の一族をずっと守り続けてくれるかもしれない。
「ユシド君の剣の機能を俺なりに再現した。といっても、ご先祖様の技術は、やっぱり全然意味わかんないんだけどね」
「いや。あなたは、ハヤテ・ムラマサに劣らない腕の持ち主だ。私が保証します」
「お、褒めるのがうまいね。へへへ」
適当なお世辞にしか聞こえないかもしれないが、ふたりのムラマサの仕事を目の当たりにしたオレには分かる。なあ、あんたの子孫は正しくその魂を受け継いでいるぞ。
いやはやしかしほれぼれする。敵がいなくとも振り回したいくらいだ。おいみてるかテルマハ。お前よりこの剣の方がすごいもんね。なんて。実際、魔剣として同等のできだと思う。
再度刀身を見ようと、柄を握って力を込めた。
ガチンと音が鳴り、手が止まる。
「……ん?」
力を入れる。
魔力で身体を強化して、力を入れる。
ユシドに鞘を持ってもらって、力を入れる。
抜けないんだけど。
「え、まじで? そんなバカな……」
カゲロウが剣をあちこちさわり、叩き、状態をみる。オレとてこんな不具合をカゲロウの傑作が起こすとは思えないのだが。
そのまま、しばらく経って。
男性とも女性ともとれる無機質な音声が、オレ達の耳をなでた。
『フッフッフッ……愚かな人間どもめ……』
「こ、この声は!?」
鞘にあしらわれた琥珀の“眼”が、あやしく光る。それはどこかで見覚えのある輝きだ。
ま、まさか。
そうだ。この声、瞳、間違いない。
激しい戦いで我々に討ち取られ、町人たちの財産となり果てた、あの山の怪物。――地魔が、姿を変えて、ここにいる。
たしかこの宝石は、地魔のコアだと言っていた。やつは滅ぼされる前に、そこに魂を逃がしていたとでもいうのか……!?
そして今は、剣……ではなく、鞘に意識が宿っていると。
『この剣はもう返さんぞ。喰らって身体を復活させ、いずれ復讐してくれる』
「なんだと!」
ユシドがいきりたつ。無理もない、あれほどの死闘を演じた敵が、こうして堂々と生存しているのだ。しかもこちらを挑発している。
2人の勇者は臨戦態勢で、カゲロウは責任を感じているのか顔色が悪い。
しかし、まあ。
『小娘、お前などにオレのはがねは相応しくない。武器はあきらめるのだな。いや、今から雷の魔物でも倒してきたらどうだ? ファファファ』
「ふーん」
『ヌオオオオッ!?』
手の内の鞘に電撃を加える。
もはや脚もなく、自分で歩けもしないやつを怖がっても仕方がない。あの風魔テルマハとて今は剣として働いているのだから、おまえも新しい職を受け入れたらどうだ。
『き……効かんな……グアアアアア!?』
「み、ミーファ。なんだろう、もうその辺に……」
「なんで?」
『グワーー!!?? く、くそ人間め……』
「お、抜けた」
懲りないな。あとでどちらが主人なのか分からせてやる。
オレはぷすぷすと煙をたてる鞘に再び剣をしまい、腰帯にそれを下げた。いいのかと問うカゲロウに、最高の賛辞を述べる。こんなものはささいな問題だ。
それよりお代は?と聞くと、むしろその剣が自分から君たちへのお礼なのだと言われた。こっちの懐は潤っているのだから、仕事に相応しい報酬を出したいのだけど。
しばし互いを立てるような口論を繰り広げる。その間、腰の鞘がわずかにぴくぴくと痙攣していた。生き物みたいで気持ち悪いな。
どうやら、新たな同行者は、ティーダひとりだけではないかもしれない。
出発の日。
荷物をまとめて、グラナの出入り口である鉄の門へとやってくる。
長い滞在だった。しかしここで得られたものは、とても多い。
ここを旅立つことが少し名残惜しく、しかしそれでいて、これからまた新たな世界を仲間たちと旅できることが、自分を興奮させる。
壁に背を預け、自分の剣に話しかけていると、街の住人が変なものを見る目でこちらを眺める。
だけどその中にはここで知り合った者もいて、彼らとは別れのあいさつを軽く済ませた。「またいつか、ここへ来る」と。
やがて、ティーダとユシドがやって来る。おそい。
表情を見るに、ギルドにあいさつに行って、逆に次の町までの仕事を押し付けられたというところか。
人々を魔物から守るのも勇者の使命だ。そうやってあくせく働くのも正しい姿かもしれないぞ? ユシド、キミには良い経験だ。ティーダからいろいろ教えてもらうのも面白いはず。
……でも、お前の師は、オレだからな。それはきっと、忘れないでほしい。
「ティーダ。これ、ミーファちゃんの剣のあまりでつくったやつ。十文字槍」
かけつけてきたカゲロウが、ティーダに一本の見事な槍を手渡した。ふたつ、いやみっつの刃が、穂先で枝分かれしているような形状だ。カゲロウはそれを、十文字槍と呼んだ。
剣のあまりだなどと、口では適当なことを言っているが、きっと彼らの間でしかわからない何かが、そこに秘められているんだろう。
「あの剣みたいに秘密機能はないが、とにかく頑丈だ。少なくとも、お前がここに帰ってくるまでは、絶対に折れない」
「……ああ。ありがとな、親友」
そんなやりとりをした二人は、互いに後ろ髪を引かれることもなく、すっぱり別れた。彼ららしい。
カゲロウはオレ達に手を振り、グラナへと戻っていく。ああ、彼ともここで会えてよかった。旅が終わったらきっとそのときは、新たなこの剣の戦歴を、語ってやろう。
街道を行くふたりの旅路に、男がひとり加わる。
燃えるような赤い髪の目立つ、大地のようにおおらかなひとだ。
「お、魔物がこっちに向かってくるな。ティーダ殿、新たな得物の試し切りといこう……おい。おいイガシキ」
『………』
「都合よく寝たふりをするな」
『ノオオッ!? それはやめろといったはずだ!』
「お前こそ剣にしがみつくな。魔力食わせてやらないよ」
「ミーファ、そのへんで……」
「お前は武器に甘いんだよ」
「ハハハ、なんか新しいフレーズだな、それ」
魔物を退治しながら、何度か通った鉱山や地下の入り口を過ぎて、ずうっと歩いていく。
そうすると、分かれ道にたどりついた。
岐路の真ん中に立って、オレは仲間たちに振り返る。
「ユシド。次はどこへいく?」
少年は眩しそうに目を細めて、行く先を指し示した。