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詩篇1 流出した先に何もあってはならない

作者: 宮沢いずみ

バスローブの紐を彼に持たせ、ほら、こうやって巻くの。

わたしの首に白い紐。


こうやって絞めるの。

力いっぱい、彼に紐を引かせ、


頭の中が真っ赤になって、

耳からわたしの白い真が出てゆきそうになって、


呼吸なんて無意味でしょう。


いりません、そんなもの、欲しいのは、今、それから、ここではない世界。


だけど、

「怖い」と言って、彼は手を緩め、紐が緩み、


一気に血液がわたしの中を巡り出すのを充血した態度で感じながら、


何度も彼の指を首に巻かせ、

そしてわたしも彼の耳に指を巻き、


流れるものは、時間と、涙のみでありました。


流れるものは永遠ではなく、

ただ過ぎ行く、そんな、通過なんぞ、

乾いてゆけばよろしい。


乾ききって、砂になり、粒子になり、

それがまたわたしを作ると云うならば、

止めてしまえばいいのよ。


一切が止まるというならば、今。


されど、止まらないことを知っているから、

せめて、首に流れる液体くらい、硬直させて、しまいたい。


選ぶべきは、果たして。


乾燥と湿度は交じり合い、風化もしないまま、一切は、やはり通過の一途をたどるのみでありました。


それは初めて彼がわたしの流れに重なったときであったのです。


流出した先に何もあってはならない。


流出した先に何もあってはならない。

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